2021/12/19 のログ
ご案内:「歓楽街 ホテル街の一室」にノアさんが現れました。
ノア > 手早くチェックインを済ませて受け取った鍵でドアを開ける。

息を切らしながら乱雑にコートを部屋の隅のソファに投げつけるように脱ぎ捨てて、
シャワーも浴びずにベッドに身体を投げる。

「――紅龍のおっさん、これっぽっちのクレジットじゃ足りねぇかもしれねぇぞ」

点在する拠点の何処かではなく、ホテルに逃げ込んだのには理由があった。
何かに勘づかれた、そんな確信があったからだ。

あれは誰だ?
フジシロマヤでは無い、彼女について探っていく中で"ナニカ"がこちらを見ていた。
実際に見られていたという訳では無いとしても、何かの尾を踏んだという嫌な予感をビリビリと痺れる程に感じていた。

ノア > 行動監視、聞き込みに情報解析と手段を広く取ったが、
組織の絡んだ部分は情報がかなり不鮮明なまま。
もう少し、踏み込まなければ彼女が"何"かは分からないだろう。
あるいは、彼ら自身分からないままに使っているのかもしれないが。

藤白真夜という生徒の経歴を書きなぐったメモ用紙に改めて目を通す。

「黄金の林檎、禁室、知のゆびさき、な。
 ひとつはもう潰れてるが……」

潰された? "フジシロマヤ"をこの島に運び込む事で役割を終えたのか、
あるいはその後を引き継ぐアテがあったから断ち切ったのか。

後ろの二つは彼女について見ていれば分かる事だったが、黄金の林檎については別だった。
意図的に隠された跡を、消しきれずに残った物の上に重ねられた年月をどけて初めて知れた事。
彼女が正式な生徒として入学した事実とそれにまつわる事柄をひっくり返してようやくでてきたホコリだ。

出生地は分かっている。
正確には、どこで"フジシロマヤ"が回収されたか、までは。
調べれば古い文献に名前こそ残っているが、現存している地図データにも載っていないせいか正確な位置が分からない。

「まっとうに人が生きてる村をネットから消したままにするってのはできねぇわな……」

とすれば、全員が消された?

ノア > 時期と情報と、虫食いになった部分を重ねろ。
過去と今、彼女にまつわる事柄から組み立てろ。

<嗅ぎ回る犬にはすぐに気付くぞ>

脳裏に残響となって残るのは向けられた思念。
危険なヤマを踏んでるってのはもう分かってる。
それでも、まだ知る事で変えられる事があるのなら

「――まだ、あの子は今を生きてる」

死人に花を添えるだけならこの足は危険に踏み入る事など好き好んではやらない。
過去は変えられない。やり直しなど効かないのだ。
それでも、今とこれからは変えられる。
そこにどれだけの死が、悪意が、罪がそこに横たわっていたとしてもだ。


白夜に月が見えない? 関係あるかよ。
見えない物を見つけるのは俺の専売特許だ。

ノア > 血の匂い追っかけんのは大の得意分野だ。
なんせこちとら警察崩れの犬っころ。

喪うモノも、もう無くした所だ。

「紅龍にも、もう一回話は聞いておくべきか」

遠巻きに後をつけて、公園で何者かと談笑する姿を見て確信した。
"自分の知っているフジシロマヤ"と"紅龍の前に現れたフジシロマヤ"について、同一存在でありながら別個の者であると。

そうなれば本人に当たってみるのは危険すぎる。
なるべく、今の彼女にリアルタイムで影響を及ぼさない外堀と、繋がりを探るほかない。

人脈と、情報をフルで回せ。

「悪ぃな蓮司……巻き込まねぇ程度に、『雲雀』の力借りることンなりそうだ」

今は表で教鞭を振るっているであろう友人の名を口に出し、瞳を閉じる。

子供は、幸せであるべきだろう――

ご案内:「歓楽街 ホテル街の一室」からノアさんが去りました。