2021/11/27 のログ
イェリン > 「ふふっ、良いじゃない、記念になるなんて光栄よ。
いつでも分かるような物じゃないわよ、割ってくれたら目印にするって言ったでしょう?
……逆に?」

できるかも知れない。
別に覗かれて困る事も無いか、と思いかけて首を傾げる。
――いや、困る。困るぞ?

「ちょっと、待って。待ちなさい? トーゴ!?」

満面の笑みを浮かべる透悟に声をかける。
杖の改良を終えた透悟が、聞いて止まるかは分からないが。

深見 透悟 > 「リリィといい、このルーン石といい、大事な貰い物が多くて困っちゃうよ
 ……あ、そっか。割れたりはしないと思うけど、うん、万が一割れたらその時は俺がかなりピンチな時って事になるなあ
 きっと杖も折れてるだろうし……ま、その時は居場所がすぐ知られるのは良い事か」

でもそんな窮地に陥るという事はかなりの事態だろうから、出来れば友人には来て欲しくないなあ、と呟いて
何気なく言った言葉が割と問題発言だったことには気付いていない

「うん?……なあにイェリンさん
 何かマズいものでも見えた?……おかしいな、一応この理論で問題は無いはずなんだけど……」

はて、と最後の大仕上げに取り掛かろうとしたところで呼び止められた
きょとんとした顔で、イェリンを振り返る透悟
なにか不手際でもあっただろうか、と眉間にしわを寄せて魔法陣を見下ろし始める

イェリン > 「杖もルーン石も、貴方が無事なら直すなり新しく作るなりができるんだから。
ただ、まぁ割れるような事が無いのが一番なのだけど」

叶うのならば、そのような事が無い事を願う。
友人にそのような窮地が陥る事のないように。

「……ん、んー。うん。
いえ、その、頑張って…?」

今更、杖から外してなどと言えず。
悪用するようなことは、無いと信じて。

きょとんとした顔を見やれば、自分が勝手に彼の言を取り違えただけなのだろう。
改めて、頑張ってと笑みを埋める。

深見 透悟 > 「そうだけどさー……そうなんだけどさ
 杖もルーン石も、やっぱりこれが良い
 俺が大事に思ってるのは、これだから」

えへへ、と照れた様にはにかんで笑う
杖もルーン石も、大切に思うのは物よりも付随する思い出の方
だから万一にも折れたり割れたりするような事はしたくない透悟だった

「うん?……お、おうっ!
 頑張るよー、さあ、新生土塊ボディのお披露目だっ!」

得意満面で杖を構え陣の中央に立つ
一度目を閉じ深呼吸をして精神を整え、再び目を開けば口から異国の、異世界の言葉が流れ始める
祝詞の様な、呪詛の様な、高らかに、囁くように

そして詠唱に呼応するように、足元の陣に光が灯り、次第に青く蒼く、輝きを強め始めて

イェリン > はにかむ笑顔を、穏やかに見守る。
大事な者が、与えた物を大事な物だと言ってくれる。
こんなに嬉しい事は無い。

高らかに歌い上げられるお披露目宣言。
異国の言葉、異界の言葉。

まばゆい光が視界を包む――

深見 透悟 > 陣から発せられた光は次第に強まり、中心に立つ透悟の姿を覆い隠す
天に向けて立ち昇る魔力の奔流が燐光を伴い夜空へと消えていく
時間にしてほんの数分、しかし体感では1時間ほどに感じられる幻想的な光景は、然し永遠に続くことなど無く
唐突に、前触れ無く僅かな燐光を残して霧散した

「……はぁ、うっ…く」

蛍の様に天へと昇る蒼白い光の粒の中、術者である透悟の姿が再び現れる
陣の描かれたブルーシートは、無地のそれへと変わっており
要所要所に置かれていた魔具も、初めから無かったかのように消えてしまっている

残されたのは、魔力の奔流に呑まれ、揉まれた少年の姿だけ
苦悶の呻きを上げながら、ブルーシートの上で片膝をつくその姿は、右腕も左足も確りと揃っていた

―――ただ、蒼白い光に照らされた少年はまさに今生まれたばかりと言わんばかりに何も纏って居なかった

イェリン > 聞こえるのは苦し気な声。
触れるだけで酔いそうな程の魔力の奔流の中から躍り出た姿に、今の今まで失われていた腕と足が見え、一歩寄る。

その時、至極当然のように、土塊の身体と同様に服を着た姿がそこにあると思っていた。

初めて目にする種類の魔術の行使に瞳を煌めかせて凝視していた。
思考が目の前の光景に置いて行かれて、小首を傾げる。

槍を片手に乙女は公園の中、口も開けず固まっていた。

「……っ」

ややあって、思考が追い付いて声に出す。
声とも言えない細く鳴くような悲鳴が、夜の公園に響いた。

深見 透悟 > 視界が眩む、頭が重い、手足も同様に
思わず片膝をついてしゃがみ、深刻な魔力酔いの症状を追い払う
昔、初めて魔術を行使した時にも似たような感覚に陥ったっけ、とぼんやりとした意識の中で透悟は懐かしい記憶に触れる
初めての魔術は何だったか、飛行だったか、転移だったか
雷だった気もするし、炎だった気もする。風だったかも
そんな思い出をなぞる内に、次第に魔力酔いも治まって、思考がクリアに

「……うぅ、でもちょっとまだ気持ち悪……
 頭もお腹も引っ繰り返って中身出そう……おぇぇ」

嘔吐感を堪えながら、よろよろと立ち上がる
覚束ない足取りでイェリンを振り仰ぎ、友人が変わらずそこに居ることに安堵を覚え
ふにゃ、と笑みを浮かべれば、嘔吐感も次第に薄れて行き……

「でもまあ、成功したから多少の気持ち悪さは我慢しなきゃだ
 へへ、どう?イェリンさん……変なとこ無い?
 何さ、変な声出して……」

得意げに両腕を広げ、自分の姿を見せる透悟
直後、うわ寒ッ!?と声を上げた
反射的に自分の身体を掻き抱いて、あれ?と首を傾げる

「………~~~~~~~っっっ!?!?!?」

こちらも声にならない悲鳴を上げた

イェリン > 苛むように身を包んでいた光が、むしろ包み隠してくれていたのだと知る。
無事に術式が成功した事を理解する一方で、視界に飛び込んだ光景がそれを上塗りしていく。

「服くらいっ、着てなさいよぉ」

言いつつ、纏っていたモッズコートを透悟に投げつけてその姿を隠す。

へにゃへにゃと背中を向けてしゃがみ込んでしまう。
当然、集中などブレにブレて。
維持していた帳も気づけば崩れそうになりつつある。

渦巻いていた魔力が透悟の内に吸い込まれていくため、霊的な危険性は今すぐにあるものではないのだろうが、
風紀の眼が届けばその方が危険ではあった。

深見 透悟 > 「そそそそ、そうは言われて、も!!
 俺だって前の時と同じ感じでやれば服も一緒に……
 
 あ。
 あの時は服も一緒にテクスチャ張ったんだっけ……」

土塊の器――身体は、所詮は人型に作った土人形に、人間っぽい意匠を魔術的に被せただけのもの
衣服はほぼ身体と一体化させていたのだった
しかし今回はより人間の身体に近づけるための術式
当然の様に、衣服を構築するだけの理論も、材料も、何も用意されていない
当然と言えば当然の様に、全裸が完成形である

「うわっ!……あ、えっとありがと!
 あーびっくりした……こんな寒いなんて思ってもみなか……った
 てか、あれ?あ……えっと、見、られた?」

こちらに背を向けしゃがみ込んでいる友人の姿
投げつけられたモッズコートを羽織りつつ、改めて状況を確認する
先の透悟の悲鳴は自分が一糸まとわぬ姿だったことへの驚きの悲鳴
そして今改めて、イェリンがその姿を見ていたことを認識する

「……これは悲鳴通り越して凹む案件ですわ……」

ずーん。モッズコートを羽織ったまま失意体前屈orz

イェリン > 「なん、なにっ、なんで落ち着いて喋ってるのよぉ!」

ゴーレムの作成に対しての考えが違った。
土塊を無理やり動かしているがゆえの魔力の過剰消費、
それを馴染む遺留物をコアにする事で安定化を測るための新調。
変わる事と言えば、その活動時間の上限くらいの物で作りが変わるというのは想像していなかった。

「びっくりするわよ! 見たわよ!
今から忘れるから何とかしてなさいよぉっ」

槍の穂先で地面をこねくり回す。
顔を真っ赤にしながら

「あなたそれ何処で夜を過ごすのよ…」

霊体ならば学舎の中を如何ようにも漂っていられたのであろうが、
身体を得た今、土塊の身体と同じような扱いをするわけにもいかないだろう。

深見 透悟 > 「そこはその、まあ、俺ってば天っっっっ才ですから?
 こんな事で取り乱したりとかはしないわけ
 そりゃもう全く動じたりしてないわけですよ全然、これっぽっちも」

とりあえず何か隠せるもの、と言葉とは裏腹に決死の表情で辺りを見回す
これで良いか、と足元に敷いてあったブルーシートを拾い上げると、さながらスカートの様に腰に巻き付けて

「服、そうか服か……盲点だったな……
 うん、忘れてください……出来れば迅速に……」

落ち着いたら一気に恥ずかしくなってきた
透悟も耳まで真っ赤になりながら、両手で顔を押さえる
顔の火照りが何だかとても懐かしく感じて

「あー……とりあえず、学校に忍び込……む?
 なーに誰にも見つからなければオッケーオッケー!」

それまでに服はどうにかしよう、とあっけらかんと言ってのける
流石に男物の服一式は落ちてないよなー、と呑気に宣ったり

イェリン > ガサガサという音が聞こえてチラリと見やれば、ブルーシートを腰に巻く友の姿。
それを見やり、ようやく目の前の少年の姿と冗談に笑える所にまで気持ちが帰ってくる。

「動じない人は叫んだりしないのよ……」

夜の風が火照った顔に冷たい。
家族や村民同士でサウナに入る文化のある国の生まれだ。
初めて見たという物では無いが、見られたなら自分なら恥ずかしくて穴にでも入りたいとは思う。

「……体育の準備室とか、運動系の部活とか、保健室とか。
あのあたりならジャージだったりなら見つかるんじゃないかしら」

ここから学園までそこそこ距離がある。
流石に、温度を取り戻した彼からコートを引ん剝くような事も無く。

「それ、貸してあげるから風邪ひかないようにしてよね……」

せっかく身体を手に入れた友人がその日の内に体調を崩したなどとなっては何のために付き添ったのかも分からない。

深見 透悟 > 意外とブルーシートって保温性があるな、と感心したりしてたが、イェリンがショックから立ち直ったと見るとほっと胸を撫で下ろす
あのまま小さく丸まってしまったらどうしよう、と少しだけ思ったとか思わなかったとか

「だって寒かったし全裸だよ!?
 そりゃ叫ぶでしょ……いやまあ、見られたのもそこそこショックだけど」

見られて恥ずかしい様な体ではない、と言い切れるほど透悟はナルシストではない
しかし見られてしまったものは仕方ない、と割り切るだけの事は出来る
まさか目の前の友人が細部までじっくり見ていたわけじゃあるまいし、とある種の信頼故でもあるが

「まあそんなとこだよねー……あるいはこの身体が馴染んできたら魔術で服出すのも出来るかもしれないし
 あっ、いや、流石にこのまま借りてくのは、イェリンさんが寒そう!
 ……と言ったところでこの下ブルーシート一枚で何言ってんだって話だよね
 あ、明日には返すから!すーぐ返すから!!」

だからイェリンさんも風邪ひかない様に、と念押しする
その為には今すぐにでも帰路につこう、と歩み寄って、ふとイェリンの頬に手を伸ばす
避けたり振り払ったりしなければ、ふわ、と少しだけ恐る恐る触れて

「……あは、暖かい
 イェリンさん、こんなに暖かかったんだ」

へにゃ、と子供の様に破顔するのだった

イェリン > 適応力、というのだろうか。
自分の置かれた状況に対してひとまずは対応できてしまうのが、透悟の凄い所なのかもしれないと、改めて思う。

「天才魔術師ならなんとかすると思うじゃない、そういうの……」

気まずい空気にならないように、気遣ってだろうか。
いつもと変わらぬ調子で話す友人の姿に、改めて呆れたように肩を落とす。
彼も、人なのだ。想定外の事も起きる。

「そうね、元々前の身体の時だって土からあれだけの物を作っていたのだし、貴方ならすぐにできるんじゃないかしら。
当座の問題は今のその恰好よね……
落ち着いたらでいいのよ、返すのなんて」

それこそ、生きてさえいればいつだってできるのだから。

くしゅんっと、小さく一つくしゃみをして、本格的な冬の寒さに肌を撫でる。
頬に延ばされた手を拒むことはしない。
自分がしたように髪にでも触れるかと思うと、手が触れたのは頬。
幾ばくか普段よりも熱を持った柔く白い肌。

お返しとばかりにこちらも頬に手を伸ばして、その身体に温度がある事を知る。

「……ふふっ」

触れたとて、手袋越しに。
それでも、生きている人と変わらぬ、肌の感触がそこにはあった。

「おめでとう、トーゴ。……お疲れ様」

槍の乙女は、去り際に破顔する少年に向けて笑顔を向けるのだろう。

深見 透悟 > ともかく、どうあれ今この場に居続けると言う選択肢は無かった
この場に居れば居るだけ、お互いが風邪をひく確率が高まる
であれば立ち話も無用、一刻も早く家へと帰るべきだが

互いの頬を触れ合って、笑い合う透悟とイェリン
知らない人が見れば不思議な光景だったことだろう

「へへへー、サーンキュ、イェリンさんっ
 さ、ほら風邪ひいちゃう前に帰ろう帰ろう!」

魔術師の少年は、笑顔のままにイェリンの手を引いて
公園を出れば、片や女子寮片や学校へとそれぞれの帰路についたのだった―――

ご案内:「常世公園の端っこ」から深見 透悟さんが去りました。
ご案内:「常世公園の端っこ」からイェリンさんが去りました。