2021/02/13 のログ
神代理央 >  
「……そうか…そうだよな……うん、わかった…。
若く見える…若く見える……まあ、ここ、常世島だしな…」

理解の及ばない事実も取り敢えず受け入れる。
だって此処は世界の異能魔術その他諸々が集まった常世島だ。
自分とそう変わらぬ年齢に見える少女が、自分とそう変わらぬ年齢に見える少女の母親であることだってきっとある。
と、半ば強引に自己認識を植え付けて――渇いた笑みを、少女に向けるのだろう。

「…ああ、そうするよ…。しかしまあ、雪城……あー…涼子さんが人妻子持ちだったとはな…」

道理で、世話を焼くスキルが高い筈だ。
というか自分が雪城涼子に弱い原因も何となくわかった気がする。
母親、という存在に弱いのだ。
納得の色を浮かべつつ、そういえば雪城涼子の年齢は――と、それ以上考えるのを止めた。

「…まあな。世間一般で言う所の金持ち、という類だ。
だからどうした、という訳でも無いがね。あの店も、私の趣味と実益を兼ねたものだし」

と、一度店に視線を向けて、再び少女に視線を戻しながら答える。
甘い物が好きな自分が、お菓子作りが好きな人々の為に出資した。
それだけの事なので、彼女に向ける言葉には特に自慢だとか、自信だとか、そういう色は無いのだろう。

「……そうなのか。それなら、雪城家の役に立っているのだと、安堵させて貰おうかな。
といっても、お前はもう少し食べた方が良い気もするけど…」

「……涼子…さん、の作るお菓子は、確かに一級品だからな。
お前の言う通り、遠慮なく頂かせて貰うとも」

頭を下げる少女に、ぶんぶんと手を振って頭を上げる仕草をしながら。
にこにこと笑みを浮かべて、彼女の言葉に頷くのだろう。
……彼女自身は、もう少し沢山食べても良いんじゃないかな、なんて。小柄な体躯の少女を見下ろしながら思っていたりもするのだが。

雪城 氷架 >  
もしかして周りが気を使って突っ込まないだけで、普通じゃないだろうか…
そもそも、今まで誰にも母親だと思われてなかった?
なんて少女はしばし考える

そういえば人前でお母さんなんて呼んだ記憶はあんまりないし
そもそも寮では部屋も別、氷架自信も友達は多くない
なるほど…と腑に落ちた顔をした
衝撃を受けてしまったのであろう少年には

「……じゃあ、一応オフレコってことで。一部の人の夢を壊すかもしれないし」

意味深な言葉をくっつけて、そう言うのだった

「趣味と実益、ね。甘いものが好きなら確かに。
 ふーん。偉そうな喋り方するけど割と見た目通り甘いもの好きなんだな」

礼儀は知っているが弁えるわけでもなさそうな少女
理央の尊大な口調を偉そうと評した歯に衣着せぬ物言いである

「ん。お母さんも喜ぶだろうし。娘としてもありがたいよ。
 ──あ、うーん。私は、なんか何食べても育たないから。
 異能のセイ、かはわかんないけど…」

見た目的には中学生くらい、と言っても良い氷架
もっと食べたほうが、という言葉にはそんなセリフを返す
理央は知らないのである
この少女の胃袋が異能レベルで宇宙のようなものであるということを

「なんかお前の店って知ったら安心しちゃたな。
 今日は混んでるみたいだし、また今度見に来よっかな」

神代理央 >  
「……その夢は、早めに壊してあげた方が良いと思うな…」

雪城涼子は、その美貌と人当たりの良さから看板娘といっても過言ではない。
彼女目当てで来る男子生徒だって、きっと多い筈。
流石に子持ち人妻と明かす訳にはいかないだろうが――青少年達の儚い恋は、早めに何とかしてあげるべきなんじゃないかな、とか思う。
尤も、売上に響くので此方も口を噤んではおくのだろうけど。

「ん、まあな。甘い物は好物…というか、大好物の類だ。流石に健康面には配慮する様にしてるがね。
……ところで、見た目通りってどういう意味だ?」

偉そうな口調、というのは自覚があるからまだいい。
しかし見た目通りとはどういう事なのか、と。
ちょっとだけジト目で、彼女に視線を向ける。

「ふーむ…?異能による問題なら、専門の組織や病院に診て貰った方が良いとは思うが。
育ち盛りなんだ。ちゃんとした食事と栄養を摂取すべきだろう。
…まあ、涼子が母親ならその辺り何も心配いらないだろうが…先ずは、沢山食べる事だな」

彼女ならきっと、目の前の少女の健康面だって気遣っている筈。
異能による疾病の類だとしても、彼女が娘のソレを放っておくはずもない。
だとすれば己の考え過ぎか、或いは既にそういった機関に世話になっているのだろう…と結論づけるも。
それでも、気遣う様な言葉は投げかけてしまうのだろう。
――少女の胃袋の容量など、終ぞ知らぬ儘。

「そうだな。今日明日は恐らくこの店も戦場だ。
涼子も今頃は、店の中でてんてこ舞いしている事だろう。
私も顔を出そうか悩んでいたが…今日は止めておこう。
落ち着いてからの方が、良いかも知れないしな」

雪城 氷架 >  
「いやいや、夢は見続けてさえいればずっと幸せだから」

わざわざ周りが壊すことも…ない、よね?多分…

「ん?見た目通りって…そのままだけど。ほら、神代、割と女顔だし」

向けられるジト目を意に介した様子もなくそう言ってのけた
悪意や、誂う様子はないものの、なんというか正直である

「だいじょーぶ。お父さんが研究区の所長してるからさ。
 色々調べてもらったり…まぁ、卒業までになんかわかるといいなーレベルだけど」

そう言って、小さく笑う
父も母も同じ島で過ごしていて、両親も仲が良い
普段風紀委員として少年が接している落第街の住人達に比べると恵まれているような印象を与えるかもしれない

「ま、バレンタインだしな… あ」

思い出したようにポケットをまさぐると、出てきたのはチョコレート味の駄菓子だった
30円?ぐらいで買えちゃうくらいのウェファーチョコ

「やるよ。それじゃーまたなー」

それを投げ渡すと返事もまたずに踵を返し歩きはじめる
小柄なくせに歩くのは早い、少年が呆気にとられていれば、あっという間にその小さな背中は遠のいていった

神代理央 >  
「…いや、まあ。それは否定しないけど……。まあ、お前がそう言うなら黙っておくよ。早々公言する様な内容でも無いだろうし」

店の利益と、雪城家の安寧の為に。
もう暫く、いたいけな青少年達には貢いでもらう事にしよう。

「……何と言うか、はっきり物事を言う奴だな。おかげで、怒る気にもなれん。一応、気にしているんだけどな…」

此処迄悪意無く、正直に告げられれば毒気を抜かれたような顔をして項垂れるのだろうか。
やっぱり筋トレとかすべきかな、なんて真面目に考えていたり。

「…へえ?研究区の。それなら尚の事安心だな」

研究区。
先日、松葉雷覇に関する異能学会の捜査で訪れたばかりだ。
雪城、という名字で検索すれば恐らく直ぐに出て来る名前だろうが。
…一応、頭に留めておくか。と、小さく笑う彼女に頷きながら思考を巡らせる。

――此れが或る意味、此の学園都市であるべき生徒の姿なのか、と
も。少女の様な生徒を守る為に、自分達がきっと力を振るっているのだろう…とも、思う。
そして、其処に至れない者達に。己が狩り続けている者達に。
ほんの僅かにではあるが、憐憫と同情と、共感を覚えてしまうのだ。
家族揃って、穏やかに島で過ごす。島で金に困らぬ生活をしていても、己には手に入らないモノを少女は持っているのだから。

と、思案に耽りかけた時。
投げ渡された何かを条件反射で受け取った。

「…っ、と?おい、これ――!」

何なんだ、と声をかける前に、気付けば少女の姿は無く。
数秒たってから、バレンタインのお菓子の類かと漸く気が付いた。

「……三倍で返すべきなのかな、こういうのって。
ん……甘い」

こういうイベントに全く慣れていない少年は、包み紙を破いてチョコを齧る。ウェファーチョコの、人工甘味料とチョコレートだけの様な甘みが、口内を包んで。
偶には、こういうのも悪くはないかなと。未だ客足の絶えない店に一度視線を向けた後――少年もまた、此の場を立ち去るのだろう。

ご案内:「スイーツ店【ラ・ソレイユ】」から雪城 氷架さんが去りました。
ご案内:「スイーツ店【ラ・ソレイユ】」から神代理央さんが去りました。