2020/08/20 のログ
ご案内:「落第街-施療院」に山本 英治さんが現れました。
ご案内:「落第街-施療院」に園刃 華霧さんが現れました。
山本 英治 >  
淀んだ目で天井を見ている。
寝るに辺り、不衛生になるのを避けるために魔術で髪は直毛にしてある。
それだけでなんとも、落ち着かない。

足はまだ動かないのか。
こんなところでまごついている暇はないのに。

俺は沙羅ちゃんに……いや、椿に攻撃を受けて何度も地面や壁に叩きつけられた。
下半身の末端部位にダメージがひどい。
異能を細かく起動して再生を行っているが、まだ歩けるほどにもなっていない。

早く……早く何とかしないといけないのに…

園刃 華霧 >  
反省文、というものが世の中には存在する。
反省の意思をしめすそれは、時に重圧となって人に襲いかかる。
……基本的に自業自得なのだが。

そんなわけで、分厚いそれを書き上げて病院に提出してきた。
月夜見真琴完全監修、今季の決定版!なそれは実に快く受け取られたわけだ。

ついでに、徹底的に仕込まれて詫びも入れてきた。
髪は整えろ、華美でない程度に化粧を入れろ、(真琴監修)
お辞儀の角度は45度、角度は45度、角度は…………

いい加減頭もゆだってきたところでようやく開放されたので、さてどうしようか、と思って……
回ってきた情報をやっとみれば

「……エイジ、なーにヤってんノあのアホは……」


足はなんとはなしにそちらに向いていた。
落第街の地理はだいたい頭に叩き込まれている。
場所なら簡単にわかった。

目的の施療院は記憶通りの場所にあった。
用件を伝えれば、簡単に通してもらって……


「……おイ、エイジ。おま、なにやって……」

流石に病院で謝ってきた直後、ここも似たような施設だ。
控えめの声で部屋に入ってみた、のだが……?

「……え?」

山本 英治 >  
声が聞こえて億劫な感情を押さえてそちらを向く。
包帯が巻かれた顔の下で笑った。

「ああ……園刃先輩、お見舞いに来てくれたとかですか?」

首を元の位置に戻すエネルギーを捻出できないため、そのままヘラヘラ笑った。

「ま、なんだ……ちょっとトラブっちゃって、怪我…みたいな」

前に盗み聞きしたままだから、なんとも顔を合わせづらいのだけど。
まぁ……何とか誤魔化そう。

園刃 華霧 >  
「え……ヤ……え……?」

そこいたのは、直毛の男。いつものまん丸巨大なマリモはそこにはない。
思わず顔を近づけて、無遠慮に相手の顔をじっと見つめる。
面影が、あるような、ないような……?

「まテ、マジで……エイジか……?
 死んダのか、死んジまったノか……?」

真面目とも冗談ともつかない調子の言葉が口から漏れ出ていた。

山本 英治 >  
「や、ちょっと、園刃先輩、近……」

顔が赤くなりながら。
包帯で顔面もぐるぐる巻きにしておけばよかった、なんて考えながら。
それでも、何とか顔を動かさないよう努力しながら。

「ってオォイ、園刃先輩にとって俺の存在はアフロだけですかぁ!?」

ひっでぇなぁおい!!
ドキドキして損したよ!!
はー、と溜息を吐いて。

「生きてますよぉ……この通り………今はソウルフルじゃないですが…」

園刃 華霧 >  
「……そーカ。ズタボロだけド、なんとカ元気そーダな?」

どうやら、ボロボロでは有るが叫ぶだけの元気はあるらしい。
髪と同じくしなびたパスタか何かっぽい雰囲気が、少しは戻っただろうか。
……ああ、うん。
この暑苦しいのはまだ元気でいてくれたようだ。

「湿っぽいツラ、少しはマトモにナったゾ?」

にしし、と笑った。

山本 英治 >  
「……そっすか」

しばらくキョトンとした表情でいたけど。
俺はなんか、笑いだしてしまった。
焦って、本質を見落とすくらいなら。
ヘラヘラ笑って、遠回りしたほうがマシだ。

「敵わねぇなぁ………園刃先輩には」

彼女の笑顔のために努力したこともあった。
その日々が今は少し遠く感じられるけど。

今も、彼女の笑顔は輝いているな。そう思った。

「言いふらしたり、写真撮ったりしねーでくださいよ、マジで」

園刃 華霧 >  
「いヤ、いクらアタシでもガチの怪我人相手にソコまデ邪悪はシないゾ?」

流石に弱ってる相手に証拠写真取ってネタにするようなやつと思われるのは、心外である。
……いや、相手次第ではやってるかもしれないけれど。
りおちーとかりおちーとか。

「ン―……しカし、髪ないト……意外と顔、ちッサいのナ?
 いヤ、こンなモンか? 」

相変わらず無遠慮にしげしげと眺めていた。
なるほど、髪が違うだけで印象が違う、と散々説教されたけれど。
こういうことなんだろうか。

そういや、この間もアタシが髪整えた時なんか言われたなあ。

「デ。オマエさ。なンでこンなトコで腐ってタのさ」

落第街にもヤバいやつは多いのは確かだが、コイツだってまあそれなりにやばいやつだ。
それがこのザマで、其の上なんか湿っぽかったって。
何が起きてるんだろう

山本 英治 >  
「そりゃー何より、疑ってごめんちゃい」

近くにいるのは惚れた女で。
寝転がりながら会話ができる。
これで煙草の一本でも吸えれば、ご機嫌なんだが。

「そーゆー園刃先輩は髪が整ってて三割増しで美少女ですよ」
「薄化粧も似合ってる……いや、やっぱ素材かなー」

眺められるのは、なんとも落ち着かないけど。
ま……悪くない。なぁ、全く………悪くない。

「……黙秘権を行使したいところですけど」
「邪悪はしない園刃先輩になら話していいのかねぇ」

視線を天井に向けた。数え終わったシミが見える。

「神代先輩が異能犯罪者と戦って、詳細不明」
「あとは負の想念で何らかの力が暴走した水無月さんを止めようとしてこのザマです」

肺が膨らむように深く息をして、息を吐き出した。

「……本当はバッチリ止めて、何もかも解決して…ってやりたいけど」
「力が足りねぇや」

園刃 華霧 >  
「美少女ォ? マジで言っテる、そレ?
 ……ヤッぱ、頭打ったリしておかシくなってナいか……?」

至極真面目な顔で相手の額に手を当ててみる。
いや、それは熱を測る方法であ測る図る方法は知らないのだ。

「ま、ソれはそレとして……髪くラいで見た目かわンのなー。
 真面目な時は考えタほーガいーノかねェ」

主に謝るときとか謝るときとかだが。
……できるだけ、多くしたくないな?

「りおちー……は、あの馬鹿……
 なニやってンだよ、まッタく……」

さっさと平穏満喫しろ、と……
…………いや、待て
……送り出したのは、アタシか……

ずきり、と何処かが痛む。

そして――

「さら、ち……?」

予想外……いや、言われれば納得な名前が上がる。
しかし、続く話は……

「まテ、そりゃ、どウいう……ってイうか、あの、さらっちが、
 オマエを、こンなにデきたッてのか?
 てカ、さらっちはドうした?」

思わず揺さぶりそうになるが、すんでのところで手を抑えて静かに聞く。

山本 英治 >  
「大真面目ですよ……園刃先輩は、綺麗だ」

額に手を当てられると、熱が相手に伝わらないか不安で。

人を愛することは、大変だ。
失恋をすることは、とっても大変だ。

「いつも、綺麗でいてくださいよ」
「園刃先輩の隠れファンが喜びますよ~~~?」

隠れファン筆頭は譲る気はないけどな。

「落ち着いてください、順を追って話します」

体を起こそうとして、呻きながら断念する。

「神代先輩はまぁ……愛する人を遺して死ぬようなタマじゃないです」

「水無月さんの両目は金色になってました……」
「黄金の瞳………特異性の高い異能者に発現すると言われるもの…」
「そして、彼女は肉体のリミッターを外し、なんらかの外的要因で強化し、再生能力をフル稼働」
「さらに……椿と名乗る別人格が表出」
「……俺をボロクズにして余りある戦闘能力と精神状態だった、というわけです」

痛みに顔を歪めながら、太ももをバンバン叩く。

「この足さえ自由になれば……」
「沙羅ちゃんは戦う気なんだ……虞淵と」
「俺への暴行容疑で今頃査問にかけられてるだろうに」

「いや、経緯なんて今はいい……椿が、沙羅ちゃんが手を汚したら…!!」

強引に体を起こそうとするも、上手くいかない。

園刃 華霧 >  
「……いヤ、正気か?
 うン、しばらク休んどケ? な?」

思わず、真面目に心配してしまった。
どう考えても正気じゃないだろう、これ。
言ってることが明らかにおかしい。
やたらアタシを持ち上げるし……
本当に、どうしたんだコイツ?


「ッタく、無茶スんなって……」

身体を起こそうとして断念する男。
それをこちらも手で制して続く話を聞く。

「黄金の瞳…… 肉体のリミッター…… 別人格……」

出てくる言葉は、だいぶ脳で処理しきれない。
しかし、間違いなくわかることは……水無月沙羅が、とんでもなく大きなものを抱えている、という事実だけ。
まったく、とんでもない妹をもったもんだ。
今更引くつもりもないけれど。

「……虞淵? アイツ……か」

苦い思い出が蘇る。
かつて、「風紀の後輩」を倒し「陵辱」した男。
奇妙な感情が腹の中に浮かんでくる……が


「あーのナ……」

目の前には負傷した足を叩き、無理に起き上がろうとする男。
まったくこの『馬鹿』は。
どうせ言っても聞かないのは分かってる。
なにしろ、『馬鹿』だから。

どうしたものか、と考える。
……ああ、そういえば。なんか姐さんたちが言ってたっけか。

「落ち着けっての」

正面から両手を相手の背中まで回し、締め付ける。

山本 英治 >  
焦るな、焦っても良いことはない。
わかっているはずなのに、遠回りしても真実に近づくって決めたのに。
俺の心に焦燥感は滲み出てくる。

「園刃先輩、今すぐ伊都波先輩に連絡を」
「俺の携帯デバイス、今は没収され………」

ふと、熱が俺の体を覆った。
理解ができなかった。頭が現状を把握できる程度まで動くと。
今度は鼓動が跳ねた。

抱きしめられている。

「………園刃先輩……」

諦めるって、決めたのに。
この想いを誰にも伝えないって。
決めてたのに。

「園刃…先輩…………俺、あんたが好きだ」
「一人の女性として愛している」
「あんたは可愛いから、俺なんか釣り合わないのは百も承知だ」

「だから、言わせてくれ」

「あんたはこの件に関わる気だろう?」
「動く時、俺はあんたのことが死ぬほど好きだってことを思い出してくれ」

背中に手を伸ばそうとして、重度熱傷で包帯が巻かれた手を見る。
ったく……格好つかねぇなぁ。

「あんたが苦しむと、俺も苦しいってことを思い出してくれ」

園刃 華霧 >  
「……へぁ?」

この手の間抜け声は覚えがある。
それは、苦い記憶とともに。

しかし、だからこそ
今回は、少しだけマシに対処できるだろうか。

「……ァー。
 いヤ、な。エイジ。
 そレは考え直しタほうが、いイぞ?」

ただ、出てきたのは似たような台詞だ。
まったくもって芸がない。
……やっぱり向いてないのだろうか。

それでも、言っておかないといけない。
もう、間違いは起こしたくない。

「釣り合う、釣り合わん、とかはアタシにはわかないから放っておくとして。
 ……アタシは、そういわれても。ピン、と来ないヤツだ。
 実際、今だって……よくわかってない。
 きっと、その気持ちは無駄になる……言っただけ、損するぞ?」

それで傷つけてしまうのならば、最初から無かったことにしたほうがいい。
それで失ってしまうなら、忘れてしまったほうが良い。
……まったく、我儘な話ではある。

「……まあ、気持ちはありがたいよ。」

山本 英治 >  
相手から離れて、鼻で笑う。

「あんたが人から向けられた感情を無駄にするだって?」
「冗談だろ、俺が惚れた女を下に見すぎだぜ」

枕のある位置に倒れ込む。
エネルギーが空っぽになりそうなくらい億劫なのに。
今は、心が跳ねててどうしようもない。

「ありがたいか? 俺の気持ちは……でっけぇからなぁ………」

何がでっけぇだ。最近まで、気付いてなかったくせに。
でも、なんとなく気付いた。
彼女は愛だの恋だので双方傷ついた記憶があるんだ。

俺がやったのは、その記憶を思い出させたことだけか。はは。

「考え直す気はない、この気持ちも言葉も引っ込める気はない」

駄々っ子のようにプイ、と顔を背けて。
赤くなっている顔も包帯で隠せたらなぁ。

「ただいくら園刃先輩でも、俺が惚れた女を低く見るのは許さん」

園刃 華霧 >  
「うっわ……子どもか、おまえは」

呆れたような声を上げる。
実際、呆れているのだが。
なに拗ねてんだ本当に。

「……ったく、『馬鹿』だとは思ってたけど真正の『馬鹿』なのな。
 せいぜい、たっぷり後悔しろよ? オマエが消えなきゃそれでいい」

撤回する気はない、ときた。
なら、後悔してもらうしか無い。
後悔して、捨て去るならそれもいいだろう。

「ま、こっちも『馬鹿』がいる、くらいは覚えておくよ。
 『馬鹿』が発狂しても始末に困る。
 あと、どっちにしてもアタシはあんま危ない真似する気もないよ。」

やれやれ、と肩をすくめた。
当面はまあ、そういうものか、と思っておくしか無い。
それ以外に処理のしようもなさそうだ。


「……というか、"未来"はいいのか?」

ふと、思い出したように聞いた。

山本 英治 >  
「子供で悪ぃかよ……」

ああ、もう。全く格好つかねぇ!!
堀の中で站椿功するついでに師父に女の話でも聞けばよかったぜ……

「信じた未来に後悔しねぇ……ってかなんだ消えるって…」

全く、動ける気がしない。
怪我の痛みとかじゃなく。

「そうか? じゃあ良かった………」
「俺ももう、可能な限り無茶はしねぇ……」
「人に無茶すんなっつって自分から危険に突っ込んだらアホだ」

 
「未来は親友だよ」
「確かに俺から勝手に好きだったが、もう死んだ……」

「死んだんだよ…俺の初恋は終わってしまったんだ」

この恋は、失恋で終わっても。
死別で終わって欲しくはなかった。
窓から外を見た。この位置からは、何も見えはしない。

「てか、俺の髪臭くなかったか? 俺としたことが……」
「好きな女に抱きしめられるんだったら、這ってでも風呂に入るべきだった」

冗談を言って笑った。

園刃 華霧 >  
「まー、なンだ。りおちーもそうだし、さらっちもそう。
 クソガキジェー君に、当然、エイジもそうだし……チェルちゃんも。
 みーんな、無茶ばっかすんだからさ。」

本当に、困った連中だ。
リンリンだって、現場じゃないけど結構無茶してるタイプだろうアレ。
……マコト先輩も、まあ無茶してるっちゃしてるんだろうな。

「まったく、優秀なアタシを見習ってほしいね。
 ゆっきーとか。」

ヘラっと笑う。
もしそんなことになったら大惨事な気もするが。
まあ気にしてはいけない。とりあえず今は。

「……そっか。"未来"とは折り合いついたんだな」

それは少し気がかりだった。
自分が掘り起こした傷。
突きつけた現実。
そこに決着がついたなら、まあ喜ばしい。
自分の過ちは回収していかなければ……


「ン―……まあ、2m離れろって感じではなかったかな?」

臭いか臭くないか、といえば。
むしろ染み付いたタバコのニオイのほうがクサイのでは?という気もする。
まあ、そもそも風呂に入る習慣がついたのは最近だしあんまりソコは気にしないのだが。


「ああ、で。リンリンに連絡、はもういいのか?」

にやりとして一応、聞いてやった。

山本 英治 >  
「無茶しないと守れないなら、みんな無茶しちまうのかな…」
「本当は守るべきものって、自分も含まれてるんだけど」
「結構……忘れがちだよな………」

カラカラと笑って。

「みんながみんな園刃先輩やゆっきー先輩になったら大変だ」

ああ、俺は今。生きてるんだな。
好きな女の隣で笑えているんだな。
自分の命を手放しかねないことは、もうやめなきゃな。

「……キッドのおかげだ」
「あいつに言われなかったら……今も引きずってた」

引きずって、思い出をすり減らすことを少なくとも俺は望まない。

「マジかー……マリーさん、俺の意識がない間も結構気を使ってくれてたんだなぁ」

マリーさん心底有り難し。

「あ、伊都波先輩に連絡を……」
「神代先輩にもできれば……」

包帯でスキー用の手袋みたいに膨れ上がった手をこすり合わせる。