2020/11/25 のログ
神代理央 >  
「生憎、実家の所得が高いもので。支払うべきものは、きちんと支払っていきますよ」

何せ、金だけは余っている様な生活を送る此の頃。
とはいえ、本格的に彼女への疑念を晴らそうと言葉を紡いだものの――

「………逃げられた、かな?まあ……良い。
こんな出がらしの様な私でも、未だ気に掛ける様な誰それがいるというのは……何ともまあ、笑える話だしな」

立ち去っていく看護師。
特に留め置く事も無く見送った後、己にまだ何か利用価値などあるのだろうかと、一人、小さく苦笑い。

後程現れた本物の『井上』看護師には、適当に誤魔化して事情を伝えながら。
再び、ベッドに身を倒して物思いに耽り始めるのだろうか。

ご案内:「常世学園付属総合病院 VIP個室」から神代理央さんが去りました。
ご案内:「常世学園付属常世総合病院 VIP個室」に神代理央さんが現れました。
神代理央 >  
ぼんやりと瞳を開ける。
時間間隔の消え失せた意識で部屋に設置された豪華な柱時計に視線を移せば、示す時間は放課後の遅く。宵闇の迫る頃。
といっても、冬の足音が大分近付いたこの季節では、外はもう真っ暗だろう。
今頃、警邏部は夜間のシフトの打ち合わせでもしている最中だろうか。

「……煙草、吸いたいな」

病室、かつ病院という場所では中々叶わぬ願いではあるものの。
ぽつりと零した言葉は、随分と即物的な願い事だった。
我ながら、暢気なものだと溜息交じりの苦笑い。

神代理央 >  
届けて貰った風紀委員に支給されるタブレット。
開いてみるが、今のところ己宛のメールや連絡事項は無い。
処遇を決めかねているのか。はたまたそれどころではないのか。
恐らく、前者ではあると思う。
学園祭が迫っているとはいえ、今のところ風紀委員会が大きく動く様な事も無い。

「……取り敢えず、アイツらが風紀を放逐されていないだけ、マシというものか…」

己の率いた猟犬達。
元違反部活生のならず者。
力と富で屈服させていた、野良犬達。
彼等が路頭に迷う様では本末転倒かと危惧していたが、処遇を決めかねている間は取り敢えず待遇については現状維持が保たれているのだろう。

「……連中にも、新しい寝床と居場所を探してやらねばならんな」

よいしょ、と身を起こしてタブレットを操作しながら。
鈍く響く鈍痛にちょっとだけ顔を顰めて思案顔。

ご案内:「常世学園付属常世総合病院 VIP個室」に刀々斬 鈴音さんが現れました。
刀々斬 鈴音 > 「やっほー部長元気!?鈴音がお見舞いに来たよ!!」

制服に身を包んだ一人の少女が足で病室の扉を開けて現れる。
両手に大きな袋を持っているとは言え行儀がいい行為とは言えないし声も病院にふさわしいものではない。
だがここはVIP個室病院では静かにという常識には囚われない場所。

「あっこれ特務広報部の皆からのお見舞いの花ね!」

鉢植えに入った花を机の上に置く。
通常鉢植えに入った花は根付く、寝つくという事で良くないとされている。
だが特務広報部員たちのゆっくり休んで欲しいという優しさが現れていると考えればまあ……まあ……

「あとは……果物とかもあるからね!!」

神代理央 >  
ノックの音、したかな?
と首を傾げたくなる様な勢いで現れた少女。
やっほー、という掛け声交じりの挨拶も、此処病院だぞ?と小言を言いたくなる様な。
とはいえ、此処は通常の病棟から離れたVIP個室。
見舞客が多少騒いだところで、それを咎めるのは部屋の主くらい。

ぱちくり、と瞳を瞬かせた後。
訪れた少女を驚いた様に見つめているだろうか。

「……あー…ああ、ありが、とう。
いや、まさか、お前が見舞いに来るとは思ってもいなかった」

割と正直な感想。
というより、刀を餌に半ば強引に特務広報部へ引き入れた彼女は、己の事を多少なりとも恨んでいるのではないかと思っていたのだが。

「それに…見舞いの花?鉢植えという選択肢は兎も角、アイツら、見舞いに花を寄越すなんて気の利いた事、出来たのか…」

日下先輩からは、嫌味を兼ねた見舞いで鉢植えを寄越した事があったが。
隊員達は、鉢植えが嫌味というか演技が悪いものだとそもそも知っているのだろうか。

何にせよ、本当に驚いたと言わんばかりの表情を浮かべながら、取り敢えずはベッドの近くにある椅子――勿論、本革製――を、彼女に勧めるのだろうか。

刀々斬 鈴音 > 「一応、部長だし……あと人斬れないから退屈だったし。
 あっ…別に部長の事、心配してたわけじゃないんだからね!」

恐らく二番目が本音。
斬る相手を理央に委ねているし、それを除いても今、特務広報部に所属しているものが落第街に立ち入るのはあまりにも危険。
あまりにも憎しみを買いすぎている。

「違反部活にいた人も色々いるからね。
 この花を選んでた人も凄い笑顔で部長によろしく(でも俺が選んだとは言わないでくれ)って言ってたよ!」

まあ、好かれていない事は確かだろう。

「よいしょ……リンゴ貰っていい?」

勧められた椅子に座れば持ってきた果物を自前の刀で剥きはじめる。
同じ細さの皮が垂れ下がっていく。

「特務広報部これからどうなるの?公安と戦うの?」

神代理央 >  
少女から投げかけられた言葉に、小さく苦笑い。
まあ、ざっくらばんな本音を出して貰えるだけマシ、というものか。

「……退屈、などと言うものじゃない。
お前が無造作に人を斬るなら、また風紀の精鋭がお前を追い詰める事になるのだからな」

特務広報部は、謂わば少女にとっての枷。
その妖刀を無造作に振るう事を封じた鎖。
とはいえ、その手綱が絞められた儘ではさぞ退屈だろうと理解は出来るのだが。

「……ク、ハハ。ああそうか。
いやなに、分かっていて選んだのなら重畳。
それくらいの気骨がある方が、表でも上手くやっていけるだろうし。
…ああ、別に構わない……というか、器用なものだな。
普通は、果物って刀で斬る物じゃないと思うけど」

と、牧歌的な会話を続けていたのだが。
彼女から投げかけられた問い掛けには、数秒の沈黙を生み出す事に成る。
規則正しい電子音だけが響く室内で、少し言い淀んだ後、静かに口を開く。

「……公安とは、戦わない。そもそも、風紀と公安は共に島の秩序を守る為の組織。本来は、味方同士なのだからな。
それでも、私があの公安の剣客との戦闘に至ったのには色々と理由はあるが……」

「……そうだな。特務広報部は、少なくとも私が退院するまでは活動停止だ。何せ、公安からの訓告が来ているからな。
解体、という事にはならないだろうが、暫く大人しくしている必要があるだろう」

刀々斬 鈴音 > 「大丈夫、大丈夫!ちゃんと選んで斬らないと面倒になる事覚えたから!
 ……まあ、今は選んで斬ることも出来てないんだけど。」

不満げに口をとがらせながら話す。

「鈴音くらいになるとだいたいこれ一本で何でもできちゃうからね!」

綺麗に皮がむかれたリンゴには不思議と刀にこびりついた血は付いておらず、その匂いも移っていない。
……それでも常人であればそれを口に運ぶのは躊躇うだろう。

「そうなんだ……良かった。心配してる人もいたりしたから。」

表で生活できると謳い文句でやって来たのにもかかわらず公安と戦う事になれば不安にも思うだろう。
そして、自分たちの強大であると思っていたリーダー、鉄火の支配者の敗北。

「そうだよね、部長以外強い人いないもんね。
 鈴音とかあの槍の子とかはまだちょっと強いけど……。」

公安のあの男や、落第街の怪物たちと並ぶにはいくらか劣る。
特務広報部には個の戦闘力があまりにも足りない。

「もし、部長が死んじゃったら完全に終わりだね。」