2022/07/15 のログ
セレネ > 水の妖精と戯れていた所、不意に感じた気配に警戒を滲ませる。

「あらこんばんは。
えぇ、良い月夜ですね。
……どうぞ、私で良ければ。」

言語は日本語へと変えて。
話し合いでも、何かしらでも、己で良ければ付き合おう。
神族である己を見ても臆さない所と、神性のような雰囲気を纏う彼女に訝し気な感情を抱く。
まるで己のような存在を多く見てきたかのよう…に見えるような落ち着き。

「…驚かないのですね?」

背に双翼、そして隠さない神性と姿。
そんな己の姿を見ても臆さないとは、と。

清水千里 >  
 セレネ氏の肯定に深く頷き、水面に揺れるその姿を見やるよう、彼女は湖のほとりに腰を落ち着け。

「驚く?」

 そう言って、少し彼女は苦笑いした。

「それはつまり、君のありようを、ということか?
 ……まあ、確かに、非人間の存在を疎う人間もこの島にはいる。
 しかし、私はそうではない。
 君のような存在を私は知っているし、付き合いも持っている。
 だから……君がそういう姿をしていても、私はただその姿を”美しい”としか思わないな」

セレネ > この世界、特に言うならこの島か。
彼女の言うように人の子ではない事を嫌い排除しよう、或いは排他的な人間はいる。
だからこそ己は神族である事を隠しているし、学園側にも多くの情報を伝えていない。

「存在を知っているなら兎も角、付き合いも…とは。
なかなかに珍しい方ですね。
――ふふ、褒めても何も出ませんよ?」

素直に褒めてくれる彼女の言葉。
お世辞としても、やはりちょっと照れてしまう。
クスクスと小さく喉を鳴らして笑えば、月の光の粒が舞う。

「…しかし、貴女は不思議な感覚がありますね。
人の身なのに、そうではないような…。」

少なくとも今までこの島で出会った人物達とはまた違った気配だ、と。

清水千里 >  
 大変容の後、世界を深い闇が覆い、
 それまでの文明社会の平穏に反して異常と化した存在は人々から疎まれるようになった。
 絶望した存在、迫害された存在、これまで彼女はそういう人間に寄り添ってきた。
 まるで同じ血を分けた我が子を護る母のように。

「なに、社交辞令や世辞ではなく、私個人の心からの感想を言ったまでだ、
 見返りなど何も求めてはいないよ」

 人が見る限りでは、彼女の発したその言葉は真実であるように思える。

「君は人をよく見ているな。彼らもそれに気づいているよ。
 ああ、この島で風紀や、公安と呼ばれる人びとのことだ。
 確かに私は人でありながら人ではない。ちょうど君のように。
 ――私を神と呼ぶ人間もいるが」

 そう言って、少しの微笑を浮かべ。

「とはいえ、私は神ではない。少なくとも。人の子が想像する"それ"とは違う。
 例えるなら、もっと和らげなものだ」

セレネ > 疎まれる存在に寄り添う。
それはそれら存在からは有難い事でもあろうが、
逆に言えばそうではない人々からはどう見られているか。

「……それは、それで。
その、恥ずかしいですね…。」

己の容姿等を褒められるのは慣れていない。
やや顔を彼女から逸らし、妖精達と戯れるのは照れ隠しか。

「……えぇ、そうですね。
私の知る神族でもなさそうです、が。」

だからといって、どうこう言うつもりもない。
神性に似た雰囲気はあれどそうではない、何とも奇妙な存在だと感じる。

「貴女のような存在は初めてなので、実に興味が湧きますね。」

蒼に滲む感情は、好奇心。
それは彼女にも分かるだろう。

清水千里 >  
何事も万事うまくはいかない。彼女のやり方が理解されず、説得ができないときもある。
そうして時がただ過ぎてゆくのを黙ってみていられないときもある。

"私は天使ではないんだよ"

かつてそう述べたように、その時がくれば、彼女は謙遜な勇気をもって力を行使する。
それが彼女のやり方だ。

「ハハ、恥ずかしがることはない。この場の妖精たちも私の言に同意してくれるだろう、なあ?」

そう言って、セレネ氏と同じように霊達に話しかける。

「自らを知ろうとしてくれることは嬉しいことだ、たとえそれが興味本位であったとしても」

表情に滲む好奇心を観察し、セレネ氏に語り掛ける。

「あえていうなれば、私はヒトを見守る存在だよ。私は危険から彼らを護りさえする。
 しかし、いつまでも私の庇護のもとにはいられない。
 ヒトは危険に直進し、問題を解決せずにはいられない生き物だからね。
 ――私は人の子の信じる神とは違う、彼らの運命を導く存在ではないんだ」

セレネ > 神族である己でさえ、上手くいかない時などザラにある。
”力”を使って思い通りにするのは容易い事。
でも、それをしてしまえば何かしらで必ず歪みは生じる。
だからこそ、それはしないししたくない。

「……。」

同意を求められた妖精達はリリン、と鈴のような音を鳴らして上下に細かく揺れる。
その通りと言うように。

「ふむ。それだけ聞けば、確かに神族と似たような存在ではありますが。
見守るだけでなく、危険から護ろうとするのは何故なのでしょう?」

人の子を導こうと思う神族は一定数いれど、護ろうと思う神族はそうはいない。
面白そうだから。行く末が気になるから。だから見守っている。
神族はそんな勝手な存在だと己は思っている。

清水千里 >  
「赤ん坊を抱いたことはあるかね? 彼は自分が世界の支配者だと思っている。
 母親に抱かれ、その庇護の下で世界の法則を知り、そこから利益を得る。
 泣けば母親は彼のために何でもしてくれる。幸福は容易であり、すべての欲望は満たされる。
 そしてある日その幻想は突如消える。
 今まで信じていた法則は崩壊し、自分が寄る辺なき孤独であることを知る」

「分かるかね? 大変容後、人びとは異常を呪った。かつての平穏を懐古し、再び揺り籠に戻ることを望んだ。
 彼らにそのままにさせてあげたかったという思いが、私になかったとは言えないが」

「だが、それが現実だ。大変容はいつか来たるものだった、それが世界の法則だからだ。
 私はそれを遅らせた。人が混乱の中で自らを滅ばさないままにするために、
 彼らが自分を律するに十分な力を手に入れるまで。
 そしてあの時、人類の幼年期は終わりを告げたんだ。巣立ちの時だった」

「私が彼らを危険から護るのはなぜかといったな、簡単なことだ。私は彼らの母だからだ」

セレネ > 「…ふむ。」

彼女の説明に、豊かな胸の下で腕を組む。
成程、母であるならば子を護るのは必然か。
一人の親である己にも、よく分かる。

「この世界の法則は、私にはわからないですが。
まぁ、そう。…色々と大変そうですね。」

己は異世界の女神だから、この世界の理などは知らないが。
子一人を育て、護り慈しむのも大変なのに、それでも護ると言える彼女は素晴らしいと思うのだ。
これは一人の”親”としての感想だが。

清水千里 >  
「……おいおい、確かに話したのは私だが、あまり考えこまないでくれよ?
 もしかしたら君に今話したこと一切はまったくの冗談で、
 私はただの妄想好きのいち宇宙人に過ぎないのかもしれないんだぜ?」

 そう言って、軽く笑って。

「とはいえ、大変容から長い刻が経った今でさえ、みな苦労しているのは確かだな。
 私が彼らを護っているのはお節介かもしれない、と思う時がある。
 君はそういう時はないか? 特に、反発されたときとかな」

セレネ > 「ただの妄想にしてはあまりに出来過ぎていたので。
…それともなんでしょう、冗談として受けて流した方が良かったのです?」

だとしたら真面目に聞いていた己が馬鹿みたいではないか。
小さく溜息を吐いては。

「うーん…。あまりそういった事は考えた事は無いですね。
子は親の知らぬうちに育っているものですし、
反発された時は逆に成長しているのだと思って嬉しくなりますね。」

そう思えるのも、ひとえに己を育ててくれた養父がそういう人だったから、なのもあるかもしれないが。

清水千里 >  
「受け流すか、本気にするか、どちらにせよ大した意味はないさ。
 お好きにどうぞ、私は否定も肯定もしないよ」

 すまんすまん、とセレネ氏にフォローを入れつつ。

「……そうだな、子は親の知らぬ間に育つものだ。
 親のやり方を拒むのも、彼らが自分なりのやり方を覚え、成長しているという証だものな、
 君の言うとおり、嬉しく思うべきなのかもしれない。
 私もまだまだだな」

 と、しみじみ呟いて。

「――といっても、親と子の縁は良くも悪くも切れないものだから、
 私も彼らにお節介をやめる気はないがね。
 君もいい親御さんにに育てられたようで何よりだ」

セレネ > 「…貴女不思議な人ですね…。」

なんだろう、掴みどころのない感じがする。
どう踏み込めばいいか分からない人物は、己は少し苦手なのだけど。
…まぁ、悪い人では無いようだから良いか。

「子の成長と共に親も親として成長していくものだと思いますし
未熟である事を恥じる必要はないかと。
初めから完璧である親はいませんよ。」

己だってまだまだ及ばないと思う所は多々あるのだ。

「それで良いと思いますよ。
本当に嫌なら、彼らが拒むでしょうしね。
えぇ、今でも尊敬している人ですよ。」

清水千里 >  
「そうだな、まだ親になって2万年も経っていないのだから、経験が足りなくても仕方ない」

 これを彼女は真顔で言うのであるが。

「不思議、掴みどころがない、蝙蝠、魔女、いろいろ言われてるよ。どれも正確な評価だ」

 しかし、やはり悪い人間ではないような気がする。

「尊敬を受けるということは難しいことだな。特に講義ではそう思うよ。
 私を尊敬して、目を輝かせて聴講してくれる子がいればいいのだが、高望みというものだな。
 最近は前席でいびきを立てながら寝る強者も出てきたんだ。無論悪夢を夢見せて起こしたが」

セレネ > 「……二万?」

随分とご長寿ですね。
口から出かけた言葉を飲みこんだ。
先程の説明を仮に本当とするのなら。
人の子を見守り、護る以上長命であるのは必然かもしれない。

「否定はしないのですね…。」

蝙蝠や魔女辺りはもう悪口に近いものだと思うけど。

「尊敬してくれる子は勝手にそうなりますから、自ら望むものではないかと。
貴女自身に魅力があれば自然と尊敬してくれる子も出てきますよ。」

清水千里 >  
「なに、君だって普通の人間に比べれば長寿になるだろう。
 長い年を生きれば生きるほど、今という時間の感じ方は早くなるものさ。
 私など、ウン万年前の出来事が、はや昨日の出来事に思える」

「うん、否定はしない。その方が謎が増えて面白いだろう?」

 そう言ってニヤりと笑う。

「魅力か、それは自分で評価することが一番難しいものだな。
 所詮私とて、自分のやるべきことを熱心にやることしかできんというわけだ。
 その点保証するが、君は十分魅力あふれた人物だと思うよ」

セレネ > 「…歳についてはノーコメントで。
光陰矢の如し、でしたっけ?
確かに長く生きれば時が過ぎるのは早く感じますね。」

互いに女性であるから、歳の話はやめておこう。
ニヤと笑う彼女を見ると、己は苦笑するしかなかった。

「えぇ、そうですね……。
私、ですか?…そうでしょうか。
私のような子など、どこにでも居るものだと思いますけれど。」

初対面ながら褒めてくれるのは有難いが、自身の魅力などどこにあるのか分からない己。
緩く首を傾げれば、また光の粒が舞った。

清水千里 >  
「そうだな、年齢については、これ以上はやめておこう。
 すまないな、経てきた時の長さを語るのは年寄りの悪い癖だ」

 そう言って、苦笑する彼女に肩を竦めるようにすることで返して。

「仮に君のような存在がどこにでもいたとしても、
 今ここで妖精たちに愛され、私に魅力を認められた君自身はここにしかいないのさ。
 自信過剰は困るが、君はもう少し自分に自信を持ってもいいと思うよ?
 とはいっても、謙遜の美徳こそが魅力を評価するのが難しいゆえんだとも思うがね」

 舞った光の粒、彼女の側に落ちてきたその一粒を彼女が手ですくえば、
 光の粒はじんわりと雪のように融けて彼女の掌の中へ消えた。

セレネ > 「いいえ、お気になさらず。」

彼女の言葉にはそうふるふる首を振って。
舞う光の粒は、やや増えた。

「…他の子からもよくそう言われるのですが。
どうにも、自信の持ち方が分からないもので。」

分からなくなってしまった、というのが正しいかもしれない。
とはいえ、素直に褒めてくれるのが嫌な訳ではなく。

「……さて、まだ色々とお話したい所ではありますが
私はそろそろ帰らないと。お話、有難う御座いました。
またどこかで会えたら良いですね。」

別れの言葉を告げ、柔らかく微笑むと
双翼をはためかせ飛び上がった。
そして淡く蒼に輝く羽根をいくつか舞い落としながら、
寮へと飛び去って行くだろう――。

ご案内:「転移荒野 月の湖」からセレネさんが去りました。
ご案内:「転移荒野 月の湖」から清水千里さんが去りました。