2021/11/17 のログ
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最高裁判所第三小法廷
××年 第異084号殺害事件

××年〇月△日

担当弁護士:東山 正治
担当検事:西川 衛


【主文】
原判決は証拠不十分とし、原告の訴訟を破棄し、被告を無罪とする。
訴訟の費用はこれを8文し、その4を原告の負担とし、その余を被告が負担する者と成る。


【概要】
本件は殺人事案である。
被告、異邦人××は原告の母を殺害した疑いが持たれる。
当裁判は地球上における異邦人を被告とし、現地球上における法律と人権を考慮し非常に慎重な裁判が行われた。
原審、上告審において証拠不十分とし、適法が確定し無罪の判断を結論する。

原判決は裁判官全員の意見が賛否であり、判決が困難を極めたものの
弁護士東山 正治の尋問において、検察側の証拠不十分が決定的となった。

よって、主文通りの判決とする。

裁判長裁判官:王城 時宗
裁判官:ユーリウス・カエジー
裁判官:荒宿 アイジ
裁判官:ペトリー

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「……こんなモン開いちゃって、今更なんになるのかねェ……」

悔恨。呟きと共に、モニターの明かりは消えた。

ご案内:「───────。」から***さんが去りました。
ご案内:「歓楽街 ホテルの一室」にノーフェイスさんが現れました。
ノーフェイス >  
「なに、コレ?」

 ルームサービス…とはいっても後付有料オプションの食事だが…のワゴンに乗せられていた封筒を掲げた。
 ボーイの応答は要領を得ず、女は彼と逆向きに首を傾げたまま遅まきの夕食にありつくことにした。
 彼の足音が遠ざかってから、淹れたての(インスタントの)珈琲に口をつけつつ封筒を検める。

「あー…こういうふうに届くのね。
 てっきりお部屋まで持ってきてくれるモノだとばかり…」
 
 そこにあった二枚の偽造学生証を見て、女の顔は楽しそうに笑みを浮かべた。
 あらかた確かめる、使い方のマニュアルからなにまで本物を模造しているのだろう。
 女はそれを暗記したあと、ハンガーに立てかけてあるコートの内ポケットにそれを忍ばせた。

「でもこうやって…
 遠回りにやりとりするのが、逆にキマるよな~
 探偵ってカッコイイ職業だ…いっそボクもそっちに行くのもアリかな…?」

 顎を撫でつつ、姿見に映った自分の姿を確認。
 背筋を伸ばしてみる、ここに推理力と心理洞察能力が必要十分にあれば探偵ができたかもしれない…
 ともあれ、ハーフボイルドな見た目の、ハードボイルドへのお礼は、あのお札で済んだということらしい。
 女としては、次なる仕事かツテを持っていくことが、彼への恩返しになるだろう、と考えた。

ノーフェイス >  
「さーて、それじゃあ身体も休まったことだし。
 ラクダイガイのほうに、足運ぶかな。
 あのあとまだまだドンドンやってみたいだし、リスティも無事ならいーケド」

 くるり、片足を軸に回転してテーブルへ。
 読みかけのハードカバーではなく、まだ暖かいルームサービス(別料金)のクロックムッシュに手をつける。
 罪深い味を食みながら、女はぼんやり幼き夜の眷属を思い起こす。
 強い思い入れがあるわけではない、袖振り合うも多生の縁…だったか。
 また会えればいい、そう考えて紡いだ約束、それくらいの軽薄な調子で、またあの夜のスラムへ訪おう。

「雪景クンにあげたアレも、そろそろ効果が切れる頃かなぁ」

 あの抗争で、けっきょくチェックはかからなかったと、噂話で聞いていた。
 とはいえ平和になるのなら、それに越したことはない。
 リザインもまた、ゲームのお終いとしては、よくある形。

「カレが自分の限界以上に指をかけることに、
意味合いや必要性を見出してしまっていなければ、だけれど…
 ま、ダイジョーブでしょ…『神サマ』に仕掛けるよりよほど未知数で楽しそうだし…」

 なにより、また会うとも限らない。
 せめてカレが有意義にその効能を使ってくれたらいいな、と無責任に願うばかりだ。

ノーフェイス >  
 あとは部活の準備。
 とはいえ、やはり先立つものは必要になるので、資金繰りと並行することになるか。

「ジテンシャ操業っていうんだよな…こういうの。
 いやでもいきなりスポンサーなんか望むべきじゃぁ、ないしな…
 服とかもいろいろ買いたいし、ここでやっとスタートライン、なんだよねぇ」

 憂鬱な言葉と裏腹に、女の唇は笑んでいた。
 いま自分の掌には、ようやく最初の一歩といえるピースが転がってきただけ。
 偽造された人権を手に、どう遊んでみようかなと、そんなことを考えて。
 そういえば…と、ふと出会った不思議なモノについても思い出す。

「そうだ、香水…量販品もいいけど、オーダーメイドなんでイカしてる」

 ぱちん、とひとりでフィンガースナップなどして。

「いやあでもねえ、この流れでね…
 無心しに行くようなのは、ちょっとカッコ悪いよな…
 すこし稼いでから、いやお金ありますけど? みたいなポーズは、取れるようにしないと…」

 腕組み、考える。
 手持ちが足りないのになにかをつくってもらう…というのは、あまりよくなかった。
 いや…かっこうよくなかった。
 そして、金銭の授受、ニンゲンが発明したシンプルな契約のカタチ。
 それで担保される信頼をもとに、お願いしたいというところもあった。
 なぜなら…

「…なんかいろいろタイヘンそうだったし。
 機会を見て、いこう。
 たとえ彼女がボクの考えてるようなモノであっても、悩みをきくなんてボクには土台ムリな話だしぃ」

ノーフェイス >  
「それと…木材…金属…磁石…」

 食べ終わった。
 そこから身支度と後始末、ありがたくも個別についてるシャワーを楽しみにしつつ本を手に取った。

「やることいっぱいだ。
 ひとつひとつこなしていこう」

 少し癖のある味の煙草を銜えると、少し難儀しながらライターで火をつける。
 一服、彼岸花の栞が挟み込まれたページを開く。
 女にとって、灰皿あり、喫煙可の部屋を紹介してくれた気遣いは、本当に有り難かった。

ご案内:「歓楽街 ホテルの一室」からノーフェイスさんが去りました。