2022/10/23 のログ
ご案内:「Wings Tickle」にメロウさんが現れました。
ご案内:「Wings Tickle」に黛 薫さんが現れました。
■黛 薫 >
秋も半ばを過ぎ、冬の足音が聞こえ始める頃。
青垣山の木々は燃える色に染まり、短くなった
昼の終わり際には虫の鳴く声が聞こえてくる。
寂々たる侘びに染まる野山とは裏腹に商店街は
浮ついた雰囲気。カボチャや西洋妖怪モチーフの
お菓子や衣装、飾り付け。月末のハロウィンに
向けた商戦が始まっている。
黛薫はあまり時節のイベントに興味がない。
しかし、ハロウィンはどうしても意識しがち。
(今年もめちゃくちゃ "憑かれ" た……)
彼女は魔力や精気を糧とする存在を誘引する体質。
霊的、宗教的意味合いの強いハロウィンは霊的な
存在の発生に大きく寄与する。お陰でこの時期は
霊障に悩まされがち。
幸いというべきか復学してからは学生としての
権利を行使できるようになったため、祭祀局で
お祓いをしてもらったり、お守りを借り受けたり。
どうにか凌げているのが現状。
とはいえ憑かれて "氣" を吸われれば疲れるもので。
癒しを求めて行きつけのお店へ。お祭りムードは
歓楽街でも変わらないが、扇情的な衣装や不健全な
サービスが目立っている。
目が回りそうな喧騒は路地裏に入ってようやく
ひと段落といったところ。飾り気のない通りを
過ぎて、いつものお店の扉を叩く。
■メロウ > 「疲れ、たね」
年末に近づくにつれ、次第に作業が多くなっていく
仮にも『お店』としてやっている以上、借りた場所が場所でも...或いは、だからこそ、正式な書類は山積みになっていく
今日、やっとその大半が片付いた所なのだ。表に看板を出して、のんびり棚整理をしようかなと思っていた所
扉をノックする音がする。この符丁は、相手もきっと意識していないけれど、『会いに来た』とのその合図
「いらっしゃい。ちょっと待ってて!」
棚から降ろした幾つの瓶を机に置いて、扉を開く
今日もまた早足で、貴女の事を迎えに行く
「くひひ。薫様、そろそろ来ると思ってたよ」
ぎこちない笑みは相変わらず、手を差し出す
歩行の調子はどうだろう。そろそろリハビリも終わったのかな?
■黛 薫 >
「やっほ、メロウ。……って、もしかしてドア
開ける前にバレてた? 分かりやすかったかな、
あーしが来たの」
お店を訪れた彼女もまた若干お疲れ気味の空気が
漂っている。復学してからは遅れを取り戻す為の
授業や新しい所属決め、アルバイトなどで忙しく、
お店もご無沙汰気味だったから『そろそろ』だと
勘づくのはおかしな話でもない。
それ以上にお店のドアをわざわざノックする客は
少ないので、客としてだけでなく友人として訪れる
黛薫の仕草は分かりやすかった。
「……メロウもお疲れ?」
首を傾げる黛薫の動作は随分自然なものになった。
人体に詳しいメロウであればこそ、それが『運動』
ではなく『操作』であると見抜けるのだろうけれど。
動きの乱れは操作の難しさよりむしろ疲労から来て
いると察せるだろうか。
■メロウ > 「分からない方が良かったかな?だとすると、色々な癖を直して貰わないといけないけど
私がこのお店に居る限り、サプライズの類はきっと難しいかも」
『お疲れ』との返事の前に、上着があれば預かろうと伸ばした手は相変わらず
お店の中は、香りの為にも快適を保たれている。つまり、外の具合を参考にすると暑かったり寒かったり
「あと数日遅かったら、お買い物も終えて『用意』は出来てたんだけど
今日だと何もないね。いひ、バレたらいけないかも」
何のことだろうか。そんな言葉を残して、二人分の席の用意を進めていく
お疲れの内容は、今日も淹れるティーと共にどうだろう?
■黛 薫 >
「……そーな。言われてみりゃ、メロウにバレずに
この店に来られる気はしねーよなぁ……」
思考、行動のパターンは勿論、足運びのリズムに
神経質で慎重なノックの仕方。何より、纏う香り。
きっと当人より黛薫の所作に詳しいメロウは余程の
イレギュラーがない限り気付けるのだろう。
「用意って……まーた何か企んでる?」
お気に入りの動物モチーフのパーカー、外では
まず脱がないそれを手渡しながら、探るような
目付き。他者の視線に怯えずに居られない彼女も
このお店の中でなら見られることを気にせず済む。
用意された席に座り、手土産のかぼちゃプリンを
ティーカップの隣に添えた。
若干疑うような目付きをしているのは已む無し。
心の柔いところに触れられないよう、他者との
距離に敏感になりがちな黛薫は、するりと懐に
滑り込んでくるメロウに度々どぎまぎさせられて
いるのだから。
とはいえ企みという表現は流石に言い掛かり気味か。
■メロウ > 「企んでないよ。寧ろ、企んでいたら怖いなぁって」
首を傾け、笑みは案山子のように
勿論、店内の雰囲気が大きく変わっている訳でもなく、
机の上に並べられた瓶を脇に寄せ、二人の前に並んだプリン
見下ろして、口の前で指を合わせて
うん、きっとあなたも『意識』はしてるんだ
今日の目線は随分と、貴女の心を探るような色をしていた
透明な瞳だから、もしかしたら簡単に透けて見えるのかも
「何に疲れていたかって、まずはそこからのお話しかな?
と言うのも、私だってお店をやっている訳だからさ
『経営』の悩みは1つや2つや3つはあって、薫様のタブレットに助けられてるんだと思う
この商売をただの趣味と言うには、色々と責任が多いからねぇ」
ティーを啜り、香りを吐息に乗せる。高級嗜好品の戯言
■黛 薫 >
「……ふぅん?」
探るような視線。手土産のプリンに視線を落とし、
何か考えているような雰囲気。意図せず失敗した
此方のサプライズが意味を持ち始めたような感覚。
「ま、その辺はイィや。メロウが何か企んでても
あーしの嫌がるコトはしねーだろーし」
"サプライズ" を企んでいるなら探りを入れ過ぎて
台無しになっても面白くない。……嫌がるコトは
しないだろうと言いつつも、ちょっぴり意地悪を
されるのは覚悟の上で。
逆にメロウが企みを勘繰っているなら、今度こそ
意図してサプライズを狙ってみるのもアリかな、
なんて考えながらティーカップに口を付ける。
「あー……だから最近通信量が増えてたのか……」
好きでやっているとはいえ、店舗である以上
営業とは切り離せず、経営という下支えが必要。
取り分け専門的な技術、材料を扱う趣味の店は
何かと手続きが面倒になりがちなのだろう。
「あーしの方は、まー学園の色々……授業とか
委員会とかアルバイトとか、あとは通院とか。
挙げりゃたくさんあっけぉ、何より時期よな。
『ハロウィン』って彼の世と此の世の境が曖昧に
なりやすぃ時節でさ。低級霊とかが湧くのな。
あーし、そーゆーのに好かれやすぃ体質だから
この時期ずっと肩が重ぃんだわ」
該当種族だけに感じ取れる『薫り』という形で
発露する誘惑、誘引の体質。この時期は顕著に
影響が出るのだとため息混じりに語る。
■メロウ > 「薫様って意外とそういう所だよね。私が今まで何したっけ?」
頬が膨らみ、またすぐに萎む。不機嫌なのはポーズだけだとして、きちんと表明して読み取ってもらう事が好き
1つ見せれば1つ返してくれると思う。或いはもっと?
「...でも、私の想像以上に忙しそうだね
体の方はもう十分に動かせてるみたいだけど、集中で操作しても傷まない訳じゃない
うん。今日のこれからが開いていたらちゃんとマッサージもするとして」
予定をディスプレイを展開して記入する
あれだけ微妙な顔をしていた便利機器、薫が構築したものとはいえこれ程使いこなすまでには向き合っていた様子
フリックをして、画面を消去。向き合う表情は、随分と真面目なものだった
「で、ね
今は丁度『ハロウィン』だって言うのは私も知ってる
そして薫様は色々な物を引き寄せているって言うのも知っている
私はそれを感じ取れないけど?」
本当の不機嫌は、彼女の眉に現れる。笑顔は下手なのにしかめっ面はお上手
体質的にはどうにも、自分と薫は相性が悪い。貴方にとって都合がいいかもしれない事も、目の前の機械な少女にとってはどうだろう?
■黛 薫 >
「何って」「……不意打ち?」
暗がりに踏み込む覚悟をしていたのに横から手を
引いて連れ去ってしまったりとか、往来で隠れて
口付けしたりとか、心の準備が出来ていないのを
知った上であざとい装飾を身につけてみたりとか。
色々あるが、一言で表せばそうなる。
「しょーじきマッサージはめちゃくちゃ助かる……。
身体が重いと動かすのが億劫で、集中出来ねーと
余計に負担かかるしさぁ……」
『便利なもの』に対抗心を燃やしてロートルの
機械で手続きを済ませていた彼女。タブレットを
使い熟す姿に、自分が『言い訳』の一助になれて
良かったと思うと同時、これがなければメロウの
忙しさはどうなっていたやらと不安にも思える。
指の動きを目で追って、不意に顔を上げると
そこにあったのは作り物でない遺憾の意。
「それは、なー……いぁでもしゃーねーじゃん。
異能研が徹底的に成分調査しても芳香成分の
源が見つかんなぃくらぃなんだし……」
黛薫の『供儀体質』を感知出来る者は決まって
『甘い薫りがした』と供述する。事実、それは
嗅覚を通して影響を及ぼし、呼吸を止めることで
影響を抑えられ、布地への沈着、空間への滞留、
水や油に溶け出すなど、両親媒性の芳香成分に
極めて近しい性質、挙動を有している。
しかし、薫りの元となる成分は『無い』のだ。
お陰で再現出来ず、誘引対象外の種族にはそれが
どんな薫りなのか認識すら出来ないときている。
■メロウ > 「不意打ちね」
彼女の口はこの方面に二度と開かれなかった
思い出は鮮明に蘇る、そのどれもが随分とウキウキで行っていたようにも
「くひっ」
口は軽率に開かれた。笑う声は今日も好調
伝えてそれが通じ合えば、不満として長らく残す訳ではなく
『香りを専門とする者』としての知見を露わさなければ行けなかろう
「私の方もそうなんだ。やっぱり、今匂いを求めても何も感じない
それ故に、検出できない以上それを『ある』とは言えないし、
本来『香り』として分類は出来ない。それでもそれは『ある』
だったら、成分があらゆる機材で検出できない。それだけの事と考えるのが妥当なんだよね」
言いたくはなかったけど、と。これ以上の敗北宣言もない
感知できなければ、対策を立てる事も難しい。どうにも出来ない悩みだった
...今は、だが
「薫様。その香りを採取したことはある?香りじゃなくてもいい、空気を保存したことは?」
■黛 薫 >
笑みを漏らすメロウにジトっとした不満げな視線を
送る。一目で分かる感情表現が単なるポーズなのは
黛薫もまた同じ、ティーカップを置いた頃にはもう
不満の様相は失せていた。
「採取したっつーか、されたってか……いちお、
対策と研究のために定期的にサンプル提供は
してる。『薫り』に近い性質だからいろいろ
調べてるうちに霧散しちまうらしくて、一回
提供すればOKにはならないみたぃ」
「どーも液体に溶ける性質があるみたぃだから、
手っ取り早い手段として、唾液の提供が多ぃ」
天井に視線を逃す。スプーンに手を伸ばすまでの
短い黙考を挟んでから、口を開いた。
「メロウも興味ある? サンプル」
芳香成分が存在していれば、メロウにサンプルなど
不要だったろう。いつでもこうして会えるのだから、
薫りを覚えて己の内に留めおけば良かったはず。
しかし "そうでない" から、薫りそのものでなく
薫りを有する何かしらが手元にない限り調査の
手掛かりすら掴めない。
■メロウ > 「そりゃあ、勿論ね
マスターにとって私が貴重であると同時に、調香師にとっても薫様は貴重な存在だから
うん。これを偶然と言うには随分と出来過ぎたかな?
これが偶然なんだから、私はこれ以上何も言えないんだけど」
再び、指を重ねて口の前に添える態度。いつもの考え事
「でも唾液、唾液かぁ...」
『どうやって』は幾つも思いつく。思いつき過ぎて考えているのが今
自分と相手の関係は、唾液よりもっと表記のしにくいモノを交換する事すら可能ではあるけれど
『研究』を前面に出す時の薫様は本当に真面目で、だからいじり甲斐が無いのも事実
楽しみたいなぁ、と小悪魔が囁けども。自分も『研究』は真面目にしたい性分でもある
どっちの私が今のお好み?悩みの一部はそれでもあった
■黛 薫 >
「まあ、な。あーしも気持ちは分かる」
名は体を表す。香りならざる薫りを振り撒く彼女が
『薫』の名前を持つことも含めて、出来過ぎた偶然。
彼女の薫りを紐解く過程は『調香師』から見れば
この上なくやり甲斐のある行為だろう。
黛薫もまた単なる友愛、親愛に留まらず、滅びた
文明がたったひとつ残した奇跡に魔術的な価値を
見出している。偶然でないなら必然か、運命か。
陳腐だが、いずれそうなりたいから手を伸ばす。
それでも、お互い手の届かない領域はある。
鏡合わせならぬ陰陽はどうにももどかしい。
閑話休題。
「……メロウ、なーんか考え……企んでなぃ?」
まるで話が一周して最初に戻ってきたかのよう。
しかし今度は正しく『企み』の気配を感じ取った。
捻くれている癖に中身は素直で、向き合ったことに
対しては真面目で真摯。お陰で心を許した相手には
脇が甘く、打てば響くから弄られる。
悪戯っぽく思索を膨らませるメロウに身構えては
いるものの、そうやって妙なところで聡いから
逆につつきやすい。当人に自覚がなさそうなのが
また余計に。
■メロウ > 「べ・つ・に・ですが~~~?」
分かりやすく、揶揄うように突き放してみれば指を解いて
必要以上の言葉を漏らし、楽しんでしまいそうな自分の口をスプーン片手に
掬い上げたカボチャのプリンの一口で蓋をした
「ん、む。ふふ~」
プリンは1つの器に少ない材料。そして以外にも複雑な感覚の交差で完成する
本体は甘く、引き立たせるために苦く、なめらかに硬さを含み、そしてバニラと牛乳の香りが混ざり合う
自ずと上がった口角に細められた目の形。クッキーの時よりもしかすると、反応が良く見えるのかも?
小悪魔の態度を解けば天使にしか見えないような、ある意味で質の悪い存在なのである
■黛 薫 >
(コレは間違いなく何か企んでるな)
疑念は確信に至るも、ご機嫌に口の端を吊り上げる
メロウの表情を見て、ため息を漏らすだけに終わる。
プリンに負けず劣らず甘く、カラメルの如く苦い顔。
素直じゃない物言いに態とらしい敬語が混ざるのは
一体誰に似たのやら。
「まぁ? ホントになーんも企んでねーなら?
べぇつにあーしも気にしたりしませんけぉ?」
言葉とは裏腹に露骨な態度。しかしその癖不機嫌を
引きずって今の時間を台無しにしたくないと言わん
ばかりに、さっさと紅茶とプリンで口直し。
話にオチがついた……もとい話が落ち着いた所で
黛薫は思い出したようにバッグに手をやった。
「まあ、それはそれとして、だけぉ。
マッサージと調香、どっちが先のがイィ?」
蒼い香水は瓶底に数滴残るのみ。今日纏っている
白い香りは使う日が限られる都合上減りが遅いが、
それも補充を考えるべき量になっている。
お店のコンセプト的には『客の望み通りに』が
正解なのかもしれないが、適した順番があるなら
先にプロの意見を聞いておきたいというのも本音。
■メロウ > 「初めての人は調香が先。お得意様はマッサージが先
薫様なら...調香かな。普通だったら逆だなって思うんだけど」
曰く、プロの意見とは逆行するものが貴女の中にあるらしい
「マッサージの後の休んでる時間、キャンドルが燃え尽きるまで時間、或いはお客様が着替えている頃。私は席を外して調香をする時間があるからね
リラックスしてもらって、お会計の時に『いつもの』を渡せるならそれがいい
勿論初めての人も、キャンドルの香りから望む香りを尋ねて調香をしたりもするけれど、薫様がこの順番なのにはまた別の理由があるよ」
分かるかな?匙を咥えたまま首を傾ける。なぞなぞよりもずっと直球、そうでなければ答えに辿り着けないかもしれません
■黛 薫 >
「一見さんの場合、調香が先なのはお客さんの
好みとか聞くからか。マッサージするにしても
焚く香りの好みは知っといた方がイィ、と」
逆に、好みを把握している常連であればプロセスを
省いても何ら問題はない。隙間時間に調香を行えば
客を待たせることなくスムーズに受け渡しが出来る。
翻って、調香を先に行う場合は待ち時間が生まれる。
自分の場合はその方が良いだろうということは──
「調香の間も一緒にお話できるから」
「それとも、マッサージの後の時間も
一緒にいてくれるから……ってコト?」
大真面目に答え、すぐに自身の言動を省みて
目が泳いだ。恥ずかしいことを言ったかも。
■メロウ > ふと口から出てきては、反省するように目を泳がせた答え
メロウの口は自然と笑みを形作られて、薄く開かれて曰く
「...いつもの2つで良いのかな?それとも、新しいものに挑戦する?」
『答え』ではなく、普段の会話。揶揄い過ぎているように見える?
例えば、それを『正解』『不正解』だと言ってみよう。たぶん貴方は内省で数分は動けなくなろう
一応優しさのつもり、なんだけど。こればかりはあんまり伝わらない気がしているのだ
■黛 薫 >
「んぁ、新しいの? それはちょっと興味ある。
お店に来られる理由が増えりゃ、気兼ねなく
来られ……あー、ぁーー……」
会話の流れでそのまま答え……言葉が途切れた。
メロウは黛薫が出した答えに是と返していない。
いつもの2つではない『新しいもの』がメロウの
想定した答え、と考えると。
手を突き出して待ったをかけ、もう片方の手で
目元を隠すように覆う。深呼吸を交えたしばしの
沈黙。結局内省に入った彼女が再起動するまで、
貴女はどんな表情で見ているのだろう。
「……興味、ある。……あります」
今度は両手で口元を隠しながら、ぼそぼそと。
■メロウ > 「ん。よろしい」
くひ、と。いたずら~~~な笑みが浮かぶけれど、見せた態度はここまでです
本当はここまでもったいぶるつもりはなかったのですけれども。態度として遊んでしまったのは間違いない
「私も反省はしているよ。こんな風にサプライズにするつもりはなかったし
ひとえに、薫様が可愛すぎたのが悪いともいえる。うーん、私も悪い子だからね」
先程まで避けていた香りの瓶を、仕舞おうと思っていた瓶の数々を改めて手元に引き寄せる
合計したのは5つほど。足りるかどうかは貴方の返答次第
「『ハロウィン』というのは、私の知らないスピリチュアルな要素
だから取り寄せてみたの。私にも出来るスピリチュアル
香りで占いをする事もあるらしいね?そういう事、やってみようかなって
まずは薫様の信じているモノを知らないといけないけど。例えば、薫様の信じる『元素』の数とか、ね」
『あなたの為』をモットーにする少女だから、占いの方法もあなたに合わせる。そのくらいは当然の事
■黛 薫 >
「今のはあーし悪くないもん」
むすっとした表情ではあるが、目の前で行われる
準備からは目を離さない。拗ねているからといって
相手の行いを蔑ろにしない辺りが彼女らしさ。
誘導されたような、掌の上で転がされたような、
何とも言えない敗北感に頰を膨らませるのが精々。
揶揄ったのか、などと確認でも取ろうものなら
既に掘った墓穴を掘り進むことになりかねない。
あくまでメロウの言葉選びの所為だと言外の抗議。
「"信じる" 元素の数ってコトは化学元素の話じゃ
ねーよな。元素の定義から委ねられてる?」
■メロウ > 「そうだね。というのも、私が参考にする占いは『この世界』のものじゃなくってさ
『どういうモノか』をあんまりしっかり理解できてないのかも
新しいコトとは言ったけど。その実質は、薫様と行ってみるテストみたいなもの」
メロウは時々、お客が来ないタイミングで取り寄せた本を読む
この世界の最新に限らず、異世界由来の旧い技の数々も。そしてその新しきも同様に
古い時代の機械である彼女も、香りに関する知識だけは苔むしたものにはしない為の努力は続けているのだ
「薫様の使っているものは『水』が多いよね
でも水は、どの分類でも外されないモノ。だから私じゃ定義できない
そういう知識はやっぱり、薫様に借りないと考えられない概念だから?」
■黛 薫 >
「なるほど?」
ペースを取り戻したとは言い難いが、理解はした。
弄り甲斐のある油断した状態から、研究と思索に
頭が切り替わったと言っても良い。
「化学元素の定義から一旦離れて話をすると、
元素は万物が有する性質、形相を分割したモノ。
2つに分けるなら乾坤や陰陽、3つに分けるなら
天地海、4つに分けるなら火水風土の四大元素や
その性質を分割した乾湿/熱冷、5つに分けるなら
木火土金水の五行、ってな具合。場合によっては
複数の元素論を掛け合わせたり、足し合わせたり。
或いは中立/中間やいずれにも属さない例外を
加えるコトもある」
「別の元素、属性論を基盤に置く場合、同じ元素も
異なる性質、形相で区分けされる。例えば水を
例に挙げると、四大元素では冷たく湿ったモノと
扱われ、固化して冷たく乾いたモノ、土に変ずる。
でも五行の思想に当て嵌めると、水が育むのは
木であり、土は水を濁らせ堰き止める、剋する
元素として扱われる」
「どれが間違いでもなく、分け方の問題。
冷たく乾いた氷を土と扱うこともあるし、
状態が異なるだけで水と扱うこともある。
氷をひとつの独立した元素とすることも」
「多くの元素論で独立した一属性として扱われる
水だって同じモノじゃない。幾つかに分けた内の
1つを『水』と呼んでいる。物質としての水を
基準にしがちだから、範囲は被りがちだけぉ」
ふっと一呼吸を挟む。
「だから、水が外れる分類も意外とあんのよな。
それこそ化学元素だってそう。水素と酸素の
化合物である水は異なる元素に跨る合成物」
「と、まぁ『元素』の話をするならまずそっから
知る必要がある。遠回りだったけどどの元素を
『信じるか』って話は、自分の場合どうやって
分けてるか、になるかんな。信じてるからって
他の否定にはなんねーんだ」
「それを踏まえて、あーしの『信じる』区分。
火、地、風、氷、水、木、雷。都合7つかな。
掛け合わせるカタチなら別のも加わるけぉ、
『占い』に使うならここまで」
知ってる分野の話になると、こうなる。
■メロウ > 研究者として、一度興味を向けられらモノをしゃべり続けてしまうのは貴方の性
分かっていたし、だからこそ。貴方が喋り終わる前に紅茶のおかわりを注いでおく。これが出来るお人形というモノです
「それじゃあ、数ある組み合わせの中でそれを信じているのはどうして?
お話しの中にも出てきたけど、『水』と『氷』を分けている分類はマイナーだと思う
薫様の見る世界には意味がある。私がすることは変わらない
言葉から貴方を知って、言葉の機微を計る。そうして香りを選ぶ
続けてくれると嬉しいな。きっと、まだまだ話足りないでしょ?」
メロウは立ち上がって、棚に向かう。ここから足りないモノを選ぶ作業だ
■黛 薫 >
「あーしが基盤に置いてる元素論、属性論は
『遷移属性』ってゆーのよな。世界の推移や
変化がどうやって起きるかに基づいてる。
それをベースにした区分から『元素』として
よく挙げられてるモノを据えた感じかな」
「火は猛威、契機と変革。
地は基底、還り産む場所。
風は自由、絶え間ない変遷。
氷は浸透、停滞と休眠。
水は流転、変化による安定。
木は円環、初と終の繋がり。
雷は累加、蓄積と解放」
「あーしがコレをベースにしてんのは、元素論って
どーしても『順序』『相性』が生まれがちだから。
対極にある元素が相剋しあったり、別の元素を
生成するのに決まった道筋を辿る必要があったり、
ひとつの元素に特化するほど別属性が使いにくく
なったりとか」
「例えばあーしの適正は『水』だけぉ、他元素論を
ベースにすっと魔術で機械を動かすための電子が
相性悪かったりする。平等に移り変わるベースが
ねーと、あーしに出来ること限られすぎてたの」
継ぎ足された紅茶で、話し続けて渇いた喉を潤す。
ありがと、と小さく付け加えてからまた口を開く。
「それを踏まえると、この元素論は『占い』に
転用する場合『相性占い』には向かねーのな。
火と水は相性悪ぃ、みたいな単純なカタチに
落とし込めねーから。
逆に『これからどんな移り変わりがあるか』
未来を占うのには向いてる。それがイィ方向に
変わるか、悪い方向に変わるかは陰陽や正負、
つまり別の属性論と組み合わせんのがベターか」
■メロウ > 「なるほどね。分類で言うとレーダーチャートに向いてるような分け方なのかもね
『属性』は特徴の比喩。一言で表しながらも、その意味は単純じゃない
カードに意味を込めるように、自然に見える世界に意味を込めて
表現しているのが、薫様の信じている世界の味方という訳だ」
机の上に置いていた香りは、確か
だから手元に集めないといけない精油は...
言葉を重ねつつも指先は淀みなく
思えば、最近貴女に見せている姿は同じ調香のルーチンワーク
今日、唐突に別の事を提案したのは『新鮮な自分』を見せたかったのか
「とすると、ぴったりなのはアレなのかな
カードは同じ位相に複数の意味を持ち合わせない
調香だからこそ出来る占い方があるの
つまり、複数の遷移を1つの瓶に込める事
その為にはある程度無作為の選出が必要だから」
考え事を口にして、ここで一度手が止まる
このお店に何か、ランダムな要素を捻出出来る道具はあったっけ?
実は何もないような気がしてくる...
■黛 薫 >
「そーな。複数の遷移を混ぜ合わせるってのも
あり得るし、そこから新しい変化が生まれる
可能性もあるワケだ」
淀みなく語り続けていた口は時折休憩を挟むように
なりつつある。折角お代わりを貰った紅茶を温かい
うちに味わいたいのも一因だが、見慣れた動きとは
異なる貴女の手つきに興味を惹かれているのもまた
理由のひとつなのだろう。
「また7つってのがなかなか厄介なのよな。
素数だから、同様に確からしい選び方が
限られてんの。まー、そやって別の数に
影響されないからこその平等なんだけぉ」
1から10までの数の中では最も大きい素数であり、
かつ次いで大きい5と違って手指などの馴染み深い
代表例を持たない7という数を平等に選ぶのはやや
手間がかかる。カードを使うにしても、不要な数を
除外する必要があるのだし。
「あえてシンプルに選ぶならクジが楽かな?
紙とペンだけあれば作れっから」
■メロウ > 「同じものを選んでも良いんだよね。くじ引きでも良いけど...」
瓶を見る。ラベルはしてあるが、専門的な言語が並ぶ
一目見て見分けを付けられるとしたら、それはもう一人の専門家というほかない
そして少なくとも、今日のお客様はその分類に該当をしない
「...瓶を何回か選んでみる?それだったら、何の用意も必要がないから
どんな組み合わせでも、滅茶苦茶な事にはならないと思う。だって私が選んだ香りだもんね?」
机の上の5つ、棚から持って来た2つ
貴女がどれか分からないうちに、これの順番を変えていく
■黛 薫 >
「ん、了解。じゃあそれで行こ」
じっと瓶を観察していたが、途中で目を閉じる。
調香素材を見分ける能力は持たないが、無意識に
特徴を覚えてしまえば無作為ではなくなるから。
並べ替えられた瓶に、目を閉じたまま触れる。
区別の付かないそれを直感で選んでメロウに
確認してもらい、また瓶を入れ替えて選ぶ。
3度、それを繰り返した。 [3d7→2+4+5=11]
■黛 薫 >
初めの並びを基準に、2番目、4番目、5番目の
瓶を1回ずつ。目を開いてメロウに視線を向ける。
どうかな? と確認するかのように。