2020/08/07 のログ
■園刃 華霧 >
「ま、難しい言葉はわっかんないけどな。
そうね。自分を見失っていた……じゃなきゃ、そもそも見失う自分がなかった。
そんなとこだね。」
相手の考察を聞いて、確かに其の通り、と思う。
自分にはそういう知識は足りてないから、なるほど、納得である。
だから『自分』らしさ、という何かを作り上げていたつもりで簡単にブレた。
ブレたようで、芯が通っているようにも見えた。
それは結局……『自分』が欲しい、という芯だけが通っていたわけだ。
「まー、だかラさ。あン時も、全部、『自分』で先に『捨て』ていきゃ良いっテ思ってナ。
何しろ、捨てても大して変わんないって思ってたわけだ。
で、方方お別れシて…… 円満お見送りデ。アタシは納得しタ。
『あー、やっぱなんにもなかったんだなー』ってね。
で、そんな状態だったから後からの言葉なんて右から左さ。」
ひひひ、と笑った。
理央と会話したのは其の頃。
だから、引き止めた言葉に対する態度もそういう中身になる。
「で、そうか。一番聞きたかったとこな?
結局、エイジと喧嘩シて。ヨッキーに諭されて。
最後、レイチェルと大喧嘩さ。
ガキみたいに言い合ってさ。アタシには、『トモダチ』ってモンがあるって。
わからされたってこと」
はあ、とため息一つ。
ついで、ちょっとした笑い。
笑うしか無い話。
「くっだらないだろ? 其の程度のことでさ。
頭ぐっちゃんぐっちゃんに悩ませてたんだ。
……なんか、参考になる、こんなんで?」
笑いながら、問いかけた。
■神代理央 >
「……む、すまない。意味もなく難しい言葉を使いたがる年頃なんだよ。
此れでも、お前より年下なんだからな。年下を労われ年下を」
学年的には同じであるのだが。
場の雰囲気を少しだけ解す様に、ちょっとだけ、笑ってみせる。
「……そうだな。お前から見れば、結局は皆上っ面で付き合っている様にしか見えなかったのかも知れない。
『園刃華霧』という自己が希薄であり、それを自分で捨てていって。それを何事もなく見送られれば、そうもなる」
かくいう自分も、結局彼女を強く引き留めた訳では無いのだ。
彼女の想いを聞いた今となっては、自らの行為に溜息しか吐き出せないのだが。
しかし、であれば。彼女が今ここにいる理由は――
「……そうか。……ともだち。友達、か。
お前は、自分という存在を確立する友人を得ていたのか。
下らなくなんかないさ。寧ろ、眩しくさえ思えるよ。
……ああ、本当に。羨ましいくらいに、眩しく見える」
笑ったりなどしない。彼女の結論は、己が未だに至れない結論。
『自分』を認める『他人』を得るというのは、とても難しい事。
それが難しいから、己は自分自身に自信と矜持を持っていたのだから。
「大いに参考になったさ。あの厭世的だったお前を引き留めたのが。真理とやらに至る術を蹴飛ばしたのが、友達、というのだからな。
………俺はきっと、そうはなれない。羨ましいよ、全く」
問い掛ける彼女に、小さく笑い返す。
それは純粋に、彼女を羨む様な笑みだったのかもしれない。
■園刃 華霧 >
「…………」
ひとしきり語ると、やはりちょっと気恥ずかしくはある。
しかし、もうこれは諦める。
自分への戒めであったり、これからの反省だったり。
そういったものすべてをそこに込めて。
そして、相手の考察も聞く。
ああ、そうやって納得されるのもなんだか気恥ずかしいものが有る。
なんだか、同情してくれ、みたいに言ってしまったのでは、なんて気にもなる。
いらない、そんなものは。
しょせん、『馬鹿』が『馬鹿』だから『馬鹿』をした話なんだから。
……けれど
「あのなー、りおちー?
アタシがいうのもなんだけどさ。
いや、立場、だのなんだの小難しい話でオマエがそう思ってるのかもしれないけれどさ。
『トモダチ』ってのは……『居心地の良さ』の名前なんだって。
オマエだって、多分……そういうの、あるはずだぞ?」
恋人ができた、そういっただろう。
お前になにもない、何ていったらぶっ飛ばすぞ。
……そういえば、なんか別れて元に戻って、だのなんかアレげなこといってたっけか。
「それに……まあ、アレだ。
アタシだって、少なくとも、りおちーとの居心地は悪くない、とは思ってるよ。」
そこまで言って……少しだけ、考える。
これは、口にしたものか……
「あと、な……りおちー、ちょっとブレてる……いや、違うな。
多分、だけど……たまに素が出てるぞ。
それがりおちーが思う自分にとって良いことか、悪いことか、アタシにはわからないけれど。
けれど、アタシは悪くはない、と思う。」
そこまでいって、ふと思い出す。
「そーいや、あんときいったっけ。
――清濁併せ呑む、だっけ? そういうのも大事じゃない?
――ホントのトコの答え合わせは、まあ確かにこれからやってちょ
答え合わせ、できてる?」
そう、聞いた。
■神代理央 >
彼女の気恥ずかしさを鑑みる程、大人にはなりきれていない。
同情もしない。哀れみもしない。ただ淡々と、彼女の言葉を聞き入れて、自分なりの考えを言ってみるだけ。
生い立ちや境遇は、確かに同情に値するのだろう。けれど、彼女が自ら聞かせてくれたその言葉に、同情など抱かない。
それは失礼だ。同情なんて、結局は自己満足に過ぎない。
彼女の言葉と想いを『同情』なんて安っぽい言葉と感情で包み込んだりは、しない。
だから「大変だったな」とも「辛かったな」とも言わない。
ただ、聞き入れて、頷いて、言葉を返すだけ。
しかし――
「『居心地の良さ』……?友達が、か?
それは…そういう、もの、なのか?そしてそれが私には……そうだな、ある。私にも、あるものだ」
スイーツ部のメンバーも。
殺し屋の件で己を気遣ってくれた人々も。
そして何より――大切な恋人が。
己にとって、居心地の良い場所なのだろう。
『友達』と呼べる人は、まだ少ないかも知れないけど。
「……じゃあ、俺と園刃はともだち、なのかな。
そうであってもそうじゃなくても。そう言ってくれるのは、本当に嬉しいよ」
きょとん、と。彼女の言葉を聞いて浮かべた表情。
ふわりと、嬉しそうに笑みを浮かべるのだろう。
そして、次いで投げかけられた言葉に、浮かべるのは思案顔。
「……そう、か?であれば、俺……ああ、こういうところか。
私もまだまだ未熟、という事なんだろう。
…でも、そうか。悪くない、のか」
悪くない、と言ってくれる彼女に。
困った様な嬉しそうな、何とも複雑な笑みを浮かべる事に成る。
「……清濁併せ呑む、か。
そうだな。そう生きていける様に、精々足掻いてみせるさ。
……答え合わせには十分過ぎるよ。此の事をお前に聞けて、本当によかった」
彼女からの問い掛けには。
穏やかな笑みと共に小さく頷くだろうか。
■園刃 華霧 >
「ま、気になるなら……美術のヨキってセンセに話してみてもいいんじゃないか。
あれ、絶対妖怪のたぐいだぞ。妙な説得力でこっちを殴ってくるからな……」
「トモダチ=居心地の良さ」。其の概念を教えた存在。
いま、冷静になって考えてみれば本当に、なんでアレをあんなにすんなり受け入れられたのか。
まったくわからないところが恐ろしい。
おまえもいっぺん味わってみろ、アレヤバいぞ
「それが、今回アタシが思い知ったことだよ。
意外と、アタシらってのは自分のことすら分かってない。
それはレイチェルだったりエイジだったり他の連中だって……多分、な。
トモダチって件に限らず、ね。
結局……アタシらはなんだかんだ言って、ガキだってことなんだろうなあ。」
やや戸惑いを見せつつも、自分の言葉を受け入れる理央。
それを見つめながら、言葉にする。
やれやれ。頭良さそうムーブしてるやつでさえ、こんなだ。
まあ、そりゃそうだよなあ。
実際、別に年取ってるわけでもないしな。
「ン……参考にナったなラ良かったヨ。
じゃ個人的な件オシマイ、で良い?
いいナら……あンま聞きタくないケど仕事の話って、何?」
うへぇ、という顔をしつつそれでも聞く
■神代理央 >
「…美術の、ヨキ先生?
ふむ…覚えておこう。その辺りの教科は、ついぞ履修していなかったしな」
こと芸術関連は苦手な分野である。
それ故に、美術・音楽といった教科には疎い。
彼女から聞いた名前を頭の中にメモ書きしつつ、彼女の言葉に頷くだろうか。
「…そうだな。案外、他人の方が自分の事を分かっていたりするものだ。
自分なんて、結局自分の目で見ている事しか分からない。他人から見た自分なんて、絶対に分からない。
……何せ、俺達まだ未成年だからなあ。少し生き急いでるんじゃないか、俺達」
と、此方を見つめる彼女に気付けば小さく苦笑い。
結局、彼女も自分も『大人』にはなりきれていないのだ。
「ああ、長々つき合わせて悪かったな。
それと、仕事の話だか――」
そこで、チラリと腕時計に目を落とす。
「……生憎、次の用事があってな。もうすぐ此処を出るんだろう?
であれば、また『出所』してから、改めて頼みに行くとするよ」
と、彼女の表情にクスリと笑みを零しながら、肩を竦めて言葉を返すだろう。
■園刃 華霧 >
「生き急いでいる、か……まったくだな……
アタシは、生まれてからずっと此処だったから外のことはわかんないけど……
此処じゃない、外は、もっとのんびりしてんのかねえ」
相手の苦笑に合わせて、ぼやいてみせる。
外の世界。
大事な友人が去っていった向こう。
其の先を夢想……することも、できない。
「用事?忙しい?話は後?
それはそレは、ラッk……ごほん。
んじゃ、また後デ、だナ。
じゃーネ、理央。また、今度は外で会おうか」
そういって笑って手を振った。
■神代理央 >
「…どうだろうな。結局は、外もこの島も変わらないさ。
ヒトが住んでいるのなら、そこはどこだってなんだって、同じだ。異能があるから。魔術があるから。そんなものは関係無い。
所詮、ヒトは、ヒトでしかない」
それは、外からやって来たが故の。
父親と共に、世界を巡り――
時には、大人達の欲望渦巻く華やかな社交の場へ。
時には、血と薬莢だけが大地を埋め尽くす戦場へ。
そんな場所を『見せられた』が故の、諦めの様な笑みと言葉。
「…今ラッキーとか言いかけなかったか?仮にも風紀委員なんだから、もっと仕事の話に真剣になってくれないか?
そんなんだと、織機と同じ扱いにするぞ?」
わざとらしい咳払いをかました彼女を、ちょっとジト目で睨みつつ。
「…ん。そうだな、次は外で。
こんな場所じゃ、飯も上手くないだろう。偶には、風紀の皆で食事でも行きたいものだな」
と、言葉を締め括って。
彼女に笑い返し、手を振り返し。
完璧に整えられた制服を翻して、硬質な革靴の音と共に彼女の元を去っていく。
その顔は、何処か晴れやかなものであったとか――
ご案内:「風紀委員会留置所」から神代理央さんが去りました。
■園刃 華霧 >
「………仕事、か」
折り目正しく制服をまとめた男が去っていってから、ぽつり、とつぶやく。
「……どーするかねぇ」
ごろり、と横になった。
ご案内:「風紀委員会留置所」から園刃 華霧さんが去りました。