2021/10/21 のログ
ご案内:「私室」に羅刹さんが現れました。
羅刹 > 蜥蜴のアジトの中でも一層秘された場所
羅刹と呼ばれる男の私室に声が響く
私室とは言っても、ほぼ物は無く簡素な部屋だ
アジトの方がいくらか豪勢かもしれない。

「ああ。そっちはそれでいい。
元々、過干渉はしねぇようにしてるんだ。好きにさせとけ
それより、その地区の地図が手に入ったことがでけぇ利益だ」

『蟻』からの通信を受け、それに応える
先行した白梟が何か良からぬことをしているのではないか…そんな不安の通信だったが
元より、役立つならば重用するという話で協力している人物だ
多少の暴言や先行などは特に問題はない

そういった些細な事より、その能力によって得られる情報に非常に大きな価値がある
完全に敵となれば、それはそれで対処するだけ

「……………さて。」

一通りの連絡を終え、今日の来客を待つ男
来客というより、こちらから呼んだのだが……
出来るだけ安全なルートを選び、呼んだその相手とは

梟の中でも古参でありながら幹部でもなく
情報を得る代わりに店を貸し与えている相手である

こちらからその店に出向くのは現状リスクが大きく
私室を選んだのは、他構成員と無駄な接触をしないため

その相手は、あまり目立った活躍や顔見せは組織内でしていないため、余計なトラブルを避ける狙い
だが、用件自体は単純であり、物品の受け渡しと近況報告程度の予定ではある

もし何か変わったことがあるならその対策も…今となっては口頭で伝えた方が安全だろう
通信、異能、どちらも…特に信頼していた後者も傍受されている可能性があるのだから

部屋の鍵は開いている。
来客が扉を開けようと思えば、それだけで開けられるだろう

ご案内:「私室」に『調香師』さんが現れました。
『調香師』 > その部屋に響く、控えめなノック

「入るね」

この街に似つかわぬ、可愛らしい声。扉を開ける
普段通りに白の衣装に黒のケープを羽織った外行きの格好

「お久しぶり?あの時から、連絡は控えてたのだけど」

埃を払う仕草。格好に気を遣う、なんて品を見せかけた行い
彼女は歩いてここまで来た。ただの少女の姿で、この場所まで

その道が安全だったから?それも一因であっただろう
けれどこの落第街、それだけで生き延びられるほど甘くはない


「えっと。私の事を『覚えてる』?」

この落第街への至る道、その問いに頷けるのは貴方だけだろう

羅刹 > 小さな体が扉を開いて部屋へ入ってくる
羅刹はソファに腰かけ、対面に座るよう促しつつ

「…そうだな。少しぶりだ。
…それがいい。連絡を取りすぎて、お前に被害が行ったらある意味契約違反だ」

もし『敵』がこの辺りで使用されている電波や異能を辿って狙いを定めているなら
無用な攻撃が店に入るかもしれない。
幸い、そういった事態にはならなかったが、警戒は必要だ

それがあるから、連絡を控えさせていたが…呼んでみればやはり、無傷で来たか、と薄く笑って

「…それも、覚えてる。まあ座れ。あまり時間は取れねぇからな」

軽く頷く。当然だと言うように
『忘れていたら』そもそも呼びつけはしないのだから

『調香師』 > 「よかった。まだきちんと、扱えてそうだね」

安堵と共に、ソファに落ち着く。バスケットの荷を下ろして

「仕方ないとはいえ、やっぱりあんまり来たい場所じゃないね
 ここの香りが好きとは言えないから。今日は仕入れも兼ねて踏み込んだけど

 ...まずはコレ、かな?ケース2のデータと合わせるんだって
 新しく入った彼女からの贈り物」

情報端子を差し出しました。『例のデータ』という物が入っています


「あと。近日中の活動報告もした方が良い?」

普段通りなら、それはただの『業務日記』と言える物
私感たっぷり。役に立ったり、立たなかったり

羅刹 > 「冗談でも、忘れた、とは言えねぇな」

冗談が通じ無さそうな相手、かつ通じたとしても悪い冗談だ

「…だろうよ。
お前が嫌いじゃなければ、俺は別の仕事を任せてたところだ。
……ああ。」

本来なら、その能力は…組織の武力面として役立ったもの
けれど、『やる気』が湧かないならそれはやらない方がいい
かつて、この少女に言った言葉だ

情報端子を受け取る
データを分けるという基本的な偽装をしたそれをしまう
データの確認はすぐでなくともいいだろう

「そうだな。連絡がし辛くなった日から…無理に言葉を考える必要はな無ぇ、好きに話せ」

ソファにどっかりと背を預ける
私感であろうとなんであろうと、その方が良い

『調香師』 > 「それじゃあ、私の『お仕事』
 香りの分のお勤めは果たさせてもらうね」

バスケットの中から日記帳を取り出して。それぞれに日の思い出を語り始めました


『メメント・カリダ』。それは思い出の中の朝
贈り物の香。不器用そうな彼女は『英雄』の安寧を願っていました

『夜の夢』。それは掴めない隣人の残り香
大胆なようで、体も心も繊細そうな彼女。持ち合わせるは別の顔、それはきっと誰にでも

『Nymph』。永遠の凱旋を望む者の紫煙
風紀委員相手でも、彼女は仕事を果たしまします。心苦しい仕事であっても、人の為と彼女は最後に〆ました

『ティリースツリー』。遠い遠い思い出の景色
酷い頑張り屋さんが訪れたそうです。彼女に対しては、『調香師』もこころなしか感情的な語り口

3つのアロマキャンドルを外で売ったお話
お客様が来てくれたけれども、望む香りをすぐに作れないなんて。慣れない仕草を見せてしまったと恥ずかしいお話

最後は『エフィメール・フィデル』。そのイメージは自分の瞳
この街に踏み込んだ時、目線は自然と『彼女』を探していました
見つかったとして、記憶なんてされるはずがないのに


「...これが、報告かな。何か役立ちそうな物はあった?」

少女は日記帳を閉じて、顔を見上げます
いつも通りの笑みで、首を傾けて

羅刹 > 「――――――――…………」

紙媒体というのは便利で、見つかりそうになれば完全に燃やせばいいし捨てやすい
そんな日記帳に書かれた報告…私感が満ちたそれを受け取る

意外だったのは、いくらか『知っている』相手も居たことだが
特に何か指示することはない
争いに関与させることは…それも契約を違えることとなる

少女はあくまで、調香師として組織に居るのだから
この情報は、店を構える契約の対価である
それを払っている以上、男からも文句など言うことはないし
例えば『知っている客』に対して何かをしろ、などと言うつもりはない

組織の目的は最重要ではある
それを考えるなら既にある程度信用されているのであろう少女に『殺し』でも依頼した方が話は早い
だが、それはしない
『身内』である以上、契約が果たされていればそれで十分だ


「…繁盛してるようでなによりだな。
ああ。…あそこは落第街に近いとはいえ、中々表に近い情報は得にくい
充分、役立つ」

私感が多分に含まれているとはいえ、それも情報だ
『客』が少女に関して何を言ったか、誰がそう言ったか
相手の心情を読み取り、役立てるためには十分な情報である

「ちぃと今回は少ねぇが、いつも通りのモンもまた届けさせる。
追加で必要なモノ、それに問題はあるか?」

男は胸ポケットに手を伸ばしかけ、止める
…今日は、煙草は吸っていない
それは彼女の『仕事』へのある種の敬意でもある。

『調香師』 > 「気を遣うのが上手すぎるんじゃないかな
 私がその匂いをを『嫌』だとは、言った事ない筈だよ」

手の遊ぶ仕草を見つめて、彼女は呟く
もっと視野を広げれば、包帯の巻かれた片腕も確かに
血の臭いだって、こびりついていた物以上に新しい

「なんだか大変そうだね。仕入れは私の方でも行える事だから
 本当にあの後、随分と無茶をしているみたい

 ...大丈夫?何か、落ち着けるような物を用意する?
 それは私のお仕事だから。貴方の為の香りなら、作れるよ」

貴方への心配。これからの自分の軌道。その両方を含む言葉
この場で売り込む根性がある辺り、なんだかんだ彼女も一度は『裏』に踏み込んだ存在だ

羅刹 > 「はっ、…ただの警戒だ。
俺に近づいてきた奴は一人じゃねぇんでな」

その相手が煙草の匂いを覚えていれば
それが染みついた調香師と自分を結び付ける可能性がある、と

「堂々と俺相手にそんなことが言えるのはお前くらいなもんだ
……ったく、そうだな。『代価』は払う。ここで作れるか」

男は機械ではなく、血の通った人間である
売り込みをされ、そしてその『腕』を知っているからこそ任せる

以前にも少女に…血を連想させる名の香りを調合された
その腕を買って、その時たまたま手に入り、浮いていた物件を与えたのだが
それはそれで、良い判断ではあったらしい

「心配するな。お前と組織との繋がりは余程じゃなきゃわからねぇようにしてある
それこそ、お前が口を滑らせなければ大抵の事があっても誤魔化せる」

こちらのいく末については心配するなと言って
彼女の仕事を促そう

『調香師』 > 「私が口を滑らせないと
 ...なら、気を付けないと?

 お話って楽しいから。いつの間にか...なんて言うのは嫌ね」

元々情報秘匿の専門家でもないし、彼のように用心深くもない
人を殺す事も、血の臭いから逃れるように調香をしてみせたのも、
そのどちらも彼女にとって『本領』という分野ではない

今、自分が『調香師』として在れるのは。彼のお陰

「...準備が無いと、出来るなんて言えないでしょ
 だから今日は持ってきてたよ。きっと必要になると思ってね

 だから。あなたが今欲しい物を聞かせて?」

これが今日、大きめのバスケットを用意した理由なのだろう
目線を遣れば、種々のオイルが収められている事を確認できる

大切に大切に、お店から持ってきたものだ

羅刹 > 「秘密でも、元から漏れちゃ防ぎようが無ぇからな」

また、軽い笑い声
できるだけ気をつけろよ、と付け加える
関係が明るみに出る分には少女を匿えばそれで済むが
それはそれで、今度は少女のやりたいことができなくなるし、男も情報が得られれなくなる
お互いにとって。不利益である。

「――欲しいモノ…か。ありすぎるな。
だが…、もう少し上等な頭か、力。どちらかがあれば、楽だったろうなァ
…そいつは無理ってもんだ。だから、頭が晴れるような奴を頼む」

どこまで行っても、男はただの人間だ
傷を負えば、何週間も治らず
異能は他者が居なければ役に立たない

決して安らぎなどとは口に出さない
心に燃え上がらせるのは、目的への渇望と、そのための策

けれど、『大人』になった心が呻く
ここが潮時なのではないか、と
そんな迷いを、断ち切るための香りをオーダーしよう

『調香師』 > 「そうね。気を付ける、とだけ。にへへ」

下手な笑う声。彼女の笑みは、そうそう変わらない

「頭が晴れるような、ね
 それが本当に必要な物?

 ...それが進む覚悟の証、みたいなものなら確かに
 けど、あなたはどうして進むのか改めて自問したいような
 なんだか、そんな風にも聞こえるんだよね」

いつも通りの問答。必要な香りを選ぶ前に
言葉を使った選別。その機微を推し量る能力が彼女には備わっている


「理由があるの?
 それを焚きつける、そんな香りも私はきっと作れるよ」

羅刹 > 相変わらずの、口に出す必要のない…下手な笑いを聞いてから

「…、相変わらず、カウンセラーみたいなやつだ。
受けたことは無ぇが。…、理由、か」

調香に必要な者が用意される音を聞きながら
どうせ明かしたとしても、意味はあまりない
どちらにしても、仕事をさせ続けていれば例の『元捕虜』にもある程度は詰め寄られることとなるだろう事柄

「…忘れたくねぇのは、血と、熱で肉が焼ける匂いだ。
それを覚えてる限り、俺は前に進める。そこから、俺は思い出すからな」

記憶と結びついた匂い
それが、まだ思考の奥にこびりついているから

「簡単に言えば、…後悔が、風化しねぇ匂いだ」

別に、血と無残に焼けた『人』肉の匂いを望んでいるわけではない
その原風景を、悔恨を忘れないための匂い
それをオーダーする。彼女にとっては、苦い依頼になるだろうが。

『調香師』 > 「カウンセリングなのかな
 私はただ、知りたい事を探ってるだけ
 あなた達の本心に触れて、そこから『設計図』を作っていくだけ

 ...でも、材料が足りないんだよね。それは私に用意できない物
『また』、あなたの血を頂戴。それで私は作れるよ」

機械の身体に、そんなモノ通っている訳もなく
それ以外は用意が出来る...と言っても、実際に悲惨さを構成する香りを直接調合はしない

『血の臭い』を契機に、思い出を結び付け呼び起す
そんなハーブを使った『幻覚作用』。香木の煙臭さとスパイスの刺激が、鮮烈な記憶を色付ける手伝いもしよう


ビーカーを差し出しました。そこに一滴、それで十分
彼女には嫌な仕事だ。けれど、それが『貴女の為』になるのなら

羅刹 > 「そういうところが、客にウケが良い理由だろうよ
…別に文句じゃねえ。お前は、そのままでいい」

前に進むための燃料を
足りない頭で、より材料を組み立てる活力を
いつも吸っている煙草よりも濃い匂いが、鼻から頭へ登っていく

油の如く注がれるそれは、完成すれば
間違いなく『男の為』となるもの

「ああ」

短く答えてから、左手をビーカーの上へ
傷口を握り、わざと力を籠めれば
鍛えているからこそ、自身の身をも容易に傷つけ
ぽたり、と一滴、紅い血がビーカーの中へ落ちていく

あらゆる思いは風化し、忘れられていく
けれど、忘れてはいけないものもある
それを手助けさせるため、その赤い雫を落とした後、左手を下げ
完成を待つ

『調香師』 > 「ありがとう」

いつものあの笑み。つい昨日、『作りたくないな』と話し合ったこの香りを使った品を用意する

調合に時間はかからない。スポイトで残りの香りを落としていく
しかしその集中具合。一滴の質量すらも完全に管理する必要のある、緻密な世界

「今回はこの香りの名前を付けてもらっていいかな
 前は私、自分で名付けたんだけど。本当は、『その人の為』だから」


血塗られた名前で売り込んだ。でも今日のお仕事は『調香師』の物
そう告げて。ほんのり紅いこの液体の調合を終えた彼女の目線はぴったりと貴方に

羅刹 > 「―――――………………」

『仕事』を始めたなら、その邪魔はしない
ソファに身を預けたまま顔を上げ、目を閉じる
身じろぎすらせず、息遣いも静かに

少女のほんのわずかな作業音だけが、部屋にある音である

「…"Le regret"、暗い名前だが、それでいい」

「…前の奴も俺ぁ好きだがな。名づけろっつーなら、それだ。
名前も、匂いも。俺好みだろうさ」

流暢な外国語で答える。

…未来を信じていないわけではない
けれど、男の原動力は常に過去から
失敗しようと、成功しようと
学んで、思い出して、進み、受け継いでいく。それでいい

『調香師』 > 「Le regret。うん、そっか」

小指に一滴垂らしては、唇をなぞる
私の大嫌いな、あの臭いを敏感に感じ取ってしまう嗅覚

「人の為の芳香。その誕生、その精製を私は確かに見届け記録できた」

それでも彼女は『人の為』と言う
彼女の白すぎる位の肌には、ほんの僅かな紅の色でも目立ってしまう


「これは普通の香水として使うのが、一番いいかな?
 そのための瓶も持ってきてるよ。たくさんつけちゃダメだからね
 手首にちょっと、垂らすくらいでいいからね」

調香師によるお小言小ネタも挟みながらも、容器を移し替えていきます
商品として、彼の目の前に差し出されるのも時間はかかりません

羅刹 > 「良い手際だな、相変わらず」

一言だけ、そう言ってから
紅い口紅のように血を纏う少女を見やり

「薬と同じだろ。
調合した奴の説明ぐらい、守るさ。そこまで命知らずでも無ぇよ」

麻薬でも、医療薬でも
用法容量を守らなければ全く別の効果が出ることがある
その程度の事も守れず、不利益を被れるほど男も暇ではない

「よく無茶な言葉からこんなモンを作るな、全く
まあ、使わせてもらう。…『調香師』」

受け取った容器をテーブルに置いて

「いつも以上にここは騒がしくなってる。帰りも気ぃ付けろ」

ここまで来れたのだから、帰りも問題ないだろうが
わざわざ、事前に頼んですらない仕事をしたのだ。これくらいの労いはあってしかるべきだろう

『調香師』 > 「それが私の本来のお仕事だからね」

以前とは違う。彼女はそう笑んで
持ってきていたガラスの荷物たちをかちゃかちゃとしまっていく

忘れ物がないかを確認した後に頷いて、彼女は立ち上がりました
最後に埃を払う仕草

「ポイントカードもあるけど。それはお店に来てもらってからかな
 難しいって分かってるけどね。うふふ

 今日もお仕事ありがとうね羅刹さま
 見咎められないうちに、私も急いで帰るよ」


最後にお辞儀。そうして彼女はその場を後にするのだろう
落第街の中を、誰にも知られず見咎められず。独り歩いて、いつもの場所へ

羅刹 > 「―――………」

もう人形じゃあねえな、とはまだ言わない
殺すのが嫌だと言ったあの姿は、今は見えなかった

「はっ、意地の悪いこと言うようになりやがって
いいぜ、その内そっちに秘密で出向いてやる
それだけの余裕ができりゃあな」

ひらひら、と右手を振って
誰にも…信用する側近以外には敵にも味方にも見られないよう
行きとは違うルートを教える

とはいっても、1つ2つ曲がる角が違うだけだ
余程でなければトラブルもあるまい

「ああ」

様付けは別にいいと言っているが、あれも少女なりのこだわりなのだろう
小さいながらも、仕事人
そんな協力者に近い組織の人間を、頭は見送った

後に残るのはまた静寂
香る後悔の匂いと共に、夜は更けていく

ご案内:「私室」から『調香師』さんが去りました。
ご案内:「私室」から羅刹さんが去りました。