2020/08/29 のログ
■月夜見 真琴 >
「――……ありがとう」
自分の想いが、そうして。
受け入れられたことに、体を脱力させた。
安堵したように。ひとときの癒しを求めるように。体を重ねる。
縋るように抱きついた。
「失わせないから」
それが誰の望んだ形ではなくても。
成功。成就。再起。再生。復活。――栄光、勝利。
そんな結末に溺れさせはしない。
一体"誰"に想いを伝えたのか。
園刃華霧に想いを伝えるというのがどういうことなのか。
理解させてやらねばなるまい。
――報いは受けてもらう。
「…………いっしょに、いようね」
鍵のかかったこのアトリエで。
時間の停まったままの女はそうささやいた。
■園刃 華霧 >
「……」
余計な言葉は、不要だと思う。
余分な行動は、無用だと思う。
不用意な気遣いは
きっと
してはいけないことだと思う。
それでも――
アタシは 園刃華霧として
そのばかぎりだろうと
「……うん、いっしょ、に」
抱きしめ返して
相手の頭を撫でようと
それが禁断の行為だとしても
自分は曲げられなかった
「……ありがと」
■月夜見 真琴 >
「むかし、ずっと山にのぼってた。
――比喩だけれど、ね」
暖かさを分け合う。
いや、違う。いま、彼女からもらっていた。
だから自分は彼女に与え続けなければいけない。
"愛"にさらされ、"恋"に殺されるかもしれない少女を。
自分の真実を、いくらか伝えて呪った少女を抱きしめる。
「補陀落を登りきれば終わるんだと思ってた。
修験道を踏破して、頂きにたどりついたとき」
訥々と語りながら、薄闇のなかでまどろみに触れる。
今日は、自分がこの娘に抱かれて、眠る番なのか。
「――そこには"空"があって。
引き返したんだ、その先にあるものなんて欲しくなかったから。
人生を賭ける価値なんて、ないと思った」
夢の内容を語るような、おぼつかない言葉で。
「この島に来て、その判断は正しかったと思った。
いわれたよ――"選んだ道を正解にしろ"、って」
すがりついた。護るものなき裸の心で。
「華霧も、そうすればいい。
正しくて格好良い、強い生き方なんてしなくていいから。
たとえ周りがどれだけあなたのことを、指差し笑っても。
不格好な歩みを、"園刃華霧らしくない"なんて言っても。
その選んだ道こそ正解とすればいい。
無粋な奴らは、黙らせてやる――護ってあげる。
"なくならないもの"でいてあげるから」
■園刃 華霧 >
「……そっか」
此の人は『選択』した。
トゥルーバイツの面々のように。
あかねちゃんがみんなに望んだように。
「むつかしい、ことは、わかんない。
マコトが、なにか頑張ったのだけは……わかる」
真の理解なんて、必要はない。
それがどんな選択だろうと
自ら『選択』したのなら……
「……正しい、とかただしくない、とか。
アタシには、よく、わかんない。
アタシが言えるのは」
自分に言えるのはたった一つ。
「マコトが『自分』で『選択』した、なら。
それが、なんだって……認める」
たったそれだけのこと。
正解かどうか、なんてそんなあやふやなものは
"どうでもいい"。
それにしても
「アタシ……?
……正しくて……格好良い、強い……生き方……?」
どういう ことだろう
だって いつだって アタシは
したいように してるだけ なのに
正しい、なんて考えたことも
格好いい、なんて思ったことも
でも……それは強い、のかもしれない
それだって 別に したいように して ……
「大丈夫、したいようには、してるから」
心配は、考えすぎだと笑った
■月夜見 真琴 >
「 」
ささやいて。
どこか気恥ずかしそうに。
「ありがとう、華霧」
正解は――結局のところ。
外から視た正否などではなく。
"自己満足"の領域だ。
それでいい。勧善懲悪など、この世界の彩りではない。
白か、黒か、ではないのだ。
「――あんな顔をみせてくれていなければ、
そうだな、って言ってあげられるんだけど」
園刃華霧の歪み。空白。欠落。
それを見せつけられて、目の前の少女の"強さ"を信じろというのは、
むずかしい話だった。考えすぎであれば、それに越したことはなくて。
「……華霧。 それだよ。 "大丈夫"。
心配しすぎなら、それでいいけど」
わすれないで、とささやいた。
麻薬のようなその言葉にこそ、月夜見真琴は揺らぐのだ。
「自分も、あなたも、だれもかれも。
取るに足らない弱い存在なんだ――だから」
体をかさねる。つかれた――とても。
吐き出した分、すこしだけ、ほんのすこしだけ軽くなった気がする体を。
「いっしょに、ねむろう………」
今日は、こちらから求めた。
傷口を擦り合うような歪な同居生活の一幕として。
■園刃 華霧 >
「……ん、そっか。
そうだな。それは確かに。
"正しかった"んだろうな。」
そうか、と納得した。
それだけの強い思いを乗せられたのなら、
本当に羨ましい限りだ。
勿論、そんなことは口には出来ないけれど。
「……?
そう……?
そう、か……うん。
覚えておく。」
やや納得できなくはあったが、それでも
相手の心配が"本物"なのは分かる。
それを無下にするような精神は持ち合わせてはいない。
「弱い、存在――か」
言われた言葉を繰り返してみる。
思い当たるところはある。
レイチェルもマコトも
あかねちんだって……
……そういうもの、なのかもしれない
「……うん、ねよう」
求められれば……それを返した。
■月夜見 真琴 >
「なんだか、なんだろう」
穏やかに眠る段になって、目を閉じたまま。
「すこし、はずかしい」
少しずつ意識は闇に呑まれながら。
ぽつりと呟いた。何気なく、無防備に。
重ねた手に力を込めて、繋がるというには、ずれた心を擦らせる。
互いに痛みを見せ合う感覚は、
それこそ、恋人という響きをもとめるには、痛ましい関係に思えた。
だから違っていられる。
「あの夜のあなたも、こんな気分だったのかな……」
ごまかすように、皮肉と誂いを挟まずにはいられなかった。
横目に視た炭酸はしゅわしゅわと抜け出て切っていた。
「かんがえよう、これから……」
せめても痛みを誤魔化すために。
「………おやすみ」
■園刃 華霧 >
「恥ずかしい……
ああ……」
そう、か。
そんなこと、感じたこともなかったな。
そんな気持ち、もってもいなかったのかな。
どうなんだろう?
ああ、それにしても
こんな風に 誰かと一緒に寝るのも
あまりない 機会だ
「うん……かんがえよう。
いっしょに……」
段々と眠くなってくる
身体が、少し丸まって……
「……おやすみ」
ご案内:「真琴の私室」から月夜見 真琴さんが去りました。
ご案内:「真琴の私室」から園刃 華霧さんが去りました。