2020/08/08 のログ
■アールマティ > 「成程」
227の言い方に、何となく納得をし
「機械のヒト、と定義されるのは、今までありませんでした。
では、当機はこれから、機械のヒト、と自らを定義しましょう。」
機械の人
種としての人間ではなく対面する存在として人として扱う。
その価値観を多少なり理解し、自分の中でかみ砕いていく。
「では、227様。
機械のヒトとして、当機はどのように振舞うのが自然でしょうか?」
■227番 > ソファから覗くように見ていたのはやめた。
「ていぎ……よくわからない、けど、なんとなく、わかった」
よくわかった、というと嘘になる。
227にとってはまだ難しい話なのだ。
「あなたの、やりたいように、するのが 良い、と思う」
うまく説明できない。
そもそも相手はそういう意思…自我を持っているのだろうか。
■アールマティ > 「やりたいよう…」
小首をかしげた。
自我がない訳ではないが、やりたいこと、と言われて思いつく事も、ない
「やりたいこと、というのがわかりません。
意味は分かりますが、何をすればいいのかが分かりません」
おそらくはまだ、227と同じ子供なのだろう。
自由と言われてもどうすればいいのか分からない子供。
機械であるというだけで、難しい言葉を使っていても、判断できる程の経験がないという意味では、そう変わりはないのだ。
■227番 > 「好きなこと……楽しいこと、とか……」
そう、物を知らない子供。
……正直自分もわからない。
「わたしは、絵を描くの、好き」
お絵かきをせんせいに教えてもらった、といい、広げていた自由帳を手に取って見せる。
そこには☆が沢山描かれていた。
教えてもらった当時に比べると、線もちゃんと引けているものの、まだまだ拙いものである。
■アールマティ > 「おえ、かき?」
ロボにとっては最も馴染みのない行為かもしれない。
ますます小首をかしげ、その自由帳を眺め始める
「それは、星、ですか?」
拙い絵を見ながら、絵を描くのが好き、という彼女を見る。
絵を描く。
アールマティはAIであり、特殊な機器など用いずとも思考内で常世内のネットワークに接続することが可能だ。
そうすれば、検索エンジンで自身の知らない事を調べる事も勿論可能。
だが、絵を描くという行為自体は分かっても、それに対しての好きという感情や、まして楽しさ等は、調べようもない。
「……では、227番様
それをしましょう。
当機は知識として、それを学習するべきと判断しました」
■227番 > 「うん、星。きらきら。星、見るのも、好き」
プログラムに忠実な機械にとって、創造的な活動は難しいものだろう。
しかし、自我を、思考能力を持つAIであればあるいは……。
なんてことを227が分かってるわけもなく、容赦なくそれを提示してくる。
「あーるまてぃ、も?わかった。
いっしょに、しよ」
嬉しそうに笑う。星見以外の趣味を、同じぐらいの誰かと一緒には初めてかも知れない。
テーブルから予備のペンを取って、差し出した。
■アールマティ > 「当機にとって経験のない行為ですので、ご教授お願いします。」
想像的な活動が出来るのかどうかは、実際のところ分からない。
アールマティは異界からの来訪者であり、そのテクノロジーに関しては判明していない部分の方が多い。
どこまで高度なAIであるのか、どのような機能があるのかも分からない。
強いて分かっている事があるとすれば
アールマティの本来のボディは、第四特別教室が発見された残骸で
厄10mほどの大きさの人型のロボットであった、という事くらいで
それは即ち
「…その機器で製作するのですか?
手で?」
絵を描くという行為を想定された存在ではない、という事。
1から、何もかも知らない少女に教えてゆく事になるだろう。
いつか自分が、誰かにそうしてもらったように…
ご案内:「夢莉の自室」から227番さんが去りました。
ご案内:「夢莉の自室」からアールマティさんが去りました。
ご案内:「温泉旅館・男湯『サウナ』」にキッドさんが現れました。
ご案内:「温泉旅館・男湯『サウナ』」に山本 英治さんが現れました。
■キッド >
さて、騒がしい男湯の一角。
蒸し暑いサウナルームの扉を開いてやってきたのは先程のろくでなし。
湯気と一緒に立ち上る白い煙を吐きだし、そこで汗を流すアフロの隣に座る。
「ヘッ……随分と、雑念に塗れてんな?」
■山本 英治 >
「キッドさん……」
シケた顔で片手を上げて挨拶をして。
どうしたものか、なんとも情けない。
「いや、まぁ……雑念と煩悩を振り払いたい感じだな」
■キッド >
「あんな雑念と煩悩交じりの会話でか?バカいっちゃいけねェ。」
くつくつと喉を鳴らして笑った。
山本を一瞥し、向こう側から見える男湯の様子を見ていた。
「……女の話をしたら急にしょぼくれやがって。昔の女の事でも考えてんのかい?」
単刀直入に尋ねた。
■山本 英治 >
「……ああ、昔一緒にいた親友の女だ」
隠し事をする気分でもない。
それにカラッとした男が相手だ、変に斜に構える気にもなれない。
「その女は俺のことを親友と呼んでた」
「あいつが死んだ後に、彼女にしたい女と考えて即座に親友を思い浮かべんのは…ダメだろ」
汗が顎を伝って落ちた。
■キッド >
「別にいいんじゃねェか?」
呆気からんと答えた。
煙草を咥えて、しけった煙を吸い上げる。
「それだけ……アンタの親友はイイ女だってことだろ?
ま、当時惚れてたかどうかはしらねェが、思われる程のイイ女……。」
「……それで終わりなら笑い話。
"笑い話"じゃ終わらねェから、自分からサウナに逃げ込んだのかい?
デケェのはアフロだけで、随分と気は小せェンだな。」
鼻で笑い飛ばし、煙草を咥え直した。
一瞥する碧眼は、鷹のように鋭い。
■山本 英治 >
「良かねぇだろ」
不発弾のような視線を彼に向ける。
彼が吐き出した煙と共に、独特の香りがサウナに満ちた。
「言うなよ、俺にとっちゃシリアスプロブレムなんだよ」
「いつかまた会えた時にあいつに胸を張れる男でいてぇんだ」
淀んだ黒い瞳が、天井を見た。
くそ、それにしてもあちいな。サウナって場所は。
「……漢気を標榜するのも、楽じゃねェ」
■キッド >
「ハッ」
それこそ盛大に、鼻で笑い飛ばした。
「何時かって、"死んだ相手に死ぬとき以外で会えるわけねェだろ"。」
「死んだときに、『俺は頑張った。凄い男だ』なんて、死人同士で傷のなめ合いかい?」
「……笑えるねェ、漢気ってのは、そんな女々しいモンだったのかい?」
■山本 英治 >
「……アンタな、何言ってんだよ」
「いつか人が本当の意味で分かり合える時が来たら、死んだやつともまた会えるだろう?」
「そういうもんだろう……?」
淀んだ二つの黒が、彼の瞳を覗き込んだ。
■キッド >
「ねェよ。」
スッパリと、しけった空気にキッドの声が響き合う。
「俺達みてェに生きてる間に、死んでる連中にまともに会う事は出来ねェ。
……死霊術、だったか?ああいう魔術者、死者と交信するとは聞いた事あるがね。」
「もっとも、ソイツを"再会"とは言えんだろうさ。」
白い煙を吐きだし、二本指で挟んだ煙草を掴む。
「だが、人間同士分かり合った所で、死んだ奴と会える事はねェよ。俺達、生者は」
■キッド >
「……死ぬその瞬間まで、死んだ奴とまともに出会う事はねェ。」
■キッド >
鋭い碧眼が、淀んだ黒を射抜いた。
冷酷に見えるかもしれないまでの、冷静な表情。
眉一つ動かさず、山本を見据えている。
■山本 英治 >
「そんな……ことは…」
弱々しい否定。彷徨う視線。
そういえば、俺はどうしてこんなことを知っているんだ?
知ってる?
いや、違う……俺は、妄想を………?
死んだ者は土の下で永遠に死に続ける。
そう師父も言っていたじゃないか。
なのに、俺は、また……?
自分の流している汗が妙に冷たく感じた。
呼吸が荒くなる。
「……時々、こうなるんだ」
「いや、いつもかも知れない」
「死んだ人に失礼だって……正気に戻った時に考えるんだけどな……」
■キッド >
「…………。」
煙草を咥え直すことなく、山本を見ていた。
無表情、無感動。何も感じる事無く、静かに見据えている。
ただ、山本の気持ちを"理解出来てしまう"要素がある。
だからこそ、キッドは目を逸らさずに、じっと見据えている。
「別に、手間とは思わないさ。」
「……なァ、アンタにとってその"親友"ってのは
妄執に取りつかれる為のトラウマかい?
それとも、尊ぶべき死者の魂かい?」
だから静かに、問いかける。
■山本 英治 >
「どちらでもない」
「親友だ………今でも」
そこを間違えてはいけない。
誰になんと言われても。彼女の親に詰られても。
自分だけは。彼女の親友であることを認識し続けなければならない。
「俺は遠山未来を失った」
「でも……絆まで失ってはいない」
■キッド >
「……その絆っていうのは、度々足引っ張られる枷の事を言うのか?」
ストレートに言葉を浴びせかける。
聞いた上でハッキリと、凛とした声で吐き出した。
■山本 英治 >
「違う……」
「俺は未来と共に歩んでいる、今でも」
それなのに。どうしてだろう、未来。
俺は真っ直ぐ彼の眼を見られていない。
俺は弱いのか。それとも、強いのか。
どっちでもあるのか、どっちでもないのか。
教えてくれよ……未来。
■キッド >
何とも情けない表情に視線だ。
だが、キッドはそれが何かを知っている。
だから、問い詰める。問い正さねばならない。
「死人は同じ場所にいない。
何時だって、隣にいるようで遠い場所にいる。」
「ニッポンじゃ、"死人に口無し"って言うんだろ?」
「……あんなザマ見せといて、何が『共に歩んでいる』だ。」
「死人は一緒に歩いちゃくれねェ。精々、遠くで見守ってくれる程度だ。」
「……アンタの歩みの妄想に使われてんなら、その遠山未来って女もさぞや可哀想だな。」
「今までその妄想ん中で、遠山未来がアンタに何か言った事あるのかよ?」
■山本 英治 >
やめろ。
やめてくれ。
頭を抱えて視線を下げた。
これ以上聞きたくない。
今までずっと。強くて、三枚目で、お調子者で。
変な髪型をしたキザな男を演じていられたのは。
彼女が一緒にいてくれると信じたからだ。
心が痛む。しくしくと血を流して痛む。
未来は可哀想なのか? 何とか言ってくれ…頼む……
「や、」
軋む心を抱えて、精一杯の抵抗の言葉を。
「やめてくれ………」
■キッド >
知っているよ、嘆きたくなるのも。
一人でいられない孤独も。
そう信じなきゃ生きられないと言う事も。
全部、全部知ってる。だから……。
「"止めない"。」
何度でも、言ってやる。
「アンタの隣に、"遠山 未来"はいない。
……知ってるだろ?どういう事情かは知らねェが
アンタ自身がもう『死んだ』って事を知ってるんだ。」
「……あの時からずっと、アンタが歩いてた道に"遠山 未来"はいない。」
咥えられない煙草が、湯気と一緒に煙と漂う。
不意に、力なく口元が緩んだ。
「────"だから、考えてみてください。思い出してみてください"。」
「貴方が歩んできた道が、本当に"遠山 未来"だけの為の道だったのか。」
「一人ぼっちだったか、どうだったのか。」
「本当に親友なら、そんな『妄想』なんかじゃなくて、山本"さん"の知ってる『遠山 未来の言葉』が思い出せるんじゃないんですか?」
■山本 英治 >
死にたかった。
生まれなかったことになりたかった。
こんな喪失感を抱えたまま、生きていたくなかった。
あの時、俺も一緒にあのジャンキーに刺し殺されていればよかったんだ。
それすらもこの狂った異能は許してはくれない。
『エイジ』
彼の言葉と重なって、親友の声が…違う。
あの時の言葉を思い出した。
『人はいつか死ぬよね? 僕もそうだし、君もそうだ』
だから、死んだのかよ。
俺の前からいなくなったのかよ、未来。
『でも、死んだって消えないものはきっとある』
『それを放課後にでも探しに行こうか』
……放課後に、探したくらいで…見つかるもんかよ。
俺はあの時、冗談で混ぜっ返した言葉をそのまま返した。
『見つかるとも………見つけるとも』
喪失の痛みが削り出す。彼女の形を。
「……俺は…俺の命を生きているさ」
手短に答えた。もう、黒の双眸は。淀んではいなかったはずだ。
■キッド >
「……そうですか……。」
笑みを浮かべたまま、頷いた。
その笑みは、年相応の少年の笑み。
だからこそ、より其の歪に際立つ少年の体。
傷だらけで搭載された筋肉。
骨折と脱臼を繰り返して歪み続けた両手。
どれもこれも、16年普通に生きる中には必要のないものだ。
「辛いですよね、大切な人が死ぬのって。
山本さんと"僕"を比べるつもりはないですけど」
「僕だって、『この手で大切な両親を撃ち殺してしまった』から。」
「……だからその辛さを分かる、なんて烏滸がましい事いいません。けど」
「……死にたいほどの喪失感。妄想か何かで埋めないと、やっていけませんよね。」
少年は笑みを崩すことなく、静かに語る。
■山本 英治 >
ああ。そうか。
彼は俺と同じなんだ。
喪ってしまって。
その苦しみの中を我武者羅に生きてきたんだ。
それなのに、年下の彼に諭す役をやらせてしまっている。
これ以上、情けない顔は……できねーぜ。
「……すまねぇ、キッドさ………キッド」
「嫌な役回りをやらせた」
「もう大丈夫だ……ちゃんと、思い出したから」
「上がろう、雨夜先輩が待ってる」
そう言ってサウナを後にし、ざっと汗を流して宴会場に向かうだろう。
あとはいつも通り。全然違う形の、それでも日常を生きる。
■キッド >
正直に言えば、まだ彼が本当に大丈夫かはわからない。
けど、本人が大丈夫と言うのなら、此れ以上言う事はない。
だから、最後にもう少しだけ。
「……強がりだけはしないでくださいね、山本さん。」
汗だくの表情のまま答えた。
サウナだから当然のように見えるが
それにしたって異常なまでに汗が噴き出している。
煙草を持つ手が震えていた。
「この、煙草……"薬"なんですよ。
精神安定剤。"コレ"を使わないと……今でも見てしまうんです。」
「『殺してしまった時』の、幻覚を。」
震えた声で、告げた。
責め立てただけじゃ、余りにもアンフェアだ。
だから、少年も教えた。少年らしい弱さ。
殺人の罪に押し潰されてしまった、16歳のか細い心。
そして、それを支えるのは────。
静かに、煙草を咥えて、煙を吸い上げる。
「……だから、アンタは『こうなっちゃ』ならねェのさ。」
"ろくでなしのクソガキ"。
過激派風紀委員キッド。
そんなアウトローを演じなければ、終わってしまう程の精神だ。
未成年には手に負えない罪。それを必死に隠している。
そう、この姿は『山本英治の在り得た可能性』
死者に引っ張られ続け、自分を騙し続けながら生きる、少年の幻影。
ニヤリ、と口元に笑みを浮かべ、山本に追従するように歩いていく。
「ああ、主役がいねェとつまらねェからな。」
だからキッドは、此処にいる。