2020/09/14 のログ
ご案内:「常世学園付属常世総合病院」に山本 英治さんが現れました。
ご案内:「常世学園付属常世総合病院」に園刃 華霧さんが現れました。
山本 英治 >  
ベッドサイドに座って祭祀局の人間から解呪を受けている。
難しい顔をしながら、一生懸命に異能による怨嗟を解除されている。
ただ、それだけで。

俺の受けた呪いは、あまり良くない経過なのだろうな。とか思う。

儀式が終わって、周囲から祭祀局の人間が帰る準備を始めた。
本件の主任から長い目で見ていきましょう、と説明を受けて。

園刃 華霧 >  
さて……いきなり飛び込んできた話で、ちょっと驚いている。
先日した覚えはあるけれど、やはり見舞いに行ったものか、と……そこまではいい。
ただ――

果たしてどんな顔をしたものか、と少し困惑している。

そんなことを考えているうちに、部屋の前まで来てしまった。


「ン……人が、居ル……?」


先客……にしては人が多い気がするな?
なんだろう、入ったものか……
思わず入り口で止まってしまう。

祭祀主任 >  
「山本さん、あなたは人を殺した際に異能の呪詛を受けました」
「それは正当な方法では解除できないでしょう…」
「力不足を痛感しますが、わたくしの祈りでは今すぐ解除もできません」

沈痛な面持ちで相手に話しかける。

「今回はこれで失礼します、必ず祭祀局に通所してくださいね」

頭を下げてスタッフと去っていく。

山本 英治 >  
「フゥー………」

溜息を吐いて、俯いていた。
いつまでも、いつまでも。

俯いていた。

祭祀主任 > 「おや、あなたは。見舞いですか?
 用事は終わりましたので、もう入っても大丈夫ですよ。
 ただ……病み上がりで少々気落ちしているとは思うので、優しくしてあげてください」

園刃 華霧 >  
中から何人かどやどやでてきた。
その中の一人に声をかけられた。
なるほど? そんな感じか?

「ンー……ぅー……じゃ、マ……」

となれば、表情は決まった。
ドアを開けて中に入る。

「おーイ、エイジ!アフロは無事か?」

いつもどおりにいつもどおりの声で。
いつもの顔で。

ただ、格好だけがいつもの制服ではなく
白のワンピースであった。

山本 英治 >  
その声にパッと明るい笑顔を浮かべて。
すっと顔を上げる。

「あ、園刃か、来てくれたん……」

そこで見えたのは、白いワンピース姿の少女だった。
綺麗で、可愛らしくて。俺は。

「……どちら様で?」

と、照れ隠しに言ってしまって。
慌てて自分の黒髪を撫で回して。

「ああ、いや、俺のほうがどちらサマって感じだよなァー!」
「ハハ、入院する時のスタイルこれが楽でさぁ」

笑いながらわたわたとベッドの上であぐらをかいて。

園刃 華霧 >  
「……うっワ、この間の仕返シか?
 クっそ、ヤられタなー……」

このやろー、と軽くケンカ腰。
もちろん、怒ってはいない、

「……ンー、まア。
 オマエの顔って存外濃いカらナ。
 見間違エるコトもなイだロ。」

よいしょ、とベッドの側の椅子に座る。

「ッてカ、メシとか食えルの?
 土産の一つモ持ってイけって言わレたかラ持っテきたケど……」

と、紙袋を差し出す。
中には「常世の月」という菓子。

山本 英治 >  
「ははは、意趣返しは性格悪かったかなー」
「ま、ここは寛大な沙汰を…………」

溜息をぐっと堪えて。
肉体的には楽になったが。
精神的な疲労が蓄積していた。

「どうでもいいけどしょうゆ顔とソース顔ってどっちがどっちかわかんなくなるよなー」
「どっちも濃いだろ、みたいな」

ガリガリと首の辺りを掻いて。

「メシを食う分には問題なくて、」

その瞬間、紙袋に視線を巡らせると。
屈んでこっちを見上げている死んだ親友の顔と目があった。

「ヴ………っ」

精神的負荷に吐きそうになって口を手で抑える。
幻だ、幻影だ、幻覚だ、こんなの……あるわけない…っ

園刃 華霧 >  
「ばッカおまエ……」

軽口には軽口を……そう思ったが、そこで止まる。

なんか受け答えが妙な気がする。
いや、いつもの軽い感じなんだけど。
なにか、変な感じだ。

どこか、ぎこちない。
空回りしているような感じとはまた違う。
これが気落ちとかの……

「お、オぃ…?! どウした、エイジ!?」

目の前で口を抑えて吐きそうになる男。
調子が悪い?
いや、なにか違うようにも……なんだ、これ

山本 英治 >  
何とか吐き気を堪えて、もう一度恐る恐るそこを見る。
その場所には、未来の姿はなかった。
心の中にある感情を堰き止めて。

項垂れた。

「俺……土曜に違反部活生を殺したよ…」
「そいつの今際の異能で呪われて、今は」

「気を抜くと未来が俺を罵ってくる」

荒い呼吸をして、タオルで汗を拭った。
羽月さんと同室じゃなかったら、と思うと。
今、どうなっていたかわからない。

「……どうしようもねぇなぁ…………」

溜息をついた。

「どうしようもねぇよ」

因果応報、か。

園刃 華霧 >  
「……ァ―……」

違反部活性を殺した。
確か、風紀の案件じゃそこまでしなきゃいけなそうな話は聞いた覚えがない。
とすれば、どっちかというと個人的な出来事だったりするんだろうか。

それよりも

「呪い、カ……」

元々大した能力も知恵も持っていない。
そんな悩みをどうこうすることは、多分出来ない……
それでも

「罵る? 未来が? オマエを?」

そんなこと、どれだけの苦痛か
それは、わからないけれど、多分分かる

「どうしようもねぇ、ダって?
 ナニがダよ……?」

思わず聞いてしまう

山本 英治 >  
「祭祀局の見立てだと完治まで五年はかかる」
「俺の学園生活は、多分これでおしまいってことだ」

顔を上げて、口の端を持ち上げて笑う。

「なに、俺は一人じゃない」
「色んな人がいてくれるさ……今までの日々は、決して無駄じゃなかった」
「それがわかっただけでも僥幸さ」

「……重畳さ」

風紀委員としては、もうおしまいだ。
店じまいってこと。と、告げて。

「引退だ」

園刃 華霧 >  
「……ア”?」

なんだ、コイツは
なんで、こんなに

いや……苦しみは、わかる……
わかるけれど、納得いかない

「なンだ、ソれ……
 ナんで、そウ、なルんだ……
 なンで、ダよ……」

自分にはどうしようもないこと
そんなことはわかっている
わかっていても
わかっていても……

山本 英治 >  
「園刃」

声をかけて微笑む。
彼女には、感謝の言葉を。

「ありがとな」

これには拒絶の言葉の色もある。
これから暗い学園生活を送る自分に。
愛だの恋だの……言ってる暇ァ無いだろ。

「あんたのおかげで随分と楽しかった」
「感謝してもし足り無いさ」

「あとは最後に一仕事って感じかな」

ベッドサイドに座り直して。
寂しげに笑った。

「本当にありがとう、園刃」

園刃 華霧 >  
「……あァ、そウ」

顔を上げる。
一体、どんな顔をしているんだろう。
自分でも、わからない。

あたしは これから
なにを いおうと
してるのか

それは いっては


「……えいじは にげるの?」

山本 英治 >  
「逃げるって………」

誰に言われたっていい。それでも。
園刃に……惚れた女に言われるのだけは、堪える。

「精神が壊れた風紀にできることなんて……」
「あとは宿敵と決着つけるくらいしかできないさ」

俺は園刃を傷つけたくない。
俺は……俺は…………

「諦めたくなんかねぇ、手放したくなんかねぇ」
「でも……」

でも。無理だろ。これ以上は。

園刃 華霧 >  
「しゅくてきと? しゅくてきとは むかいあえるの?」

じっと めのまえの あいてを みる

「だいじょうぶ なの?」

じっと じっと みる

「あたしは じゃま?」

ただ じっと みる

山本 英治 >  
どうして、そんな目で。
そんな声で。

……園刃ッ!!

「俺………あんたが好きだ…」
「それは変わんねぇよ………」

「でも! 死んだ親友の幻影にこれから長いこと粘着される男じゃ!!」
「園刃の手を握れねぇんだよ!!」

感情が止まらない。
止まってくれない。

「邪魔なわけ………あるかッ」
「本当はずっと傍にいて欲しいさ……でも……でも…!」

園刃 華霧 >  
「そう」

めは はずさない

「……じゃあ」

みつめ つづけて

「どうすれば いい?」

じっと みて

「……」

山本 英治 >  
「どうすればって………」

目が泳ぐ。視線の先に人影を見て怯える。
どうすればいい。
どうすれば。

そんなの、本当はわかりきってるのかも知れない。
俺の傍で支えてくれって言うんだ。
ただ、それは卑怯だ。

卑怯だろう、山本英治………ッ!!

自分の苦しみを押し付けることが、対等な関係かよ!!
自分の都合だけを相手に伝えることが、正常な人間かよ!?

「園……刃…」

彼女に伸ばそうとした手が震える。

園刃 華霧 >  
「……」

ふるえる てを みつめる
ああ かれは おそれて いる
かれは おびえて いる

かれは きえてしまうかもしれない
ああ

「……なァ、エイジ……
 アタシは、何もデきヤしなイ。
 何かでキるほド、たいシたヤツでモ、ナい。」

出された手を握る。

「せメて……"エイジ"を"否定"する"有り得ない未来"なンてナいって。
 アタシは言い続ケてヤる。
 オマエも……問い続ケる、ンだろ? 問イ続けテみろヨ……」

山本 英治 >  
手に彼女の小さな手を重ねられると。
弱さが剥がれ落ちた。

そのまま、抱きしめたかった。
そのまま、キスの一つでもしたかった。

でもそれはできない。
俺は男だからだ。

俺は俺の信じる………未来を…………

「じゃあ、問うさ………問い続けてやる」

自分自身に。
それでいいのかよ、と。

「これで良い訳がねぇ……絶対にこの呪いを解除して、みんなの前で笑顔を見せてやる…」

彼女の手に左手を重ねて。両手で包み込む。

「男が絶対って言ったら。そりゃ絶対なんだぜ…園刃」

園刃 華霧 >  
そうだ
この暑苦しいのが、コイツだ。
そうでなけりゃ始まらない。

「……ヤっと、暑苦シさが戻っタな。」

これでまずは一つ
ただ、なにもまだ解決はしていない

それに、いつもコイツについてやれるわけでもない

……さて

「あァ、そレだ。そレが、エイジだ。
 アタシの知っテいる、エイジだ。」

にしし、と笑ってみせる。

山本 英治 >  
「ったく……羽月さんも、園刃も」
「俺のことをなんて思ってやがる……こう見えてな」

ナルシストっぽく髪を指で靡かせて。
親指で自分を指す。

「繊細な男なんだぜ?」

白い歯を見せて言った。
それから、笑い出す。
可笑しくて、可笑しくて、たまらないという風に。

俺は笑った。

園刃 華霧 >  
「知っテるよ、バカアフロ」

けたけたと笑う。

「オマエ、他人事でモ首つっコんデ、泣いタり叫んだリ……
 やッタら細っコいダろ」

からかうように笑う。
楽しく笑う。

それでももう一つだけ

「マだ、なンかいルか?」

それだけは聞いた。

山本 英治 >  
「あー、ひっでぇなぁ」

笑いながら両手を広げる。

「そこまでわかってる男に発破かけるならさぁ」
「もうちょっと言葉選べたんじゃないの?」

そう言って笑う。視線の外で未来が睨んでいる。
でも。俺は笑った。

「大丈夫だ」

そうだろ、羽月さん。

園刃 華霧 >  
「『馬鹿』二発破かケんナら、少しは刺激的じゃナいとキかないダろ?
 アタシ自身が『馬鹿』なンだかラさ」

笑いをとめて、肩をすくめる。

「ンー……けど。なラ、まァ。
 一個だケな。ほレ。」

手元に一枚のカード。
それを差し出す。

「なッツかシいなー、コレ。
 とリあえず、しばラく預ッてオけヨ」

それはいつかみたカード

山本 英治 >  
「揃いも揃ってバカなんて笑えねーからな」
「インテリは羽月さんだけかよ………」

カードを差し出されると。
目を丸くして。
それから受け取って、両手で包み込んだ。

「必ず返しに行くからな、園刃」

それは、誓い。
どんなことが起きても。必ず返しに来るという。

約束。

園刃 華霧 >  
「羽月……ァー……そーイや、あの教師、知り合イだっタか……」

トゥルーバイツの時の関わりと、
それ以後でたまたま出逢った男。
自分の選択で、自分を変えたというあの男。

「あぁ、ちゃンと返せヨ?
 "なんでもするから"って約束シよート、
 "惨めったらしく泣きながら"喧嘩シても……聞かナいかンな?」

けたけたと笑って返す。

誓い

それだけ聞ければ十分だ

山本 英治 >  
「羽月さんと知り合いなのか、園刃」

はははと笑いながら話して。

「ああ、そうだな……“捨てられない”って“泣き出す”よりは、いいさ」

そう言って。
二人で笑いながら話した。

俺なら。俺たちなら。悪意に負けない。
そうだろう………なぁ。