2022/03/15 のログ
ご案内:「卒業式の色は」にアリスさんが現れました。
ご案内:「卒業式の色は」にクロロさんが現れました。
アリス >  
卒業式が終わった。
というわけで、私はこの島から去る。
寂しくなるけど。

最後の思い出くらい、鮮やかに覚えておきたい。

「やっほ、クロロ」

手を振って待っていてくれた友人に近づいていく。

「卒業式といったらこれ」

ポン、と音を立てて卒業証書が入った黒い筒を開けた。

クロロ >  
卒業式。
学生であることを終え、巣立ちの事、らしい。
要するに晴れ舞台ってことらしいから
最後位友人の顔を見てやろうと思い
遠目から見やっていた。

式を終えたのち、こちらにくるちっこい人影に軽く手を振った。

「よォ、何時に無く真面目な顔してたじゃねェか
 最後までマヌケ面が似合ッてると思ッたンだがな」

出会い頭早々に軽くからかってやった。
ポン、と小気味のいい音とともに空いた黒筒。
中には紙らしきものが丸まっている。

「なンだソレ?……アー、アレか。卒業なんとか」

微妙に名前が出てこない。
なんでそんな微妙な所が消えてるんだ。

アリス >  
「マヌケ面ちょっとしそうになったかな……」
「いやぁ、昨日は夜遅くまでデーモンサバイバーやってて寝不足でね」

くああ、と大あくびをして。
居眠りしなかっただけ自分なりに上等な振る舞いだったように思う。
これもゲーム(デモサバ)が睡眠時間を削ってくるのが悪い。

「卒業証書ね……」

呆れた様子でそう答える。
なんだかんだでお互い、ズレたところのある友人関係だった。

「さー、今日の格好を褒めなさい」
「この和服、レンタル代かかってるんだからね」

払ったのはパパだけど。

クロロ >  
「何してンだよお前。大事な日じゃねェのか???」

その日緊張しすぎて寝れなくなったならわかる。
だが、上等にゲームで時間を削るなんて自業自得だ。
あきれ顔で腕を組んで首を振った。
……心なしか寝ぼけ眼だったのはそのせいか?まったく。

「そう、ソレだ。
 一々ンな証明がなきゃいけねェなンざ、ガッコーつのも大変だな」

学生にあるまじき発言だが、元より二級学生。
まともな学生でもないし卒業する見立てもない。
卒業式に興味も希望も抱くはずもないが、彼女には関係のないことだ。

「アァ?なンでオレ様が……」

月の女神さまもそうだが、やたら女性ってのはそういうのを求める。
着飾る美しさって奴なのか。あるいはファッションの努力成果か。
まぁ、確かに言われてみればなかなか似合ってる。
和装束っていうやつか。ホー、と関心の声が漏れる。

「まァ、いいンじゃねェの?"バカにも衣装"だな」

痛恨の言語ミス────!

アリス > 「卒業のファイナルストライク!!」
アリス >  
技名を叫んでバカにも衣装とか抜かした無礼者の腹部にパンチ。
殴るほうだって痛いんだぞ。
反省してほしい。

「大事な日だから、つい眠れなくてゲームをしてしまうみたいな…」
「そんなオトメゴコロ?」

筒の中から証明証を出して。

「有志が作ってくれる非公式のブツよ」
「ま、常世学園には卒業式がないから……」

それでも箔押しのちょっと豪華な紙には特別感があった。

「そういえばさ、言ってなかったことあるけど」
「私、クローン人間なんだって」

「私そっくりの存在が世界にあと11人いて、そのうち一人が常世島に来てるから」

「アリシア・アンダーソンって子に会ったらよろしくね」

と、さらっと流すように言って。

クロロ >  
「ウッ!」

今日は諸事情による人間へと疑似変化。
炎の体は三日位お預けだ。
よって乙女の怒りはしっかり腹部に響いた。
内臓(?)に響く打撃に表情をゆがめ膝をついた。
砂利と石畳の感覚が膝に伝わる。今日は冷たい…。

「なァーにが乙女心だ。結局バカじゃねェか」

ただし減らず口までは終わらない。
ケッ、と吐き捨てるように言えばゆっくり立ち上がり…。

「ア?アー……?何?」

なんて?
思わず唐突なことをしれっと言うもんだから呆気とられてしまった。

「滅茶苦茶大事なことしれッというな。
 別にいいけどよ。クローンだろーがなンだろーがアリスはアリスだろ?」

「まァ、ソイツにあッたらよろしくしてやらァ」

随分と突然だがさして気にしない。
それはそれ、これはこれだ。
それを言ったら自分の外見も名前も"借り物"なワケだし
そこを吹っ切れた今は一々気にすることもない。
複製が決してイコールにはならないのだ。

「……で、お前ホントーに出てくンか?」

ただ、それだけは聞いておきたかった。
本当の意味で巣立ちの時。
人によっては島に残る選択肢をするようだ。
彼女が巣立ちをする理由くらいは聞いておきたかった。

アリス >  
「鉄・拳・制・裁ッ!!」

とかいいながら殴った拳部分がマジで痛い。
勝ち誇る顔がちょっと歪んでいる。

「バカにバカって言っていいと思ってんの?」

開き直ってその言葉を吐き捨てて。

「……大事なことだから…」
「あんまりもったいぶっていうと、深刻に受け取られそうで怖い」

自分でもまだ理解しきれていない。

「不思議の国事件の時に採取された遺伝子情報から創られたクローン? みたいな?」
「うん、妹と知り合ったらよろしくね」

笑顔で風に靡く髪を手で押さえて。

「出てく」

そこは言い切った。

「島で一生を循環させて終わらせる気もないし」
「しばらくは就職先の製薬会社の都合であちこち転々とするかもだし」
「立派なオトナになるために必要なの」

クロロ >  
「とか言いつつ半泣きじゃねーか!ッたく……」

相変わらず売り言葉に買い言葉。
そりゃそうだ。卒業式だからって
関係が変わるわけじゃないし、こんなものだ。

「ほォン。別にオレ様気にしゃしねェよ。
 お前がクローンだからッて、今更なンか変わるか?変わンねェだろ」

「お前はお前だし、オレ様のダチは"アリス・アンダーソン"だろーが」

クローンだからなんだからって何だというのか。
別にその何とか事件に完全に興味がない訳じゃないが
そのせいで彼女の関係が変わるわけじゃない。
そう、変わるわけじゃないんだ。
だから、本当に"今更"だ。

靡く黄緑の髪に、心地よいそよ風。
成る程、春の陽気ってのは気持ちがいい。
こういう寒暖の変化で普段一喜一憂出来る普通の人間っていうのも
今だけはちょっと羨ましい。この特別な雰囲気は
ある意味この朗らかさも一躍買っているだろうから。

「…………」

金色の双眸を細め、じ、と相手を見下ろす。

「そーかァ」

そして、返事はあっけからんとしていた。
そもそも引き留める気はない。
彼女が"決めた"事にとやかく言うことこそ、"スジ"が通らない。
それはきっと、彼女の"やりたいこと"だ。
なら、その門出を見てやるのが"ダチ"というものだ。
己の首筋を撫で、ふ、と力なく笑う。

「お前みてーに喧しい奴がいなくなると、寂しくなンな」

アリス >  
「どうしてそんなに腹筋がハードなのよう」

殴り慣れてないから? それはそう。
というか今後も物理で喧嘩することは起きないでしょう。
正真正銘のファイナルストライク。

「……ありがとう、クロロ」
「そう言ってくれるとちょっと救われた気持ちになる」

「そう……私は私、だよね」

明るく笑って。

「私もクロロみたいなのがいなくなると日常で喧嘩する相手がいなくなっちゃうな」
「でも……それでいいのかも」

「誰かに甘えて生きてた私も」
「友人関係に寄りかかって自我を保ってた私も」
「異能だけしか自分が表現できるもののなかった私も」

「全部、卒業」

寂しそうに表情を暗くして。

「……できるか、わかんないけど。する。絶対」

クロロ >  
「オメーより強ェーから」

伊達に世界の裏側で生きちゃいないぜ。

「……おう。そうだな」


────"何時か"こんなこともあった。


……気がする。
尤も、こんな穏やかなもんじゃなかった。
確かに自分は別れを経験した。
もっとひどくて突然だった気もするけど、慣れてるよ。

だから、そんな顔すンなよ。

アリスの隣にいる"幻視"。
クロロにしか見えない過去の残滓。
赤髪の男を見やればはにかんで見せた。
もうその表情は見えやしないけど、今更心配されることでもない。

「まァ、何でもいいけどよ。
 別に甘えるッつー程じゃなくても、頼ッてくれりゃいいンだぜ?」

「テメェ一人で何でも抱えンなよ?水臭ェだろ」

行き過ぎた甘えは何時か依存になる。
それは健全な関係とは言い難い。
だが、離れるからって根性の別れじゃない。
見えないものだが、そこに確かな繋がりはあるとクロロは知っている。
いいや、"教えてもらった"んだ。
白紙の頭の中には、確かに覚えてる。

おもむろにジャケットのポケットに手を突っ込めば
その"幻視"をかき消すようにあるものを放り投げた。

シルバーアクセサリーだ。
無地の小さなドックタグのついたネックレス。

「餞別だ。いらなけりゃ捨ててくれや」

着飾ったマジックアイテムでも何でもない。
ただのアクセサリーだ。しいて言えば、タグの裏に小さな写真を一枚入れられる程度。
何かの連絡手段にしようと思ったが、別にこれ以外に幾らでも連絡手段はあるし
一々そこまで"過保護"になるのも野暮ってものだ。

「オレ様は多分暫く島にいるけどよ。テメェもテメェで頑張れよ」

「何時だッてオレ様も傍にいンぜ?」

今度は自分がソッチ側になるばんだ。
もう見えない"幻視"に言い聞かせるように
ヘッ、と笑みを浮かべて軽く拳を突き出した。

アリス >  
拳を振っても痛い。
手の甲に息を吹きかけても痛い。
                   ゆ
「強い奴は弱い奴を煽ってでもいいとでも言ーフォルビア」

また、クロロがここではないどこかを見ているような目をしている。
彼は時々、何かを想うことがある。
それが誰かはわからない。
ただ、彼の過去に繋がる何かがそこにはあるのだろう。

「……うん、そうかもね」
「いきなり一人暮らしだけど……電話する相手くらいいるし」

「だから、寂しくはない。多分、多分……」

放り投げられたモノを慌ててキャッチ……しようとして。
軽くお手玉して両手でなんとか受け取る。

「……そっか」

カメラを錬成して、不意打ち気味に相手の顔を撮影。
小さく舌を出して。

「入れる写真ももらっとく」

イタズラっぽく笑って。相手の拳に左の拳を軽く当てた。

「ありがとう、私の友達」

そう言ってカメラを片手に空を見上げた。

クロロ >  
「初日から泣かれちゃたまンねーからな。
 オレ様ン所かけてこいよ。出るかは知らンが」

生憎普段は特別な携帯端末しか持てない身。
それにこう見えて…いや、こう見なくてもずぼらな所はずぼら。
あまりコールセンタークロロには期待しないほうがいい。
カカッ、と楽しげに喉を鳴らして笑っていた矢先、フラッシュ。

「オ?」

思わず目を丸くして、ぱちくり。

「アァ?よりにもよッてオレ様かよ。
 他の奴にしなくていーのかよ」

これまた予想外の人選。
てっきり仲良しこよしで誰かと撮ってくると思ったのに。
まぁ、彼女がそうしたいなら構わない。
その悪漢の笑顔を眺めたいならいつでもどうぞ、だ。

「おう。どーいたしまして」

「……出発は何時だッたか?付き合うぜ。最後まで」

思い出作りに事は欠かない場所だ。
この島を出る最後まで、出た後だって歩く道は違えど隣にいる。
"ダチ"って奴は、そういうモンだと思っている。

アリス >  
「そこは最初くらい電話に出てくれるところじゃない?」

そう言って薄く紅を引いた唇で笑って。

「もうアガサとアイノとはあちこちで写真撮りまくってるからね」

腕時計を見て。

「これから貸衣装店で着替えて、ロッカーに預けた荷物を取って」
「あと3時間とちょっとで出立かな」

「さぁ、まごついてる暇はない!」
「最後の常世を楽しんでこー!」

最後まで元気に。それくらいがちょうどいい。

 
「卒業式の色は あの空と同じ色」
「昨日と明日を 全部合わせた“いつか”より」

「みんなと笑ってる今日が大好き………」

歌いながら二人歩いていく。

 
私の常世島での物語はこれで終わり。
また明日からは、忙しい日常が待ってる。

でも、その時々にある感情で。

毎日がキラキラ輝いていますように。

ご案内:「卒業式の色は」からクロロさんが去りました。
ご案内:「卒業式の色は」からアリスさんが去りました。