2020/07/26 のログ
■レイチェル >
「そうだ、お前を止めてやれなかったオレの責任だ。
大事な友だちを見捨てようとしたんだ。……いや、一度見捨てたも
同然だ。でも、でもな」
その叫びを、感情の奔流を、レイチェルもまた、全て受け止める。
その上で、続く言葉を目の前の彼女にぶつける。
「間違ってたのは本当にオレだけか?
真理を掴みに行ったお前は正しかったのか?
オレは、そうは思わねぇ」
頭を振るレイチェル。その言葉には、確かな意志と『感情』が宿っていた。
「お前の間違いは、華霧」
静かに、重たく。その言葉は、華霧の言葉の奔流に数こそ
負けていたが、それでもしっかりと打ち付けられた柱の如く、
そこに立っていた。
「自分なんか、独りぼっちだって思い込んでたことだ」
もう一歩、詰め寄る。もはや、レイチェルと華霧の距離は目と鼻の先。
手を伸ばせば、触れられる距離にある。
「そしてオレ達を頼らなかったことだ。
全部、勝手に解決しようとしやがって。
全部、一人で背負い込みやがって。
挙句の果てに、真理なんていうものに、乗っかりやがって……」
――ああ、もう本当に。
――本当に、この。
「お前は独りなんかじゃねぇ!
だから、もっと頼れよ!
死ぬか死なねぇか、そんな所まで迷ったんなら!
オレ達に、オレに頼れよ!
面白いから乗る? ふざけんじゃねぇ!
困ってた癖に! どうしようもなく追い詰められてた癖に!
とんでもねぇ賭けに乗っちまうくらい、救われたかった癖に!」
感情の激流。それはどこまでも、我儘で、幼稚で。
ひたすらにまっすぐな。
それは、かつてと変わらぬレイチェルの姿だった。
誰かを否定するレイチェルの在り方だった。
しかし、今のレイチェルは違う。
今の彼女ができることは、否定だけでは決してない。
それは、あたたかくて、穏やかで、包み込むような――
――レイチェルは腕を伸ばす。
感情を剥き出しにした言葉を吐いた後で、自ら腕を伸ばす。
それは、しっかりと抱きしめられる距離で。
■園刃 華霧 >
「なん、だよ……なんだよ、それ……
なんだよぉ……
あた、アタシ、だって……
アタシだって、なぁ……ッ
アタシだって、頼り、たくて……
別れを、つげに、いったんだ、ぞっ
この、ばかっっっ!!!」
差し出された腕に
あと僅かのところで止まり
初めて口にする罵倒を投げつける
それはあまりに稚拙で
どうしようもなく醜く
「いま、いま、さら……物分り、いい、顔、しちゃってさ。
期限、ギリギリだぞ、あほぉ……っ」
子どものような叫びだった
■レイチェル > 僅かの所で止まるその腕を取る。
そして、そのまま――しっかりと、抱き寄せる。
子どものように喚く華霧を、独りじゃないと伝える為に。
鼓動と鼓動をあわせて、確かな生がここに繋がっていることを
確かめる為に。
「悪かった、悪かったよ。
ごめんな、寂しい思いさせちちまって……
怖い思いもさせちまって……ごめんな」
なだめながら、大事な存在を二度と手放さぬよう、
その意志を固めるように、確かめるように、
■園刃 華霧 >
「あたしは、ただ……
ぜったい、なくならない、ものが……
ほしかった……」
■園刃 華霧 >
眼から、今まで零したことのないものが零れる
あとから、あとから溢れ出てきて、止まらなかった
■レイチェル > 「じゃあ、与えてやるよ」
絶対になくならないもの。
真理に頼らなくたって。
奇跡に頼らなくたって。
きっと。
「オレが、お前の居場所になってやる。
絶対に、もうお前を見捨てたりしねぇ!
するもんか! だから、だから――」
再び熱い煌めきが、目から溢れて路地に落ちる。
罅割れに染み込み、それを濡らしてゆく。
「――こんなオレで良かったらもう一度、そしてこれからずっと。
『親友』で、居てくれないか?」
■園刃 華霧 >
「……」
ああ……本当に、欲しかったものは
やっぱり此処にあった
ただ、見落としていただけ
ただ、諦めていただけ
ただ、怖かっただけ
だから逃げてしまった
本当に……
『どうしようもねぇ奴』
■園刃 華霧 >
「……うん」
■園刃 華霧 >
ただ一言、それだけを口にした。
■レイチェル >
「……ありがと」
■レイチェル > 彼女もまた、一言、それだけを口にした。
■レイチェル > 不器用な少女達は、ようやく真っ直ぐに、心からの言葉を交わした。
どこまでも続く暗い道。
先など分からぬ道。
いつか、どこかで途切れてしまうかもしれないその道。
それでも。
暗い道は照らせばいい。
先が分からなくても前にだけは進めばいい。
途切れてしまっても、また繋げばいい。
そうすればきっと、道は続いていく筈だ。
見上げれば星空は二人を祝福するように、
こんなにも美しく輝いているのだから。
ご案内:「輝く星の下、罅割れた路地の上で」からレイチェルさんが去りました。
ご案内:「輝く星の下、罅割れた路地の上で」から園刃 華霧さんが去りました。