2021/03/09 のログ
ご案内:「常世総合病院・病室」に伊都波 凛霞さんが現れました。
伊都波 凛霞 >  
「いっち、にー…さーん……っ」

今日も今日とてリハビリ…とは到底言えないトレーニングをこっそりする少女。その名は伊都波凛霞
違反部活の拠点跡にて瀕死の重傷を負い、病院に搬送された後も重態に喘ぐような状態だった…のも過去の話

病衣姿の人間がベッドから降りて倒立指立て伏せなんかやってるのを見たら看護師などは腰を抜かしてしまうかもしれない
なのであくまでこっそり
もう怪我の状態も後は時間をかけるだけだし、看護師が絶対にこない時間帯というのがあるのだ
例えばそう、昼食が終わって膳を下げて薬を服用したのを確かめた後なんかがそうだ
次に様子を見に来るまでだいたい二時間ぐらいは時間が空くのである

目を盗んで…という言い方をするとやや心が痛むような気がするけど
一日も早くもとの運動能力を取り戻すには、普通のリハビリではダメなことも重々承知だ
風紀委員が時折訪ねて来る…ということで以前個室のままというのも、逆に助かっていた

「…ふぅっ」

ひらりと倒立から体を戻し、ベッドの手摺りにかけてあったタオルで汗の始末
上半身に関しては殆ど元の感覚が戻ってきていた
脚のほうがまだ少し悪く、上を重点的に鍛え直しているというのが実情である

「……もう少し、かかるかな…──」

汗を拭いたタオルで顎先まで垂れ落ちた汗を拭いつつ、ベッドに腰掛け、一息──

ご案内:「常世総合病院・病室」に山本 英治さんが現れました。
山本 英治 >  
病室のドアをノックする。
比較的自分にしてはまともな格好をしているが。
一応のために黄色のプリザーブドフラワーを手に身だしなみをチェックする。

「どうも、伊都波先輩。お見舞いアフロです」

神妙な表情で声をかける。気落ちしていないといいのだが。

伊都波 凛霞 >  
「っと…」

誰かが来る、という連絡がなかったので少し驚く
慌ててぱたぱたと病衣なんかを整えて、タオルは…ベッドの脇に折りたたんでちょこんと置く

「その声、山本くんかな?入って入って!」

アフロ、と名乗る時点で彼しかいないのだが。思わず小さく笑ったような声になってしまう
それも手伝って、その声は訪ねてきた彼にとっては意外な程に明るい声色、だったろうか

さてさすがに怪我人らしくしておかないと逆に心配されるかな、とベッドにもぞりと下半身を潜らせて、彼を待つ…

山本 英治 >  
「失礼しまアフロー」

入ると同時に朗らかに笑って。

「どうも、入院しちゃってる子にお見舞いでーす」

パーティ会場のように瀟洒に一礼して。
花を片手に持ったまま。少しだけ痛々しい、彼女の寝姿を見た。

「…すいません、お見舞いが遅れてしまって」
「友達甲斐っていうの、あんまりないヤツで申し訳ない」

プリザーブドフラワーを見せて。

「後で看護士さんに頼んで飾ってもらいますね」
「黄色い花が良いって言うし買ってきたんですよ」

「どうです? 負傷のほう」

伊都波 凛霞 >  
相変わらずの明るい調子で、元気づけてくれる
風紀委員に入って色々な人と知り合ったけど彼は特段突き抜けて凄い人だな、と思った
凛霞は正直に口に出すほうなので言う時は言ってしまうけれど、それが躊躇われるくらいには
彼…山本英治は確かな"気遣い"を見せてくれる
だから素直に、余計な言葉で讃えたりはせず、ありがとうと言葉を返すのだ

「ありがと。嬉しいよー、退屈でさ」

あははと笑って、彼を迎える
小さな椅子しかないけど、座って座ってーと促して

「ううん。来てくれるだけでも嬉しいものだよぉ。
 山本くんも色々忙しい筈だし、こうやって来てくれるだけで感謝感謝…」

そういって微笑む表情には、些かの暗さもなく
少なくとも精神状態は持ち直しているのだ、ということが伝わるだろうか

「ふふ、お花も嬉しい。病室ってどうしても殺風景だもんね。
 ──ん…そうだね、怪我は……大分、いいよ。
 脚がまだちょっと思うように動かないけど、もう包帯も取れたし…」

此処に来た時は顔も何もかもグルグルでミイラみたいだったんだよ、と笑う
魔術医を含めた常世の病院の医療水準に感謝するばかりである

山本 英治 >  
「退屈なら花よりオススメの本を持ってくるべきだったー」
「痛恨のアフロミステイク………」
「ミステリーと恋愛モノ、どちらがお好きでしょうかレディ」

次に持ってきますから。
と笑って近くの椅子に座り。
改めて……病院だな、と思った。病室。負傷者。
傷が治っても、怪我をしたという事実は消えない。

一体どこのどいつが伊都波先輩をこんな目に?
最近、違反部活生“無窮の剣姫”逆神紀見を追っていて報告書を見られていなかった。
結局、彼女の卒業前に逆神を捕らえられたことだけが最近の成果だ。

「そうかい? だったら何より」

脚が。脚を。伊都波先輩に、キレイな女に。俺のダチに。
ヒデーことをしたヤツ。
落ちる視線を上げて、暑苦しい笑顔を見せる。

「現代医学ってのは、すげーもんだ。でも……一体誰にやられたんです?」
「言ってくださいよ、俺がメーですよって言って聞かせますから」

伊都波 凛霞 >  
「んー、私はどっちも好きかな?って、多分もうすぐ退院できるよー」

だから気にしないでー、と片手をひらひらとさせてみせる

彼が時折見せる、暑苦しいくらいのスマイル
今はそれがなんだか安心できるの気がするので、なんだかんだで入院生活で少し参ってたのかな、なんて自己分析

ともあれ笑顔には笑顔で返そう、と思った
けど……

誰にやられたんです?
そう言葉をかけられれば、苦笑して視線をベッドへと落とす

この時、凛霞は彼と、あの人との確執をまだ知らなかった
もしそのことを知っていたら…口を噤んだかもしれなかったのに
今日この日、この場では、知らなかったのだ

「あはは…さては忙しくて報告書読めてないな?」

「──やられたっていうのとは少し違うんだけど…
 うん…私が負けた、のは…異能学会の──松葉雷覇」

「今はもう、学会からは行方を晦ましちゃったみたいだけどね…」

山本 英治 >  
「そっか、そりゃよかった!」
「伊都波先輩が病室でずっと退屈してたら俺も居た堪れない」

膝の上で花を両手で持つスタイルになり。

そして。
運命は。
またも。
俺に───扉を開いて見せる。

「松葉……雷覇………?」

表情が強ばる。鼓動が跳ねる。
あの野郎が。どうして。伊都波先輩を傷つけて。

「あ、あいつ………!」

立ち上がってからハッとなって、バツが悪そうに座り直し。

「す、すみません………今、一方的に追ってるヤツの名前が出て…………」
「取り乱し、ました。申し訳ない」

あいつは。また。人を壊しているのか。
何の悪意もなく。むしろ、善意に満ちた理で。

俺の隣にいる死んだ親友の幻影が、血塗れで嘲笑った。

伊都波 凛霞 >  
自分の言葉を聞いて、彼は表情を変えた
それだけでなく、思わず…なのだろう、椅子からも立ち上がって…

「──山本くん?」

憤りを感じてくれているのはわかる
自分だって彼がみだりに傷つけられたら遺憾に思うだろう
けれど、彼が一瞬見せた感情は…そんな単純なものじゃなかったように思えたのだ

その答えは、すぐに本人の口から示された

「追ってる…?山本くんが、雷覇博士を…?」

なぜ?疑問に思う
風紀委員に彼の名前が挙がり、行方を追い始めたのは自分が病院送りにされてからの筈だった
考えられるのは…──個人的な理由、だろう

「…ううん。大丈夫。…そっか。
 山本くんは彼と何か…あったんだね」

自分に言い聞かせるように呟いてから、ハッとなる

「あ…追っかけてる理由を聞き出そうとかじゃないよ?
 ……君が一方的に一人で追いかけるなんて、余程の事情…だろうから…」

少しだけ歯切れが悪くなってしまった
山本英治が自分を心配し、気遣ってくれるように
自分もまた、どういう事情であれ彼…山本英治は友人である。当然、心配は湧いてくる

山本 英治 >  
「あ、ああ……」

目の間を指で擦って。
ゆっくりと目を開くと、親友の幻影は消えてなくなっていた。

「いや、話すよ」
「このままじゃ男の名前を聞いて興奮したってコトになっちまう」

どこから話そうかな。
信頼できる、伊都波先輩に。
どこまで話していいのだろう。

「……去年の9月12日。俺は違反部活、ディープブルーのメンバーと戦った」
「その時、怒りに任せて相手を殺害して……」

「そいつの今際の際の異能に呪われたんだ」

「死んだ親友、遠山未来の幻影に付きまとわれてる」
「週3で祭祀局を頼らないと、発狂すらしかねないって言われてる」

深く重い溜息を吐いて。

「力は衰える一方だ。異能を使えば、使うだけ症状がひどくなるしな」
「今は立っているのも億劫だ……正直、な」

顔を上げて、相手の目を見る。

「いつ戦えなくなるかわからない」
「その前に以前、俺の目の前で命を轢き潰した……因縁がある相手と戦いたい」

「私怨で私闘で、どうしようもない話だが……」
「松葉雷覇を追っているわけだ」

空いている指をゆっくりと握って。

「だが伊都波先輩を負傷させたなら…戦う理由としても十分だ」
「だから……」

こういう時。何を言うべきなのだろう。
応援してくれ? 仇は取る? どれも……伊都波先輩に言うには。
ちょっと気が引ける。

伊都波 凛霞 >  
彼の話を、ただただ黙って耳に入れる
丁度、自分が試験に集中していて…あまり風紀委員としての活動ができなかったあの時期に起こった、件の事件と時期が重なった

「……異能学会はただの隠れ蓑、もしくは何か目的を為すための一時的な在席で…」

「彼の本命は、そっちなんだね」

違反部活ディープブルー
同僚である風紀委員の何人かが調べていたが、結局根には辿り着けなかったものとして、記憶している
成程、彼が状況を撒いていたのだったら…納得もできるかもしれない

しかし、死んだ親友の幻影に付きまとわれる…彼の性格を考えたら、この上ない拷問なのではないか──
沈痛な顔を見せてしまいそうになる
でも彼が打ち明けてくれたのは、自分にそんな顔をさせるためではないはずだと思った

「…あーあ、山本くんがそんなことになってたなんて、はじめて聞ーたなー?」

凛霞は珍しい反応を見せた
むす、と小さく頬を膨らませて
普段の凛霞らしからぬ、妙に子供くさい反応
わかりやすい、といえばわかりやすい表現だ

「……でも」

眼と眼を合わせ、真剣な表情へと切り替わる
交差する視線には、非難の色も糾弾の色もない

「伊都波家の女は覚悟を決めた男性の行動に口を挟まない、と教えられているので」

そう言って…クス、と…小さく笑みを零した

「私闘はもちろん褒められたものじゃないと思うけど、
 山本くんは彼を殺したい…じゃなくて、戦いたい…なんだよね?
 男の子同士の喧嘩の間に割って入るほど、無粋じゃないからさ──」

戦いたいのだという表現をした、彼
もしかしたら、それを通して彼の…雷覇博士の何かを見定めようとしているのか、それとも…ただ強い言葉を使わなかっただけか
──どちらにせよ

「私闘は風紀委員としては推奨できません──
 でも私個人は君の友達なので…私の代わりに一発パンチを叩き込んでくれたらスカっとする、かもね?」

言い終わると、にこりと白い歯を見せて笑ってみせた

山本 英治 >  
「それはわからない。ディープブルーをいくら調べても何も出てこない」
「ただ、個人的に松葉雷覇と戦ってスッキリしたいだけだ」

情けない話だよ、と弱々しく眉根を寄せて。

「殺したいとか、捕らえたいとか。そういうのでもないのがはっきりしないな」

初耳であることを咎められると慌てて。
そうだった、友達に隠し通してきたのは確かに悪い。

「ああ、いや、その、心配かけまいと……」
「言いふらすことでもないし、あ、でも伊都波先輩は大事な友達で…」

慌てふためいている。
格好つかないな、俺。

「先輩………」

その春の日差しのような優しい言葉と。
強い意志が同居した表情に、頷いて。

「わかった、伊都波先輩。あなたの心も拳に宿す」
「それで必ず叩き込むさ……松葉雷覇に」

立ち上がって。

「落とし前だ、俺にとっての。そしてあいつにとっての」

花を看護士さんに頼みますね、と言ってから。

「ありがとう、伊都波先輩。次は快気祝いができたら良いと思ってる。またな」

そう言ってできるだけ音を立てないように去り、戸を閉めた。
また一つ。俺の拳に心が宿る。

松葉雷覇。待っていろ。どこにいても、必ず。

伊都波 凛霞 >  
「──うん、またね」

思いの丈を
隠していたことを
打ち明けて、思いを語り…
拳に熱を込め──
その広い背を見せて、彼は病室を後にした
以前見た時よりも少し痩せたような…それでも、色々な覚悟を雄弁に語る背中だった

いつだか彼の背中を見送った時も似たような気持ちになったことがある
あれは、いつ頃だったっけ……

「んー男の子って、すごいな」

「本当に背中で語れるんだもん」

そう一人ごち、自分で言ってて自分で笑う

彼と話しただけで妙に元気が湧いてきてしまった
友達というものは不思議なものだ

「よーし、夕飯前にもう少しリハビリするぞー」

そんなこんなのミックスアップ
彼がどんな形であの博士に拳を届かせるのか…
それはまだわからないけど、確かな期待と彼から伝わった熱が、胸の中に生まれた気がした───

ご案内:「常世総合病院・病室」から山本 英治さんが去りました。
ご案内:「常世総合病院・病室」から伊都波 凛霞さんが去りました。