2022/03/14 のログ
皋嶺 冰 > ――余りにも小さな手で、その小ささからは大きく乖離した、抱擁力が。

いつしか、少女の緊張を緩め、解いた。


力が抜けて、ぐ、と体重を少し掛ける。
元より線が細い御蔭で、そんなに重いということもないが。

「……、……本当に、辛かった」

「くるしかった」


「…………どうして、私が……って、なんども、なんども……っ!」


――どれだけのことをされたのかは、想像もつかない。
ただ、引き裂かれた心から、しとどに少女自身さえ塗らした、真っ赤な苦痛の雫によって。
きっと、今も尚、それに溺れて、もがいて、苦しんでいるのだろう。

剥がれてしまった化けの皮。
今は、この少女のほうが、貴女より、弱い。

> 「ん」

ただ、何も言わない。

優しく、温かく、頭を撫で

皋嶺 冰 > ―――――――。


どれくらい、そうしていたことだろう。

……風が戻ってきていた。春色の風に吹かれる髪が、きらきらと輝く。
腕の中で、鈍色の曇りに包まれていた少女の輪郭は、とっくに。

「……す、ぅ……」

春に溶け、花に添い、色彩の一衣に混じるようになっていた。
麗らかな陽気に、色を与えられることを是と出来るようになったかのようで、その寝顔は、とても穏やかに。

久しく、与えられることのなかった午睡を享受していた。


じきに、彼女を看護婦が迎えに来る頃だ。
貴女はその看護婦に彼女を任せてもいいし、共に午睡に混じってもいい。
だってこんなにも、眠るのには素敵な日和なのだから。

> 「おやすみなさい、起きたら、ん、お友達!」

ゆっくりもたれかかるようにねむりはじめて

ご案内:「病院の中庭」から皋嶺 冰さんが去りました。
ご案内:「病院の中庭」からさんが去りました。