2020/11/30 のログ
神代理央 >  
「ふむ?ああ、そう言えば自動開閉装置が故障していたみたいだな。
すまない、迷惑をかけてしまった様だな」

まさか、少女が原因で故障したなどとは露知らず。
建付けが悪かった、と告げる少女に申し訳なさそうに謝罪の言葉を告げながら、あとで担当者に文句でも言ってやろうと。
とんだとばっちりな担当者の明日はどっちだ。

「…今は、特務広報部というところで部長を勤めているよ。
といっても、今は活動休止中だから実質暇を持て余している様なものだがね。
霊的予防係……ああ、そう言えば朧車の報告書で名前を見たな。
御幣島先輩も、確か其処の所属だったか」

怪異も霊的存在も取り敢えず殴って砲弾を叩きこむ戦い方を好む己は、霊的予防係について詳しい訳では無い。
本庁の屋上のプレハブが駐屯所と聞いた事はあるが…本当なのだろうか。

さて、そんな会話を続けながら少女が取り出したものは……御世辞にも、調味料とか料理の材料にはなり得ないモノ。
思わず、顔が引きつる。

「……あ、ああ。分かった。待ってる。うん、待ってる」

ベッドに上がってきた少女。
豪華で巨大なベッドは、少女の体重を受け止めてもびくともしない。
揺らいでいるのは己の精神。征呂丸と消毒液は、絶対食べ物じゃない。いや、征呂丸はまあ、腹痛薬だから口にするものではあるのだが。

「つまんで……つまんで……?」

征呂丸は絶対そういう食べ方をするものじゃない。
というか、別に腹痛を患っている訳でもない。
少女の気遣いを無碍にするのもアレなので、取り敢えず一粒手に取って飲み込む。美味しくはない。
微妙な表情を浮かべている間に、此方に身を乗り出した少女。
止める間もなく――また滑ってベッドから落ちたりしたら大変だし――己の腹部に手を伸ばした少女が包帯の上から垂らす消毒液。

「………ああ、うん。なんだかきいてきたきがする。
痛みも、ちょっと楽になってきた気がするよ」

再生医療と魔術で傷口はとっくに塞がってはいるのだが。
消毒液をかける少女に渇いた笑みを浮かべながらも、取り敢えず効果が出たフリをしてみたり。
消毒液の独特な香りが、一気に腹部から漂ってくる。

「」

幣美奈穂 >  
「広報部・・あっ、壁新聞とかですね。
 わたくし、あそこにのるお仕事、よくしてます!」

提示版とかに張られる、清掃活動や芋煮会など。
そんなのにはきちんと参加する美奈穂です。
あれはお仕事じゃない・・と教えてくださる方は、まだいません。

「埜瀞ちゃんと一緒ですけど。
 少しお役目が違いますので、あまり一緒にお仕事はしないです・・。
 あっ、でも。お茶会は時々してますの!」

両手を合わせて、幸せそうにほのほのと伝えるのです。
美味しそう?に征呂丸を摘まむご様子にも満足です。
大体効く、万能薬だそうですし。
そして消毒液をとぷとぷとぷ。
吹きかける、とかいうレベルではありません。

さて、ここからが本番です・・。
包みから、すり鉢と擂粉木。まな板も取り出しておきます。
そして、紙包みたち・・身体が良くなりますようにと願をかけ乍ら作りました黒焼き。
きりっと真面目な様子で、神経を集中しますようにしまして紙包みを開けてはいれます。
すり鉢に入れまして、丹念に山椒の擂粉木でごりごりと細かくします。
煎じ薬にする為です。

「お家にありましたのとか、すぐに採れたので作りました!
 うなぎはちょっと高かったのでないのですけど・・。
 これが干し柿・・これがアカザ・・これが柿の種で・・これがヨモギ・・」

家で作っておいて紙に包んでおいたそれらをここで細かくするのは。
空気に触れて効能が下げず、できるだけよい成分が抽出できるようにと。
ごりごりごり。
干し柿は歯痛・血尿・痔に、アカザは口内炎・のどの痛みに効きます。
柿の種は夜尿症、ヨモギは歯痛・のどの痛み・扁桃炎・風邪の咳止めになのです。
他にもヒネショウガ(胃の痛み)、ジャガイモ(胃潰瘍・十二指腸潰瘍)、
イチョウの葉(ウオの目)、ミカンの皮(風邪のせき・たん・頑固な便秘)、
ナスのへた(口内炎・歯槽膿漏・気管支炎)、玄米(血液の浄化・食欲増進)、
ナス(利尿・せき止め)、キンカン(風邪・せき止め)、ノビル(扁桃腺炎)、
スズナ(下痢)、ヘチマの種(のどの痛み)、レンゲ草(やけど)、
色々と黒焼きを作ってきました美奈穂です。
どこのお加減が悪いか存じてませんが、大体なんかが効くでしょう!
黒焼き万能説です。
ごりごりごり。

「あれですかしら?
 ずばり、壁新聞を張ろうとして梯子から落ちちゃいましたとか?
 ちゃんと下で梯子を支える人がいないと駄目ですよ?」

先輩な美奈穂、後輩さんな理央お兄様に教えて差し上げるのです。
ごりごりごり。

神代理央 >  
「…あー…まあ、うん。そんな感じかな。
へえ、壁新聞に載る仕事……仕事…?」

そういう活動が行われている、ということは知っているが如何せん己からは随分と遠い活動だ。
落第街に施す様な任務は、特務広報部の真逆に位置するもの。
とはいえ、それを明確に告げて少女の純粋無垢な心に傷をつける訳にもいかず、曖昧な笑みで誤魔化す事になるのだろう。

「……ふむ。霊的予防係も色々と仕事があるのだな。
とはいえ、仲が良いのなら何より。
横の繋がりを大切にすることは大事だからな」

幸せそうに言葉を紡ぐ少女に、此方も穏やかな笑みと共に答えるだろう。
よしよし、と頭を撫でようと腕を伸ばしてしまうだろうか。
腹部が冷たくなるほど消毒液がかけられているのは……もうこの際、気にしない事にした。

一方、取り出される調理器具にはちょっと身構えてしまう。
まさか征呂丸をすり潰したりしないよな…みたいな。
と、それはどうやら杞憂だった様子。

「…へえ?所謂漢方薬、に近いものなのかな。
というか…随分と色々持ち込んだものだな……」

次々と取り出される紙包み。
少女がつらつらと説明していくそれらを、へえと興味深げに眺めているだろうか。
漢方や薬学の知識は限りなくゼロに近いが、それでも聞き覚えのあるものがちらほら。
寧ろ、少女の博識に感心したようにほうほうと唸るばかり。

「……いや、その…うん。
ちょっと色々揉めてね。お腹を刺されてしまったんだ。
でもまあ、もう退院出来るくらいには元気になったから、大丈夫だよ」

流石にそろそろ誤解を解いておいた方が良いかな、と。
ちょっとだけ眉尻を下げ、微妙にオブラートに包みながら。
自分が怪我をした原因を、そっと告げてみるだろうか。

幣美奈穂 >  
「お役目の日でないときは、いろんなお仕事しますの。
 この前は泥棒をしていたにゃんこさんを捕まえまして。
 あっ、でもその子も理由がありまして・・」

刑事課の仕事(のまねごと)をしたことを嬉し気にお話しします。
電子機器を扱えない美奈穂、提示版に張られるものは大事な情報源なのです。
あとは受付とか総務課とか、いろんなとこの雑用とか。

頭を撫でられますと、照れましたようにえへへっと少し頬を染めまして。
嬉しそうに甘えたお顔をするのです。

さらに、栗イガ(円形脱毛症)、クチナシ(めまい・ふらつき)、イモリ(精力剤)、
シジミの殻(百日咳)、梅干し(風邪・頭痛・冷え性・下痢止め)、にんにく(高度障害)、
梅の核(腫れ物)、鯛の骨(胆石)、昆布(せき・ゼンソク)、鮭(風邪の予防)。

「黒焼きです。
 黒焼きしたら、色々なことに効く・・そうです。
 んしょっ!」

そして今回の目玉の体長が20㎝を超えたオオカレエダカマキリ(切り傷・利尿・ゼンソク・いぼ)、と、
成貝の殻径が 8cm、殻高が20cmはあるアフリカマイマイ(いぼ・腎臓炎・神経痛・糖尿病)。
とある知り合いの伝手で手に入れました生きた大きなカマキリとカタツムリを黒焼きにしたものです。
姿がまだそのままのそれらを折ったり割って、すり鉢に入れましてごりごり。
これを手に入れる対価に、3年物の常世鰹節を渡したのです。
味が丸くて美味しい旨味がたくさんでる鰹節で、美奈穂も家では愛用している一品です。
・・ちょっと大きいのです。半分にしましょう。
包丁・・あれ?包丁どこかしら? 包みの中にありません。
・・探すと、下の方に、包みを突き抜けて下にベッドに刺さってます。
刃の方向が神代様の方に向きまして、その、股の間ぎりぎりに。

「お腹さされちゃったのですか!?
 あっ、もしかして《猫権を守る会》・・?」

なんか、そんな放送があったようです。
過激派がいるそうです。

神代理央 >  
「正しく、泥棒猫を捕まえた、という事だな。
お手柄じゃないか。そういったところから、街の風紀を守っていかないといけないからな」

少女の仕事っぷりと、その奮闘をニコニコしながら褒めてみる。
頭を撫でれば、嬉しそうに頬を緩めた少女に此方も思わず頬が緩む。
年下を相手にするのは苦手な部類かと思っていたのだが、案外そうでもないのかな、と思ったり思わなかったり。

「……ええと。その…何だろう。カマキリみたいなのとか、カタツムリみたいなのも…あー、入れるのか…」

食に頓着しない性質とはいえ、流石に姿そのままのソレを見ればmちょっとだけ顔が引きつる。
効果があるのは分かる…分かるんだが…。
と、何やら探し物をし始める少女。その視線の先を追えば、先程落ちて来た荷物から飛び出したであろう包丁が、己の股座ギリギリに突き刺さっていた。

「……危ないから、刃物の取り扱いには注意しような。
次から、病室に刃物持ち込めなくなっちゃうぞ」

めっ、と言う様な声色と共に、細心の注意を払いながら包丁を引き抜いた。
流石に、此処を再生治療の対象にしたくはない。

「……流石に、そういう組織と戦うことはないかなあ。
いや、その猫権を守る会、とやらが違反部活ならあれだけど…」

小さく苦笑いを浮かべて、首を振った。
そう言えば、そんな団体がテレビで見た気がする。

幣美奈穂 >  
「そうなのですけど・・その子、お友達が動けないから。
 食べ物を持って行ってあげてたみたいなんです」

20㎝もある大きなカマキリ、お顔も大きいです。
それが真っ黒な姿焼きになってます。

「はいっ、気を付けてます・・!
 危なかったですね!」

本当に危なかったのに、それに気づいていないので朗らかです。
果物包丁、きちんと手入れしてあるので切れ味抜群です。
抜かれた包丁を受け取りまして、カマキリさんをだんっ!かたつむりさんをだん!
カマキリの頭側と縦半分にしたカタツムリを、病室の机の上に飾っておきます。
そしてごりごりごり、と出来上がるのは黒い粉末。

そこに健康にいい牛乳、身体にいいレンゲ蜂蜜、一日一個のリンゴを包丁で細かく削り入れまして、あと美味しそうだった刻みキウイ。
身体を温める為に生姜汁と刻み鷹の爪を少々、濾しておいた置いたバナナペーストをぺいっと加えます。
ヨーグルトと豆乳で伸ばして、飲んでおくといいらしい葛根湯の粉末も加えておきます。
作っておきました緑のお野菜達や薬草の刻み煮込んだ緑色のお汁と玄米茶を水筒から注ぎまして。
味を調える為にお塩少々、お砂糖を小さじ三杯加えておきます。

良ーくかき混ぜますと。大きめ水筒に漏斗を置きまして。
ガーゼを敷いて、濾すのです。
出来るだけ細かくしたのできちんと抽出できて、結構たくさん出来ました!
水筒一杯にしましてから、残りは湯呑に。
・・んっ、丁度です!

「もしかして、犬権を守る会・・。
 あ、でもお腹を刺されたのだと・・刺さる・・蚊?蜂ですか?」

と、湯のみをそそっと神代様の前に。
・・小皿の征呂丸、あまり減ってないです。と、ちょっと見てしまいます。

たくさん入れておいた水筒は、これまた机の上に。

「治りかけが一番大事と言いますから。
 朝昼晩と3回食後で飲んでくださいませ!」

黒焼きの煎じ汁ですし、体にいい物を沢山入れましたので。
大体効くと思う美奈穂なのです。
・・入院が1日伸びるかもしれませんけど。

神代理央 >  
「…んー…まあ、猫の事情も色々あるだろうけど、人の物を買ってに持っていくのは良くないからね。
…ほんとに、猫に言っても仕方ないんだろうけど…」

と、困った様に笑いながらも、泥棒は良くないことだと諭してみせるだろうか。

さて、無事に男としての尊厳を守りつつ、少女の調理…調薬…?を見守るばかり。
流石に机の上にカマキリとカタツムリの残骸を置かれるのは、ちょっと困った表情を浮かべてしまうだろうが。

ついで投入されたのは、漸く馴染みのある食べ物、と言えばいいだろうか。
いっそそれ単品で欲しかったなあ、と思わなくもなかったが、流石にそれを口にする様な野暮な事はしない。

そうして、漏斗とガーゼで濾されたモノ。
まあ、健康には良いのだろう。健康には。
湯呑と水筒に分けられたそれを、これ大丈夫かな…と言いたげな表情で見つめる。
いや、流石に毒ではないから大丈夫なんだろうけど。具体的に味とか…。

「……人だよ。流石に、蚊や蜂に刺されて入院は…まあ、此の島だとするかもしれないけど。
戦闘でね。刀で刺されてしまったんだよ」

もう、誤解を解いておかないととんでもない理由で入院したと思われかねない。
流石に詳細は伝えずとも、取り敢えず入院の原因は告げておくだろうか。

「朝昼晩…か。ありがとう、きちんと、頂く事にするよ」

征呂丸の乗った小皿へ視線を感じるが…流石に推奨量以上の薬は…。
しかし、少女を悲しませるのは本意では無いので、おずおずともう一粒飲み込んだ。これは果たして健康に良いんだろうか。

幣美奈穂 >  
「凄かったですわ。
 机の下にこっそり入って、立ち上がってしゃっ!って盗ってました!」

熟練の猫泥棒の技でした。
でも、悪い事なのでしっかりめっとした美奈穂です。

「・・!
 あれですわね!。聞いたことあります!
 三角関係からのちじょーのもつれ!
 あとあと、どなたかのお嫁さん・・!」

はわわっ。
美奈穂、目をくるくるしてお顔が赤くなってきてしまいます。
お腹を人に刺されるなんて、そういうのお友達から聞いたことがあります!
具体的には聞いてませんが、美奈穂にはまだよく判らないオトナの世界にはよくあることだそうです!。
とんでもない方向に想像してしまった美奈穂です。
――後輩さんを助けます為に、お友達に相談しなくちゃ!
そう心にメモをするのです。

「も、も、もうそろそろ。
 面会時間終わりですから・・!」

あたふたあたふた。
すり鉢やまな板、使った水筒を片付け風呂敷に包みます。

「大丈夫です!
 わたくしが、どうすればいいか考えてきますから!」

あたふたしたままベッドを降りようとしましてずべしっ。
滑り落ちますけど。
直ぐに立ち上がって、あたふたと出ていこうとします。
でも出ていきます前に。

「きちんとお休みしてくださいませ!
 きちんと食べて飲んでくださいまし」

入り口でぺこり、頭を下げます。
・・机には黒焼きのカマキリの頭と、半分になったカタツムリ。
そして甘く辛く苦く青臭いけど絶妙に不味くはない汁の入った水筒。
そして再生治療にしかけた果物包丁が置かれていたのでした・・。

神代理央 >  
「待て。流石に私もそんな略奪愛めいた事はしないぞ。
そんな人の恋人を略奪する様な野蛮な真似を私がする訳ないだろう」

流石に、断固として否定した。
痴情の縺れで怪我をしただなんて勘違いされては困る。困るったら困る。
いやまあ、女性がそういう話が好きなのは分かってはいるのだが…!

「……まて、幣。勘違いしたまま行くな!
此の怪我は…ああ、もう!本当に戦闘による負傷だからな!
せめてその勘違いだけは解いていけ!」

出した時とは裏腹に、さささっと片づけを済ませていく少女。
…別に、どんな噂が立ったところで困る事は無いのだが、流石に尊厳に関わったりしそうだし。

「考えてくる…って。いや、本当にそういうのじゃない……
…って、大丈夫、か…?」

べしゃ、と滑り落ちた少女を気遣いつつ。
誤解、解けたかなあと不安は尽きない。
解けてない気がする。
後で解かなきゃ。

「……ああ、ありがとう。この薬も、ちゃんと飲ませてもらうから。
幣も、風邪とか引かない様にな。今日は、お見舞いありがとう」

何だかんだ、小さな台風の様な少女は、最後に太陽の様な気づかいを見せて立ち去っていく。
そんな少女を、小さな苦笑いと共に手を振って見送って――

「………一日三回、だったっけ、これ」

と、少女の置き土産を眺めつつ。
取り敢えず、湯呑を手に取って、その中身をちょっとだけ匂いを嗅いでみた後。恐る恐る口に含んでみて――

「…………不味くは無いのが、不思議だなあ…」

後程検診に訪れた看護師に、凄い目で見られながらカマキリとカタツムリの残骸を片付けられて。
VIPの患者ということで一応成分調査までされた水筒の中身は――まあ、飲んでも大丈夫だとお墨付き。
保存料が入っていないから、退院するまでに飲み切った方がいいよ、と御丁寧な忠告まで貰った少年は、その日の夕食後から早速少女お手製の『薬』を飲用することになる。
一口飲む度に、何とも言えない表情を浮かべる少年の姿が、病室にはあったとかなかったとか。

ご案内:「常世学園付属常世総合病院 VIP個室」から幣美奈穂さんが去りました。
ご案内:「常世学園付属常世総合病院 VIP個室」に幣美奈穂さんが現れました。
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