2020/07/08 のログ
ご案内:「ソロール:常世 女子寮 レイチェルの自室」にレイチェルさんが現れました。
レイチェル > 扉を開く。
深夜も11時を過ぎている。
今日は、少し遅くなってしまった。

出迎えてくれるのは、色褪せたぬいぐるみ。
かつて、知り合いからプレゼントして貰ったものだ。

「いつまで経ってもこの島ってのは……騒ぎが多いもんだ」

ふぅ、と小さく息を吐いて。
レイチェルは、次元外套《ディメンジョンクローク》をベッドの上に
置けば、ぽすんとそのままベッドに座り込んだ。

レイチェル > 棚の上には、幾つかの写真立てが置かれている。
古臭い写真立てだ。木製のフレームに、昔ながらの写真が飾ってある。
そこに映っているのは、かつてこの島で出会った人々の姿だ。

レイチェルがまだ1年生だった頃。
風紀委員に入ったばかりの頃。
導いてくれた先輩が居た。
共に戦ってくれた同僚が居た。

違反部活と戦うことになった時も、
自分を心配し続けて、傍に居てくれた親友が居た。

写真立ての前には、メッセージカードが置かれている。
それは、親友が卒業する時に残していってくれた
メッセージカードだ。
添えられていたチョコレートやラッピングはさておき、
このメッセージカードだけはずっと手元に残してある。

『唯一無二の親友へ 佐伯貴子』

佐伯貴子。
学園を卒業して、島の外へ行ってしまった、親友。
今は、どうしているだろうか。

「元気、してっかな……」

遠くを見る目で、メッセージカードの文面に何度も目を滑らせる。

そうして、ベッドから立ち上がったレイチェルは、
メッセージカードを手にしようと手を伸ばし――
そのまま、棚に倒れ込んだ。

「っと、やべ……!」

がしゃん、と。
硝子の割れる音がした。
棚の上に置かれていた写真立ての一つが、床に落ちて
割れたのだった。

レイチェル > 「ちっ……」

力が入らない身体に鞭を打って、何とか立ち上がる。
貴子が卒業してからというもの、まともに他人の血液を口にしていない。
それは、ダンピールであるレイチェルにとっては、大きな問題だった。
死には、しない。かつてのように、衝動のまま他人に襲いかかりそうに
なることも、ない。
しかし、時折今回のように、身体の力が入らなくなることがある。

荒くなった呼吸を落ち着かせ、大きく息を吐けば、
床に落ちた写真立てを、拾い上げる。

メッセージカードの奥に置かれていた、一枚の写真。
大切な、かつての記録。

風紀委員の3人で浜辺で遊んだ時の写真だ。

佐伯貴子、園刃華霧、そしてレイチェル。
水着姿の3人は、仲良くビーチボールを抱えていた。

「また、一緒に楽しみてぇもんだな……」


いつか、また。
写真を手にしたまま、レイチェルは窓の外を眺めた。
星は、綺麗に瞬いていた。
それはかつてのあの日と変わらぬままで。

しかし、どこか寂しい光を湛えているようにも見えた。

ご案内:「ソロール:常世 女子寮 レイチェルの自室」からレイチェルさんが去りました。