2023/01/07 のログ
神樹椎苗 >  
 
「――ええ、ここで待っててくれればいいです」

 運転手に待っててもらうよう伝えて、タクシーを降りる。
 空地の中の神社は、すでに廃れているようで、社を手入れするような人物も訪れていないのは想像に難くない。

「ふむ――形はまあ残ってますが。
 ここにはもう、神はいないみてーですよ」

 ボロボロになった鳥居をくぐらないように迂回して、敷地の中に入っていく。
 社にはやはり、何の気配も感じられなかった。
 

> 「えへへ、穴場かなって」

ちょっと異界探検した時に迷い込んだのは秘密。

「私たちらしいかな、って」
古ぼけた、そこに目をやれば。

神樹椎苗 >  
 
「穴場は穴場、でしょうが――ふむ」

 私たちらしいか、と言われれば。
 たしかに、これなら何の気兼ねもする必要はないが。

「――バカですね、空っぽの社に祈ったりすれば、なにが居つくかわかったもんじゃねーですよ」

 崩れそうとまではいかない古い社は、まだまだ、拠り所にするには十分だろう。
 それにここは、異界と隣り合わせの常世渋谷。
 なにに住みつかれるか分かったものじゃない。
 となれば。

「はあ。
 それじゃあ、ここはひとつ、保護者気取りの誰かさんに祀られてもらうとしましょうか」

 ポンチョの中から、小さな包み紙を取り出す。
 中には、集めておけば役に立つかと拾っておいた、銀月の色の髪の束。
 それを、社の中の祭壇に置いて、戻ってくる。

「これで変なもんが住み着く事もねーでしょう。
 それに、しいやお前が祈るのにも丁度いい相手です」

 といって、社の前に向き直って、幼女を手招きする。
 

> 「ん?カミサマついた?」

何となく何かしてるなあってのを眺めながら

「よいしょ、と」
珍しく息のかかる、距離で。
肉食めいた、何かしらを、予期させて。

神樹椎苗 >  
「さて――どうでしょうね」

 少なくとも格は高いと椎苗は見ているが。
 それに、『黒き神』との相性も悪くない。

「――で、なにしてんですか」

 やけに近くまで寄って来られる。
 と言うか、近すぎるのではなかろうかという距離。
 当然、椎苗は警戒心バリバリである。
 

> 「んー、抹殺のらすとなんとか」

神社の側で、ちょっと強引めに抱き寄せてみたり。

「なかよくなりたく、て

神樹椎苗 >  
 
「あーーーーーーーー、はいはいはい、そこまでです、非合法ロリ。
 それ以上やったら、その晴れ着ひん剥きますよ」

 抱き寄せようとする妹分に精一杯抵抗しつつ。

「お前、またなにか変な本でも読みやがりましたね?
 ええい、仲良くなるの方向性がちげーんですよ、こらもう」

 ぐいぐい、と押しのけてから。
 おでこと軽く、ぺちんとはたいた。
 

> 「友だちより、もっと」

本にはたしか

「なかよくなって、ステップアップ、てき、な?」

ぺし、とはたかれ。

「むー、だめ?ともだち?」

神樹椎苗 >  
 
「それは、しいを相手にやるステップアップじゃねーです。
 それと、お前にはまだはやいので、帰ったら即刻処分する事ですね」

 ぐりぐりぐり、とほんのり寒さで赤くなった妹分の頬を指先で押しのけて。

「まったく――友達だなんだ、というかですね」

 押しのけた後、むずかしい顔で腕組みをし。

「もう、家族みてーなもんでしょう。
 でもなければ、こんなに世話なんて焼いてやらねーですよ」

 と、呆れたようにため息一つ。
 

> 「むぐぐ、うごご」
モチモチのほおを突かれながら

後でしーなちゃんにあげよう、本と。

「あれ、じゃあ最後にやる、お泊りで一発キメるって違うの!?」

何を決めるか知らないけど、書いてないし

「家族、かぞく、しーなちゃんが、家族、んー」

考えつつ

神樹椎苗 >  
 
「なんでお前はそういうしょーもないものに影響されんですか。
 もっと教養身に着けやがれです」

 お泊りで一発キメたいのはこっちの方だと言いたい椎苗である。

「ほら、もうそんなしょーもない事はいーんです。
 ちゃんとお参りして、帰りますよ。
 一年の始まりくらい、真っ当にしやがれってんです」

 はぁー、とまた大きなため息。
 

> 「んー、しーなちゃん一発って何?」

無邪気に返しながら

「はーい、しーなお姉ちゃん」

イタズラめいて、そう返して

にれい、にはく、いちれー、と歌いながら

神樹椎苗 >  
 
「数の単位です」

 相手にしないのである。

「はいはい、しっかり祈願しとくんですよ」

 歌いながら手を合わせる横で、静かに手を合わせる。
 特に、これと言って願う事はないが――。
 

> 「むー、あ、例のアレ!」

しーなちゃんの彼氏、一発殴るってことか、と納得して。

「んー」どうか、なかよしに、ずっといられますように、祈りを捧げて

神樹椎苗 >  
 
「どこのドレですか」

 また変な事でも考えてるんだろうとため息が増える。
 が、それはそれとして。;

「――お祈りは終わりましたか?」

 手を下げて、隣を見る。
 うっかり知人を祀ってしまったが、まあ、それなりには利益もあるだろう。
 なにせ、やたらと世話焼きなヒトなのだ。
 

> 「んー、じしょー彼氏とか言ってた」

自称ってなんやねん、とは思うが

「ろりこんやろーはぶんなぐる、しーなちゃん言ってた」

しゅっしゅっ

「終わったー、ありがと、しーなちゃん」
くるくると、振袖姿で廻る

神樹椎苗 >  
 
「あー」

 ――まあ、子供がじゃれつくくらい、どうにかなることもないだろう。

「はいはい。
 その恰好ではしゃぐんじゃねーですよ。
 おしとやかに出来ないと、大人のれでぃにはなれねーですよ」

 そう言いながら、踵を返して待たせてあるタクシーに向かう。
 今度は、鳥居を迂回する事もなく、まっすぐくぐって。
 

> 「えへへ」

多分きっと、大丈夫、多分、きっと、フルパワーとか、出さなければ

「おっとっと、あぶない、れでぃになる、よていだったよ」
ゆっくりしずしず、ついて歩いて

神樹椎苗 >  
 
「ええ、その調子で着替えるまでおしとやかにしてるんですよ」

 さてさて、いつまで持つことやらと思いつつ。
 二人でタクシーに乗り込めば、微笑ましそうな運転手が真っすぐに寮へと送ってくれるだろう。

「――まあ、たまには悪くねーですね」

 そんな、やんちゃ娘に振り回された、初詣なのだった。
 

ご案内:「ある冬の日」からさんが去りました。
ご案内:「ある冬の日」から神樹椎苗さんが去りました。