2020/08/03 のログ
■園刃 華霧 >
満たされているのか、か
正直、あれから色々考えた。
今までの流れ、反省、出会いのこと。
アタシには、まだ残されているものがある。
そして、実際に何人か此処まで来てくれた。
わざわざこんなところまで……ありがたいことだよ、ホント。
だから、勿論
■園刃 華霧 >
「……わっかンね。」
■園刃 華霧 >
口から出たのは、それだった。
「本当に、ソれは……わかンない。
や、今度のは隠そウ、とかそういンじゃナくてネ?
本当のマジで、アタシには、わかんナい。」
かろうじて、それだけをつなぐ。
なんでこんなこといってるんだ。
ハッピーエンド?でいいじゃないか。
なんだって、こんな……
「……アタシはサ。『欲張り』なンだってサ。
まタ、いつ……馬鹿するカ、正直わかンない。
なにを、どうしてもらえば、いいか、も…」
わからない
だって、アタシは馬鹿だったから。
なにしろ、アタシは馬鹿なんだから。
自分のことだって言うのに、自分の保証ができやしない
■レイチェル > 「もう間違えねぇさ。自分を偽ったりしねぇ。
今度は、お前が馬鹿する前にオレが、オレ達が止める。
勿論、それで止められる保証はねぇ。
オレは、神様でも何でもねぇからな。
でも、手を伸ばすことだけは、保証する。
お前に寂しい思いなんかさせたくねぇ。
止めようと走ってみせる、いや精一杯止めてみせるさ」
口調は重く、意志を十二分に湛えた声色であった。
自分にどれだけの力があるだろうか。
目の前の少女一人、救うことのできる力があるだろうか。
今回の件でレイチェルは、人を一人救うことの重みを痛感していた。
しかし、だからなんだ、と。レイチェルは思う。
重みなど、背負ってきた。多くの人たちと同じように、自分だって
自分なりの重みを背負ってきた。
だからこそ、彼女は約束を口にした。
それが、重みを伴うものであったとしても、構わないと。
そうして。
「だから。だから、さ。
もしオレが馬鹿しそうになったら――
その時は、オレを止めてくれ、華霧」
ぽつりぽつりと、最後にレイチェルはそう付け加えた。
自分だって、いつ馬鹿をするか分からないのだ。
医者の男の声が脳裏を過るが、それを振り払うようにして、華霧へと
向き直る。いつか彼女には伝える。
伝えるとしても、まだそのタイミングではない。
■園刃 華霧 >
「……そッカ。うん。
そう、言ってモらえるナら……きっと、大丈夫、ダ」
やや伏し目がちにした顔をあげ、改めて見据える。
紐の切れた、つなぐものがない、そんな自分を。
無理矢理にでも捕まえて、引っ張ってくれる。
そうしようと言う人間が居れば、きっと、大丈夫……
「ソー、だネ。
アタシばっかもらッチゃあ女が廃ルってネ!
だから、そっちモちゃんト必要な時にハ、言葉にして、ナ」
そこまで言ってから、少し口をつぐむ。
心当たり。
思い当たること。
それを、思い出し。
「……………」
ひとしきり、考える。
今、口にしてもあの時と同じできっと駄目だろう。
でも、何も言わないで済ませたくはない。
なら……
「……あン時、話したコト……アタシの、餞別。
あのコト、忘れてナいかンね」
気になったから、最後に残そうと思った。
気になったから、最後に喧嘩別れになろうと、無粋をしようと思った。
いま、言うのはこれで十分。
■レイチェル >
「……そいつはどうも、だ。気持ちは受け取っておくぜ」
ああ。
目の前の友達もまた、友達として。
自分のことを、考えてくれているのだろうと。
その言葉をレイチェルは、ありがたく受け取った。
――しかし、ダメだ。
既に生き血を啜らなくなって久しい。
もし今、一度牙を突き立ててしまえば――
きっと昂ぶったまま、相手を殺してしまう。
相手が骨と皮になるまで、貪ってしまう。
異能で弱った己の身体が、一度目覚めてしまった獣を、
果たして御しきれるだろうか。
吸ってしまえば、楽だ。甘えてしまえば、楽だ。
しかし。
その先にあるものはきっと、取り返しのつかない喪失。
自分で、頼って欲しいなどと言っておきながら、これだ。
やっぱりどうしようもねぇ馬鹿だと、レイチェルは自嘲する。
自分で自分が情けなくなるが、それでも。
これは、目の前の友を守る為だ。
己の過ちで、彼女を失いたくはない。
それだけは、絶対に。
だから。
――ごめん。
■レイチェル > 「それじゃあ、これで話はしまい……かな」
ほれ、と次元外套から紙袋を取り出して、格子の間に置いて、
レイチェルは立ち上がった。
そして、そちらから他に話はないか、と首を傾げて確認する。
■園刃 華霧 >
「……ま、ソ…だ、ネ。
言うべきコトは、言ったヨ。
…………」
いや、と。
まだ、最後に言うべきことが、多分、ある。
胡座を崩し、こちらも立ち上がる。
「アタシは、園刃華霧。
命を賭けて馬鹿シた天井知らズの馬鹿ダ。」
淡々と情けなくなる事実を口にして。
「つまり、アタシは馬鹿も無茶も上等ダ!
必要なときハ、みっとモなく泣いテでも
アタシのトコ、絶対、来いヨ……!
いいナ!忘れるナ、レイチェル!」
声高に宣言し……
そして……表情を崩す。
「そンだけ。じゃ、またネ」
へらり、と手をふる。
■レイチェル >
救われた。
救いに来た筈だったのだが、最後に救われたのは自分だった。
情けない話だ。
ならばと、
滲み出る弱さを包み隠さず、レイチェルは言葉にする。
「……ありがと、華霧。自分でも、色々手を尽くしてみるさ。
オレだって馬鹿じゃねぇ。どうしようもなくなる前に、
きっと頼れる友達に相談するさ」
馬鹿じゃねぇ、なんていう言葉は強がりであったが。
それでも、そんな危険な賭けをする前に、きっとやれることはある。
この衝動と上手く向き合うやり方が。
その為に、研究する努力は惜しまないことくらいは、馬鹿だってできる。
この衝動に、この爪に、大切な皆を傷つけさせなどしない。
絶対に。
彼女の瞳は、確かな理性と意志を灯して、目の前の友を見つめていた。
じっと、見つめていた。
「……ああ、またな」
そうして。
何事もなかったかのようにそう口にすれば、レイチェルは
次元外套を翻して去っていく。髪で隠れた目元は見えなかったが、
その口元は、穏やかに緩んでいた。
紙袋の中には、可愛らしい猫を模したクッキーと、
山本から受け取ったメッセージカードが入っていたことだろう。
■園刃 華霧 >
瞳に力が宿るのを確認して、
あとはそれを信じて送り出す。
なんだかんだで頑固なトモダチは、
上手いことちゃんと結論を見つけるんだろうか。
「……
アタシみたいナことにナったら、マジぶっとバすかンな……?
馬鹿はアタシの仕事、真面目はレイチェルの仕事って、役割なンだからサ」
角に消えていく後ろ姿を見つめながら、つぶやく。
そして残されたのは、紙袋だけ。
何気なく、手にする。
「……ったく、あいっかワらず、かっわイーいクッキーだこト……
ホント、このギャップ可愛すギだヨね。
それに……ア」
紙切れが、一枚。
それを大事そうに取り出して
「……おかエり。
いヤ……たダいま、かナ。」
微笑んだ。
ご案内:「留置所」からレイチェルさんが去りました。
ご案内:「留置所」から園刃 華霧さんが去りました。