2020/07/24 のログ
ご案内:「【ソロール】異邦人街・住宅地木造アパート」に武楽夢 十架さんが現れました。
武楽夢 十架 >  
夜遅くに帰ってきた。
普段は身につけていない黒い――ボロボロの――格好に、手には同じく黒の狐の面。

顔には痣。 右腕には血に滲んだ包帯が巻かれて。
焼けて穴の空いた横腹には火傷痕。

――最初の『一つ』は情報共有のために仲間に頼んだが、他でどうにか砕く事が出来たのは『二つ』。

間に合わなかった。
力不足だった件は幾つか。

恐らくは青年よりも上手く動く部下は多くいる。
それでも、自身が動いたのはこの道を進むと決めているからだった。
しかして、歩いた結果が一日でほぼ満身創痍のような有様ではある。

「……足手まといか」

先程、仲間に言われてこの近くまで運ばれてきた。

――"戦えないやつが矢面に立つな"。

自分より年下の仲間に言われると結構堪えるものがあった。



未明に、目の前で砕けなかった『願い』の事で苛ついていたのだと理解したのは、
そう言われてからだった。

武楽夢 十架 >  
幾つか対峙して分かったのは、端末――通称『デバイス』。
これには幾つか条件があること。
間に合わなかった幾つかはそれを理解していなかったから。
相手の力の前に無力だったのは、また幾つか。

少しずつ理解してどうにかしたのが、
ポケットから砕いたデバイスを二つ取り出す。


不法入島者の子として生まれた人が持っていた。
―――砕いた。

異能で誰かに寄生することでしか生きれなくなったヒトが持っていた。
―――砕いた。


生まれや呪いのようなチカラに抗うために求めた『真理』という手、『願い』を。

『お前の願いは届かない』

ただ、冷徹に事務処理の内容を告げるように。

『残念だったな』

砕いた。
しかし、無数にあった『願い』に対して青年に砕けたのは、その二つだけだった。

『復讐したいなら―――風紀委員として裁きに来るがいい』

恨まれてやれた数は恐らく全体からすれば僅かだっただろう。


「まったく、厄介な事をしてくれたよ……」

左の頬に鎮痛効果のあるテープを貼って、負った怪我を治療する。
彼らの抵抗は全力だった。

全力だったからこそ、多勢に無勢だったにも関わらず
青年には二つしか砕けなかった。

武楽夢 十架 >  
右腕の包帯を新しく巻き直した所で、携帯端末が点滅していることに気がついた。
左手を伸ばして、端末を手に取る。


―――星座占いランキング。本日の一位は蟹座。
―――『メール1件アリ』


差出人は……。

「……教えた記憶はないんだけどな」

自分を家に送り返した仲間たちには悪いが、
同年代の友人(しりあい)からの誘いじゃ仕方ない。 もうひと頑張りしようじゃないか。

"差出人へ返信"を押して、簡素な内容を書いて"送信"する。

武楽夢 十架 >  
「こんなメール出しやがって……
 後悔するんじゃ、ねぇぞ」

―――"宛先:あかね"。
 

ご案内:「【ソロール】異邦人街・住宅地木造アパート」から武楽夢 十架さんが去りました。
ご案内:「落第街・スラム廃施設」に武楽夢 十架さんが現れました。
武楽夢 十架 > 目が覚めた。

既に日は天に。

ここで夜を過ごしたのは、初めてこの場所を訪れた日以来だ。
落第街のスラムの一画にあるとある廃施設。


組織に入って以来のはじめての大怪我をした。

メールを受けてから半日以上経過している。

彼女と"関わり"のあるという『アイツ』は結果を出しただろうか。

何であれ、どうなっているのであれ、見つけに行こう。

時間は刻一刻と丁寧にメールで告げられた日付へと近づいている。
が、まだはじまったばかりだ。

これからが本番だ。


「……行ってくる」

        きぼう     あく
あの日の、君の『願い』と俺の『我儘』のどちらが通せるかを試しに。

ご案内:「落第街・スラム廃施設」から武楽夢 十架さんが去りました。