2021/12/22 のログ
ご案内:「常世美術館」にダスクスレイさんが現れました。
ダスクスレイ >  
常世美術館に展示中の異界の宝石『碧の落涙』をいただくと
斬奪怪盗ダスクスレイからの予告状が入った。

本件に関して風紀委員、及び風紀委員警備部にお鉢が回る。
さて、月夜の大捕物はどう転がる。

ご案内:「常世美術館」に追影切人さんが現れました。
追影切人 > 斬奪怪盗ダスクスレイ――最近、巷を騒がせている厄介な有名人。
その怪盗から、どうやらこの常世美術館へと『予告状』が来たらしい。
本来なら風紀が主導して事に当たるのだろうが…。
今回のようなケースは主に風紀委員会警備部の仕事である。

そんな訳で、仮の身分とはいえその一員である追影にも出勤命令が下された訳だが。

「…んで、その斬だ…何だっけ?まぁ、ソイツがこの美術館のお宝を頂きに来るって?」

他の同僚達が緊張感を漲らせながら、油断なく美術館の各所持ち場を警備しているにも関わらず。

何処か機械じみたシルエットを持つ太刀に近い長さの刀を一振り携えて。
暢気に欠伸を噛み殺しながらその男だけは悠々自適、マイペースといった感じだ。

(…何か面白そうな得物持ってるっつー話だが…斬り甲斐がある相手だといいんだがなぁ)

一見するとサボっているようにしか見えない態度だが…不意に表情が引き締まる。

「―――おい、お前ら多分そろそろ”来るぞ”。」

ダスクスレイ >  
その時、別室でくぐもった悲鳴が聞こえる。
壁がバターのように切り裂かれて砕け散る。
向こう側で、気絶させられた数人の風紀と。

───仮面の怪人が見えることだろう。

「ごきげんよう、風紀委員の諸君」
「美術品を君たちの血で汚したくはない……ゆえに気絶してもらおう」

壁だった場所を刳り貫いて進んでくる異形の歩み。
そして、妖気を帯びた刀を持つ男を見て。
仮面の男が喜色に満ちた声を上げる。

「お前は……第一級監視対象《影切る凶刃》か」
「お前のようなものまで駆り出すとは風紀もなりふり構わなくなってきたか?」

「だが面白い! お前の逸刀と私の閃刀、どちらが上か試してやろう」

天井にあるガラス窓から月明かりが差す。
ゆっくりと、ゆっくりと。
その輝きの下で閃刀『虚空』を抜いていく。

追影切人 > チッ、と舌打ちする。言わんこっちゃねぇ。
警備部の連中も決して素人じゃない。場数も踏んでるしこの手の警備も手馴れたものだ。
――が、向こうが一枚上手…いや、得物が一枚上手と言うべきなのだろうか?

まるで、バターを斬るような呆気なさで壁が切り裂かれて砕け散れば、そちらへとオッドアイの双眸を緩やかに向ける。
飛び散ってくる壁の破片は無造作に右手に携えた刀の柄の部分で弾き散らし。

「おぅおぅお優しいこって。…んで、何だ俺を知ってんのか?そりゃ自己紹介いらなくて何よりだぜ。」

仮面の怪人が壁を刳り貫くように進んでくる。
それを見ても警戒や恐れどころか、むしろ口元をにやぁ、と緩ませて。
奇しくも、彼の怪盗と同じくそこには喜色が浮かんでいた事だろう。

「――つーか、俺の事はどーでもいいんだよ。テメェ、面白ぇ刀持ってるらしいじゃねーか…へぇ…成程、成程?
……くはっ…くひひっ…」

不意に俯いたかと思えば、緩やかに肩を震わせて……そして、月明かりが差し込めば、思い切り顔を上げる。

――爛々とした金銀の双眸が彼と、その抜き放たれる刃を見詰めて。

「くははははははははははははははは!!!!
面白ぇ面白ぇ斬り甲斐があるじゃねーーかよ!!なぁ!?」

男が右手に携えた、怪異の残骸から鍛えられし怪刀―ー『影朧』が機械じみた低い唸り声を響かせる。

ダスクスレイ >  
笑うか。
そうか、私と対峙して。
笑うか……これが第一級監視対象。

「閃刀『虚空』は私が振るえば万物を斬る……」

抜き放って無造作に構える。

「前言撤回だ、お前はここで斬る」
「美術品よりもお前の血のほうが美しいかも知れないからな」

そして第一級監視対象を斬ったとなれば。
私の名はさらに知れ渡ろうというもの。

「いくぞッ!!」

男に向けて駆ける。
既に周囲は風紀委員の有象無象が取り囲んでいるが。
手は出せまい。出せば体のどこかを失うゆえに。

大上段の振り下ろしからの斬り上げのコンビネーション。
私が振るえばラグなく襲いかかる。
最速二連、咬龍剣。

追影切人 > 笑うに決まっている。俺は斬るのが大好きだ。有象無象関係なく。
それしか能が無かったし、物心付く前から何かを切っているようなクソだったから。

「万物を斬る?面白ぇ、だったらそれごとテメェをぶった斬れば俺の勝ちだな?」

無茶苦茶な切り返しをしながら、こちらは腰を異様に低く沈めた独特の構え。
…いや、構えとはとても言えない。例えるなら獣が襲い掛かる前の溜めの動作の如く。

俺がどれだけ斬られようが、周囲がどれだけ斬られようが―ー最後に”全部斬れば”俺の勝ちって事だ。

「おぅ、派手に斬り合いしようぜええええぇぇぇぇ!!!!!」

ドンッ!!と、床を凹ませながら真っ向からこちらも駆ける!!
彼我の距離が一気に縮まり――…

大上段からの振り下ろし、そして切り上げ。タイムラグなどほぼ無い瞬時の2連撃。
普通なら反応する前に切られるか、反応しても完全には防げないだろう。

だが――…

「はははははははは!!!!いいなぁオイっ!!その刀の能力か!?それともテメェの技巧かぁ!?
まぁ――どっちでもいいけどなあああああ!!!!」

対して、男はといえば力任せの右手による横薙ぎの一閃だ。
技巧も刀の能力も何も無い、ただの素人のような一撃ではある。
だが、

ギィィィンッ!!!!

金属同士が擦れ合う様な、けたたましい音と共に神速二連の彼の攻撃を一撃で相殺する!!

「ははははは!!!!」

そのまま、あろう事か嗤いながら更に踏み込めば、振り抜いた刀を強引に軌道修正、再度の横薙ぎでぶった切ろうとする!!

ダスクスレイ >  
大凡、武芸者は2パターンに分けられるように思う。
理性で戦う、理詰めで戦闘そのものをコントールする者。
獣性で戦う、圧倒的闘志で全てを叩き潰す者。
こいつは………

「ッ!!」

凄まじいレベルの後者。
二連斬りを弾かれて後方に虚空が逸れる。
突っ込んできて一刀!! 対処はそれだけか!?

「さて、どちらだろう……なぁ!!」

後方に弾かれた刃を背中側で左手に持ち替えて。
横薙ぎを方向修正するように上方に弾いて即死を免れる。

それにしても。虚空で受けても相手の刀が斬れない。
相当な業物か、あるいは材質そのものが異界の物質か。

 シャ
「殺ぁ!!」

左手持ちをしたまま三連突き。
喉、右肩、腹の順に狙う。

追影切人 > そもそも、この男は自分を武芸者だと思っていないし、単に斬るのが好きなだけ。
そして、力も速度も技巧も関係なく――純粋に斬る事が上手い。ただそれだけだ。

「よーし、よしよしよし…あったまってきたわ…久々だなぁ、こういうの…くははっ」

目が爛々と輝き、獰猛に嗤う様は完全に獣だ。だが、ソレが振るうのは爪でも牙でもない。
どんなに荒唐無稽で無茶苦茶であろうと――あくまで、その身は刃なれば。

器用な芸当で持ち手をスイッチして、こちらの追撃の横薙ぎを上に弾いた。
成程、コイツの戦闘センスも相当なモンだ――嗤いながらも、奇妙に冷静な部分はあり。

怪盗の虚空でこの男の刀が切られない理由はただ一つ。
素材が怪異の残骸という一点。そうでなければ初手で致命傷だったろう。
…勿論、男にとってそんな事は全くどうでもいい。

「くはははははははは!!!!!」

嗤いながら喉、右肩、腹狙いの突きに対して喉元と腹部狙いに対しては、首を傾け刀を縦に翳して防ぎ。
そして、右肩に関しては躊躇無く”貫かせつつ”。

「『影朧』起動ぉぉぉ!!『噴焔爆刃』!!!」

男の叫びと、その流血に呼応して刀が唸りを上げる!
瞬間、刀身全体が真っ赤に輝き――同時に爆炎が吹き荒れる!!

ダスクスレイ >  
圧倒的な獣性に気圧されることなく。
剣戟の応酬に怯えることなく。
竦むべきは自分以外の全てだ。

恐怖しろ、このダスクスレイを!!

「剣戟による闘争は久しぶりかね」
「その熱を抱いて死ぬがいい!」

そして繰り出す攻撃。だが。
右肩を狙った攻撃をそのまま受ける、だと!?
なんのタクティカルアドバンテージがある!!

直後、吹き荒ぶは炎。
爆発的な熱量に左腕を灼かれて後方に跳ぶ。

「クッ………ならば!!」

もういい、ショータイムだ。
殺劇のメインアクターとなるがいい!!

チラ、と隣にある立像を見る。
井上勇樹作、『神々の怒り』。
全長にして3.5メートルの石像。
拳を向けた神の姿がそこにある。

石像の支えと足を斬る。
神の石像が拳を相手に向けたまま倒れ込んでくるだろう。

「これで終幕だッ!!」

追影切人 > 恐怖なんざどうでもいい、取り合えず斬らせろよオマエとその得物を。
怯え、竦み、恐怖、畏怖、そんなものはとっくの昔に斬って置き去りにしてきたんだ。

なぁ、だからよ――…?

「ごちゃごちゃうるせぇ、俺が斬るっつったら死のうが何だろうが斬るんだよ!!」

裏常世渋谷で猛威を振るった怪異『朧車』。
幾つかの派生種が居たが、それらの力の一部を独自に顕現させるのがこの刀の能力だ。
流血をトリガーに、斬る意志を燃料に、人外の因子を起爆剤として吹き荒ぶ焔は自身も灼くが――…

「おいおいおいおい!!斬り合いはこっからだろうがよ!!終幕だぁ!?こっちはやっと盛り上がってきた所なんだよクソが!!!」

そう吼える間にも、男へと巨大な石像が倒れ込んで来る。
先程の爆焔に自身も巻き込んだので、体勢を立て直している最中で回避は間に合わず――…

次の瞬間、石像が木っ端微塵に粉砕され――彼へと真っ直ぐに”何か”が飛来するだろう。
――そう、単純明快、あろう事か男が刀をぶん投げたのだ。

しかも、その刀が『変形』し、巨大な列車じみたフォルムへと変わり空中にレールがあるかの如く彼へと疾走する!!

「終幕とか勝手にテメェが決めてんじゃねぇ!!!俺を殺したきゃもっと死ぬ気で来いやぁ!!!!」

ダスクスレイ >  
どうやら頭のネジが何本がイカれている男らしい。
だが、死の恐怖を知らんのは獣以下ッ!!
その保身なき攻撃にこそ付け入る隙がある!!

「インテリジェンスの欠片もない!!」

次の瞬間、粉砕される石像。
列車。朧車か!? その力を宿した刀などと!!
ええい!!

咄嗟にサイドステップで回避するも、見えないレールは私に続いているらしい。
建物内をカーブしながら、執拗に私を轢殺せんと襲いかかってくる!!

「このッ!!」

空中を飛ぶ斬撃。
空間の断裂を3回に渡り、怪列車に向けて放つ。
止まらなければ、止まるまで次の手段を講じるだけだ!!

追影切人 > そもそも、頭の螺子そのものが無いと言えなくも無いが。
しかし――ちょっとイカれている程度なら第一級監視対象、なんというご大層なものにはならない。

「辻斬り泥棒野郎がご大層な上から目線で語ってんじゃねぇよ!!!」

本来の朧車に比べれば、膂力も速度も大きさも何もかもが劣る。
あくまで、朧車の残骸から鍛えられその妄念を宿しているだけ。
つまりは残滓、欠片のようなもので本来のソレには遠く及びはしないが。

(クソが、やっぱ『雷切』じゃねぇとこの野郎との斬り合いが盛り上がらねーなぁ!!!)

彼の不吉を呼ぶ紫電纏いし黒刀は、残念ながら彼個人の管理下には無い。
この刀も、いわばお試しで使っているだけで、正直使いこなしているとは言い難く。

空間の断裂斬撃を食らい、朧車の”影”の動きが鈍る――矢張りあの刀は相当のモンらしい。
未だ奴に追い縋ってはいるが、遠からずあのままでは勢いを削がれて消滅するだろう。

だが――

「―――おい、余所見してる暇があんのかよ?」

最初から、その刀は”使い捨て”と割り切って彼へとけしかけた。
彼の黒刀は少々特別だが、本来この男は――得物にさほど執着が無い。

故に、彼がそちらに対処している隙に、緩く肩からの流血を厭わず右手を手刀へと変えて。
そのまま、腰溜めに初めて『構え』ながら、一息――まるでそこに見えない刀があるかのような。

「――『空間抜刀』。――ぶった斬る。」

そのまま、右手が霞んだかと思えば彼へと目掛けて『見えない斬撃』を不意打ちで飛ばさんと。

ダスクスレイ >  
奴は。
小さな刃物すら帯びていない。
はずだった。

なのに。私は……背中から斬られ。

「バ、」

バカな。その言葉すら言えないまま。
消える寸前の朧車の影に轢かれて中空を舞う。

常人ならこの時点で轢死していただろう。
なんとか妖刀の力で体を賦活して生き残る。
だがそれだけだ。体が言うことを聞いてくれない。

「貴様…………」

血が流れる。意識が遠のく。
ああ、こんなところで私は……僕は終わってしまうのか。

嫌だ。

こんなところで死にたくない。
もっと、もっと……欲しい。

力が欲しい。

そう願った時、虚空と意識が接続された気がした。
足に力が入る。立ち上がれる。
しかし、立ち上がった時。

「な………」

私の右腕は、虚空の鋼に侵食されていた。
スーツの袖を食い破り、異形化した右上。
腕の感覚はある。しかし、私の腕はどうなっている………?

追影切人 > 斬る事しか能が無いヤツが、生身だからといって何も斬れないという事は無い。
それがどんなに非常識で意味不明だろうが、斬るという意志は肉体を動かす。

…とはいえ。手刀を繰り出した右手は指先まであちこちがズタズタに裂けて血みどろだ。
誰がどう見ても、また同じ”斬撃”を二度繰り出せるようには見えない酷い有様で。

野郎の背中は斬った。ついでに、消え掛けではあるが朧車の影が轢殺…いや、死んではいない。

(あの刀は使い手に再生能力も与えんのか?まぁ、それはいいとして)

右腕はズタズタ、右肩は穴が空いて全身はあちこち爆炎の余波で火傷もある。
左腕は”無傷”だが、まぁそれは想定していたのでこの際どうでもいいとして。

「―――あ?」

奴の様子がおかしい。訝しげに目を細めてその様子を眺めていたが…

「おいおい、何だよまだ隠し玉あんじゃねーか。つまりこっからが本番って事かよオイ?」

楽しげに嗤うが、正直体の方は地味にダメージが蓄積している。無傷なのは怪異化しかけている左腕くらいか。

(…はっ!面白ぇ。どうせこういう斬り合いなんざ今の俺じゃ滅多に味わえねぇんだ。)

消滅した朧車の影はまた元の刀の形状へと戻り、くるくると回転しながら男の足元へと突き刺さる。
それを無造作に”左手で”掴んで引き抜きながら、肩に担ぐように持ち直す。

ダスクスレイ >  
荒い呼吸を吐く。
落ち着け、落ち着けダスクスレイ……
これが力が欲しいという意思に虚空が呼応したものなら。
私は強くなっているはずだ。

「う……おおおおおおおおおおおおぉぉ!!」

悪魔の咆哮(デモニックハウル)。
凄まじい声に周囲のガラスにヒビが入る。
耳を押さえる風紀委員たち。
そして。

追影切人に斬りかかる。

ただの袈裟懸け。だが。
今まで振るったあらゆる一撃よりも鋭かった。

わかる、わかるぞ!!
私は勝てる!!
芥子風菖蒲に!! 八ツ墓千獄に!! そして追影切人にッ!!!

魔剣同調、この力で……全てを斬る!!

追影切人 > 「―――それがテメェの求めたモンか?」

先程までの、狂ったような嗤いを引っ込めて一言呟くように。
悪魔の如き彼の方向が美術館全体を揺らし、周囲の者が耳を塞ぐ。
それでも、男は動じずに真っ向から奴を見据え担いでいた『影朧』を握る左手に力を込める。

――瞬間、単純な袈裟懸け――ただし、今までの斬撃より遥かに鋭いそれが飛んでくる。

「ッッッッ!!!!」

右腕には力が入らない為、必然的に左腕一本で『影朧』を袈裟懸けの軌道に割り込ませて受け止め――切れない!!

何とか『影朧』自体は持ち応えたものの、衝撃は殺しきれずバッサリと体を斜めに切られ吹っ飛ぶ。
それでも、倒れはせずに靴底を床へとダンッ!と叩き付けるようにして強引に体を急停止。

「……チッ、成程。単純明快、膂力も速度も鋭さも跳ね上がってやがる。」

形勢はどうやらあちらに傾いたようだ。ただ、あちらも何のリスクも無しであの状態は保てない…筈だ。

(ごちゃごちゃ推測しても埒があかねぇ。とことん斬り合うまでだ。)

『影朧』を左手一本で腰溜めに構える――先程の『空間抜刀』の構えだ。

ダスクスレイ >  
「ああ!! 私にとっての絶対の力、貴様にとっての死だよ!!」

この男を。殺せる。
手ずから斬り殺せる。
そのことに食欲と性欲が同時に満たされたような
激しい興奮と快感を覚えていた。

「何も成せずに死ねぇぇぇぇ!!」

敵に向けたシンプルな斬り上げ。
それが相手の足元の床もろとも、世界を断裂させる。

この力さえあれば。
世間の愚図どもは私に傅く!!
私が常世の中心となる時が必ず来る!!

追影切人 > 「――そうかよ。だったら……。」

その絶対の力とやらに溺れたまま斬り殺されろクソ野郎。
『空間抜刀』の構えのまま微動だにしない。
大事なのはただ一つ――奴が俺を斬る瞬間、その刹那の――空隙だ。

「――俺に成せるモンは今も昔も何もねぇよ。」

そんなの分かり切っている。シンプルながらも、世界を断裂させるような斬り上げ。
足元の床ごと、こちらを両断せんとするソレは、生半可な一撃では防御も迎撃も不可能。

「―――出来る事はたった一つ。」

左腕が霞み、断絶の一撃に対しての空間抜刀による不可視の一撃――だが、通じない。
それでも、かろうじて断絶の一閃の”芯”を外せたのか左腕が斬り飛ばされるくらいで済んだ。

血飛沫を上げて舞い散るそれは無視して、僅かでも隙が出来たなら、前へとただ踏み込んで。

「――何かを、誰かを、テメェを斬る事だけだ斬奪野郎。」

そのまま、彼の胴体目掛けて、ほぼ零距離からの二度目の右手の『空間抜刀』。

――鮮血と共に、断絶に届かずとも断裂の一閃をカウンターで…返してやるよ!!

ダスクスレイ >  
一瞬の交錯。
弾けるように噴出される鮮血。

「成程、面白い」

切り裂かれた腹部を左手で押さえる。
この力が馴染みきっていないうちに無理をしすぎたか。

「確信したぞ……私はお前を上回れる」
「いや、この世界の誰をも上回る剣腕を手に入れてみせる!!」

跳躍。天井のガラス窓を突き破って屋根へ。

「今回は時間を使いすぎたようだ」

戦闘に夢中になっている間に、宝石は違う場所へ移されていた。
風紀も無能ではない。

「次に会う時、それが貴様の命の刻限だ!!」

そう叫んでから屋根から屋根に跳んでいく。

腕を覆う金属は。
剥離の際に激しい痛みを伴った。
しかし、半分ほど剥がした時点で虚空はただの刀剣に戻った。

痛いが戻れる。その事実がどうしようもなく私を高揚させていた。

追影切人 > 「―――上だ下だそんなのどうでもいいんだよ。」

俺はただ誰よりも何よりも、何が相手だろうが『斬る』だけだ。
強いが弱いか、剣腕が優れているか劣っているか、得物が優れているか鈍か。
そんなつまらんパラメーターなんぞに興味はねぇ。

右腕の二度目の『空間抜刀』により、右腕は拉げる様にズタボロの有様で。
――断裂は届いたが、奴の断絶に比べれば矢張りどうしても劣るだろう。致命にも程遠い。

跳躍し、天井のガラス窓を突き破って屋根へと至る相手を静かに見上げて。

「――ハッ、次に会う時は俺がテメェを今度こそ斬り殺す。」

全く、もっと派手に斬り合いをしたかったが――そこが口惜しい所で。
去っていく奴を見送れば、流石にしんどいのかその場に片膝を付いてしまう。

「…あー、このくらいでしんどいなんて情けねぇ。やっぱ鈍ってんなぁ、俺。」

右腕がズタズタで、左腕が切り飛ばされて、体をバッサリされてあちこち火傷を負っていてこの呟きである。

何人か風紀や警備部の同僚が逃走した奴の追跡に向かったが、おそらく無駄足だろう。
幸い、例のお宝はこの隙に別の場所に移送されて無事だったから仕事は果たした。

「…やっぱ次は『雷切』持ち出さないときつそうだな。」

溜息と共に、誰かが救護班を呼ぶ声をぼんやりと聞いていた。

ご案内:「常世美術館」からダスクスレイさんが去りました。
追影切人 > ――数十分後、救護班に斬り飛ばされた左腕ごと運ばれていく馬鹿の姿があったとか何とか。

「――で、この左腕くっついたりしねぇの?」

なんて戯言を言っていたが――後日本当にくっついたらしい。

ご案内:「常世美術館」から追影切人さんが去りました。