2020/09/01 のログ
ご案内:「真琴の私室」に月夜見 真琴さんが現れました。
■月夜見 真琴 >
融けた砂糖のような夢が終わって――。
見慣れた天井の薄蒼い色は、カーテンから溢れる朝日を受けたゆえ。
静かな空調の音と、時計の針の音。
そして餓えた獣のような荒々しい呼吸が間近に聞こえた。
それが自分のものだと気づくのに、そう時間はかからなかった。
「あ…………」
無意識に、指先を首元に這わせる――火照った肌には傷ひとつない。
からだのいたるところ、あるはずの、あってほしい傷は存在しない。
あの光景が夢であったことを裏付けるばかり。
気だるい身体を起こしたところで、泣いていることに気づいた。
■月夜見 真琴 >
「 」
舌にのせればマラスキーノより甘いその名は、
呼びかけてもこたえるものはなく、
あれが現実にも存在すると思うのはあまりに夢想的だ。
「 ………」
しかしあの少女の面影こそこちらへ翳された手であるなら。
そこに付随した過去の色を受けても、あわれみが芽吹くと同時に、
おぞましく蜜を滴らせる毒花を、むねのなかで育ててしまうような……
決して太陽になれない女にも、それをとることができるのだろうか。
その穢れた内面を打ち明ける決心はいつかつくのだろうか。
……自分から翳さなければいけないことくらい……。
「……華霧、かえっているかな……」
しばらくそうして落ち着いたあと、自分がやらなければならないことを思い出す。
"正義"のために、守らなければいけないものがある。
風紀委員会は善人の集まりではない。
正しく在ろうと、善人たろうとするのは、個々人の勝手だが。
百人百様の正義があり、それが褒められた形でなくとも、
月夜見真琴は、今はまだ、どうにか、風紀委員である。
■月夜見 真琴 >
"求めないものにこそそれは姿をみせる"という実感を、
月夜見真琴は"神秘体験"によって獲得している。
眼を閉じて、まぶたの裏に追想をえがく。
(ああ――でも)
それでもどうせ鎖に繋がれるなら。
(もっと、視ていたかったな……)
あの城に――。
吸血鬼に魅入られた娘の在り方など、
如何な異名で呼ばれようとも、類型を逸脱するものではなかった。
重たい身体を引きずって、身体が求める冷たいシャワーを浴びにいく。
――。 今日は夏季休業明けだ。明け……。
■月夜見 真琴 >
休んでしまおう。
同居人には妙な顔をされそうだが。
成人したら、という口約束だけで封をされた瓶がある。
朝から飲むなんて世捨て人らしい振る舞いだ。
そんな気分なのだから、しょうがない。
あのカウチに座って、葡萄酒を楽しみたかった。
ご案内:「真琴の私室」から月夜見 真琴さんが去りました。