2020/06/23 のログ
ご案内:「月神本家」に月神 詠さんが現れました。
ご案内:「月神本家」に彩紀 心湊さんが現れました。
■*** > ~前回のあらすじ~
図書館で資料漁りの休憩をしていた心湊の下へとやって来た詠。
一緒に帰ろうという話になるが、心湊の食事情を重く見た詠は、なんと手料理を振舞うことに。
しかも泊まり込みで勉強するとまで言い出して、心湊が住む学生寮では難しいことから、月神家に案内することになったのであった───
■月神 詠 > 「到着いたしました。此処が私(わたくし)の家でございます」
学生居住区の外れ、常世神社に程近い場所に彼女の家はあった。
左右の果てが見えない立派な木造の門があなたを出迎えるだろう。
いかにもTHE・日本家屋といった趣の屋敷である。
辺りは薄暗く、門前に立つ灯篭の光がぼんやりと周囲を照らすばかりだ。
■彩紀 心湊 > 「……予想以上だったのだけど。」
想像の3倍くらいの豪邸に息を呑む。
なにやら、複雑な家庭事情がありそうな様子だったがこれなら納得だ。
こんな屋敷に住んでいる人が、和やか和気あいあいと過ごしているのはあまりにも印象にそぐわない。
「……本当に良かったのかしら…。いえ、まあ…ここまで来たなら、なのだけど…。」
流石にやや萎縮気味に詠の後ろをついて歩くことだろう。
■月神 詠 > 「広いのは見かけだけで、実際に使われているのは敷地の三割程度でございます」
こちらはあなたの反応が予想通りだったようで、苦笑しながら門を開いた。
門を潜ればすぐ玄関、というわけでもなく……
石畳の道が真っ直ぐに続いており、その両脇には立派な日本庭園が設えられていた。
大きな池には錦鯉が泳いでいるのが見える。
「あちらが母屋……お父様達がいらっしゃる場所で、私の部屋はあちらの離れです。
母屋には許可無く立ち入るな、と仰せつかっておりますので」
そのまま、離れの方へとあなたを先導していく。
■彩紀 心湊 > 「…同じ敷地なのに、随分とバラバラに暮らしているのね…。」
普通、娘を離れに住まわせるのか?などと思いつつ、周囲を眺める。
足りない語彙で言うのであれば、整った庭園だ。時代劇などでも使われてもおかしくはないほどに綺麗な場所である。
こうした場所に住んだのなら、確かに彼女のような気品が備わってもおかしくはないのだろう。
「……離れは、他に誰かいるの?」
■月神 詠 > 「精神修行の一環でございます。何よりもまずは自立をせよ、と。
以前は妹と二人で使っておりましたが、あの子が出ていってしまってからは一人ですね。
時折、使いの者が訪ねてくるくらいでしょうか」
離れ、と言ってもこれ単体で一軒家ほどもあり、内装もしっかりとしている。
電気や水道、ガスも通っているようで、ここだけで暮らしていけそうなのは分かるだろう。
「お風呂場はまた別館になりますので……後程ご案内いたしますね」
一部屋ずつ紹介しながら歩き、最後に二つ並んだ部屋のうち手前の方を飛ばして、奥の部屋の前で足を止めた。
「こちらが私の部屋でございます。ただ、その……
客間の用意が無く、心湊さんもこちらで寝泊まりしていただくことになるのですが……よろしかったでしょうか?」
ここまで連れて来ておいて何を今更といった質問である。
道中は料理のことしか考えていなかったため、着いてから思い出したのであった。
■彩紀 心湊 > 「せ、精神修行……。」
まさか50年昔ほどさかのぼってもまだ古風と言われそうな文化がまだ残っていたとは…と頰を引きつらせる。
とはいえ、虐待を受けている…といったレベルの様子でもないので一安心。
でも、妹が出ていくというのも正直納得できる気もした女学生である。
「と、ええ…。そういえば…そのまま来たから着替えとか…。」
無い。
借りるしか無いのだろうが…この雰囲気。まいったな、着物の類など殆ど着たこともないぞとバツが悪そうに庭園を眺めるという形で現実から逃げる。
「……ええ、寝泊まりは全然。
むしろ、詠の方が大丈夫……?」
家族と一緒に寝るのとではわけが違うだろうと、そう尋ねる。
■月神 詠 > 「私は……あまり大丈夫ではないかもしれません」
他人をこの家に招いたのはこれが初めて。
となれば、家族以外の誰かと寝食を共にするのも当然これが初めてである。
そんな初めての出来事の連続に、詠は───
「演舞とも異なる、この高揚感……これが"わくわくする"という事なのですねっ!」
───めちゃくちゃテンションが上がっていた!
■彩紀 心湊 > 「……ん………?」
大丈夫ではない、と言われれば…思わず身構えてしまうわけだけれど——
「……ふ、ふふ…詠さんったら…。」
その言葉を聞いて思わず吹き出すように笑う。
これでは、精神修行の体もなせないのでは無いだろうかと思いながらも楽しげに。
自分という存在がここまでの息抜きになるのなら、やぶさかではないというものだ。
「それじゃあ…ゆっくりとする前にご飯としましょうか…。手伝えることはある?」
■月神 詠 > 「も、申し訳ございません。年甲斐もなくはしゃいでしまって……」
あなたに笑われ、恥ずかしそうに頬を赤く染めて肩を竦ませた。
体面上、毅然と振る舞わなければならないという自負は一応あるらしい。
「そ、そうですね。二人前を作るのは久しぶりですし……
心湊さんの味の好みなども知りたいですから、調理を手伝っていただけると助かります」
そう話しながら台所へとあなたを案内するだろう。
■彩紀 心湊 > 「いいえ、いいの…。
そうやって素直に喜ぶところ、好きよ。」
軽くアナタを一瞥しながら、荷物をおいて。
高嶺の花…と呼ばれるものだからこそ、こうやって自分に正直な姿にときめくものがあるというものだ。
「私好みの味、ね…?最初なのだし…アナタの味が知りたいものだけど…。
ぁ…基本的には好き嫌いは特に無いわ…ゲテモノレベルはまた話は別として。」
家柄的に、やはり和食なのだろうか。
とりあえず、ご飯を炊くくらいは出来るのでお米を探す。
■月神 詠 > 「私も心湊さんのはっきりとした所は好く思っておりますが、
面と向かってそう仰られますと照れてしまいます……」
好きよ、と言われ ますます顔を赤くしつつ。
台所に炊飯器の類はなく、昔ながらの羽釜(はがま)が鎮座している。
他の調理器具も古風なものが多い。流石に冷蔵庫は置いてあるようだが……
「そうですか? でしたら、普段通りのものを二人前作るといたしましょうか」
並べられた食材は、やはりというか和食に使われるものが多い。
慣れた手つきで下拵えを始めていくだろう。
■彩紀 心湊 > 「……ん?」
この女、Likeなのを良いことに平然とそんな言葉を使う。
しかしまあ、照れると言われてそれを察せないほど鈍いわけでもなく…。
「……ふふ、いいじゃない。同性なのだし、気にしすぎないことよ。」
と、軽い調子で告げる。
「いや…しかし、ええ……この場所だけでも十分文化遺産になりそうというか……現存してたのね…羽釜…。」
この現代(近未来)、未だにこういった設備が残っているとは思わなかった。
わざわざ作ったというのならここの家のものはかなり考えが凝り固まっているのだろうと思う。
それはともかく、米に対しての水の量も分かっているつもりだし分かる範囲のことはこの女学生も手早く済ませていくことだろう。
■月神 詠 > 「そ、それもそうでございますね。なにぶん不慣れなもので……」
羨望の眼差しを向けられることこそあれど、直接ぶつけられるのとはわけが違う。
まだ少しぎこちない様子のまま調理は進んでいく……
「なんでも、ここの羽釜は曾祖母様の代から使っているそうです」
新しくなっているのは今はもう使えないほど古くなってしまったものらしい。
■彩紀 心湊 > 「………ふふ、可愛いわね…アナタのそういうところ。」
ちらりと、そちらの顔を見れば小悪魔のような笑みを零す。
こうも愛らしい生き物がいるのだから悪戯をしたくなるというものだ。
けれどまあ…本当に、そう思っているのも確かで。
「曾祖母……。
……なるほど、本当に歴史ある家庭なのねぇ…。
と…そういえば、何を作るの?」
お家の話もほどほどに、食事のことへを話題を移す。
気になる部分もあるのだが、それは今は良いだろうという判断だ。
■月神 詠 > 「もうっ、そうやってまた私を揶揄って……!」
怒っているわけではないが、ぐぬぬ……といった感じのリアクションだ。
あまり本気の言葉と受け取ってはいないのかもしれない。
自分がそこまで言われるほどの人物とは思わないからでもあるが。
「こほん……今晩は鯖の味噌煮とお味噌汁にしようかと。それと付け合わせを少々」
鯖や味噌の用意をしながら質問に答える。
今取り出した小松菜などの野菜類はその付け合わせに使うのだろう。
■彩紀 心湊 > 「ふふ。」
そういうところだぞ、と言わんばかりの微笑ましい笑み。
しかしまあ、楽しいからとからかい過ぎるのも良くはない。
かといって、そこまで自らを低く評価することはないのだけどな…とぼんやりとは思う。
「…王道の和食、って感じ…うん、了解よ…。
正直…学食の定食で仕方なく食べた以来ね…。」
鯖の味噌煮たべたーいという気分になるということは中々ない。好き嫌いが特になければなおのこと。
なんとなく食べたいものを食べている彼女にとって、それとなく外される筆頭の定食でもあった。
「付け合せの盛り付けはこちらがやるから…味噌汁とかお願いしても良い?」
小松菜などを確かめれば、そう尋ねて早速作業に取り掛かる。
■月神 詠 > 「お気に召しませんでしたか……?」
味噌汁の具材を切りながら、あなたの献立に対する微妙な反応に眉根が下がる。
"好き嫌い"と"今食べたいもの/食べたくないもの"は似て非なるもの。
あなたが煮魚の気分でないなら、今から別の献立にすることも考慮している。
■彩紀 心湊 > 「ん?ああいえ…全然そんなことはないのよ。
紛らわしくてごめんなさいね。
いや…こう、なんというのかしら…洋食とか麺類に寄りがちなのよね…私。
すぐ食べ終わるから…。」
スッ…と目をそらす不養生案件者。
体型が維持出来ているのは神社にぶらりと立ち寄る程度に散歩癖が幸いしているのだろう。
■月神 詠 > 「それなら良いのですが……いいえ、良くはありません!」
ひとまず献立変更とはならずに済んで安堵しつつ、偏った食生活には難色を示した。
和食と洋食の好みはともかく、手軽なものに頼りすぎるのはよくない。
「やはり普段の食生活から改善する必要があるようですね。
心湊さんが億劫に思わず、また食べたいと思えるような料理を作ってみせます!」
それは所謂「胃袋を掴む」というやつなのでは?
ということを嫁入り前の彼女は知る由もなく、調理に励んでいる。
■彩紀 心湊 > 「ですよねー………。」
今日のお昼はかけうどん。偏食ここに極まっている。
彼女の性格からして、こうなるのは分かっていたのだがつまらない嘘は付きたくはなかった。
「…そ、それは…私はありがたいことだけど……。
……いやまあ…楽しみにしてる…。」
熱の入った言葉に押されるように、そそくさを付け合わせの盛り付けを済ませ食卓へと運んでいく。
正直、こうしてご飯を作ってもらっている事自体少し申し訳ないと思っているのに世話を見られるとなるとそれが加速するのは必然。
どうしたものかと平静を装いつつ、もわもわと考える。
■月神 詠 > 姉というのは世話を焼きたがる生き物なのかもしれない。
彼女はそれが特に顕著で、こうして血縁ですらないあなたの面倒も見ようとしている。
それが行き過ぎて妹と疎遠になったというのだから、放置しておけばどうなるかは想像に難くないだろう。
とはいえ、止める方法があるかと問われれば───頑張れ、としか言いようもないのだが。
「そういえば、心湊さんはご兄弟はいらっしゃるのですか?」
お姉ちゃんみを発揮していたからなのか、不意にそんな事を訊ねだした。
■彩紀 心湊 > 「…ん……。」
思考を遮るようなそんな問いかけに顔を上げる。
「いいえ、一人っ子。
ここに来てからは一人暮らしだし…世話を焼くとか焼かれるとかあまり経験ないのよね…。」
彼女はまあ、良い子なのだろう。
しかし、過ぎれば"対等"ではなくなる。そういうことなのだろうなぁと会ったことのない妹の心中をほんの少しだけ察する。
■月神 詠 > 「そうなのですか。この島にはお一人で?」
いろいろ苦労もあったでしょう、などと言いながら鍋を煮立たせていく。
台所に味噌の良い香りが漂ってきた頃合いだ。
かまどの火力は絶大で、米もそろそろ炊き上がるだろう。
■彩紀 心湊 > 「そうね…?
一人かしら…。どうしてまた…?」
どういった問いなのだろうか?と首をかしげる。
料理の匂いが香ってくれば、ご飯をよそいにその隣に立った。
■月神 詠 > 「ああ、いえ……他意はないのです。不躾でしたら申し訳ございません。
ただ……心湊さんについて、まだ何も知りませんでしたので」
こちらの身の上や家庭環境などを話していく内に、相手のことも知りたくなったのだ。
それだけのことらしく、深く聞き出すつもりはないと付け加えた。
そうこうしている内に盛り付けなどを済ませていく。
出来上がった料理を盆に乗せ、食べるのは詠の部屋で行うようだ。
■彩紀 心湊 > 「ああ、そういうこと。
そういうことならいくらだって答えるもの。
ああでも…世話を見ることなんて考えないでいいのよ。心配はありがたいのだけれどね。
…対等、でしょう?」
別に、詮索されて困るようなこともないので軽く笑ってそう答えつつも付け加えるようにして告げる。
一緒に料理を盆に乗せて運んでいけば…とりあえず、その部屋を見渡すことだろう。
■月神 詠 > 「対等……そうでございました。
私ったら一人で舞い上がってしまって……お恥ずかしい」
あなたの言葉で先刻までの軽い暴走ぶりを自覚し、己を恥じた。
対等でありたいと望んだのは他ならぬ自分なのだから、気を付けなくてはいけない。
さて───改めて詠の部屋だが、意外にも和室というわけではなかった。
個室にしては広く取られた間取りに、至って普通の勉強机が二つ。
もっとも、このご時世に文机で筆を湿らせる方がおかしいと言えばおかしいのだが。
部屋の中央にはカーペットが敷かれ、その上にはローテーブル。
それからクローゼットと洋服箪笥、化粧台、大きなベッド。テレビなど電子機器の類は見当たらない。
「この部屋は、私達が離れをあてがわれた時に増やしていただいたのです。
元々は妹と二人部屋でしたから、窮屈に感じることはないかと思いますが……」
あなたの疑問を先取りするように解説をしつつ、運んできた料理をローテーブルに置いた。
■彩紀 心湊 > 「…ここは洋室なのねぇ…。」
少し意外だ…といった様子。
今どきの家屋であるなら住みやすいようにリフォームするのも然りではあるのだが、この家にいたっては全て和風でもなんらおかしいとも思わなかった。
「……妹さん、帰ってきてないのね。
…どういう子か私は知らないけれど…借りても大丈夫?」
嫌っている、とは言っていたが…本人は気が気でないだろうと一応尋ねる。
帰ってきたときに悪いだろう…といった意図もあるのだが、貸し出す辺りそういうことなのかもしれない。
■月神 詠 > 「流石に、勉強方法は学園に合わせる必要がありましたので……」
机の上のブックスタンドには見慣れた教科書や参考書が収まっており、ここがお屋敷の一部ということを忘れさせてくる。
もう一方の机はしばらく使われていないらしく、教科書類もかなり古いものだ。
「この部屋のものは好きに使っていただいて構いません。
机などを残しているのは私の我が儘ですが……あの子にはもう、未練もないでしょうから」
元気でやってはいるようなのですが、と寂しげに微笑む。
■彩紀 心湊 > 「ああ、そういう理由…。
でもよかったわ…畳とか汚したら大変だったし…。」
なんて、冗談めかした様子で。
とはいえ、こういう場所であるなら一緒に勉強しても変に意識があちらこちらに向かうことは少ないだろうかと。
「…そう。
……それじゃあ、代わりに使わせてもらおうかしらね…。
代わりにはなれないけれど、隣に座ることくらいは出来るでしょう…?」
なんて、食べましょ?と微笑みかけて向かいに座る。
改めて料理を見て美味しそうだと頰を緩めれば、促すようにアナタを見た。
■月神 詠 > 「代わりだなどと考えてはおりません。
心湊さんは心湊さん、私のはじめての……大切なお友達でございますから」
欠けた心の隙間を埋めるため、などと言ってしまえば真に対等ではなくなってしまう。
心の端ではそう思っている側面が無いとは言い切れないが、それを求めるのは筋違いというものだ。
向かいに座るあなたへ、あなただけに向けた微笑みの表情で手を合わせる。
「それでは……いただきます」
■彩紀 心湊 > 「よかった。ええ、それじゃあいただきます。」
そういった返事をもらえて、とは口に出さず。
同じく手を合わせれば、早速味噌汁を啜る。
良い出汁と風味…学食とはまた違ったものだ。
ほう…と息をついて、次は煮魚と箸を伸ばしていく。
「……うん……。美味しい……。
…ホント…上手なのね。想像以上でびっくり…。」
張り切っていただけあり、そこらの市販品と比べるのは失礼なほどにと目を丸くしながら食を進める。
■月神 詠 > 「それほどでも……ですが、お口に合ったようで何よりです。
おかわりもありますから、好きなだけ召し上がってくださいね」
高評価に謙遜しつつ、美味しそうに食べてくれるのでこちらも嬉しくなってしまう。
詠にとっては食べ慣れた味だが、一口ごとによく噛んで味わっている。
食材は全て国産のものを使用しており、産地直送のため鮮度も抜群。
そこに母親から直伝された料理の腕が加わることで、料亭顔負けの出来栄えとなった。
「心湊さんの健康のため……いえ、そのような名目は余計でございましたね。
この味が恋しくなったら、何時でも腕を振るいますので」
ただ純粋に、あなたの喜ぶ顔が見たいがためのことである。
■彩紀 心湊 > 「ええ、全然…味を変える必要なんて無いと思う…。
貴方の味を所望してよかった…。」
下手に自分の好みを言うくらいであれば、彼女の舌を信じたほうがいいと確信した瞬間である。
舌が肥えた者が作る、ガチの料理がまずいはずがない。
「あらあら…ふふ、恋しくなりすぎて入り浸ってしまったらどうしましょう?」
クスクスと、嬉しそうに。
しかしまあ…これほどの腕であるのなら正直なところ10割冗談と断言出来ないところが恐ろしいところであった。
■月神 詠 > 「これからも遊びに来ていただければ歓迎いたしますよ。
家の者も、離れを使う分には何も言ってはこないでしょうから」
自分がついていれば大丈夫だろう。住み込むとまで言われると困ってしまうが。
そんなこんなで、話に花を咲かせながら楽しく食事を終えるだろう。
■月神 詠 > 「───というわけで、社を森の中に建てるという条件付きで鎮まっていただいたのでございます」
それから数分後。
後片付けまで終えた二人は、本題である祭祀局の仕事に関わる勉強を始めていた。
基本的な事は座学で済むので、詠が語るのは自身の体験談。
実際の任務で起きた事などを守秘義務に反さない範囲で語っている。
祭祀局が行うのは主に神性との交渉だが、高位の存在や異界の存在には人間の常識が通用しないことが多い。
そのため、基本的にはこちら側が妥協───極力あちらの意思を汲み取ることで矛を収めてもらう、という形になる。
それが島にとって害となり、どうしても譲らないのであれば多少の強硬手段に出る他なく、そもそも害意を持って暴れている存在なら調伏するといった具合だ。
■彩紀 心湊 > 「…ふむ…なるほど。
強引に鎮めるというよりは、割りかしそうやって寄り添っていく形の方が多いのね…。」
カリカリと、先程聞いた内容をノートにおさめる。
「いやはやしかし…そういう意味ではやっぱり命がけね…。
やっぱり、やってることは危ないんじゃないかしら……。」
よくもまあ、こういう仕事をやろうと思ったものだというのが最初に思ったことである。
この歳で命懸けになりかねない仕事など、正直なところ絶対に割に合わない。そこに正義や守るべきものがあったのだとしても、自己を犠牲にする覚悟がなければ率先して行えるものではないだろう。
「……怖い、とはまだ思わないけど…実際、相対すれば違うのでしょうね。こういうのって。
アナタは…どうなの?そのあたり。」
怖くはないのか、と。どうやって克服しているのか。素直に気になって、真面目な顔で尋ねる。
■月神 詠 > 「敬意を持って接すれば、あちらも真摯に応えてくださいますから」
圧力による抑制は、いずれ両者のパワーバランスが崩れた際の揺り戻しが最も恐ろしい。
日頃から調和を推し量ることで、起こり得るトラブルを未然に防ぐことこそが祭祀局の本分と言えるだろう。
「無論、危険な神性と相対することとなる場合もございます。
心湊さんには後方での情報支援や、周辺地域への交渉などに当たってもらうことになるかと」
交渉の相手はなにも神性ばかりではない。
彼らを祭る異世界の宗教団体や、顕現に際し被害を受けた近隣住民とも話し合わなくてはならないからだ。
霊的な力が弱い局員でも、こうした裏方仕事であれば実力を発揮できる。
それから、自分はどうなのだと問われれば───
「……月神家は元々、古来より神性に寄り添ってきた一族でございます。
幼少期から己の使命については聞かされておりましたし、ゆくゆくは家督を継ぐ者として覚悟もしております」
怖いとも、怖くないとも答えなかった。
まるで、そこに己の意思は無いとでも言うかのように。
■彩紀 心湊 > 「そういうものなのね……これはなんというか、実際に見てみないと実感の湧かなさそうなお話。」
話を聞いて、理屈は理解できるが…些か現場の状況が想像できない。
こればっかりは現場に赴いてみるしか無いのだろう。
「……情報支援ねぇ…。
まあ、あんまり使わないけれど…色々使い所は多いから…役には立てると思うわ、私の異能は。」
霊力だとかは正直わからないが、純粋な情報処理であるのならちゃんとすれば得意な部類、なはずだ。
もっとも、やる機会が微塵もなかったので出来るかだけが不安要素。
もっと、そばに居てあげれれば良いのだけど…と考えた矢先の言葉だった。
「…アナタ、そういうところは隠しちゃうのね。
……いえ、必ずしも話さないといけないことではないのだけど…。
辛くなったら、言ってね。」
個人ではどうにもならない事情はある。
だから、踏み込まない。踏み込めないけれど。
ただ、それだけ…手だけは差し出す姿勢だけを見せた。
■月神 詠 > 「こればかりは、私の一存でどうにかなるものではございませんから。
お気持ちだけ有り難く頂戴しておきますね」
嬉しいような困ったような、曖昧な笑みを浮かべる。
あなたが頼りないという意味ではない。頼ったところで苦労をかけてしまうだけだからだ。
それほどまでに家柄というものは強くこの身を縛ってくる。もはや呪いのように。
「っと……申し訳ございません。話の腰を折ってしまいましたね。
次は何のお話をいたしましょうか……」
そう言って話を続けようとするが、一旦リフレッシュが必要かもしれない。
具体的にはお風呂でさっぱりするとか。とか。
■彩紀 心湊 > 「……ええ、胸の片隅にでも置いておいてくれると良いわ。」
今はまだ、踏み出しきれないのは道理だ。
自分だって、この子に迷惑を掛けるのは避けたい気持ちがあるのは痛いほど分かるから。
「…ん、と…そうね。でも、一旦休憩にしましょうか…。
なんやかんや…もう結構遅い時間なのよ?」
帰りだしたのも図書館が閉館するころ、それにご飯も作って…と来て、気づけば時間はあっという間に過ぎ去っていることだろう。
「そろそろ、お風呂とか…借りてもいいかしら?」
■月神 詠 > 「あっ……私としたことが、すっかり時間を忘れてしまっていました」
言われて時計を見れば、普段ならとっくに入浴を済ませている時間だ。
よほど誰かと過ごす一時に夢中になっていたということだろう。
「そうですね。お勉強は切り上げて、ひとまず湯浴みにいたしましょう。
浴場までご案内いたしますね。手拭いや浴衣もそちらにございますので」
そう言ってあなたを先導していく。
来る途中にも軽く触れていたが、浴場は離れの外にあるため案内は不可欠だ。
そもそも詠も一緒に入るつもりのようだが……
何はともあれ、彼女について行けば無事に辿り着くことができるだろう。
ご案内:「月神本家」から彩紀 心湊さんが去りました。
ご案内:「月神本家」から月神 詠さんが去りました。