2021/12/27 のログ
ご案内:「某廃ビルの地下」にエルヴェーラ・ネーヴェさんが現れました。
ご案内:「某廃ビルの地下」にハインケルさんが現れました。
エルヴェーラ・ネーヴェ >  
今年も常世学園のクリスマスが終わった。
そうすれば何事も無かったかのように、
皆年末に向けて忙しなく動き始めている。

ここ落第街も、表の世界ほどではないがやはり、
年の瀬にあっては少々いつもと雰囲気が異なるようである。

表ほど大々的に、目立った形でイベントを楽しむ輩は居なくとも、
目をやればそれなりに年の瀬を楽しもうとしている……
そんな連中も幾らか居るのではないかと見ている。
少なくとも、この部屋に居るその者は。

木製テーブルの上。
青白く光るビジョンには常世学園の落第街が映し出されていた。
それらに目をやりながら、
ただただ静かにソファに座っている人形――否、少女が一人。

エルヴェーラ――ミストメイデンと呼ばれる彼女は、
この裏切りの黒と呼ばれる組織の一員にして、備品である。

主な仕事は、こうして彼女自身が得意とする
『魔術的監視網』を用いた落第街の監視。

落第街は広大で、闇は何処までも深い。
故に隅の隅までとはいかないが、
それでも目立つ所であれば大抵は状況を掴むことができる。

ビジョンに映る様々な光景――
それは武器を持って屯する者達の姿であったり、
怪しげな薬を販売している様子であったり、
今まさに行われている暴力行為であったりする――
を見つめながら、ただ静かに座しているのみ。

別の画面では、
表の世界から有志が集って行っているらしい
炊き出しの様子や、はしゃぐ子ども達の姿も映し出されている。
いずれも、落第街の日常だ。
つまるところ、何の異常も見当たらない訳である。

そう、落第街は今日も平和である。
表と裏との均衡が崩れぬ限りは。

テーブルの上に置いてあった黄色い四角形の箱を開けば、
中に入っていた袋を裂き、栄養調整食を一つ摘む。
潤いのある唇の向こう側に、
乾いた固形物を何の感慨もない様子で押し込めば、
エルヴェーラにとっての食事行為は無味乾燥の内に完了である。

味覚を持たぬ彼女にとって、
食事は生命を維持する為の一作業でしかなく、
それ以上の意味を持たないのである。

まるで時が止まっているかのように、
静寂が部屋を包み込んでいる――。

ハインケル >  
そんな静寂に包まれた空間へ

「やっほ~~~♪」

バーン!と勢いよくドアを開け、ラフな服装をした金髪の少女が訪れる

「へへー、遅れ気味のメリークリスマス☆!
 いや~、おんもは賑やかだったよねえ~♪
 街のほーも、表ほどじゃないけどいつもより雰囲気はやっぱりよくって~」

つかつかとブーツの踵を鳴らして歩く
あらゆる意味で、この部屋の静寂を崩す存在だった
手には小さな包を揺らし、ご機嫌な雰囲気を振りまいている

「今日も異常ナシ?」

馴れ馴れしく、その肩口に後から顎を預けるようにして人形…ではない、少女の見つめるビジョンへとその紅い視線を向けた

エルヴェーラ・ネーヴェ >  
さて。金髪の少女が蹴破らんばかりの勢いでドアを開けば、
流石に人形も目を開こうというものである。
そうしてそのまま目を閉じれば、ゆっくりと後方のドアへと
振り返る。

「金狼《フォッケウルフ》……相変わらずですね」

彼女が持つ組織のコードネームを口にし、一言だけ付け加えた。
たったそれだけだが、それが彼女なりの手厚い歓迎《たいおう》らしい。

「そうですか。監視網だけでは掴みきれないところもありますから、
 そういった情報は有益です。ありがとうございます」

街の雰囲気。監視網越しではなかなかに掴むのが難しいところである。
特に、この暗がりの中にあっては狭き独自の判断に陥りかねない。
故にこうした情報共有は大切である。
時折彼女自身も外に行くことはあるが、その頻度は金狼に遠く及ばない。


「……ええ、異常はありませんよ。
 しかし金狼《フォッケウルフ》、
 どちらへ出かけられていたのですか?」

く、と小さく首を傾げる。
何の色も映し出していない瞳が、そこにはあった。

ハインケル >  
さてさて、「相変わらずはこっちのセリフ」なんて返したいところだけど
こちらを向いて、そう言葉をかけてくれただけで十分と、金狼《フォッケウルフ》と呼ばれた少女は満足げに微笑んでいた

「ま、怪しげなシリアルキラーなんかも発生してるみたいだけど、"いつものコト"の範疇かな~♪」

魔術による監視網、そして届かない部分は足を使っての確認も含めて"落第街の秩序"の確認
覗き込む先のビジョンには、いつもとなんら変わらぬ落第街の様子が映し出されていた

首を傾げ、感情の感じられないその眼にじっと見据えられると、少女はにっこりと微笑む
まるで無垢、眼の前の彼女とは正反対に、感情の色に満ち満ちた視線が交差する

「んふふ♪お外のことも見ておかないとねー、って♡
 落第街の外も広いよねえ、この島~」

「もーけっこー留守にしちゃってぇ、かわい~拷悶の霧姫《ミストメイデン》ちゃんを
 こうやってハグしたくて寂しくって堪んなかったんだから~♡」

言いながら、華奢な彼女に腕をまわしてむぎゅっとスキンシップを図ろうとする
彼女にとっては、それは理解に遠い行動なのかもしれないが

エルヴェーラ・ネーヴェ >  
「妖刀、魔剣の類を携えている輩のことであれば、把握はしています」

数多の刀剣を持ち、数多くの殺人を行っている女。
虚空という名の刀を持ち、怪盗を名乗っている男。
個人の戦闘力を見れば十二分に脅威であろうが、街の
均衡を崩さぬのであれば、彼らもあくまで組織にとっては日常の一部である。


「ええ、とても広く、全貌はこの島に居ても掴みきれません」

エルヴェーラは裏の事情であればある程度は収集しているが、
表の情報となると、少々限定的となってくる。
だからこそ、頻繁に外へ出向いたり、
外の人間と深く通じている仲間の存在は大きい。

「頼もしい仲間が帰還してくれたのは、非常に良い状況と言えます」

スキンシップに対しては、勿論無抵抗の形。
ビジョンを見たまま、ハグをされるがまま。
とはいえ、現在は監視業務中な訳であり。

「言えますが……その、少し離れていただいてもよろしいでしょうか」

抑揚のない声色で言い放つエルヴェーラ。

ハインケル >  
そうそう…彼女の言う通り
斬奪怪盗と呼ばれる男の話
把握した上でその口ぶり、ということは
組織としてはこの街の天秤を揺るがす者ではない、ということ…
で、あるならば

「じゃ、傍観でいーのね~。今のトコは。
 へへ~、アタシ頼もしい?んふふー拷悶の霧姫《ミストメイデン》ちゃんにそう言われると嬉しいな~♪」

はぐはぐ、抵抗しない彼女を大変満足げに堪能する金狼であったが…

「えー、ダメ?」

淡々と言われた言葉に子供のように口を尖らせて、ちょっと抵抗

「せっかく久しぶりにミストちゃん成分補給してるのに~。あと5分~」

児童が心地よいお布団から出るのを渋るが如く、食い下がっていた

エルヴェーラ・ネーヴェ >  
「そうですね、今の所は。
 今後均衡を崩すようであれば、動く必要もあるでしょうが……
 少なくとも『組織としては』そのように対応することになるでしょう」

それだけ軽く返しながら、続く言葉を聞いて
こくりと頷く。

「はい、私は頼もしいと判断しています。
 恵まれた五大元素の素養に加え、異能による限界を超えたブースト。
 並の魔術師では歯が立たないことでしょう。

 その上、ライカンスロープとしての肉体性能に関しても申し分なし。
 まず間違いなく、『頼もしい』と判断できる存在ではないでしょうか」

すらすらと途切れなく彼女の能力を挙げて、評価を行うエルヴェーラ。
やはりそこには、何の色《かんじょう》もないのであるが。

「ミストちゃん成分とは一体何なのでしょう……」

まさかこの身体の主要な部分を構成する炭素原子が好み……
という訳ではあるまい。
謎の言葉に、首を傾げるポーズをとることしかできないエルヴェーラ。

「5分は長すぎます。
 残り10秒ほどで離していただければと思います。
 私が監視をしていない時であればいくら触っても問題ありませんが、
 今は監視中になりますので……」

そう口にしつつ。

「そういえば、表の方では上手くやれていますか?」

心配、などという感情の動きはない。
ただ、いつか持っていた感情をトレースするように、
そう心配の言葉を口にした。
彼女が感情らしいものを見せる時があるとすれば、それは
なぞっているだけに過ぎないのである。

ハインケル >  
「んふふ、火の粉が降りかかったら、その限りでいられないけどね~♪」

傍観は、飽くまで"組織として"のスタンスであり、立ち位置…
落第街で活動する以上、そういった"日常の悪"による危険が降りかかることも当然あるが故に
くすりと少女が浮かべる笑みは、普段通りの無垢なものだったが
微笑む口の端に少しばかり覗いた小さな牙は、無垢の奥に隠された獰猛さを思わせる

それから淡々と眼の前の少女に語られる自身の的確な評価
ヴィランハンターとして明確に優秀といえる金狼はその、戦闘評価もあって表で活動することが多い
機械的なのが少し寂しいけれど、評価されること…必要とされることは素直に嬉しかった

「えへへー♪説明しよう!ミストちゃん成分とはミストちゃんからしか摂取できない成分で、
 アタシのテンション維持の為にひつよーなものなのだー♡」

全く理の通らない意味不明の供述をしつつ、
残り10秒と宣言されればやむなく、むぎゅむぎゅとより一層成分抽出するかのようにはぐはぐふにふに
やがて丁度10秒くらいで素直に少女は離れて───名残惜しそうだったが───少し離れた壁際でその壁を背にして落ち着く

「表?うんー、うまくやってると思うよ?
 学園での成績も友人関係も良好♪」

夜間ばっかりだから数は少ないけどねーと笑いながら、そういえばと片手に持っていた小さな包みを掲げる

「そうそう、これお土産~♪
 表でお花屋さんとお友達になってね~、今の時期にはコレがキレイだよーって♡」

包みから取り出されたのは小さな小鉢
そこから覗くのは、特徴的な…儚さを感じる白い花弁のお花
雪待草…スノードロップと呼ばれる、真っ白な雪の中で咲く花をつける、そんな植物だった

エルヴェーラ・ネーヴェ >  
「ええ、それはその通りです。火傷をしては困りますからね」

組織としてのスタンスはあれど、個人に危険が降り掛かるとなれば、
無論防衛行動を取ることはあり得る。
火傷で済めばいいが、落第街にはそれどころでは済まない輩があまりに
多過ぎるのが問題である。

「その発言は非論理的で理解するのが難しいですが、
 金狼《フォッケウルフ》のテンション維持の為に
 私に触れることが必要だというのであれば、
 どうぞお使いください。貴方の士気は重要ですから。
 ……ただし、監視業務以外の時に……してくださいね」

最後にもう一度釘を差そうというところで、一層激しくむぎゅむぎゅと
されて、ちょっと言葉が詰まるエルヴェーラであった。


「それなら何よりです。表と裏の均衡は大切ですから。
 私も本来ならば、もう少し表へ出なければならないのですが……
 授業に少々出るくらいに留まってしまっていますね。
 その点、金狼《フォッケウルフ》をよく見習わなければなりません」

表の世界で友人などは作っていない。
ただ静かに本を読み、ただ静かに授業を受ける。
そして花の世話をする。その程度だ。

そこへ。

「……スノードロップ」

包みから取り出された小鉢。それを見て、目を見開くエルヴェーラ。
口はきゅっと閉ざされたままであるが。
それでも、それを見た瞬間に――ほんの一瞬、ほんの一瞬だが。
少しばかり彼女の顔が柔らかくなったような。
そんな感覚を覚えるかもしれない。

「スノードロップ……希望の言葉を持つ花ですね。
 ありがとうございます。
 ……いただいたからには何かお返ししたいのですが、
 お返しできるものがありません。
 ……申し訳ないです。
 
 ……あ」

そこまで口にして。

「食べますか?」

手にしたのは、黄色い箱の中に入った栄養補助食品。
ちょっと見合わない品であるが、彼女なりのお礼らしい。

ハインケル >  
「んふふ~♪ミストちゃん優しい~♡♡」

お仕事中でなければむぎゅっても良いお墨付きを頂いてご満悦の笑み
さて、とテンションがあがりすぎてズレた帽子を被り直して、少しだけ雰囲気、面持ちを整える

「拷悶の霧姫《ミストメイデン》、貴方には此処でのお仕事もあるからね~。
 内からの監視、外での監視、適材適所で今後もしっかりやってきましょ」

真面目ぶったことを言うのは性分でないらしい金狼
おどけるように小さく肩をあげながら紡ぎ出したのは、しっかりとこの"組織"を第一に考え動く者の言葉である
自身を拾い救った裏切りの律者《トラディメント・ロワ》の意思と在り方に殉ずるべく、常人には簡単に理解し得ない、見えないモノで繋がる者同士の対話だった

「へぇ、そんな花言葉があるんだ?そこまで知らなかったな~」

その一瞬、その表情を見逃さない
でもそれにつっこんだりはしない
空気を読まないのと、無粋なのとはまた別であるからして

「えへへー、いいよいいよぉ、お返しなんてぇ。…ん?」

なんかくれんの?と目を丸くする
差し出されたのは彼女が常食する携帯栄養食だった
見合わない品であるとか、そんなことを気にした様子もなく金狼は微笑む
何かお返しする品はないかと、彼女がそれなりに苦心した様子はすんなりと眼に取れたからである

「ふふ、じゃ、遠慮なくもらうねっ♪」

何処にでも売っているモノにはきっと違いない
それでも彼女がお返しにとくれたモノなら、特別である
差し出されたそれを両手で受け取って、胸元に抱えるようにして

「やったぁ~♪ミストちゃんからお返しもらったよぉ~♡みんなに自慢しちゃお~~~♪」

悦びの感情を全身で表現するように悶ていた
ちょっと真面目モード、は30秒と持続しないらしかった

エルヴェーラ・ネーヴェ >  
「組織の皆さんの役に立つことが仕事ですから」

テンションが上がりまくっている金狼《フォッケウルフ》に向けて、
しれっと返すエルヴェーラ。

「金狼《フォッケウルフ》にしては珍しく真面目な言葉ですね。
 であれば、相応の重みを持って胸に刻んでおきましょう」

こくこく、と小さく頷きを見せるエルヴェーラ。
そう、何処までも対照的な二人ではあるが、
根に掲げているものは同じ――かつてこの地に生きた、一人の男の遺志だ。

「花は、よく育てていますからね。植物と私は親和性が高いのです。
 ありがとうございます、こちらへ飾らせていただきます。
 ……私のそれは、自慢するほどの品ではないですが……まぁ」

そう口にすれば、木製のテーブルの上で小鉢を置いた。
儚げな花が、暗がりに放たれている青白い魔術光を受けて、
静かに輝く。

「喜んでいただけるのであれば、それ以上望むことはありません」

少し首を傾げながらも、金狼《フォッケウルフ》の目を見つめて
エルヴェーラはそう口にした。

これは常世学園の闇、光の射さない裏側で起きた――小さなプレゼント交換会。
少しだけ遅れた、クリスマスがそこには確かにあった。

ハインケル >  
「にひひ、たまにはね~♡」

簡単に肯定してしまうハインケル
真面目に見えることのほうが少なければ、その言葉も大体は不真面目
それらも本人は至って真面目に言っているのだが、時折そうやって姿勢を正すこともあるのだった
主に、裏切りの律者のことを思い返す時に限りなのだがそれを看破するのはなかなか無理がある

「ん♪」

プレゼントを交換して、お花を飾って、可愛い子とひとときを過ごす
クリスマスに必要なものはぜーんぶ、揃っていたのだから、何の不満もない

表舞台の賑やかな喧騒に比べれば───そこそこ片割れは喧しかったけれど───本当に静かで小さな催し
けれどそこにあったのは確かな繋がりの確認と、互いの再認知…そして僅かな喜びの欠片のような色

他の面々はどう過ごしていたのやら、と思いを馳せながら
その日の少しだけ珍しい、薄暗い地下での遅れた聖夜は過ぎ去っていった

ご案内:「某廃ビルの地下」からエルヴェーラ・ネーヴェさんが去りました。
ご案内:「某廃ビルの地下」からハインケルさんが去りました。