2020/08/25 のログ
ご案内:「落第街-施療院」に山本 英治さんが現れました。
ご案内:「落第街-施療院」に雨見風菜さんが現れました。
■山本 英治 >
手も治った。膝も治った。
後は足の骨折が治るだけなのだが……
なんとも先は長い。
とりあえずリハビリを重点的に。
焦るな、必ず結果はついてくる。
遠回りをしても真実に近づくと決めただろう、山本英治。
ベッドの上で窓の外を見ている。
■雨見風菜 > 「えーと、こちらの部屋でしたね……」
落第街の治療院。
山本栄治の見舞いだと伝えて案内された部屋をみつけ、入室する風菜。
「英治さん、お加減如何です……か……」
一瞬硬直する。
見知った顔ながらアフロでないことに戸惑う風菜。
でもよくよく考えればあの維持の大変そうな髪型が入院生活で維持できるものでもないかと気を取り直し。
「失礼しました、お見舞いに上がりました」
■山本 英治 >
ドアが開いて、目を丸くしてから微笑む。
「あ、どうも雨見さん」
挨拶の後、ハハハと笑って両手を広げる。
「何のお構いもできませんで……というか、知らない人扱いされないの新鮮~」
「お見舞い、ありがとうございます。俺、嬉しいです」
柔和に笑って、足のギプスを指す。
「もうすぐ外れますし、書けるところあんまり残ってないですけど」
「落書きしていきます?」
■雨見風菜 > 「顔で覚えていますので。
いえ、いつもの髪型の印象が強いのはあるのですが」
苦笑しつつ『物体収納』しておいたお見舞い品……プリンやヨーグルト、カットフルーツなどの入ったビニール袋を出して机に置く。
「そのお怪我で無理しては駄目ですよ。
ますます完治が遠くなります」
それでも元気そうで良かった、と言わんばかりの安堵感。
もう少し早く来ていればなにか力になれたかも知れないが、そこのタイミングばかりは仕方ない。
「落書き……いえ、特に何も思いつきませんので結構です。
それにしても『全国大会優勝』なんて、一体何の全国大会なんでしょうねこれ」
ギプスの主語不明の落書きに笑ってしまう。
■山本 英治 >
「なんと嬉しい言葉……!」
ぶわ、と両手で目を拭う大仰なジェスチャー。
そしてお見舞いの品が机に並べられると、再び目を丸くして。
「バーベキューの時も思いましたけど、面白い異能ですよね……」
「はい、ゆっくりリハビリしていくつもりです」
「みんなには……心配かけちまったからなぁ…」
目を細めて窓から外を見る。
蝉の鳴き声。
夏の日差しが目に見えた気がした。
「わっかりませんよね! 帰宅部? 風紀委員?」
「どっちも全国大会なんてないのですがー」
■雨見風菜 > 「印象が強いのはともかく、顔もきちんと覚えないとイメチェンなされたときに困りますしね。
英治さんのアフロはそれこそやりだすのもやめるのも中々決断力が必要かと思いますが」
大仰なジェスチャーに苦笑しつつ。
「いえいえ、こちらは異能ではなくて魔術です。
異能はこっち、『糸』の方です」
掌から見えやすい太さの赤い糸を出して。
とはいえ魔力を使っている本人以外から見ればあまり見分けはつかないのだが。
「そうですね、私も英治さんが入院していると聞いて心配しました。
でも考えてみれば、英治さんみたいに体を張る人が怪我をするのは当然のことでもありますし。
それに、お仲間の暴走を止められたんでしょう?
英治さんは立派ですよ」
もっと早く知っていれば。
先にもふいと思ったように、彼の治療に己の異能を使い、ここまで治療に時間がかかることがなかったかも知れない。
だがそれはもはや過ぎたことでしか無いのだ。
「エクストリーム帰宅部全国大会、とかでしょうかね。
もしくは違反部活摘発RTAとか……いやレギュレーションの統一無理ですね」
他人が分かるような分からないようなジョークを飛ばしてくすくす笑う。
■山本 英治 >
「イメチェンする気はなかったのですが……」
「意図せずして髪型を変えてしまいました……不覚」
口元を歪めて、いかにも苦渋の決断をしましたという顔。
「ああ、魔術? ああ、ああ、ああ………」
「魔術、それも空間魔術の講義取ってないんすよねー」
糸、か。なるほど、面白い異能だ。
自分の異能は怪力でーす、と簡単に説明して。
「ハハ……仲間の暴走を止めた、なんて広まってる時点で負けなんですよ」
「これだから俺はヒーローにはなれない」
「でも、雨見さんみたいな美人に立派と言われればウレシイ!」
彼女のジョークに口の端を持ち上げてニヒヒと笑い。
「エクストリーム帰宅。良いですね、きっと屋根とか飛ぶんですよ」
「違反部活摘発にRTAしたらクビが近いすねー、あっという間に悪は片付きそうですが」
可笑しい、と笑いながら肩を揺らして。
「…雨見さん、ここ結構危ないところにありますが」
「来る途中危ない目とか遭いませんでした?」
■雨見風菜 > 「入院生活ですし仕方ないですよ」
持ち込めるものには限りがある。
あんな維持の大変そうな髪型を入院生活でも維持しろという方が無理だろう。
「一般的な魔術は全く向いてなくて、基礎魔術すらおぼつかない有様で。
こちらと後もう一系統くらいしか使えないんですよね」
その"もう一系統"は自分からは明かさない。
明かしても先ず間違いなく"風菜の印象に向いていない"と言われそうだが。
「ヒーローもまた、仲間の暴走を止めることもあるのですから。
ふふ、美人だなんて、ありがとうございます」
英治の褒め言葉に気を良くする風菜。
こうしていれば清楚な少女なのだが。
「吹き飛ぶ屋根に乗って距離を稼げば芸術点入りそうですね。
違反部活RTAは何をしてもいいというわけではないんでしょうね、風紀は大変です」
確かにここは落第街、普通ならば危険地帯の認識だが。
「いえ、全然大丈夫ですよ、歩きなれていますので」
■山本 英治 >
「入院生活ってのは、なかなかしんどいです」
「患者もこれなんだから世話を焼いてくれる人らの負担を考えるとなかなか…」
苦笑して髪を撫でる。
アフロがない。落ち着かない。どうしようもない。
「へえ? 俺も魔術は本を片手に火の粉生み出すので精一杯でした」
「魔術適性っての、欲しかったですねぇ」
腕組みをしてしばらく考えていた。
自分に雨見さんに褒めてもらう資格があるのか、と。
しかし、相手の言葉を放り出して謙遜するほうが無礼。
と、結論は出た。
「……それじゃ、俺もヒーローということで」
「いやいや、雨見さんは美人ですよマジマジ」
カットフルーツに手を伸ばし、パイナップルを一口。
ああ、美味しい。果物はやっぱりいいものだ。
「芸術点なんて胡乱な言葉が出るようになったらもうなんでもありですね…!!」
「風紀には風紀なりの正しさがありますから……」
怪我をしてしまって、痛感したことでもあった。
本来なら、風紀相手に怪我もせず相手を止められればよかったんだ。
だが、未熟なまま何もかも手が届くわけでもない。
「歩き慣れてる? そりゃ結構、ですが十分に気をつけてくださいねー」
いかにも注意をする風紀委員っぽい口調で言って。
可笑しそうに耐えきれずに笑い出した。似合わない。
■雨見風菜 > 「まあ、安静にしてしっかり体力つけて頑張って治しましょう」
やはり彼自信もアフロがないのは落ち着かないようだ。
「本を片手にしても火の粉も湿気も出ませんでしたからね。
『液体収納』ができたときには喜びましたが。
まあ、特定分野だけでも使えるだけありがたいでしょうね」
とはいえもう一系統使えることには風菜自身もまだ気付いていない。
切掛もない。
「ええ、英治さんもヒーローですよ」
言って、以前柄にもなくキレ散らかした友人を思い出す。
あまり話を聞かないが、元気でやってくれているならばいいのだけどと思いつつ。
「エクストリーム帰宅は胡乱以外の何物でもないと思いますよ。
風紀の正しさ……まあ、日本でいう警察のような組織ですしねえ」
仲間割れして浮足立っていると知られれば治安維持にも影響が出るだろう。
英治が何を考えているかをよそに風菜はそう考える。
「気をつけてはいますよ、気をつけては」
バイトや今回のお見舞いのような目的があるときに限るが。
むしろ火遊び目的でふらついているわけだが。
■山本 英治 >
「はい、わっかりましたー!」
ビシッと敬礼をして、おどけて見せる。
「そうですね……何か一つ、手につくものがあれば良いですよね」
「俺にとってそれが拳法であったように」
「なにか一つ、誇れるものが欲しいですよ」
口をへの字に曲げて。
「それじゃ雨見さん認定ヒーローは、現場復帰を目指さないとだ」
「負傷引退なんて御免こうむる」
人差し指を立てて揺らす。
そう、風紀委員は違反部活生だったら問答無用で殺していいわけではない。
少なくとも俺はそう思っている。
「風紀が物騒なこと繰り返してたら、誰も彼も怖がって頼ってくれませんよ」
「って……気をつけてるなら、オッケーです」
サムズアップ&暑苦しい笑顔。
■雨見風菜 > 「まあ、隣の芝生は青く見えるものです。
自分が何をできるかをきちんと見据えて受け入れて。
それを磨いて誇ればいいのですよ」
自分にできることは限られるのだから。
「それだけやる気に満ち溢れているのなら大丈夫ですよ。
説得して自首させるのもまた風紀の度量……
ダーティ・イレブンの記事のときの英治さんも、相手を殺してしまったと悔やむ英治さんも。
その度量の体現ではないでしょうか」
それはそれとして、恐れられる面も必要ではあるのだろうけども。
同じ人がそのどちらも背負う必要はないだろう。
■山本 英治 >
「一理ある」
含蓄のある言葉であることだなぁ。
自分に何ができるか。それは、技能だけの話じゃない気がした。
自分に何が成せるのか。その証明。
続いて彼女の言葉に、しんみりとした表情で。
「……雨見さんには、俺の弱さも見られちまってるからなぁ…」
「雨見さんには、強がれねぇや」
「本当は勇敢なままの……誰にも負けない拳士になりたかったんだが」
ふ、と微笑んで。俺みたいな甘い考えのやつがいることは。
マイナスだけじゃないと信じたい。
■雨見風菜 > 「私自身できないことは沢山ありますからね。
英治さんのような戦いができる能力はありません。
結局は、ゲームでもよくいう適材適所というものです」
風菜は戦闘という局面ではほぼ役立たずだ。
自衛ができるかどうか。
だが、己の異能でできることは間違いなくあるのだ。
それは、誰だって同じのはずだと風菜は考える。
「誰にも負けないなんて幻想ですよ。
負けてこそ得られるものだってあるのですから」
強さはともかく、弱さは案外と体感しなければわからないものだから。
■山本 英治 >
「俺だって弱点だらけさ」
「ナマコは食えないし、髭剃りしたらカミソリ負けしやすいし、ピエロが怖い」
本当か冗談かもわからないような言葉を織り交ぜて。
「わかってる、本当は無敗なんて物語だけの話で」
「誰もが足掻きながら少しずつ積み上げたものが」
「“学問”であり“武術”なんだろうな」
額に指を当てて。
「なんか、似合わない髪型をしてるせいか」
「似合わない言葉がどんどん出てくるな?」
■雨見風菜 > 「それは単に苦手というだけでは?」
まあ冗談なのだろうけれども、とくすくす笑いつつ。
「ええ、きっと。
そこまでのすべてが歩きやすい、都合のいい道でもなかったでしょうしね」
物事にはトライアンドエラーが肝心だ。
失敗したなら見直して、原因を直して再び挑む。
その積み重ねが、成功につながるのだから。
「似合わない言葉とは思いませんよ。
まあ、たしかに英治さんはアフロでないと、とは思いますが」
■山本 英治 >
「そうでした」
はははと笑ってベッドに頭を沈める。
笑いすぎて涙が出てきた。
「……先人は偉大だなぁ」
「それに恥じない行いが武術には求められるし」
「それは多分、学問でも同じなんだろうな…」
勉強はそこそこしかできない。
頭のいい人は、尊敬に値する。
そして、多分目の前の女性も……平和なインテリジェンスを持っているのだ。
「そーうー? やっぱアフロがソウルフルでいいかなー!」
■雨見風菜 > 「私達は、先人の歩んだ道を辿ってるわけですからね。
そして、新しい道を開拓して、次の世代へ渡していくんでしょう」
自分たちが何一つ疑問もなく使っているあらゆる物。
いや、物に限らず形のない定理や定義も、先人が作り上げたものなのだから。
「ふふ、『意図せずして髪型を変えてしまった』と悔やんでいたじゃないですか。
だとしたらやっぱり今の英治さんにはアフロが一番じゃないかと思いますよ」
■山本 英治 >
「やあっぱ俺もアフロが一番かな……」
枕に頭を沈めると、眠気が出てくる。
うとうとすると、頭を左右に振って。
「すまない、少し眠気が来たようだ」
「食べて寝るってのも、なんとも子供みたいだが」
「なぁに、あとで歯は磨くさ……」
くああ、と大欠伸をして。
失礼、と大真面目な顔で謝った。
■雨見風菜 > 「わかりました。
おやすみなさい、英治さん」
英治のそういった振る舞いに何一つ嫌な顔をせず。
「良い夢を、そしてお早い完治を」
そう言って、夢の世界へ旅立つ英治を見送るのであった。
ご案内:「落第街-施療院」から雨見風菜さんが去りました。
ご案内:「落第街-施療院」から山本 英治さんが去りました。