2020/09/28 のログ
ご案内:「風紀委員専用訓練フロア」にレオさんが現れました。
ご案内:「風紀委員専用訓練フロア」にレイチェルさんが現れました。
■レオ >
「……難しい、話ですよね。
僕は…自分の事、正直好きじゃないんです。
どうしようもなく、自分の事を思えば思う程に許せなくなる。
『自分を大事にして』と言われても…即答できなかったんです。
どうしようもない人間なのに、自分を大事にしていいのか…って。
…今は、大事に想ってる人がいて……でも自分を大事にできる自信がないから、彼女が傷つかないように、彼女を気づ付ける事がないように……その事は、言わないようにって思ってました。
…言ってしまったんですけどね。
だから……」
だから、出来る気がしなくても、出来るようにならないといけない。
そうしないと彼女と共に居る資格が、ないから。
あの時”我儘”を言ってしまった自分の……義務なのだから。
少なくとも、レオ本人はそう思っているから。
「……沙羅先輩は、島に来る前に似たような方に会ってきたから、余計に。
不死者…と言えばいいんでしょうか。
僕が島に来る前にやっていた仕事は、そういう者たちと戦うのが基本で…
…その分彼らが苦しむ所も、見ていたので。」
不死の者を見続けて感じ続けたのは、憧れよりも、憐憫。
死なぬ故に社会に適合できない者。
長寿故に想い人に先立たれる者。
生きている故に過去に囚われる者。
死なないからこそ、忘れてゆく者。
どれも見ていたから。幸福よりも…不幸を、見て来たから。
■レイチェル >
「ああ、簡単な話じゃねぇ。
だから向き合うことを続けなきゃいけないんだ」
そして、続く言葉にはレイチェルは少々顔を顰める。
『どうしようもない人間』という言葉だ。
成程、『誰かの為に自身を変えたい』という想いに似通ったところはあれど、
根底的なところで今の自身とこの青年の思考は決定的に異なる事実に、
レイチェルは、はたと気付いた。
彼が『神代 理央』と似通っている点は、
何も自らをシステムの内に置いている点のみに留まらない。
『神代 理央』が語った想いを受け止めたレイチェルは、
その考えに至る
己に対する価値観の在り方こそが、
彼と神代 理央とを重ねる一つの通有点に他ならないのだろう。
――で、あれば、今。自分が抱く『己への価値観』とは。
己は、己をどう捉えるか。
胸裏に一瞬浮かぶ思考に省察を深めつつ、
レオが語る想いをレイチェルは呑み込んでいく。
「ま、もしも誰かに想われてるのなら……
『自分なんかどうしようもない』なんて思っちまうのは。
況してや、そいつを相手に向けて放っちまうのは……な」
己の愚行を振り返りながら、
レイチェルは奥歯を噛みしめる。
己を否定したその先、必然的に起こした行動は、
大切な人を傷つけてしまった。
否定する牙を奪われた獣は、何処までも無力だった。
だから間違いを犯した。
ならば、この場で行うべき――否。
行いたいことを、行わねばならない。
レイチェルは、ただ一直線にレオを見据える。
「オレはな。
お前のことを深く知っている訳じゃねぇ。
今こうして少しずつお前のことを知りつつある段階だ。
けどな、面と向き合って話す中で、
お前がオレに伝えたことに対して、オレの想いを
伝えることはできるぜ。
しけた面しても、
それでも一生懸命に『不幸にしたくない子』に、
『自分を変えたい想い』に、向き合おうとしてる。
そんな姿勢を見せてくれたお前の価値を、
オレは『信じたい』と思う。
オレは、そういうお前の在り方を応援したいと思う。
初対面でも、同じ風紀の後輩なんだ。
そのくらいの応援《おせっかい》は許してくれよな」
そうしてレイチェルは、にっと笑う。
戦場に身を置かぬ己の価値を疑う『神代 理央』にも。
己を許せずその価値を疑う『レオ・スプリッグス・ウイットフォード』にも。
変わらず、レイチェルはそう口にする。
己の価値を疑う者に、否定《ほうよう》を。
気に食わないものは、否定する。今は、単純な否定から一歩を踏み越え、その先へ。
それが、今の『レイチェル・ラムレイ』の在り方だから、
否定と同時に、真っ直ぐに手を翳《のば》し、そして――手を広げる。
それは、時計の針と共にその形を変えようと、紛うことなき彼女の柱、
レイチェル・ラムレイの力の根源《ルーツ》であるが故に。
「そうか、不死者……不死者、ねぇ。
沢山向き合ってきたからこそ、沙羅への想いも強いんだな」
頷き、レイチェルは彼の言葉を呑み込む。
似た境遇の者を多く見知っているというならば、
沙羅への想いが一段と特別なものとなることは、合点がいく。
■レオ >
「…ありがとうございます。」
己を『信じたい』と言った先輩に小さく、微笑んだ。
正直、その言葉すら。
自分を信じられる事すら、自分の肌を焼く酸のように苦しさを感じてしまった。
『信じる』という言葉は、期待や、願いだ。
自分に自信がない。自分という存在が脆く醜い。そう思っているからこそ…その期待、願いを、汚してしまわないか、壊してしまわないか、ひどく不安になってしまう。
前を向けられず、背に負ってしまえば、それは全て”重荷”に変わるのだろう。
自分を大事に出来ない人間が、自分へと向けられる善なる意志を……素直に受け止められる訳など、ないのだから。
自分へ向けられる刃にこそ心が安らぎ、逆に自分に向けられた善意に心を傷つける。
そんな異常性。反転しきった感覚を戻すのは、容易ではない。
だから、こそ。
目を逸らす時間なんてないのに、見ない事は……
そのままでいいという”怠慢”を許すのは、出来ない。
してはならないと、理解している。
「レイチェル先輩。
ちょっと……”我儘”で嫌な話、してもいいですか?」
”我儘”は…この島に来てしばらくする迄、言えなかった。
それを言う資格がないから。
自分が大事に想えないから。
自分の心も、大事ではないから。
だから、我儘を……自己を通す事を、封じていた。
今はほんの少しだけ…違った。
あの白い髪の先輩に出会って。
あの金の髪の先輩に出会って。
あの不死者の先輩に出会って。
あの一人の女の子に出会って。
”誰かを想わずにはいられなくなって”
”その変化を、選ばないといけないと思ったから”
■レイチェル >
「オレの言葉、背負うのが苦しけりゃ、
今は正面から受け取らなくていい」
――それでも、いつか受け取ってくれれば。
小さく微笑むレオに、軽く笑って見せるレイチェル。
自分の言葉一つで『自分を信じることができない』
考え方が変わるのなら、そんなに楽な話はない。
彼には彼の、積み重ねてきた人生があるのだ。
その中で刻まれた歳月が、彼の価値観を築き上げている。
それはどんな形であれ、尊重されるべきものだろう。
しかし、その価値観が彼自身を、そして彼が大切に想う人を
傷つけているのであれば。それは、気に食わない。
だからこそ、レイチェルは信じて言葉を渡す。
『重荷』が、いつか一つの『支え』となれば、と。
「言うだけ言ってみな、そういうの受け取るのが先輩ってもんだからさ」
遠慮すんな、と。
レイチェルはそう口にする。
■レオ >
『言ってみな』と、我儘を”許諾”され、そっと視線を落としてから、少し遠くを眺める。
模擬戦をする先輩達を見ている訳ではない。
どこか遠く。きっと、目の前にある事を、見ているのではない。
「……神代先輩が許せないんですよ。
多分…怒ってるんだと思います。」
拳を握って、そう口に出した。
『許せない』
『怒っている』
と。
「……神代先輩は、何で…沙羅先輩と付き合っているんでしょうか。
いえ…嫉妬では、ないです。
神代先輩といっしょにいて、沙羅先輩が幸せであれば……それはとてもいい事だと思います。
けど、だからこそ。
神代先輩の事が許せないんです。
沙羅先輩に、想われていると知っていて。
自分も、沙羅先輩の事を想っているのに。
それなのに沙羅先輩の事も、自分の事も、大事にしない。
僕には、そう見えてしまっている…」
『そしておまえがもし、大切に想われることがあれば、
おまえみずからのことも、大切にするように』
胸に刺さった、言葉。
自らが変わらねばならないと思う切欠となった言葉。
自分がそう思っていたからこそ、心惹かれた相手になんでもない者として扱われたくて。
しかし彼女の事を知ったからこそ、それを抑えきる事が出来なくなって。
変わる必要があると強く思った、その切欠の言葉。
「………不死者にとっての死は、自分が含まれないんです。
ただ、死を見るだけ。
自分はどうしても、そちらに行けない。
この世界には色んな宗教があって、その多くでは死んだあとの世界とか、転生とか……”死んだ後の希望”が、教えとして存在します。
黄泉の国、天国、輪廻転生、冥府……
不死者は何処にも行けない。
”終わる事を望めない。”
次は、終わりは、何時、来るのか。
長くて100年そこらで終わりが来ると決まってる人間(僕ら)と違って、その終わりが何時くるかも分からない中で……大事な人が出来て、大事な事が出来て、それら全部が、何時か自分の傍からなくなっていって……
それを……乗り越えてくれとか、耐えてくれとか…何時か通り過ぎると言うのは…
僕にはあまりに、酷に思えてならないんです。
だから、こそ…」
不死の者を。沙羅先輩を。
大事にしてほしい。大事にするために、自分を大事にしてほしい。
なのに……
「……神代先輩、退院してすぐに落第街にいったんですよね。
今起きている朧車の怪異退治にも、参加しているって…聞きました。
…なんで」
拳を強く握る。
言葉が震える。
あぁ…
やっぱり”怒っている”んだ、僕は。
「”なんで、あの人はみんな不幸にするんですか”」