2020/09/11 のログ
月夜見 真琴 >  
 
 
「どれから着るんだ?」
 
 
 

月夜見 真琴 >  
「――やはりまずはこれからじゃないか?」

レザーのやつをキューで示す。
ぺしぺし。袋に入ったほぼおろしたてのそれを叩く。

「その間、ビリヤードでもして待っているから。
 はやく着替えてみせてくれ。ふふふ、たのしみだな」

園刃 華霧 >  
「ン……まァ、考えて、ミる……」

面倒くさい
増やしたくない
そういった気持ちと、相談してもいいかな


「ぅ、ム……む、ム……」

あ、これ逃げられないやつ
いや、着ること自体は嫌じゃないが……
なにか乗せられている気分になるので、
思わず抵抗を見せてしまう。

とはいえ……うん
断るほどでもないし……着る、か

じゃあ、しょうがないので……まずはこの。レザーか
おとなしく制服に手をかける

月夜見 真琴 >  
ガコン。重たくポケットした音が響く。
ビリヤードに興じるバニーガール。
女同士であるとはいえ、まじまじと着替えをみつめるということはしない。

「ふふふ。ありがとう、華霧。
 まあやつがれも着たしな? おたがいさまというやつさ」

着ろなんて言われてないけど。

はたしてそれはパンキー&ゴシック。
シルバーが随所にあしらわれたレザーのジャケットにスカート。ブーツ。
シャツにはいかにもストリートアート!
みたいなラフに描きなぐった感じのデザイン。

どういう場所に潜入していたか、といえば。
薬物の取引場所として元気だった歓楽街のライブハウス。
懐かしい。

「はーやーくぅー」

ガコンッ。もう一打。
見ないままにあまったるい声で急かしちゃう。

園刃 華霧 >  
「……なンか、すッゴいジャラジャラする……」

着る前から、なんとなくわかってはいたが。

もう、なんだろう
なんというか……
いくらアタシが物を知らなくても、
これはひどいっていうのはなんかわかる。

なんだろう、これ

「動き、にくク、は……ナい、けド……」

ブーツもなんだか歩きにくい。
なにこれ、なんで靴がこんな長いの?

月夜見 真琴 >  
「ほう!」

キューを置いて、楽しそうに近づいていった。
まずは遠目によーく観察。

「園刃華霧におかれては、そのままで着こなす見目の良さ、さすがだな。
 やつがれはな~、少し濃い目に粧し込まないと似合わないと言われたものさ。
 ほら、顔に慈悲深さが透けてみえているだろう?ふふふ」

引き締まった肢体。するどめの歯。
ずいぶんと様になっている。さっきから常にずっと上機嫌だが更に上向いた。

「すこし――そうだな。
 シャドーは強めに入れようか。
 グロスも暗めの色にしてもいいかもしれない――さて。
 おとなしくしていろよ?」

気づけば両手の指指に、握られていたのはコスメの数々。
ここまで来たら、メイクまでもしっかりしなければ気がすまない。
そもより月夜見真琴は凝り性だ。

園刃 華霧 >  
「いヤ、ェ……どう、ナん、これ……?
 とイうか……うン?慈悲ぶk……ヤ、なンでもナい。うん」

なにかいいかけてやめる。
空気は読める、読める……

それにしても
じゃらじゃらとするし、隙間だらけでスースーするし……
あと、レザー? なんか肌触りが独特すぎるんだけど、これ。
まあ、動きやすさは……ジャラジャラさえ除けば悪くはないんだけど。

「って、ちょ?!
 ま、そこマで、すンの!?」

コスメを構えてにじり寄る同居人。
ちょっと まって たすけて ふうきいいん

月夜見 真琴 >  
「しかしだ。やつがれの記憶が確かなら――
 確かに珍妙回帰なるVな装い、なれどあのライブハウスの中では。
 だいぶん、おとなしいほうだったとも。すなわち何の問題もないさ!」

丸め込む。どうしろ、とは言わない。

「装いに適した化粧をするのは当然のことだ。
 むしろせっかくの機会だ、ここまで来たらやってしまいたい。
 毎朝おまえの素材の良さには舌鼓を打っているのだ。
 ――ふっふっふ、濃くて暗い色などそうそう使わないからな~、楽しい~!」

さあ。ずいずいと距離を詰める――高いヒールであっても歩き慣れた足取り。
肌色は白く塗る――わけにもいかないが目元と唇は特に濃いめに。
仕上げにはタトゥーシールを片頬に張ってしまえばいっぱしのガールズバンドの完成である。
倉庫に楽器はあったかな――、なんてうきうき顔だ。

園刃 華霧 >  
「イや、ソういウ問題ジャないゾ?
 ったくマコトは……」

丸め込もうとする相手に思わず突っ込んだ。
突っ込んだが、まあこれはこの同居人の習性みたいなもンだしナぁ……
やれやれ、と諦めも入る


「ぅー……」

楽しそうな同居人を無下にも出来ず、はい、されるまま。
そこには立派な、それ系の女子が爆誕する。

「……ェー」

思わず鏡を探してみて……
濃い化粧、露出の多いレザーの衣装、という一端のそれっポイ己の姿を発見する。
なるほど、印象はだいぶ違う

……それを許容するかはまた別だが

月夜見 真琴 >  
 
 
(携帯デバイスのカメラが作動した音)
 
 
 

月夜見 真琴 >  
スッ。
構えた携帯デバイスの横から顔をのぞかせて。 

「ああ~、素晴らしい!
 どこのステージに立たせても恥ずかしくないフロントの貫禄!
 今年の常世祭の出し物、風紀委員会はこういうノリでも良いかもしれないな!
 ぜひメイクに立ち会わせてもらおう――ほら、華霧」

ごく楽しそうに腕を伸ばし、指を立てた。
カジュアルな装いからゴシックなファッションまで。
着こなしてしまう同居人はとても良い素材だった。
――さて、朝までの楽しみができたぞ。なんて口許には三日月の笑み。

「こう――中指を立てて、舌を出してみたりするといい。
 ふふふ、もーいちまい!もーいちまい!
 レイチェルのデバイスに送っておこう。
 疲れもなにも、雨過天晴の如く吹き飛ぶことだろうさ!」

園刃 華霧 >  
「そレ、マジで通ったラ笑うンだケド……
 まア、楽しソうっちゃ楽しソーだナ」

やたらテンションが高い住人にちょっと面食らいつつ、
それでも楽しそうなのでこちらもなんだかうれしくなる。

「ェ、あ……こう、カ?」

不良で、暴れ者だったりはしたが、こういう長髪の仕方をしたことはない。
まあ、それでも言われた通りおとなしく中指を立てて、舌をベロっと出したりする。

んー……なんだろう、これ。
まあ、なんか面白いのは面白い。

「って……まダやるカ……うん……
 わかッタよ、もう」

しょうがない、とことんまで付き合おう

月夜見 真琴 >  
 
 
「――――実際」
 
 
 

月夜見 真琴 >  
「すこしやり過ぎたかもしれないな」

さんざっぱら遊んで酔いも覚めた、という調子だった。
衣装ケースの中身をほとんどひっくり返し、
多種多様なコスメティクスでもってあらゆる園刃華霧をデバイスに収め続けた結果、
非常に写真フォルダが(華霧で)潤いはしたが。

「片付けは――たたむだけたたんで明日でいいか」

随分と着せては脱いでを繰り返した惨状。
(ほとんど盛り上がっていたのは自分のくせに)
お互いやっちゃったね、みたいな感じの空気を出している。
被写体をねぎらうアイスココアをバーカウンターから持ってきた。
こちらも同様に甘い飲み物で笑いと集中の疲れを癒やしつつ、

「あとは、なにかあったかな―――、――」

一番下に。

園刃 華霧 >  
「モー……つカ、レ……タ……」

散々きせかえをさせられ、さんざん化粧をされた。
楽しんでいる自分も確かにいたが、いい加減疲れ切った。

ついでにすごい写真撮られた。
普段なら軽口の一つも言って、報酬でも要求するところなのだが。
今日はそんな元気もなくなった。

そんなことをつらつらと考えながら、ぼーっと
後片付けをしている同居人を眺め……

「……なに? どうしたの……?

何かを見つけて、一瞬何事か考えたかのうような同居人を
心配して声をかけた。

月夜見 真琴 >  
「ああ、いや」

それを持ち上げて、これだよ、と見せた。
肩を竦めた。少しばかり、今までの。
ぶっちゃけたらコスプレ衣装とは意味合いを違えたもの。

「こんなところにあるとは思わなくて。
 すこし驚いてしまってな」

苦笑ながらに、それを衣装ケースの一番上に置いて。

「そういえば――あの服。
 レイチェルの反応は、どうだった?
 感触は間違いなくよかった、と予想していたけれど」

ワインレッドのワンピース。
あの後は疲れていた様子だったし、
自分もまた一作描き終えた後、新作の構想に集中していたから。

園刃 華霧 >  
「ァ……」

見せられた、ソレ。
確かに、それは……驚くかも、しれない。
こんなおもしろグッズと一緒なら、尚更だ。


「まァ……そりゃ、驚く、ワな……」

なぜそこに、とは特に問わないし、
予想なども偉そうに打たない。
それは、ただそれだけの事実でいい。

「ン、あの服?
 ァ―……リンリンにも、チェルにも、評価は良かった、よ」

どちらも、可愛い、という感じに言われた気もする、が。
まあ評判は良かったはず、だ

月夜見 真琴 >  
「それは良かった。
 次にでかける時は、また違ったものを用立てるとしよう」

少し機嫌が上向いて、散らかしてしまった衣服をたたむ手がふたたび動き出す。
思い返せばバニーガールのまんま、であるが。
思い出をさかのぼる旅の果てに、「それ」を見つけてしまったことは、
だいぶ――皮肉が効いている。最近そんなことばかりだ。

「寒い時は、うえにミリタリーコートを羽織ったりなんかして。
 いろいろしていたものさ。なつかしいな……。
 人に過去あり、人に歴史あり。
 まあ、きょうの催しは、やつがれのちょっとした思い出語りでもあったわけだが」

誤魔化すようにしていつもの調子で笑いながら。
『それ』を取り上げると、首を傾げてみる。

「着てみるか?」

園刃 華霧 >  
「……マた、かー……ん、まァ……了解」

また新たな私服を増やすつもりだ、これ。
ホントそういうの好きだなあ、マコト。
まあもう、流石に慣れてきたけれど


「……そッカ。ウん。
 少しは、すっキり、した?」

思い出がたり、なんてものは
過去に思いを馳せて吐き出す、までがセットだ。
吐き出しておきたいことは吐き出せただろうか

そして――

『それ』が差し出される


「ェ……いャあ、でモ……」

それを たわむれに きていいの?

それに それは
それが それなら
あえて きることも ないの かな

月夜見 真琴 >  
「ああ。大いに笑ったさ。
 実にこちらも潤った。酒精も抜けたが――いいきぶんだ。
 みればわかるだろう?」

その微笑みに、うそがないことくらい。
デバイスを揺らし、彼女の様々な艶姿。
特に刺激的なものは――そうだな、レイチェルにメールで送付しておいてやろう。
この牢獄から出来る、「委員会活動」、すなわち「慰労」だ。

「すこし、知って欲しかったのもあるかもしれない」

気持ちはいくらかどころでないくらい、華霧にぶつけてしまっている。
あのときも、あのときも。
だからまあ、こういう他愛ないことがあってもいい。
そんな気安い一日が、いくらでもあっていい。
なくならない日常。あたりまえにそこにあるもの。

そして――それを、引っ込める。
たたみ終えたものたちの上に、一番上に置いた。

「まあ、そう。これは別に面白みがあるものではないし。
 おまえのためのこれを、用立てる時が来るかもしれないし」

ぽん、と頭に手を置いて。

「気軽に、な」

いっしょにいるなら、と苦笑した。
――まあ、出会った時、最初にアトリエに来た時とは。
いくらか関係の色合いは変わり。
いつか、どこかこわごわとしている彼我の歩み寄りも、変わるのかなと。
立ち上がって、ぐっと伸びをした。

「お風呂、沸かそっか」

園刃 華霧 >  
「ァ―……うん。
 まあ、楽しんだンなら、いッカ……」

それはそれでまあ、よかったのだろう。
なんとなく、距離が縮まったかもしれない。
あぁ……そうか。
そういうことか。

「……ン」

引っ込められたのをみて……
ずきり、と何処かが痛んだ

「……チョッと、試しに……着テみよウ、かナ……?」

少し、前に出てみても、いいのだろうか


「お風呂……うン、そダね」

こくり、とうなずく

月夜見 真琴 >  
「ん」

控えめに、切り出された言葉に。
口の前に人差し指をあてて、そして天井を向いて思索。
なにかを思い至った。

「……部屋に。式典に着ていくためのものがある。
 すこしまえは、英治を見舞うときに袖を通したかな。
 いっしょに着てみようか? おそろいで、写真を撮ろう!」

そう提案する顔は、うれしそうに。
行こうか、と部屋のほうにひっぱっていく。
すこし変な催事になった。これは、メールで送られることのない写真。
ただ、気を使われた、というよりは。
彼女から歩み寄ってきてくれた感じがした。

園刃 華霧 >  
「おそろい……おそろいか……
 うん……そういうのも わるくない かも」

うん
一緒に写真を撮って、記念……そう、記念だ。
そういうのは、きっと悪くない。

そういうものが、なさすぎた
だから、これでいい……かな

月夜見 真琴 >  
 
 
そんな、一幅のよくある日常。
 
 
 

ご案内:「森の中の月夜見邸」から月夜見 真琴さんが去りました。
ご案内:「森の中の月夜見邸」から園刃 華霧さんが去りました。