2022/01/13 のログ
ご案内:「落第街 閉鎖区画」に紅龍さんが現れました。
紅龍 >  
 【前回までの紅龍おじさん!】

 違反部活『蟠桃会』の用心棒、元軍人の紅龍は。
 『斬奪怪盗ダスクスレイ』の情報を集めるために探偵の『ノア』に仕事を依頼する。
 そんな探偵からの情報を得て、『怪盗』との遭遇に備えるため、風紀委員『芥子風菖蒲』が行った戦闘を分析していた。
 そうした日々の中、懐かしさを覚える少女、『マヤ』と知り合う。
 そして路地裏では探していた『ガスマスク』を目撃、言葉を交わした。
 探偵の調べた情報からは『知のゆびさき』という製薬会社の存在を知り、『マヤ』の血液から精製された薬を手に入れる。
 さらには違反部活の武器職人に依頼し、装備を充実させた。

 そんな日々の中、少女『マヤ』と触れ合う時間は龍の心を穏やかにさせる。
 手放したくない存在が増えた事を、重荷と感じつつも――その重さに安心感を覚える龍であった。

 そしてこれは、【歓楽街大規模暴動事件】と呼ばれる事になる、ある事件の最初の物語である。

 

紅龍 >  
「──こちら『トランキライザー』
 各班、状況報告」

 暗号通信を使って、数十人の臨時の部下に報告を求める。
 聞こえてくるのは、各班いずれからも配置完了の声。

「──よし、作戦のおさらいだ。
 今回、オレたち『ギーク』の役割は、派手に暴れて対象の注意を引く事だ。
 要するに、路上パフォーマンスで観客を釘付けにしろってこった」

 通信からいくつかの笑い声が聞こえる。
 悪くない、元々ただの素人共だったにしては、いい空気だ。

「各員、必ずセルを維持したまま作戦行動。
 一人になったら助からないと思え。
 必死に互いをフォローしあえよ。
 こんな作戦で消耗してたんじゃ、オレの部下としちゃ失格だからな」

 茶化す言葉、不満そうな言葉。
 だが聞こえる中に、オレの指示を聞かないやつはいなかった。
 全員からの了解が確認できる。
 鍛えたのは一月かそこらの期間しかなかったが、即席にしてはいい仕上がりだ。
 

紅龍 >  
「──そろそろだ。
 気を引き締めろよ。
 『奴ら』の危険性はオレたちが一番知っている」

 通信から唸る声、唾を飲む音が聞こえる。
 そして、班員の一部から『奴ら』を見つけたという報告。

「──対象を目視で確認。
 総員、接敵《エンゲージ》
 さあ踊り明かすぞ《レッツダンス》
 交戦開始《オープンコンバット》!」

 身を伏せていたバラックから起き上がり、頭を出すと同時に対象の頭に70口径を叩き込む。
 そこら中から銃声が聞こえ、部下たちが戦闘に入ったのを確認した。

「訓練通りだ。
 落ち着いて頭を狙え。
 難しければ、足を撃ってから確実に対処しろ。
 焦って焼夷榴弾を無駄にするなよ」

 返ってくる声は威勢がいい。
 順調な滑り出しだ。

「──よし、第一波の鎮圧を確認!
 一旦下がって息継ぎしろ。
 第二波からが勝負だ」

 そして間もないうちに、銃声に引き寄せられた『奴ら』がうめき声を上げながら集まってくる。
 どいつもこいつも、すでに助けようがない状態だ。

「生存者がいても気を取られるなよ。
 そいつらを助けるのはオレたちの仕事じゃねえ。
 ──よし、このまま引きつけろ」
 

紅龍 >  
「いいぞ、引き付けつつ後退。
 『ウィザード』の支援に移れ!」

 そしてオレたちはゆっくりと後退する。
 こちらが下がるのに合わせて、『奴ら』行進をはじめた。

 ──事の発端は、先日オレが捕まえた裏切り者の話にさかのぼる。
 ヤツは、『闘争の種』の研究データだけでなく、実物まで横流ししていた。
 それが判明したのがつい昨日。
 早急に取引相手の違反部活を制圧するため動いたが、既にアジトは壊滅状態。
 作戦を制圧から、感染拡大遅延に切り替えたのが今朝。
 そして今が、その作戦行動の真っ最中だ。

「──『誘引剤』の設置を確認した。
 総員撤退準備」

 『ウィザード』が『奴ら』を引き付ける装置の設置を終えたと報告。
 これは『奴ら』を引き寄せる薬剤を散布し、設定時間後に爆発するトラップだ。
 これで汚染範囲の縮小と、区画閉鎖までの時間稼ぎを行うのが今回の作戦目的だ。

「──『ヴァンダル』も動き出したな。
 よし、仕事は終わりだ。
 手柄は『ヴァンダル』にくれてやれ」

 『ヴァンダル』──落第街担当の風紀委員共だ。
 連中には予め情報を流し、対策と対応を促してある。
 迅速とは言えないが、十分に早い対応だろう。
 

紅龍 >  
「合図と同時に焼夷榴弾で牽制、引き上げるぞ。
 チンタラしてると、封鎖に巻き込まれるからな!」

 『ヴァンダル』はこちらの都合何か構いやしない。
 オレたちの撤退が間に合わなくとも、封鎖は実行される。
 だからこその『蛮族《ヴァンダル》』という役割を担わせたわけだ。
 まあそもそも、風紀と違反部活が連携なんざ、まともにできるはずもねえ。
 『道化《ギーク》』はおっかなびっくり、滑稽に逃げ出す頃合いって事だ。

 オレの合図で、区画の至るところで爆発と火の手が上がる。
 『奴ら』はベースが植物なだけあって、火には近寄ろうとしない。
 時間稼ぎはもう十分だろう。

「──よし、撤退だ!
 各自、各々の逃走ルートを確認しろ。
 逃げ遅れても助けは来ねえからな!」

 そして、『ギーク』は退場する。
 区画の完全閉鎖がなされた頃には、『ウィザード』が仕掛けた『誘引剤』が派手に花火を上げることだろう。
 

紅龍 >  
「──全員無事か。
 ま、初作戦にしちゃ上出来だな」

 各班からの報告に耳を傾け、部隊全員の撤退完了を確認する。
 ちっとばかり詰め込み教育になったが、きっちり叩き込んだだけあってカタチにはなった。
 欲を言えば、コイツラがこのまま、オレの部下に収まってくれりゃあいいんだが。

「ま、そうはいかねえよな」

 まだ、今のところはな。

「──ああ、オレだ。
 そろそろ取引の返事、聞かせてもらいてえんだがな」

 『オレの』取引相手を呼び出す。
 場所はこの近辺でもっとも信用できる店だ。

「さて──寿司でも食いにいくか」

 路地裏から、慌ただしく人が動き回る表通りに出る。
 構築されたバリケードからは、『ヴァンダル』どもの本気が見て取れた。
 そりゃそうだ。
 万が一にもこの島でバイオハザードなんか起きてみろ。
 初動に失敗した人間がどう責任を取らされるかなんてわかったもんじゃない。

 これからあの場所がどうなるか。
 あそこであと何百人が死ぬことになるか。
 此処から先はオレの仕事じゃねえ。
 オレには関係のない事だ。

「──胸クソ悪ぃ」

 『タバコ』を咥えて、馴染みの寿司屋へと向かった。
 

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