2021/12/14 のログ
■神代理央 >
少女が飲み込んだ言葉の先は、自分が想像しているものとは違うかもしれない。
それでも、互いの体温を混じり合わせる様な少女を受け止めて、大丈夫だと囁く様にその躰を撫でる――それしか、出来ない。
「…当り前じゃないか。冥がいなくなったら、寂しい。とても、寂しいさ」
「こうして、二人で一緒に過ごす時間は、私にとってとても大切なものだよ」
「だから、冥がいなくなったら寂しいし、いなくなって欲しくない。本当に、そう思っているさ、冥」
嘘では無い。本心だ。
少女を巣立たせようと思っている事と、少女が自分の空間からいなくなったら…と思った瞬間に感じる寂寥感。
それは、嘘偽りの無いもの。
だからこそ、穏やかな巣立ちを。笑顔で見送る事の出来る巣立ちと旅立ちを少女に…と、思っているのに。
寂しいよ、と口に出せば。言葉にしてしまえば。
何より、少女がまるで本当に。自分から離れれば消えてしまうのではないか、と思う様な不安を吐露したのであれば。
無意識の内に、その躰を強く抱き締めようとしてしまう。
本来、過剰に触れ合うべきではないのに。
適度な距離を置くべき、なのに。
求めて、しまう。
■比良坂 冥 >
──求めれば求める程に、人は離れてゆく
これ迄の人は、みんなそう
誰もが言葉では永遠を誓ったにも、関わらず、だった
「……理央」
「理央、理央…」
ぎゅ、とその身体にしがみつくように名前を呼ぶ
求められることに安堵する
その言葉に嘘を感じないことに安心する
ようやく見つけた、と
「──嬉しいな」//──憎いよね//
「──こうやってずっと、いたい‥」//──ずっとは無理だよ、邪魔が入るから//
「──愛してる、って言って欲しいな」//──愛より大事なものなんてない。じゃあ//
「──そしたら、いなくならないから…」//──いなくなるべきなのは、邪魔者達だから//
抱かれる力が強くなる程に、思いは強く、憎悪は大きくなる
こんなに愛し合っている二人の時間を奪うもの、邪魔をするものが
彼は優しすぎるから、大事な仲間や、自分の使命のために、きっと無茶をしてしまっている
それが結果として、悪い噂になって巡っているのだと──少女の世界はそう結論づけた
「……理央…大好き」
答え如何にせよ──甘く蕩ける毒のような声色で、口吻を求め…唇を重ねようとしていた
■神代理央 >
「……大丈夫。大丈夫だよ」
「私は、ずっと冥と一緒にいる」
「冥が寂しい思いをしなくて済む様に、ずっと一緒に居てあげる」
「私も、冥と離れ離れになるのは寂しいから」
嘘では無い。
けれど、少女の真意とは決定的に『ずれて』いる。
少女と一緒にいるのは本当だ。
離れ離れになれば寂しいのも本当だ。
大丈夫、と優しく声をかけている感情に、嘘はない。
ただそれは『永遠』ではない。
何時か少女が。冥が自分で神代理央の元から離れていくのが、前提。
何時かはそうなる。そうならなければならない。
そう思っている。
それは、決定的な、ずれ。
ああ、だけど。
「……ああ、勿論だ。何度でも、言ってあげるよ」
これは。今から言う言葉は。
「――愛しているよ、冥。私も、冥の事を、愛している」
嘘ではないけど、これは自分の欲望でしか、ない。
少女に向けるべき言葉、ではない。
でも、こういえば…これを言ってしまえば。
少なくとも、偽りでは無い愛の言葉を、少女に囁けば。
「…だから、おいで?冥。今日は、夜更かしをするんだろう…?」
少女はきっと自分のモノになる//――少女に囚われてしまう。
心をかき乱す様な精神と肉体の情欲を抱かせたのは。
間違いなく、少女に囚われてしまったから。
だから、求められるが儘に。或いは、求める様に。
少女と、啄む様な、口づけを。
■比良坂 冥 >
ゆっくりと、唇が重なる
阻むものもなく…求めるままに、求められるままに
触れあえば触れ合う程
体温を感じれば感じる程…
味わえば味合う程……
少女の求めるものは
少しずつ、少しずつ強くなる
一緒にいたい
触れていたい
溶け合いたい
一緒にいたいと言われたい
触れていたいと思われたい…
貪欲に肉体を求めて欲しい……
そんな欲を苛烈に刺激するように、手が触れ、身体が触れて
「──うん…、夜更し…」
唇が離れ、銀の糸が互いをつなぐ
その糸はすぐに切れてしまうけれど…
これからより深く二人が繋がるのだから、何も惜しくはない
「……寝ちゃうまで、えっち、しよ…?」
少年のように遠回りもしない、蕩けた声で──耳元で囁く
漸く見つけたかもしれない安住の地
肉欲でも、情欲でも構わない
自分が求められ、自分の元から消えなければ、それで──
ギ…、と
ソファのスプリングが軋み、少女は少年に凭れ、より体を預ける
柔らかなソファに沈み込む感覚が──まるで心地の良い暖かな泥に沈むような
泥に沈め、時間などすぐに過ぎ去ってゆく
少年がその昏さを、闇を愛しく感じるようになるまで
永遠を求めてしまうほどにの心地よさ、肉体に堕ちる快楽を──
陽の光が闇を照らす、その時間まで
……蝕むように、塗りたくられることになるのだろう
■神代理央 >
それは、少年にとってあまりにも甘美な毒だ。
求めるが儘に求める事が許される。
『保護』の為でも無く。『風紀委員』としてでもなく。
軋む理性と精神。それを溶かしていく情欲。
少女にソレを求める事は、余りにも自分勝手だ。
だから、律していた。…まあ既に、躰は重ねてしまっているけど。
それでも、何れ少女は自分から離れていく。
少女の精神を安定させる為なのだ、と言い聞かせていた、のに。
「……悪い子には、お仕置きしないと、いけないな?」
喰らい付く。或いは、喰らいつくように少女に堕とされる。
未だ、未だ少年はそれに気付かないけれど。
もう、時間の問題かもしれない。
少女が巣立つ事を、旅立つ事を、自分から離れていくことを。
それを拒む様になるまで、きっと、もう――
「一晩中、可愛がってあげる。だから、おいで。冥」
檻の中に捕らえたつもりでいる。
もしかしたら、二人とも同じ牢獄の中、かも知れないのに。
今は唯、少女の甘く、柔らかな肢体を貪るばかり。
荒々しく肉欲をぶつけ、快楽を喰らう。
唯、それだけ。
朝の訪れと共に、部屋を照らす陽光も。
きっと、全ては明るみには出来ない。
薄暗い部屋も。籠った体温も。交わった痕も。
二人の深淵も。照らせない。
窓から差し込む陽光さえも、呑まれていくばかり…だったのかもしれない。
ご案内:「学生街 高級マンションの一室」から比良坂 冥さんが去りました。
ご案内:「学生街 高級マンションの一室」から神代理央さんが去りました。