2020/07/07 のログ
ご案内:「ソロール:落第街 スラムの一角」に園刃華霧さんが現れました。
園刃華霧 >  
アタシには、何もなかった
親も 兄弟も 育ての主も

だから――

一人で生きてきた
一人でやってきた
一人でどうにかしてきた


アタシには、何もなかった
くつろげる家も 暖かい食事も 柔らかなベッドも

だから――

自分で手に入れてきた
自分で奪ってきた
自分でどうにかしてきた

園刃華霧 >  
アタシには、何もなかった
何も、なかった

だから――

全て 己の力で どうにかしてきた

異能が目覚めたのは、いつだったか――

食い物を盗んで、
腕にたくさんかかえて、
どうにか全てこぼさないように、

そう、願ったときだったか

金目の物を奪って
追われて追い詰められ
あらがってやろうと

そう、決意したときだったか

園刃華霧 >  
生きていくために 全てを 手に入れてきた

言葉はどうだったか

あいつも こいつも そいつも
同じクズのくせに
一丁前に言葉が使えた

アタシは――
言葉も 持っていなかった

だから 盗んだ

あいつも こいつも そいつも
全部 聞いて
全部 盗んだ

園刃華霧 >  
それなら、今は?

今は――

園刃華霧 >  
「風紀……いヤ、今は『トゥルーバイツ』だけドな」

ぽつり、と言葉にして……

崩れ落ちた建物の前に立つ
目的の場所だ

園刃華霧 >  
自分が手に入れた”家”は
吹けば飛ぶようなもので
すでに跡形もなかった

そして自分が”今”を手に入れた此処も―ー

「ハ、なっツかシー……すっカりボロにナってヤんの。
 あっちモ、こッチもサー。
 跡形もネ―じゃンか」

けたけたと けたけたと 笑う

園刃華霧 >  
そこは、かつてとある違反部活が根城としていた場所
そこは、かつて風紀委員によって壊滅させられたとされる場所
そして、そこは――

       ・・・・
――アタシを そっちに入れろ!

そう、風紀委員に迫った場所

園刃華霧 >  
アタシは 手に入れた

違反部活を襲い 荒らし
やってきた風紀委員を前に
自分を入れろと

その位置を 奪い取った

二級学生の救済、という話も知ってはいた
上手くすれば、それに乗れるかもしれない、なんて話も

しかし――

誰かに もらうなんて 真っ平だった

園刃華霧 >  
「けド、まさカ……はハ。
 こッチから手ーだス側にナるたー思わンかったワ」

自分の左腕を見る。
そこにあるのは、林檎に噛み付いて絡みつく蛇のエンブレムが入った腕章。

「ヒヒ、しっかシ、予想以上にあっサり通っタよナ、この話。
 あかねちんが話上手なノか、それトも……『舐められ』てンのか。
 ま、両方だローな」

一応、曲がりなりにも風紀委員として所属していた自分が、いかにも怪しげなあかねの部隊に入る。
そんな話が簡単に通るものだろうか、と少しばかり気にはしていたのだが。

どうせ、元二級学生。
掃いて捨てる塵同然、とでも思われているんだろうか。
まあ、好きにするといい。
認めたのはそっちだ。
後で後悔して泣いても知らない。

園刃華霧 >  
「マ、それデこそ燃えルってモンだけド……」

はた、と……
珍しくやる気に溢れている自分に、また気がつく
嗚呼、そうか――

「アタシ、タイクツしてたンかネ……」

なるほど、と思った

アタシには 何もなかった
何もなかったから 手に入れてきた

家も 食事も 仲間も

手に入れて 満足してきた
でも――

足りなかった

「『真理』……イい、獲物じゃンか」

くつくつと、笑う。

園刃華霧 >  
「マ―、でも……死ぬカもシれンな。
 ま、そンなん昔からソーだったシ」

あかねの話を総合すれば、失敗して死ぬ方が可能性は高いと思う。
そこに反逆するのが面白いのだけれど。
もちろん、過去の記録などは見ていない。
そんなもの、見るだけ無駄だからだ。

どうせ、博打みたいなものだ。
賭けるなら全部のチップの大勝負。
あとは、準備だけして結果を待つだけ。

でも、だからこそ――

「ケジメ……だケは、つケっか……いちお」

ぽつり、とつぶやいた。

園刃華霧 >  
「ヤ、しかシ。せーせーシたワ。
 きレーさッパ消えてンなら、気軽ニいけルってワかったシな!
 ひひ、案外、りおちーの仕業か、これ?
 だったラ、あンがとサん。だナ!」

げらげらげらげらげらげらげらげら

笑う
哂う
嗤う

ひとしきり笑って……そのばをかぎりに

立ち去った

ご案内:「ソロール:落第街 スラムの一角」から園刃華霧さんが去りました。