2020/08/22 のログ
ご案内:「落第街-施療院」に山本 英治さんが現れました。
ご案内:「落第街-施療院」に神代理央さんが現れました。
山本 英治 >  
少し眠って体力が回復したので、また異能を小刻みに発動して体の治療。
消毒してもらって、薬を塗ってもらって、異能で治して。

これで本当にいつか歩けるようになるのだろうか。

いや、不安なんて感じてる暇はねぇ。
俺を信じてくれる人のために、本気になるんだ。

地道に体を癒やしていく。

神代理央 >  
「――失礼する。風紀委員の山本英治の病室は……」

治療に励む彼の病室へ顔を覗かせる一人の少年。
きっちりと着込んだ風紀委員の制服は、此の街と此の施療院には相応しくない程に折り目正しい。

そんな少年が覗き込んだ病室の先で、ベッドに横たわる彼とぱっちり視線を合わせれば――

「……………………………………傷の具合はどうだ?男の見舞いなど、嬉しくも何ともないかもしれないが」

見舞いの品が入った台車をガラガラと押しながら、妙な間を経て彼に声をかける。
直毛になると何というかこう…こう…。

山本 英治 >  
薄目で彼を見る。

「……今、すっげー間が空かなかったですぅ?」

ああ、アフロか。アフロじゃないからか。
ちくしょう。ここから出たらもっふもふのアフロにしてやる。

「いえ、すっげー退屈なんで助かりますよ」
「ってかお見舞いの品を台車で持ってくる人初めて見た…」

相変わらず何かの冗談みたいなマネーパワーでらっしゃる。

「神代先輩、無事だったんですね」

神代理央 >  
「気のせいだろう。それも怪我の所為だ。全部怪我の所為なんだよ山本。此の私が、同僚のアフロが髪型なくらい……違うな。髪型が違うくらいで間違える訳無いだろう?」

ゴリ押す。
此れが先輩後輩という立場の差を活かしたごり押し。年齢差は考慮しないものとする。
良い子は真似してはいけない。

「何を持って行けば良いかちょっと悩んでな。余ったら、この施療院で使ってもらうのも良いかなと思って」

台車に鎮座する箱から出て来るのは。
日持ちする菓子やら清涼飲料水といった所謂『嗜好品』の部類に入る食べ物。結構大きめのサイズの肌着や下着がセットで1ダース。
そして箱の底にこっそりと忍ばされている――洋酒やビール、煙草の類。

「……何を持って来ればいいのか、分からなくて」

と、ちょっと恥ずかしそうに頬をかきながら、取り敢えず台車と荷物を脇に片付けて。

「……正直、お前よりも遥かに軽傷だったよ。一応、一晩入院して、今度再検査を受ける予定ではあるがね」

因みに、己が入院したのも此の施療院なので、すれ違いとは色々恐ろしいものだとちょっと苦笑い。

其の侭、ベッド近くの椅子に腰掛けると、何とも気まずそうな表情で彼に視線を向けているだろうか。

山本 英治 >  
「あ……は、はい…」

これが圧力かぁ。初めてだ……こんな圧は…
先輩じゃなかったら許されてなかったくらいの荒業だなぁ…

「……先輩、やっぱ良い人すよね」

破顔一笑、嗜好品や着替えが入った箱を片手で叩いて。
重度熱傷の手が痛んで顔を顰めた。

「そりゃ良かった、鉄火の支配者復活すね……」
「メールは受け取りました? あとは先輩が漢を見せるだけですよ」

首を傾げて。

「ああ、同じ病院だったとはマリーさんに……って…」
「なんでそんな借りてきたキャットみたいな…?」

神代理央 >  
「いや。気の利いた見舞いの品を持って来れれば良かったんだがな」
「安田辺りは『えっちな本を差し入れるべきです!』なんて出発直前の私に力説してきて、明日漢字ドリル書き取り5万字だぞ。終わるんだろうか。……あと、怪我人なんだから大人しくしていろ」

と、箱を叩いて顔を顰める彼に苦笑い。

「一応、警邏に出るのは検査後にするつもりだがね。早くシフトに戻らないと、伊都波先輩が無理をしかねん。ゆっくり休んでて大丈夫、とメールは来たが…」
「ああ、メールと言えば。無事に受け取ったよ。『惨めったらしく泣きながらお願いしてます』だったかな?……まあ、うん。色々と、頑張ってみるつもりだよ」

その為に自分が出来る事は何なのか、悩み続ける日々ではあるのだが。
と、首を傾げる彼に、困った様な笑みを浮かべて。

「…その、なんだ。私がこういうのもあれ、というかあれ、何だが…」

一転、その表情は真面目なものへ。

「……すまなかった、山本。今回の件は、私の監督不行き届きでもある。負傷した時に私が連絡を怠っていなければ、お前はこんな怪我を負わずに済んだ」
「それに、お前に怪我を負わせた水無月の恋人としても、謝罪させて欲しい。本当に、すまなかった」

かたん、と椅子から立ち上がり。
深々と、彼に頭を下げた。

山本 英治 >  
「十分、気が利いてますよ。ありがとうございます、神代先輩」
「安田………まったく、あいつは」

黙って差し入れろよ。先輩たちにバレないように。

「伊都波先輩は……無理してるだろうなぁ、今頃…俺も早く復帰しないと」
「それは園刃先輩のジョークなので!! 惨めったらしく泣いてないので!!」

男には抗弁しなければならない時もある。

そして、神代先輩が頭を下げた。
男が頭を下げる、それがどんな意味を持つのか。
わからないほど俺はバカじゃない。

「……神代先輩、それじゃ今度…」
「学食のパン奢ってくださいね」

大真面目に答えた。

「あ、謝意が伝わるパンじゃないとダメですからね?」
「生クリーム入りのプレミアムあんぱんじゃないと謝られたカウントに入らないですからね」

それから柔和に笑って。

「頭を上げてください、神代先輩」
「俺は彼女に恨みもないし、先輩に謝られると困ってしまいます」

「沙羅ちゃんに関して言えば、本人から説明が欲しいくらいすかね?」
「……止められなかった。そのことを、悔しく思う…」
「だからこそ、神代先輩には彼女を止めてほしい。それだけです」

神代理央 >  
「……そういう本が欲しかったのなら、言えば今度持ってきてやるが」

いらない、という否定の言葉は出なかった。
やはり入院中は『そういう本』も欲しくなるのかな、とちょっと生暖かな視線を向ける。

「…そうなのか?風の噂では、アフロに出来ない悲しみから毎夜毎夜お前の髪から塩分を含んだ水が滴ってるって…」

勿論、そんな噂は立っていない。


――そんな軽口を交わした後。
下げた頭の先で、ぎゅっと目を瞑って言葉を待っていた。
彼に、どんな言葉を投げかけられるのだろうか。
恨み言――を言う様な男では無いだろう。しかし、風紀委員としての彼の活動を阻害し、大怪我を負わせた恋人の事を考えれば。
或る程度、詰られるのは覚悟の上。だったのだが。

「………がくしょくの、ぱん?」

ぽかん、とした様に、顔を上げて彼をまじまじと見つめる。
視線の先には、柔和な笑みを浮かべる彼の姿。

「……そう、か。いや、私はきっと、お前が許してくれるだろうと思っていた。その上でこうして謝罪するのは、私の甘えなのかもしれない。それを、お前に隠すつもりはない。…俺は、お前の人となりに甘えているのかもしれない」
「それでも。俺の自己満足に過ぎなくても。お前には頭を下げたかった。下げなくちゃ、いけなかった」

「……だから、お前の言葉には応えよう。彼女を、水無月沙羅を止めてみせよう。男と男の約束……って言うんだろうか。こういうの」
「アイツの為に、身を挺してくれたお前の思いに、応えてみせよう。……でも、俺一人じゃきっと、躓いてしまう事もある」

「……だから、これからも。力を貸して欲しい。同じ風紀委員として、俺はお前を、信頼してる、から」

そしてもう一度、深々と頭を下げた。
今度は、謝罪の為ではない。『お願い事』をする為に、深く、深く。

山本 英治 >  
「いえ、マリーさんにバレたらしばかれるので…」

目を背ける。
そういや入院時にハイパーセルフプレジャーっていつするんだろ。

「俺の髪は泣かねーよッ」

このイジりに泣きそうだけどな!!

 
「ああ、男と男の約束です、先輩」
「俺にできなかったことを先輩に託す」
「今度こそ失敗したら今度こそ俺ぁ許しませんからね」

笑顔で頷いて。

「んじゃあ俺も先輩に謝らないと……」
「最初、神代先輩に会議の時に自分の論理を押し付けたこととか」
「……タカ派だから仲良く出来ないかも、って思ってたこととかです」

肩を揺らして笑って。
ああ、そうだ。こういう会話があるなら。
俺は無茶をしなくてもいい。
そして誰かのために強く一歩を踏み出してもいい。

「今は信頼してますよ、俺も同じ想いです」

神代理央 >  
「……ああ、うん。そうか。そうだな」

案外笑顔で受け入れそうな気がしないでもないが、失われる男の尊厳はプライスレス。
彼のアフロの栄誉の為に、ちょっと重々しく頷いておこうか。適当に。

「え、泣かないの?」

泣かないのか…そうか…残念……。



「…我ながら、そういうキャラでは無いと思っていたんだが。どうして中々。気持ちの良いものだな。こういうのも」

頭を上げて、笑顔で頷く彼をちょっと眩しそうな顔で。
真直ぐな言葉を紡ぐ彼に、素直な憧憬の念を含んだ瞳を向けるだろうか。

「…そんな事、別に気にする事じゃ無いさ。我ながら、余り受けの良い事を言っていなかっただろうな、とは自覚している」
「あの時は…そうだな。風紀委員皆が、融和的な雰囲気になる事を危惧していた、というのもあるし」
「俺もちょっと意固地になっていた。だからそれこそ、お前が謝る様な事じゃ無い」

よいしょ、と椅子に腰掛けながら。
小さな苦笑いと共に首を振った。
それに、風紀委員らしい風紀委員である彼の事は、何だかんだ尊敬しているのだ。或る意味では、己の様に過激な手法を取る様には、なって欲しくないとも。
だから――

「……有難う。お前にそう言って貰えるのは、どんな礼賛の言葉より、嬉しく思うよ」

ふんわりと笑みを浮かべて、嬉しそうに笑うのだろう。

山本 英治 >  
「マリーさん、姉みたいな存在なので姉にエロ本の好みバレたら死ぬ」

死ぬ。間違いなく。死ぬ。
上手いこと隠し持てないだろうか。
無理か。無理だな。

「いやなんで泣くと思ったんですか俺の髪は妖怪か」

これにはさすがにツッコミハンド。

 
「ま、たまにはガラじゃないことも良いんじゃないですか?」
「常に鉄火の支配者じゃないから沙羅ちゃんは先輩に惹かれたんでしょうし」

ニヒヒと笑ってちょっぴりからかう。
できれば、沙羅ちゃんにも笑っていてもらいたい。
だから、今は先輩の背中を押すよ。

「……じゃ、これでお互い様だ」
「あんぱん、忘れないでくださいよ?」

こちらも柔和に笑って。
少し迷ったけど、今できる敬意を。
腕だけで敬礼のポーズを取って。

「先輩を男と見込んだ。後のことを託します」

神代理央 >  
「……差し入れは、健全なものにしておこう」

彼の苦悩を聞けば、理解と憐憫を含んだ顔で頷いた。
それは、死ねる。


「…常に鉄火の支配者ではない、か。そうだな。肩肘張って生きていくばかりが、人生でもあるまい」
「……そう、なんだろうか。そう…なんだろうか…」

揶揄われれば照れるくらいには健全な16歳。
其処は、年上の彼に一歩及ばない部分でもあるのだろうか。

「…ああ。そうだな、御互い様、だ」
「任せておけ。学食前の購買所だって、俺は制圧してみせるさ」

生クリーム入りのプレミアムあんぱん、だったよなと念押ししながら。
昼食時の購買所戦争を知らない少年は、結構安直に頷いた。

そして、敬礼する彼を暫し見つめた後。
此方もゆっくりと返礼しつつ、厳かに頷いた。

「任された。だから今はゆっくり休め。必要な物があれば、取り揃えよう」
「風紀委員会は、お前を必要としている。養生して、万全の状態で復帰してくれる事を、切に願う」

山本 英治 >  
「そうしてください、是非」

本当はエロいものが欲しい!!
でも今は我慢の子ォ!!

 
こうして見れば。
恐れられる存在も、悩める一個人で。
それが見えてないくらい、風紀に入った時の俺は青かったんだな。

「お互いの自然体の姿が見られるのも、信頼関係ってやつなんでしょうね」
「なんすかー……ま、問題が全部解決してから存分にのろけてもらうとしましょう」

彼の言葉は真摯で。その言葉は嘘をつかないし嘘がない。
男の約束を交わすに相応しい人物だ。

「はい、今日はありがとうございました!」

そしてマリーさんが戻ってきた時。
その箱なんですか?と聞かれて程々に説明をして。

洋酒と煙草を後で楽しんだ。
ま、たまには悪くないさ。

神代理央 >  
「………というか。退院したらシスターに礼を兼ねて一緒に出掛ければ良いじゃないか。エンピレオくらいなら、俺が抑えておいてやるさ」

最後の最期に、揶揄う様に笑いながら彼の包帯をつんつん、と突いたり。



「それが簡単に出来ないから、人は中々分かり合えない。でも、その為に分かり合おうと努力する」
「……俺は、お前の惚気話もいつかは聞いてみたいと思っているのだがな?」

穏やかに頷き、語らい、笑い合う。
勿論、それを友情と言う言葉で括っても良いのかもしれないが。
それはもっと別の。同僚としての信用。男としての信義。山本英治個人への、信頼。
それらを感じられる彼に向けるのはきっと。偉そうな言葉遣いの儘でありながら、尊敬の念を含んだ瞳だったのだろう。

「ああ。それじゃあな、山本。退院したらまた、快気祝いでもしようじゃないか」
「お前が休んでいる間くらいは、俺も少しばかり頑張ってみるから。だから先ずは、ゆっくりな」

ふんす、と力こぶを作る仕草は、様にはならない。
それでも、彼に柔らかな笑顔を向けると、療養の邪魔をしない様に、静かに立ち去るのだろう。


焼酎とかの方が良かったのかな、とか。
お見舞いの内容で未だに悩みながら帰路につく姿を、他の患者たちは不思議そうに眺めていたのだとか。

ご案内:「落第街-施療院」から山本 英治さんが去りました。
ご案内:「落第街-施療院」から神代理央さんが去りました。