2021/11/26 のログ
ご案内:「常世公園の端っこ」に深見 透悟さんが現れました。
ご案内:「常世公園の端っこ」にイェリンさんが現れました。
深見 透悟 > 常世公園の端も端、ひと気の無い草っ原にて、謎の儀式の準備が進められていた
日はとうに沈んで久しく、頭上には星空と月が輝いている
その夜空の灯りを頼りに、準備を進めているのは自称天才魔術師の深見透悟
即席の木の義足で歩きづらそうにしながらも魔法陣の描かれたブルーシートを広げ、様々な物品をその上に配置している

「ひぃ……ひぃ……正直しんどい……」

先日破壊された足や手は(物理的な意味で材料不足だったため)再生出来なかった所為で未だに欠けたまま
断面などを晒したままだと見た目が悪いからと、腕の方は布を当てて隠している
そんな隻腕隻足で準備してるものだから、進み具合はあまり宜しくは無い。夕方から始めて、今に至っている

イェリン > 奇妙な感覚だった。
目の前には数日前より自宅に安置されていた土塊の身体。
あの日以来中身ともいえる透悟が離れており、ピクリとも動かなかったが、
遂に今日素材の調達を終えた透悟が中に戻った次第だ。

ひび割れた頬などこそ治れど、未だ痛々しい隻腕と隻足は残ったまま。
乗り換える前の身体に充てられるほど、材料に余裕が無かったとは言え、
切りだしただけの木で作った義足でひょこひょこと歩く姿はやはり心配になる。

「ねぇ、トーゴ。私ホントに手伝わなくて良いの?」

ゴーレム作りの知識が無い自分が中途半端に手を貸すのは得策ではない、との事で
槍の乙女は少し離れた位置から護衛を兼ねた見学中。

作業を始めてから既に数時間、進捗こそ目に見えるとは言え疲労も心配になってくる。
身体が無いから疲れない、という物でも無いだろう。
彼が今まさに体力の代わりにすり減らしていく物はもっと、命に直結するものなのだろう。

深見 透悟 > 四肢の欠損によって運動能力が著しく損なわれた土塊ボディは女子寮のイェリンの部屋に置かせてもらい
ここ数日は主にテディベアボディと幽体で行動していた透悟
この日の為に様々な材料を集め、
術式の理論も推敲し直し、
どうにかこうにか器のアップデートの目途が立ったのが今朝

「大、丈、夫!
 これくらい一人でパパパパーッとやれないと、天才の肩書が廃るってもんだから!」

作業を開始してから終始この調子で居た透悟だったが、ただでさえ動くのに魔力を消耗する土塊の身体
動きが悪くなる分、余計に魔力を使うのだ。肉体的疲労は無いとは言え、その分だけ精神に負担も掛かる

「廃るってもんだけど……まあ、天才でも疲れるものは疲れるので
 ……すいませんイェリンさん、後ろからギュってして貰って良いスか……」

時折イェリンの抱擁で魔力生成にブーストを掛けていた
イェリン本人は護衛と思ってるかもしれないが、透悟からしてみれば薬缶を持った女子マネである
やってる事は魔術、文系の行き着くところみたいなものなのに、何故か人員配置は運動部みたいになっている

イェリン > 「ふふっ、空元気でも明るい方が貴方らしいわね」

作られたような声の明るさに反して、土塊の身体と表情は嘘を吐くのが下手くそだ。
乾いた土くれの端が剝げるように、一度は消えたはずのヒビが徐々に浮き出ていた。

「もっと背中に手を当てる、とかじゃ上手くいかないものなのかしら……
嫌とかじゃないのだけど、なんだか、こう。
これって私がとんでもない一人遊びをしているように見えそうじゃない」

見えそうではなく実際そう見える。
分かっているからこそ、人払いの魔術を使っているのだが。

腰に巻いたポーチから小さな黒曜石の切片を取り出して指ではじく。
物理的な法則を無視して粉々に砕けた石の成れはて、月光を受けて煌めく粒子が周囲に舞い散る。
定期的に行う"暗幕"の魔術の重ね掛け、つまるところの延長予約だ。

「これだって無尽蔵にある訳じゃないのよ?」

言いつつ、求められた通りに後ろから進捗でも覗き込むかのように腕の中にそのひび割れた身体を抱く。

ポーチの中の魔具は徐々に数を減らしてきた。
完成までに切らせば高密度の魔力に寄せられて妙な物を呼び寄せかねない。

深見 透悟 > 「ど、どうにか!どうにかこれが最後の一回になるようにするんで!
 あとちょっとなの!陣は敷けたし、素材も揃った、理論も完璧!
 俺のやる気は青天井だし、絶対うまくいく自信があるんだけど!
 ……あるんだけど、配置がこんなに面倒だとは……手足の再生を第一にした方が良かったかな……」

ところでとんでもない一人遊びってどんな一人遊び?と訊ねそうになるのをぐっと堪えて
イェリンの抱擁を受け、顔や体に走ったひび割れが淡い光と共に修繕されていく

さて進捗のほどはというと、透悟の言う通り様々な素材を陣の上に配置するだけ、という段階になっていて
然しながら、予定されている術式が東洋西洋ごた混ぜの上に錬金術や医術まで引っ張り出されていて複雑怪奇である
それらが絶妙なバランスで術式として成立しているのは、偏に透悟が自称だけの天才では無いと窺い知れるだろう

「これだけイェリンさんにお世話になってて失敗しましたじゃ済まないからね
 絶対成功させる、絶対に。見ててよ!」

魔力生成完了、疲労が濃かった顔に、透悟のオリーブ色の瞳に活力が戻る
イェリンの腕を軽く叩いて離れる様に促し、再度大規模な儀式魔術の準備を再開し始めた

イェリン > 「ん、あとちょっと。なら踏ん張りどころね。
でも、聞き飽きたかもしれないけれど無茶はダメよ?」

光を帯びて修繕されていく身体を挟んで陣を覗き込む。

さっぱりだ。
自分の魔術についての理解と思考の方向性が符術やルーン式に偏っているという事を抜きにしても、複雑怪奇。
配置するくらいなら、と手を貸そうにも構築されている内容が分からない以上はどうしようもない。

「ま――えぇ、見てるわ。
折角の天才魔術師さんの一世一代のショーだもの、見逃さないわよ」

魔術に絶対は、無い。
言いかけた言葉を飲み込み、腕を叩かれれば二歩三歩と、自分の存在が陣に干渉しない位置にまで下がる。

深見 透悟 > 「俺一人だと無茶するからイェリンさんに同伴お願いしたんだからサ!
 大丈夫大丈夫、少なくとも腕や足が吹っ飛ぶことは無い……と思う。ここなら。公園だし」

実際にそのつもりなく転移荒野に行って手足を吹っ飛ばした前科があるのでちょっと自信無さげ
まあアレは場所が悪かったよね、と気持ちを切り替えて準備を進める
魔石を並べ、手製の符をベタベタと貼り、何処から回収してきたのか解らないような魔具を並べて

「ふふん!死んでるから文字通り一世一代なんだけどね!
 とまあそんな冗談は置いといて……よし、此処はこれでオッケー!
 あとは核になる俺の杖と……転移荒野で貰った魔石か」

どうするかなあ、とまず自慢の杖を取り出し、続いて赤い魔石を取り出す
仄かに漂うのは血の香り。鼻の利かない透悟は気付いていないが

イェリン > 「公園だから吹き飛ばして良いというものでもないのだけど…」

手足などそうそう吹き飛ばされてはたまらない。
等と、思ったのも束の間。
しれっと杖の次に取り出された赤い魔石に目を剝く。

「えぇぇ……」

杖だけで賄えるのかの不安を払拭するに足る圧。
禍々しい程の力の塊を目の前に、声が震える。
ナニソレ、であるが敢えて集中する友の為にも声が漏れた以上の事は何も言わない。

深見 透悟 > 「違う違う、公園だからどう間違っても手足が吹っ飛ぶ結果は生まないだろうって意味!」

まさか公園にワイルドハントが召喚されるなんてこともないだろう
ここは自分の故郷とは違う、地理的にもそういった物を招きやすいという事も無さそうだ、という事くらい透悟も勉強した
出てくるなら百鬼夜行だ、とまでは流石に断じきれないが

「それで――そうそう、イェリンさん
 最初に貰ったルーン、杖に取り付けたいんだけど……ってどったの?
 何か今までに見たこと無いような顔してるけど」

杖を片手に背後の友人へと振り返れば
何やら気圧されたような表情のイェリンが居た。思わず目を丸くして訊ねる透悟

イェリン > 「……えっ、あぁ」

気づいていないのか、とややあって察する。
噎せ返るような魔力の量と同じほどに香り立つ血の香。
触れる事すら躊躇いそうなものだが、感じ取る事が無ければ強い魔術素材に違い無い。

「ルーン石を? 別に構わないけれど。
そこにあるだけで恩恵があるように作ってあるものだから、
砕いたり余計な物を刻んだりしなければ大丈夫」

自分の理解の外の術式、常識の埒外の魔術素材。
あっけにとられていた意識が、自分の分野の単語にようやく正気に戻る。

深見 透悟 > 「もしかして疲れちゃった?
 ごめんね、長い事付き合わせちゃって……」

多分寒いよね、と苦笑しながらイェリンを労う透悟
原因が自分の手の中にある魔石であることに気付いてる様子はない
少しだけ申し訳なさそうに鼻の頭を杖の先で掻いていたが
ルーン石についての許可を得られればパアッと表情を明るくして

「良い?ありがとぉイェリンさん!
 杖のお陰で魔術の扱いは楽になったんだけどさ、こっちの世界の魔術に馴染ませる媒介が欲しくてさ
 じゃあ組み込んじゃおっと……柄か先端か……柄の方が良いなあ」

うふふふ、と笑いながら杖を弄り始める
この数日で一番楽しそうな顔をしている透悟だった

イェリン > 「いえ、そうではないのだけど。
本当に疲れているのは貴方なのだし」

寒さには強い身体が小刻みに震えるのは畏怖によるもの。
注視すれば使い方を誤らなければ問題が起こるような類の物では無い事は分かったが、
問題を起こせるだけの物でもあるのは間違いない。
上質な、贄の一端。極上の血の結晶。
自分の知らぬ血の香の少女の事がよぎるが、かぶりを振って振り払う。

「あぁ、確かに私の魔具ってトーゴからしたら異界の、この世界の魔術媒介になるものね」

いくつでも用意するのに、とは言わない。
初めて会った時に渡した物が持つ縁を、後から見繕った物で賄えるとは思わない。
この世には形や意味とは別に、宿るモノがある。

上機嫌な透悟を見やり、さらにもう一歩だけ下がって術式の完成を見守る。

深見 透悟 > 「そう?まあ……無理はしないでね?
 人に言ってる以上、無理も無茶もしないって信じてるけどさ」

にひひ、と悪戯っ子の様に笑ってから杖の改造に取り掛かる
片腕だから上手く行かないのか四苦八苦しつつも、その姿は傍から見ても楽しそうだ
濃密な血の香を漂わせていなければ、だが

「そうなんだよー!しかもしかもだ、俺がこの世界で初めて手にした魔具だし
 あー、でもこの杖……核にしたら、イェリンさんに俺の居場所がいつでも割られる様になるのか……?
 逆にこっちから辿ってイェリンさんの様子とか見れれば面白そうなのになあ……」

杖の改良を終え、得意げに構える
これでまた一つ杖が特別になった、と満面の笑みを浮かべて

「さて!それじゃぁいよいよ最後の工程に掛かろうかぁ
 星の並びも悪くなさそうだし……いやこれは結果的に良くなっただけだけど……」

ふと夜空を見上げる
思ったよりもだいぶ遅くなっちゃったなあ、と呟いて