2020/08/14 のログ
ご案内:「ソロール:彼にとっての恐怖」に羽月 柊さんが現れました。
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――海が見える。

アカイ アカイ 海。

それの上に立ち、一歩を踏み出せば、
バシャリと水気が跳ね、血の匂いが鼻につく。

>  
これは夢だ。

そう自覚すれば、自分の感覚が明確になって来る。
香澄を失ってすぐは、何度も何度も見た夢だ。
血の海の上、歩く先に香澄が立っていて、それに手を伸ばしては消える夢。

何度もなぞり直した夢。
けれど、自分の意志では決して変えることの出来ない夢。


パシャリパシャリと血の海を蹴って、
自分は歩いている。走っている。どちらなのかは分からない。
けれど、いつだって結末は決まっている。

――そうだ、そのはずだった。

羽月 柊 >  
……先に立っていたのは、己がかつて愛したヒトでは無かった。

姿がブレて見える。
それは必ず己が、羽月 柊が知っている誰かだった。

それは自分と共に戦い、手を差し伸べ、また支えられ、また励まされたモノたちだった。
その誰もが無表情に冷たい顔で自分を見つめている。

立ち止まった。自分の視界の髪が揺れる。茶色じゃない…いつもの紫。



 何故だ、いつもここに居たのは、結末は変わらなかったはずだ。



自分に変化が訪れているのは確かだが、何故、この夢なんだ。

けれど、自分の身体を止めることは出来ない。
その知っている誰かに、自分が手を伸ばすのを。

何故だ、何故結末だけは変わらないんだ。

羽月 柊 > 「―――!!」
羽月 柊 >  

名前を呼んでも、それは音にはならなかった。

そうして―――その誰もが、男の前から……消えていくのを。

 止められは、しなかった。

 

羽月 柊 >  
「……ッ!?」

弾け飛ぶように上肢を起こした。
夏の薄い掛け布団の上にいた小竜が、ころころと転がって行ったのが、目の前に見えた。

肩で荒く呼吸をしていれば、小竜たちが大丈夫かと集まって来る。


首を振り、彼らに声をかけ、呼吸を落ち着かせる。
悪夢にうなされていた。

体調の悪さと熱のせいとはいえ、酷い夢だった。


…失うことの恐怖を思い出した。
墓前へ立つ事も出来たとはいえ、そう簡単に自分からは抜けきらないということか。

しかも今回は、最近知ったモノばかりの。

全く、小竜や息子のそういう夢は見ない癖に現金だなと、
自分を自嘲するしかない。

羽月 柊 >  
まだ頭がぼうっとする。
いや、急に起きたからか若干頭痛もするが。

とにかく今は休むしかない……あぁ、同じ夢は見たくない。



 どうか願わくば、この夢が現実となりませんように。

 

ご案内:「ソロール:彼にとっての恐怖」から羽月 柊さんが去りました。