2020/06/25 のログ
■レイチェル > 「……オレはもう帰る」
外套をしっかり着込んで、自らの胸を抱きかかえるように
両腕を回しているレイチェルは、そのまま追影の方を見る
ことなく2,3の歩を進め。
カツン、と靴音を立てて立ち止まれば、くるっと一瞬追影
の方を振り向いて、ほんのり赤い頬はそのままに、
睨みつければ小さく呟く。
「ところで、それ。絶対消しとけよ……!」
一瞬のフルスペック起動を妨害することは
できないまでも、認識はしていたらしい。
追影が危惧していた、義眼を没収といった最悪の事態は
防げたが、代わりにとんでもなく見下されているような
視線が突き刺さることになった。これだけで済んだのも
やはり『時の流れ』のお陰かも知れない。
そうしてふぅ、と深く大きな息を吸った後、
落ち着いた声色でレイチェルは最後に言葉を付け加えた。
「気になったこともあったんでな。色々聞こうかと思った
が、ま、退院してからじっくり聞かせて貰うとするぜ」
最近暴れまわっている怪異の情報など、調査しようかと思
ったのであるが、今は機が悪い。
じゃあな、と呟けば彼女は病室を去っていくことだろう。
紙袋に入っていたのは、猫の顔の形をしたクッキーであった。
無論、その顔面は無惨にも真っ二つであったが。
■追影切人 > 「何だよ、もう帰んのか?…なんてな。ま、暇潰しにはなったし…イイもんも見れたしな」
いやぁ、眼福だなーこれ、と思って歩を進めて病室を後にしようとする彼女を見送る――
筈だったのだが、いきなり靴音が止まった。かと思えば一瞬だけこちらを振り向くレイチェル。
「……あ?何のことだよ?(バレてんじゃねーーかクソがっ!!)」
これは仕方ない、映像記録だけ消して最後の奇跡に一枚だけは死守する方針で行くか。
当然、それが一番のセクシーショットなので何としても守らなければならない。
取り敢えず、レイチェルの認識能力は相変わらず…いや、むしろ昔より鋭くなって無いかその辺り。
義眼没収は免れそうだが、代わりにとんでもなく冷たい視線が――うん、まぁまだマシだろうこのくらいなら。
レイチェルが本気で怒っていたら、まず義眼がそもそもボッシューとされていただろうし。
「――あーーどうせ”黒触姫”の事だろ。その辺り、本部にも一応ぶちまけたが。
――お前の事だからどうせ上からの報告より、直に俺に聞きたい、って事だろーよ」
流石にそこはさっきまでのエロ小僧ぶりは鳴りを潜めて、やや苦笑気味に肩を竦める。
紙袋の中身をふと漁れば、猫の顔の形をしたクッキー…が、真っ二つになっていた。
「――ま、調子乗りすぎたのは確かか。…んでも、エロ可愛いっつーのは本気なんだがなぁ」
と、そこは普通にぼやきつつも、彼女が立ち去って静かになった病室でぽつんと一人。
割れたクッキーを齧りつつ「あ、美味い」と呟いていたとか何とか。
後日、レイチェルの元に短く『クッキー美味かった。ありがとよレイチェル』と、短い伝言が届いただろう。
ご案内:「特殊病棟」から追影切人さんが去りました。
ご案内:「特殊病棟」からレイチェルさんが去りました。
ご案内:「路地裏(落第街)」に黒藤彩子さんが現れました。
■黒藤彩子 > 好きの反対は嫌いなんかじゃなくて無関心だ。何を言っても、何を見せても、無いように扱う。
道端の石ころに心を留める人がいないように、そこにあるのに見ない。見て見ぬふりをする。
──わたしはそういうのがきらいだ。
「……………ん~」
落第街。
歓楽街の奥をそう呼んでいるのは、学園の生徒なら大体知ってる。私ですら知ってる。
日向じゃない日陰の街。何かがあっても紛れて消える何も無い所。
きっとイイヒトだって居るだろうことは、この島に来る前の自分の環境を想えば判るし、解る。
でも、よくわからないけど、此処はあんまり好きじゃない。
たぶん、きっと、そう考えた人たちが沢山いて、だからこの街は無い事になっている。
好きじゃない人たちに"見て見ぬふりをされている"。
「あんまし……ん~……わかんないや」
そんな落第街の一角を、どうして訪れてみようなんて思ったんだろう。
お部屋の友達との会話でふと意識したからかもしれないし、単に好奇心でもあったのかも。
言葉の通りにわかんなくって、明るいうちならいいだろうと、何となくで来てみちゃった。
そうしたら、これまた言葉の通りに道が判んなくなっちゃってのっとおけまる。
だって細い路地を作り象る道の先は、建物同士の影となって日があっても尚暗いんだから。
■黒藤彩子 > 「あんまり遅くなるとトダーリンが心配するしなあ」
何処にでもいそうなお兄さん。
綺麗な恰好をしていい匂いのするお姉さん。
道端で横たわるお爺さん。
何かの屋台をやっている角が一杯生えたおばちゃん。
数人で何か話し込んでいた犬の頭の人達。
大通りにはそういった人達が居たけれど、今私の歩いている道には誰も居ない。
落ちかけた日の明りと、伸び始める影と、明滅する街灯と、後は道端に転がる何かばかり。
周囲を見回しながらに道を曲がり、また曲がり、音のする方へと向かおうとするけれど、何だか曖昧で困っちゃう。
■黒藤彩子 > 「なんだったかな。こういう時は……右に曲がり続けるんだっけ。あれ、左だったかな」
暗がりに光が瞬く。夜空の星のように私の周りに瞬く白色光は私の異能。
入学した時に、名前を付けると認知力が上がって制御し易くなるから。と貰った名前は"流星光底《レヴァリスター》"
流れ星のように煌めく光。何だか自分が特別になれた気がして、少し嬉しかったのを憶えている。きっと、忘れない。
「電話も繋がらないしなあ。なんでだろ──」
記憶を振り返るのをやめにして、携帯端末の画面を見ると見事な圏外表示に肩を落とす。
10人が見たら、そうだなあ12人くらいは落ち込んでいるって解るくらいには肩を落とす。
そうして両の手を視て、右か左か選ぶ事にするのだけど
「────なに?」
声がした。暗がりの先。T字路の右側から何かの声、ううん、音だ。
そうっと覗くと、犬が居た。大きな犬。種類は解らないけど、毛は長くない。
それがどういうわけか唸り声と人の声を合わせたような音を出している。
■黒藤彩子 > 「…………………」
ヤバい。ヤバたにえん。
明らかに近づいてはいけない雰囲気がばちこりありまくり。
見つかったら最後明日の新聞に私の名前が載ってしまう気がしたけれど、考えたら此処は落第街。
何があっても、誰も見ない。
「見て見ぬ振りならぬ、ガン見って奴~……」
異能の明りを消す。
身を屈める。
足音を立てないようにしてT字路の左側を進む。
幸い、直ぐに別に曲がり角があってそこを右に進んで、それから壁を背にして大きく息を吐く。
■黒藤彩子 > 「そういえばトダーリン言ってたなあ。人斬りが出るって……あとなんだっけ、何とかサイン」
「まさか凄いでかい犬が居るとは思うまい……帰ったら自慢……いや、バレたら叱られが発生するのでは……?」
人斬り。多分刀とか持ってて和服を着ているのかなと思う。
なんせよくわかんない犬が居るくらいなんだもの。時代劇から出て来たような人だって居てもおかしくない。
人斬りは人を斬るのだから、もしかしたらでかい犬には負けるんじゃあなかろうか。
それなら同じ部屋の友達に自慢してみよう、と手を打ち合わせてみるんだけど、よくよく考えたら多分叱られる。
私は少し考えて、勿体無いけれど誰にも言わない事として再度道を進む事にした。
見上げると切り取られたかのような空は夕焼け色で、少しだけ星の瞬きが見えた。
■黒藤彩子 > ──その後、巡回をしていた風紀委員の人とばったり出会って、道に迷ったことを伝えたら助けて貰えた。
"もうこんな奥まった所まで来たらいけないよ"そう伝える見知らぬ先輩の声は優しかったけれど──
ご案内:「路地裏(落第街)」から黒藤彩子さんが去りました。