2020/07/02 のログ
羽月 柊 >  
「こら重いぞ。」

飛びついている個体をなだめ、立ち上がると、
子猫の集団に纏わりつかれる飼い主のごとく小竜たちをぞろぞろと引き連れ、施設内を進む。

柊の研究所内はいつも賑やかだ。

普段は淡々とした受け答えをし、表情を余り動かすことのない柊だが、
この自宅兼研究所内ではよくよく優しい笑みを見せる。

非人道的な研究が行われていて、
実験室では非検体が怯えて待っている…なんていう
研究区の偏見じみたイメージとは裏腹に、ここでは非検体であろう竜たちは皆柊に懐いていた。

竜の小型化・ペット化が柊の主な研究内容である。

羽月 柊 >  
「カラスはどうした? ああ、今は風呂か。」

翼のあるモノ、強靭な二足のモノ、
四足や更に足の多いモノも居たりする。

かといえば、ナーガのように足のない個体も。

鳴声が雑多に柊に投げかけられているが、何を言っているかは分かるらしい。
とはいえ聖徳太子でも無いので、全部を聞き取っている訳ではないが。

まるで柊はハーメルンの笛吹のようだ。

羽月 柊 >  
柊が通り過ぎた一室は植物園のようなドーム状建物につながっており、
透けた扉からは大自然を切り取ったような内部で小竜たちが遊んでいるのが見える。
扉の近くには猫が出入りするような小窓があり、
施設内は割と自由に竜たちが闊歩していた。

入口を玄関口一つに絞ってはいるものの、こうして屋内を自由に動けるのは、
竜たちにある程度の知能を与えているからである。

姿が小さくなった分、脳の容量は確かに減り、
個体差は大きいが人間の子供程度のモノが多い。

ただし普段外に連れ出しているセイルとフェリアは、
人間の大人と同等の知能を持っている。それ故に連れて歩き、自分の補佐を任せているのだ。

羽月 柊 >  
何個か部屋を通り過ぎるが、さして部屋数は多く無かった。

ここは個人研究所。柊には部下と呼べるモノは現状おらず、
小竜たちにいくらかの知能を与えている分、自分でこなしてもらったり、
人間の手足を持つカラスが世話に加わったり、ある程度は魔法で自動化したりしている。

一室の扉を開ければ、そこは柊のような人間の姿を持つモノの居住スペースだった。

「俺もご飯を食べるから、遊んでおいで。」

そう優しく竜たちへ促し、大半は施設内へ再び散っていくものの、
何匹かは柊に纏わりついたままである。

やれやれと息を零しながらも特に強く言うことは無く、
冷蔵庫を開けては食料の残りを確かめていた。

羽月 柊 >  
ここの所出ずっぱりだからなとぼやきつつ、
鶏のもも肉を出してくると、鍋に投入。

コンロ代わりについている魔法石をコンコンと爪でつつき起動させると、
水とお酒、しょうゆとみりんに砂糖。
煮込みながら近くのまな板でしょうがを薄く切ってそれも鍋へポイ。
落し蓋をして、弱火で煮込む。

鍋の様子を見ながら米を出してくるとざっかざっかと洗う。
最初に浸す水はすぐに捨てるのがポイント。
洗った米を炊飯器にセットしてその間に付け合わせの野菜を切って皿に。

途中、竜たちにつつかれそうになるのを諫めたりしつつ。


米が炊き上がる頃には鍋から良い匂い。そう、鳥の甘辛煮です。

羽月 柊 >  
そんな飯テロをしつつ、ご飯を茶碗に盛る。
なんたってここは日本の一部。やはり炊き立てご飯に限る。

箸を出して飲み物を出して、セイルとフェリアの分も用意する。
割と彼ら2匹は柊の都合の良いように改造されている所があり雑食性が高い。
そんなこんなでいただきます。

なんたって成人男子。食べる時はしっかり食べる。
途中で鳥サイズの小竜たちがせがむのでご飯粒を与えたりしている。

賑やかだが遅めの夕食タイム。

ご案内:「研究施設群 羽月研究所」に■■■■さんが現れました。
■■■■ > 「(世が来たぞ! シュウは何処じゃ?)」

研究所に侵入者……というより、傍若無人な乱入者が現れた。
しかもその全身は朱に彩られ、正直血なまぐさい。

研究所の住人たちも騒ぐことだろう。

羽月 柊 >  
セイルとフェリアが雑食に改造されたことは、本人たちは全く嫌がっていない。
むしろ柊が食べるモノ食べるモノに興味を示していたので、
同じモノを食べれるようになった時は喜んでいたとかなんとか。

そんなことはさておき――。

研究所の敷地内に金龍の娘が入り込むと、
ピピっという小さな警告音と共に、部屋の壁面に光の粒たちが広がる。
柊が普段使っている魔力生体感知の据え置き版である。

「来客……というには…時間が。」

そう呟きながら立ち上がる。なおまだ飯の最中。
立ち上がるついでに台所で筒状にしてあった布を掴むと食べかけのご飯へ放り投げた。
乱暴な動きのように見えるが、それは空で形を変え、食卓カバーへと変身。
すぽっと食事にかぶさるとセイルとフェリアに声をかける。

騒ぐ小竜たちをなだめすかして全員をドーム状の建物へやると、
玄関から再び鏡を通じ、そのまま建物を通って外の様子を見やる。

■■■■ > 「(むう……やはりこの大きさじゃと、いまいち場所を把握しづらいのじゃ。しかし、また戻るのも面倒じゃな……)」

龍語でぶつぶつと呟く
うっかり元に戻られれば、この場に突然数十mはある巨大生物が降臨することになる。
そうなれば、どうなるか……
皇は全く考えていない

「(シュウ、どこじゃ!)」

ずかずかと無遠慮に歩きながら、研究所の主を探そうとする

羽月 柊 >  
なお羽月研究所の敷地内に元のままの金龍皇の全身は入らない。ええ、入りません。
ここはそういう研究所ではないのだから。
はみ出た挙句公安やらが呼ばれてしまう事態になりかねない。

柊は扉から出ると、後ろ手に閉め、鍵穴を指でなぞり施錠。

血の匂い!血の匂い! とキューキュー鳴くセイルとフェリアに導かれるまま、
万一の時を考えて戦闘体勢状態で金龍の所へと歩いて――。

「―――……これ、は…?」

流石に柊も絶句である。
何の返り血かは分からないが、血まみれの少女がそこにいたのだ。

■■■■ > 一々人の居所の構造など覚えていないので、とりあえず適当に歩き回っていた。
まあそのうち見つかるだろう。最悪、多少の「近道」なども駆使すれば……などと壁を見ながら不穏なことを考えていると

「(おお、居たなシュウ!)」

以前贈られた服をまと……っている、はずなのだが……
その純白は見る影もなく真っ赤に染まっていた。

「(さっきじゃな、他の●●●とあったのじゃが……これがまあよく分からぬヤツだったのじゃ。それで、貴様に見解を聞きに来たのじゃが。あと、会話ができぬのも面倒でならぬ)」

皇は自分勝手に自分の都合を押し付けることをいってきた。

羽月 柊 >  
"近道"されたら阿鼻叫喚である。その前に逢う事が出来て良かった。

「あ、あぁ、はい。ヒメ様。」

何をしたのかと言いたい所であったが、
言葉を失っていた所に向こうから竜語が投げられれば、ハッとする。

「御身に何があったかは存じ上げませんが、
 見解の前にまずはその血まみれの御身体をどうにかした方が良いかと…。
 ここは研究区ですし、他のモノに見られると厄介です。」

幸い、柊は常に竜語の解読・翻訳機を装身具の一つとして持ち歩いている。
セイルとフェリアを護衛として連れているのもそうだが、
家の中ではそれが無いと他の子たちと会話が成り立たないからだ。

そう言い、柊は屋内に入るようにと金龍へ誘導する。

■■■■ > 「(ふむ……? そもそも、世の血ではないが……
 まあ良かろう。これもまた、貴様らの世界では都合が悪いのじゃな。
 貴様のような賢人を失うのは、世の本意ではない)」

一瞬首をかしげるものの、以前の邂逅で相手の知性はよくわかっている。
賢人の言うことを無下にするほど皇も狂ってははいない。
素直に従うことにする。

「(ああ一応、貴様のために言うておくが……これは●●●の血ではないのじゃ。この辺りの生き物か、世のように別の世から来たものかは知らぬが四足のモノじゃったな、あれは」

同胞を殺したのではない、とそこはとりあえず言っておく。
そういえば、同族殺しなどと思われてもよくないだろうと気づいたのだ。

羽月 柊 >  
金龍を屋内へ入れると、少々の溜息。
公安や風紀に見つかる前で良かった――いや、もしかしたら後で事情聴取されそうだな。
などという嫌な予感が頭を過るが、とりあえず目の前の問題を片付けてしまわねば。

むせかえるような血の匂いは、つい先ほど食べてモノをせりあがらせる。
咳払いひとつで誤魔化しつつ金龍に後をついてくるように促す。

(●●●…は、今までの竜言語に無いが、
 おおよその話し方を見る限り、彼女固有の人間を表す際の単語だろうな。)

「そうですね。私の敷地内とはいえ、公になると少々分が悪いです。
 この間のように子たちの所に行く前に、一旦身体を綺麗にしましょう。
 血の匂いをさせたままでは、あの子たちも騒ぎますので。」

鏡のある部屋へ行く前……その手前にある部屋は、来客など、
竜たちが接触出来ない一時的な場であった。

「ヒメ様は我々人間の使う機械や魔法はお分かりに…?
 ありていにいえば、シャワーを浴びていただきたいのですが。」

■■■■ > 「(久しぶりの肉は美味かったのじゃが……
 考えてみれば、この姿で肉を喰らうのははじめてじゃったわ。
 普段なら、一舐めで血くらい拭えたのじゃがな。)」

上機嫌で、おそらくは経緯らしきものを語る。
どうやら、食事の後だったらしい。
つまりこの血は、まあ、そういうことだ。

「ふむ……しゃわー? 貴様らの道具か、魔法か?
 流石に知らぬな。教えよ)」

尊大に、教えを請う龍
人煮物を教わる態度ではなかった

羽月 柊 >  
「ああ、生肉を召し上がりに……。
 すみませんが、その四足の獣はどのような姿でしたか。
 どこで食べたか等お聞かせいただければ良いのですが…。」

もし農業区画の畜産動物を無断で食べていたりすれば、
そちらのフォローを回さねばならない。

仮眠室へ行くとタオルを準備する。
着替えはどうしようか…流石に幼女用の着替えは無い。
カラスの服でも大きいしな…と考えつつ、とりあえず自分の着替えを出しておく。

「火山の熱い水が出る道具です。
 人間だと本来は雄である私が、貴方のような雌の幼体の姿をした子を脱がせたり洗ったりすると、
 大いに問題があるんですが…まぁ、緊急事態ということで済ませます。失礼しますよ。」

そう言いながらしゃがみこみ、真っ赤になったパレオの結び目に手をかける。

■■■■ > 「(うむ。茶の色をして、首辺りまで長めの毛があってな。
 そう、口になにやら紐のような物をくわえ、背中になにやら台座のようなものを背負っておったのじゃ。)」

いまいち要領がつかみ取りづらいが、彼女の身振り手振りも合わせてみれば、それが手綱だったり鞍だったりするものをつけた生き物であることを想像できるかもしれない。

「(そうじゃ、それで聞きたかったのが、じゃ。ちょうど喰い終わったくらいに、●●●がきて何やら騒いでおったのじゃ。
 そのあと、金属の……ああ、これじゃ。これを世の頭のあたりでなにかしておったのじゃが。その後すぐに何処かへ走り去ってしまったのじゃが……あれはなにがしたかったのじゃ?)」

取り出したのは、黒光りする銃、といわれるもの
これを頭に向かってなにかされたということは……
そして、平然とそれを話す彼女を見れば、何が起きたか想像できるかもしれない

「(●●●の雄と雌はややこしいのじゃな。妙なものじゃ。
 本当に、●●●は色々な決まりに縛られておるのう)」

非常識な龍が人間の常識に呆れていた

羽月 柊 >  
話を聞いて思わず真顔。
動物が何かはさておき、手綱や鞍を付けているならば十中八九飼われている個体だ。
ただ転移荒野で起きたことだと分かればほっと安堵する。

「…なるほど、転移荒野というのが功を奏しましたね…あそこでは何が起きても自己責任ですから、
 貴方様が召し上がられたその個体は、どうやらその人間が飼育…あー…育てている相棒…、
 私にとってのセイルとフェリアのようなモノだったのでしょう。」

ただ続く言葉に訝し気に桃眼を細める。
銃を受け取り一旦テーブルの上へ。

「少々失礼します…それは我々からは"銃"と呼ばれる武器ですが、
 何かしていたとして、貴方様に怪我などは?」

素っ裸になった彼女をシャワー室に入れつつ自分は白衣と靴下を脱いで、腕とズボンの裾を捲った。
金龍の髪をどかし、撃たれたであろう箇所を確かめる。

■■■■ > 「(む……相棒、か。とすれば、なるほど。あの時、アレは怒っていたのじゃな?
 いまいち、●●●の表情は分からぬ。それに、武器か。
 つまり、世は攻撃を受けたわけじゃな)」

無知は罪……なのか。
なんにしても皇は知らなかった事実を確認した。
そして、明らかなる認識の差も

「(怪我? なにやら音がしたのと、何かぶつかった感じはあったが、別にあの程度なんでもないのじゃ。所詮、下位金属程度で世に傷をつけようなどが愚かなのじゃ。やるなら魔力の一つも込めねばな)」

カラカラと笑う。
聞いている方は笑い事ではないかもしれないが。
なお、言葉通り頭には大した怪我もない。
なんとなれば、跡すらないかもしれない

羽月 柊 >  
「そうですね、その人間にとってその個体がそれほど大切だったのでしょう。
 貴方様を攻撃しなければ気が済まない程に。

 申し訳ないのですが、事故に近い状況で、私にはどちらを庇う事もできません。
 貴方様も知らず喰らってしまったのは悪かったですし、
 転移荒野でその個体から目を離していたその人間も悪かった。
 言葉が通じない故に、そうなったのでしょう。」

怪我が無いことを認めると安堵し、シャワーヘッドからお湯を出す。
一方でセイルとフェリアにお願いし、氷を出してから火で温めてお風呂に湯を張る。

(何も考えずに洗おう。絵面が犯罪的だ。)

そう脳内で独り言ちながら。

「なるほど、人間の御身体になったとはいえ、我々よりは丈夫なのですね。
 ただ己を過信はなさいませぬよう。
 さて、血を流します。髪も血が貼り付いていますので、眼を閉じていてください。」

普段小竜たちを風呂に入れる感覚で頭からざばーとシャワーをかけた。
男の大きな手指が髪を梳き、少々大雑把に洗う。

■■■■ > 「(かばう、じゃと。あぁ……貴様らの、「法」とやらに触れることもありうる、ということじゃな?
 よかろう、なんとなれば「法」などどうとでもなるじゃろう)」

のんきに答える龍皇
そういうところがダメなのだが……

「(ん、くすぐったいのじゃ。まあ、悪くはない感覚じゃから、許す、が……
 しかし、●●●は、このようなことをいつも、するの、か?)」

素直に流されるままになりながら、疑問を呈する
元々の姿のときなど、水浴びのたぐいをシたかどうか、くらいである

羽月 柊 >  
「そうです、我らの法ですね。
 この土地は大分無法地帯な場所もありますが、
 人間の多い場所では、竜の世界のように力が全てとはいかない故、法があります。
 ……貴方様にも出来る限り守ってもらわねば、私の立場も危うくなります。」

呑気な様子を見て、自分を人質にする言い方も良くないが、
最初に発見と報告を上げたのが自分である以上、こう言わなければいけない。
風紀委員に見られているとなれば、尚更だ。

「基本的には毎日しますよ。
 人間は綺麗好きなので、そうした方が他者と齟齬も起こしにくい。

 これで前と下肢の血の付いた箇所を擦ってください。背中と頭は綺麗にしましたので。
 それが終わったら泡を流して、そこのお湯に入ってください。気持ちが良いですよ。」

そう言って泡のついたタオルを渡す。

■■■■ > 「(まあ世らとて、「法」がなかったわけでもない。言いたいことはわかるのじゃ。
 しかしそうではあるが、●●●は「法」が多く、細かいのじゃ。疲れぬのか?)

基本的には意図を汲んではいる、
しかし、どこかがやはり違う

「(む…貴様がやればよかろうに……まあよい、経験、というのも新鮮なものじゃ。やってみるのじゃ)」

一瞬、自分でやる様に言われ不満そうだったが好奇心に負けたらしい
素直に自分を洗う

「(湯に? ……水は使ったことがあるが、湯、か……面白い発想じゃな。こういうところ、●●●は得意じゃな)」

うんうん、とまるで正規の大発明家相手のように感心する。

羽月 柊 >  
「法が多いからこそ、我々人間は強者のみでなく弱者が生きられる社会なのです。
 故にこの世界では最も数を増やし、数で知を産み、
 私のようなモノが貴方様の眷属を保護することにも
 法を遵守する限りは、一方的な搾取もなく、子を差し出せとも言われません。
 
 …疲れないかと言われれば嘘になりますがね。」

身体を洗わせ、少女をお風呂に入れれば血で汚れたタオルを手洗いしながら、
合間に質問に答えていく。

「さて、私は外の椅子に座っていますので、湯にじゅうぶんに浸かったらあがってください。
 濡れたまま動き回らず、すぐそこにタオルがありますので身体を拭いて、
 お声かけください。落ち着いたら話をさせていただきましょう。」

そう声をかけて、風呂から出ようとする。

■■■■ > 「(弱者が生きられる社会、じゃと。
 ふむ、弱者である●●●が生きていくとなれば、確かにそれは必要なのかもしれぬのじゃ。興味深い話じゃな。)」

なるほど、と興味を惹かれたようで何やら考え込んでいる。
考えつつも、促されるままに風呂に浸かる

「(ふむ……これは……なかなか……よいものじゃな……?
 ●●●は、これだけで、活かす価値が、あるのじゃ……)」

途端に、まったり状態に入る。
温かいお湯の見えない魔力は龍の防御を打ち破ったらしい。
微妙に物騒なことを言っているがきっと気のせいだろう
そのまま、ずいぶんゆっくりと浸かっていたようだ

ご案内:「研究施設群 羽月研究所」から羽月 柊さんが去りました。
ご案内:「研究施設群 羽月研究所」から■■■■さんが去りました。
ご案内:「浜辺」にNullsectorさんが現れました。
ご案内:「浜辺」に三椏 そにあさんが現れました。
Nullsector > 住宅街南の浜辺。水平線に夕日が沈みかける時。
蒼にしみ込む朱色を眺める女が一人。
何処となく胡乱な常盤色の瞳が水平線の先を見つめ
口に咥えた煙草の煙が潮風に散っていく。

三椏 そにあ > 「海、ですわー!」

そして浜辺に降り立った少女が一人。
先客の浸っていた時間を破壊するような明るい声で、ようやく訪れた海開きに心を弾ませている。

煙草の匂いからそちらに気が付けば、まあと口元に手を当てて。
恐る恐る近付いていく。お邪魔しちゃったのかも。

「こんばんは、おばさま。ひょっとして、今の声少し耳障りではありませんでした?」

そーっと尋ねる。機嫌が悪い人だとたまに怒られたりすると聞いてるのだ。迂闊。

Nullsector > 女は少女を一瞥する。
感情を感じさせない無表情、仏頂面。
少女がうろうろしているとなると、咥えていた煙草をピン、と海へと指ではじいた。
煙も灰も、波と共に消えていく。

「別に、気にしないよ。子どもはそれ位元気で丁度いい。」

そんな事に目くじら立てる程、大人げなくはない。

「……アンタは結構ちっちゃいけどね、保護者は何処だい?そろそろ日が沈むよ。」

「あまり親を心配させるなよ……。寮のなら門限は守れよ。」

意外と口うるさい!

三椏 そにあ > 「良かったですわ、私本当に海開きが楽しみで!待ちきれなかった気持ちがお口に乗ってしまいましたわっ

あぁっ、ポイ捨てはいけませんわおばさま。環境によろしくないんですのよ」

ああ~…と流れていく煙草を見て。今日は水着でもないので追いかけられないのだった。物を動かす異能でも持ってたらよかったのに!

「大丈夫ですわ、おかあさまには連絡してありますの!
それにおうちもここから近いので、ご心配には及びませんわ」

ありがとうございます、と頭を下げる。はた目から見ても、きちんとした子だろう。と思う。

「おばさまはこちらで何をしてらしたんですの?」

Nullsector > 「……せっかちだね。いいんじゃないか?気持ちを主張するのは、大事な事だよ。」

本当に元気のいいお転婆さんだ。
礼儀は行き届いているようだが、年相応か。
何にせよ、子どもならそれ位あっていい。
どこぞの陰キャ思春期や、オタクよりは余程将来性がある。

「あたい一人が煙草を捨てた所で、人が死ぬほど汚れるもんかい。」

全く悪びれた様子もない。

「そうかい。だからって、一人で出歩くのは感心しないけどね……日が落ちたら、妙な連中がうろつくよ?」

「この辺は風紀が行き届いてるから、大丈夫だと思うけどね。」

かといって、其れが絶対と言うわけじゃない。
力が無い子どもなんて、格好の的だ。
面倒見がいいのかなんなのか、さっきから随分と口うるさい。

「……何もしてないよ。海を眺めてただけさ。」

「カメラよりも、自分の目で見たくなる時があるのさ。」

三椏 そにあ > 「雨続きで退屈していたんですの、それに……海は良いものですもの!
とっても綺麗で、冷たくて気持ちよくて……!」

そうですわよね、と水を得た魚のように楽しそうに話し始める。
海に限らず、水は好きだったりする。幻想的で、透明感があって素敵なものだ。

「"ちりもつもればやまとなる"のですわっ!けーたい灰皿とか使った方が良いと思いますの」

煙草を吸う事自体は何とも思わないが、やっぱり綺麗な物に不純物が混ざるのは好きじゃないのだ。子供心である。

「ちょっとだけ、ですから。大丈夫ですわ、陽が落ちる前に帰るつもりですもの。
怖い人たちがいるって言うのも分かっておりますわ、レディですもの!」

ちゃんと気を付けておりますわ、と笑う。
ぽす、と砂浜に広げたハンカチの上にピクニックバッグを置くと、その上に腰掛ける。

「自分の目で海を……その気持ちは、分かる気がいたしますわ。色々考えることもありますものね、綺麗なのもそうですけれど。
ぼんやり見ているだけでも時間が過ぎていることもあったりして」

Nullsector > 「……そうだな。静かに過ごすにはいい場所だ。昼間は煩くて敵わない時期だがね。」

海開きの時期は特にはしゃぐ連中が多すぎて
静寂を好む身としてはあまり好きじゃない。
だからこそ、人の少ない夕暮れを狙ったと言うのもある。

「雨の日でもやれる事はあるさ……。まぁ、そうだな。」

「検討はしておこう。」

相手が子どもだからって適当言ってるぞ。
携帯灰皿を持つ気は今のところゼロだ。
そうこう言いつつ、砂浜にゆったりと腰を下ろした。
相手が座り込んだので、それに合わせたようだ。

「そうかい。お転婆なレディ、ちゃんと日が沈む前には帰るんだよ?」

「……そうだね。考え事が多いんだよ、此の歳になると」

「だから、こうして静かに何も考えない時間が欲しくなる。けど、厄介な事に1分1秒も無駄に出来ない身分でね……。」

「こうしてみてる間も、別の景色が無数に見えて嫌になるさ。」

情報と言うものは鮮度が命だ。
こうして語らっている間にも、左の網膜には
脳裏には常に、あらゆる景色が映り込んでいる。
もう慣れてしまったが、こういう並行処理は死ぬほど気持ちが悪い。

三椏 そにあ > 「おとうさまもそう言いますわ。『仕事の合間にうるさい場所に行くのはやだ!』と」

ちょっとお子様なんですの、と大人の苦労を知らない子供は頬に手を当てて。ふうとため息を吐く。
実際のところ、それでも付き合ってくれるのだ。もっと感謝すべきかもしれない。

「それなら良いのですわ。私もおばさまとのお約束、ちゃんと守りますの!」

うふ、と相手の返答を聞いて満足そうに微笑む。
仮に次に同じことを目撃したら同じような問答をするような気もする。

「無駄に出来ないみぶん……?どういうことですの?
人はみな、自由な時間を与えられるべきだと思いますの!」

んー?と首を傾げている。

Nullsector > 「フ、得てして大人は喧騒を嫌うんだよ。職場は大体煩いからね。」

「君も、煩い場所にずっといるのに、プライベートでも煩い場所にいたくないだろう?」

そういうものだよ、と子供に分かりやすく例えてあげる。
そう、大人の社会と言うのは煩いものだ。
雑言、仕事、人間関係。
そう言うしがらみにとらわれない時間が必要なのだ。
女は笑みを浮かべながら、おいで、と軽く手招きする。

「はいはい、約束約束。」

破る為の約束だけどね。

「……さっきの通りさ、大人は忙しいんだよ。」

「あたいみたいに、自由が無い位の人間がいるってことさ。」

適当にはぐらかしては、細い指先をひらひらさせる。

三椏 そにあ > 「なるほど……確かに、先生方も普段はお忙しそうですわ。お電話だったり、お客様とお話をされたり…おとうさまもそういうことなのかしら……、?」

何となく、分かったような気もする。
ちょっと失礼な事言っちゃってたかもしれないなあ、と反省の顔。
そして横で手招きをされたのをみると、ピクニックバッグから降りて彼女の前に立って首を傾げている。

「はい、お約束です」

こちらはちゃんと守るつもりのお約束。

「それは、いけませんわ。そんな人が出ることが間違っておりますわ、おばさまも"けんり"を主張していきませんと!」

Nullsector > 「そう言う事だ。けど、そう言う事で、子どもや家庭の生活を護ってる。」

「だから、家に帰ってきた時の"おとうさま"や、プライベートの"せんせい"には優しくしてあげるんだよ?」

大人は皆、社会に疲れちゃうんだ、と。
でも、子どもでも優しくされると嬉しいものだ、と。
優しい声音で諭していく。ちょっとだけ微笑みを浮かべて
優しい手つきで、少女の頭を撫でようとする。

「あたいはね、そう言う大人の中でとびっきり"けんり"が無い人間なのさ。」

「でも、そうなるように選んだのはあたい。」

「だから、あたいは例外。けど、今アンタに優しくしてもらってるから、休憩中って感じ。だろう?」

三椏 そにあ > 「……確かに、お仕事から帰ってきたおとうさまはお疲れのご様子ですわ……それなのに、私 すぐに甘えてしまって

分かりました、おとうさまや先生方には優しくいたしますわ!」

撫でようとするあなたの手を見ると、すっと自分から頭を差し出す。撫でられているしそれが好きなのだろう、えへへと笑って。
ありがとうございます、おばさま!と少女は前向きにうなずくだろう。
疲れた人には優しくする。きっと少女は帰ってすぐにでも実践するに違いない。こうして一つずつ良い事を吸収していくのだ。

「そんな……うう、でも 今は自由な時間になっているんですの?それなら…」

でもでも、と頭を悩ませていると。
思いついたように、ピクニックバッグを開いた。

「じゃあ、これを差し上げますわ!これがなくなるまでは、おばさまの自由時間ですっ」

手の中に、個包装された大きな飴玉を一つ転がすだろう。ぶどう味だろうか。そのままぎゅっと握らせて、どや顔であなたを見ている。

Nullsector > 「違うよ、子どもは"甘える"のが仕事なんだ。大人は、そう言うのが可愛いものさ。」

「けど、"わがまま"と"甘える"は違う。わかるね?」

「アンタはいい子だからねぇ。」

手慣れた手つきに、手慣れた言葉。
なれているとも、子どもの相手位は。
どういたしまして、とお礼を返せばぽんぽん、と軽く頭を叩いて手を離した。
この子はいい子だ。将来有望だと、思っている。

「…………。」

純粋な、眩しい行為。
今の自分には眩しすぎる位に
汚い大人になって忘れてしまったものが、そこにはある。
そして、自分はそれをムキになったり、無碍にするほど大人げなくはない。

「ありがとう。それじゃぁ、お言葉に甘えるとするよ。」

握らされた飴玉を、口へと含んだ。
────甘い甘い、はずなのに。忘れたはずの、苦い甘さ。
笑顔の裏には、自分の忘れてしまったものが滲み出てしまう。
勿論そんなもの、子どもには見せまいと思っているのに
どうにも、その微笑みは子ども目線でも寂しそうに見えてしまうものだ。

三椏 そにあ > 「はい、ごねたり悪いことをしてきをひくのは"わがまま"ですわ。

おかあさまも、同じことを言っていましたもの。なんだか、同じ匂いがしますわ」

おばさまからは、と安心したように返す。
にこにこ、飴玉を口に含む様子を眺めて。手を離されたのをきっかけにバッグの方へ戻ろうとするが―――

「……おばさま?もしかして、ぶどうは苦手でした……?」

寂しそうな微笑みを目にして、少し不安げに問いかける。大丈夫かな……?

Nullsector > 「いい子。アンタは賢いねぇ、将来いい女になるよ。」

一重に両親の教育の賜物か。
いい子になってくれたことを喜ぶばかりだ。

「……ううん、好きだよ。いい甘さだ。」

小さく首を横に振った。
そんな顔をしないでおくれ、と。

「ほら、そろそろ日が沈むよ。帰らなくていいのかい?」

三椏 そにあ > 「ほんとですの!?私、レディになれますかしら!」

わぁい、きゃっきゃっと喜んでいる!レディらしい落ち着きはどこへ行ったのだ。
最初からなかったかもしれない。

「それなら、それなら良かったですわ!それがなくなるまでは、自由時間ですのよ」

お忘れなく!と言ってから。続く発言にああっと口元に手を当てて、ピクニックバッグを持って立ち上がる。

「そろそろ帰りますわ、今度は日の高いうちに……おにーさまやお友達と来ることにいたします。

おばさま、ごきげんよう」

片手でスカートを持ちあげて、ぺこりと頭を下げる。


その拍子に、麦わら帽子が砂浜に落ちた。締まらない。

Nullsector > 「はいはい……。」

本当に元気な子どもだ。
貴女にはわからないかもしれないが
自分のような大人は、そんな元気を見てるだけでも充分だ。
ありがとう、充分過ぎる"自由時間"だよ。
口には出さずとも、優しい常盤色がそう語る。

砂浜に落ちた麦わら帽子を拾い上げ、パッパッと砂を払った。

「ほら、お行き。こけないようにね?」

そっと、小さな頭にかぶせてあげようとした。

三椏 そにあ > 「ええ、おばさまもお元気で――あっ!」

照れ照れと麦わら帽子をかぶせてもらい。今度こそ帰ろうと背を向けて――思い出したように振り返る。

「私、三椏そにあと申します!また、何処かでお会いいたしましょう!」

眩しいほどの満面の笑みを向けて、今度こそ去っていこうとするだろう。

Nullsector > 「……ああ……。」

去っていく背中を見送ると、ふ、と自嘲気味に笑みを浮かべる。

「────知っているとも、そにあ。」

この目がある限り、此の島で知らない事のが少ない。
左目を片手で覆いつくした。今更覆った所で、"この景色"は止まる事が無い。
それでも律義に、口に中のほろ苦い優しさが溶けるまで
一人静かに、さざ波に耳を傾けていた──。

ご案内:「浜辺」からNullsectorさんが去りました。
ご案内:「浜辺」から三椏 そにあさんが去りました。