2020/10/26 のログ
ご案内:「Cafe SketchBook」に日下 葵さんが現れました。
ご案内:「Cafe SketchBook」にジーン・L・Jさんが現れました。
■日下 葵 > 異邦人街の仕掛け道具屋での談笑の後、二人で立ち寄ったのは異邦人街にあるカフェ。
異邦人街にあるものの内装は地球の人間向けで、
どちらかといえば人間の文化を異邦人に楽しんでもらうためのお店。
駐車場わきの階段を上がってドアを開けると、カランカランとぶら下げられたベルが来店を知らせた。
「ここですね。カウンター席でもいいですか?」
店の中に入ると、後ろに続くジーンに振り向きざまに質問をする。
ゆったりとしたジャズが控えめな音量で再生される店内を一瞥すると、
数人客が居るだけで随分と空いているようだった。
壁にぶら下がった木製のブラックボードには”本日の日替わりケーキ:シフォンケーキ”の文字。
初老のマスターがカウンター越しに”お好きな席へどうぞ”と目配せしてくる>
■ジーン・L・J > 異邦人めいた風貌ではあるが、ジーンはれっきとした地球生まれである。
異世界文化のサラダボウルの中でしばらくぶりに出会った純地球産とも言うべき店の作りに、何度か頷きながら顔を巡らせる。
どこかで聞いたようなジャズも耳に心地よい。
「なるほど、異邦人街にもこういうところあるんだね。うん、いいよ。」
見た所テーブル席は4人用、そこに2人で座るのは少し気が引ける。
促されるままにカウンター、相手の右側に座る。
「さてさて、何を頼んだものかな。君のオススメは?」
ブラックボードとマスターの背後に書かれたメニューに軽く目を走らせてから顔を相手に向ける。
馴染みの喫茶店で何を頼むか、趣味を知る第一歩だ。
■日下 葵 > 「ええ、何でも敢えて異邦人街にお店を出しているんだとか。
意外と異邦人の人にも受けがいいらしいですよ?」
彼女の返事を聞くといつも自分が座っているカウンター席へ腰かける。
するとマスターがお水の入ったコップを二つ、メニューと一緒に差し出してくれた。
「そうですねえ、私はアメリカンコーヒーが好きですが、
ここに来るのが初めてならラテかカプチーノがおすすめかもしれませんねえ」
マスターがラテアートを作ってくれるんです。
そう説明すると、メニューを開いて右隣に座る彼女に差し出した。
L版サイズのアルバムを流用したメニューには、
写真と一緒にコーヒーやランチの説明と値段が示されていた。
「じゃあ私はカプチーノとシフォンケーキをお願いしましょうかねえ?」
他人に勧めておいて自分は頼まない、というのはいかがなものかと、
このお店のちょっとした名物になりつつあるカプチーノを選んだ>
■ジーン・L・J > 「異邦人にとっては地球が異文化で物珍しいのかな。向こうにとってはこっちのほうが異邦だし。」
ありがとう、と水とメニューを受け取ると、喉を湿らすために水を一口。
「ふんふん、君の好みはアメリカン、と。ついでに聞いておくと普段はブラックかい?」
指先でトントンとアメリカンコーヒーの写真を叩く。豆の種類や味わいについても詳しく書いており、中々手の込んだメニューだ、アルバムを型に使っているのも趣味が良い。
「私も同じのを。それとごめん、笑わないで欲しいんだけどさ、らてあーと…って、何だい?」
ジーンが禁書として封じられていたのが《大変容》直後、そして目覚めたのはほんの最近、その間に流行ったであろう文化についてはさっぱりだった。
■日下 葵 > 「そのようですねえ。
異邦人にとって、この世界はわからないことだらけ。
生きていけるかどうか、そんなレベルで不安でしょう。
そういう人たちのために用意された街……とはいっても、
所詮は文化のサラダボール。
”この街を出たらどんな世界があるのか”は、
良くも悪くも興味を引くところだと思います」
つまり、この店は”外の世界”の一例なわけである。
差し出された水を一口飲み下すと、
別に炭酸が入っているわけでもないのにその冷たさが何とも言えない清涼感を与えてくれる。
「基本はブラックが好きですねえ。
最初は砂糖やミルクを溶かすのが面倒でそのまま飲んでいたんですが、
気付けばそれが当たり前になってしまいました」
そんな無頓着な理由もあってか、別にブラックじゃないとダメとか、
そんなことはなかった。
「おや、ラテアートを知りませんか。
ふーむ、でも口で説明するより、
実物を見てもらったほうがきっと”楽しい”ですよ?」
そういって、カウンターの向こうにいるマスターに注文をだす。
ニッコリと笑って奥に準備をしに行ったマスター。
最初にシフォンケーキが出てきて、数分遅れてカプチーノが出てくる。
そのカプチーノの泡に、ミルクを注いで、
お湯の温度をはかる温度計で泡に何かを書き込んでいくと――
出来上がったのは昼寝をする猫だった。>
■ジーン・L・J > 「そうだね、私も《大変容》前後のギャップには驚いたけれど、それはあくまでそれまであった世界の延長線だった。
根本から違う世界に紛れ込んでしまったわけじゃない。そういう意味ではこの店で"この世界"の一端を知ることが出来る、わけか。」
異邦人のために用意されたこの区画ではあるが、異邦人と一括りにされた結果生まれた歪さは一目でわかる。むしろ全く異質の文化が直ぐ側に立ち並ぶ恐怖を感じる者も少なくないだろう。
"外の世界"をここで知れば、学園へ属することを選ぶことも出来る。だがそう出来ず、ここでも居場所が見つからなければ、すぐ隣にある暗部、落第街にでも向かうしかなくなる。
「ブラックの手軽さはいいよね。私も大体ブラックだから気が合うね。ゆっくり飲みたい時は少し手間をかけるけど、そういう時はあまりないなぁ。」
思ったより消極的な理由だが、否定せず頷きながら同調する。わざわざ話を聞き出しておいて否定するのは失礼だし、納得出来る内容である。実際普段はブラックを飲んでいる。
「おやおや、そう言われると待ち遠しいなぁ。
今、"楽しい"って言ったね、君が闘争以外で楽しいっていうのは珍しい。」
こちらの立場で考えての"楽しい"だろうが、それを推察出来るということは普通の人間、知らない物を知るという普遍的な楽しみを理解している。もちろん当たり前のことだが、その当たり前を持っているかすらまだ不明だったのだ。
また一つ相手の側面を知れたようで、楽しそうに空中に文字を描くように指を動かす。
そうしているうちにやってきたらてあーととやらは、なるほど、ラテの上にミルクとコーヒーの濃淡で描かれた絵画
「これは随分と可愛いものがやってきたね。ラテ、つまり牛乳の泡で絵を描くからラテアートか。面白い。」
■日下 葵 > 「ま、いきなり異世界に飛ばされた、なんて経験したら、
大抵の人は路頭に迷うものでしょうからねえ」
そういう世界の存在を認知していても、
いざ己が当事者になったらきっと冷静じゃいられない。
家と、通学路と、学校で閉じていた世界がいきなり、
知らない大人に囲まれた病院に変わったときはひどく混乱したものだ。
「同じく、そういう部分に手間をかけること自体が少ないですからねえ。
こういうお店に来た時くらいでしょうか」
そういって内装を見渡す。
コーヒーやケーキだけではない、この雰囲気や、
ここでの時間を楽しみにきていると言っても過言ではないのかもしれない。
「――ふふ、私をなんだと思っているんですか。
私は戦闘マシーンじゃないんですよ?
とはいえ、ここ最近ですかねえ。
こういうアートや、食べ物や、風景を、
楽しもうと思って楽しむようになったのは」
遅れてマスターに差し出されたのは昼寝をする犬の描かれたカプチーノ。
どうやら今日のマスターは昼寝を推しているらしい。
その絵を見つめて呟いた言葉は、どこか皮肉っぽい雰囲気を纏っていた>
■ジーン・L・J > 「だろうねえ、私も学園からまず衣食住の手配を薦められたし、宛がないって言ったらその日のうちに寮やら何やら用意してくれて、随分助かったよ。生活基盤を失った人間は、私は人間じゃないけど、脆いものだからね。」
当事者の頭越しに猛スピードで話が進んでいって面食らった記憶もあるが、あれぐらい早急に事を進めなければ目覚めて初日にベッドで眠ることは出来なかっただろう。
「喫茶店は場所も含んめて楽しむものだと私は思ってる、もちろんどういう場所を楽しむかは客が選ぶものだけどね。
混雑した騒がしい場所がいいって人も、ちょうど私の兄弟姉妹にも何人かいた。私はここみたいに静かな場所がいいけどね。」
シフォンケーキにフォークを沈み込ませると、1/3ほどで生地が切れ始めた、とても柔らかい。もう一箇所切れ込みを入れて台形に切ったそれを口に運ぶとほんのりとした自然な甘みと香りが口の中に広がる。ジーンの味覚は血液に特化しているが、五感としても鋭い、マスターの腕が異邦人街において地球文化代表として恥じないものであると認識する。
「うぅん、美味しい。」
思わず頬を押さえながら漏らす。
「ははは、ごめんね。
今の所お互い知ってるのは太刀筋とか身のこなしとかじゃないか、君のそういう、刃を収めている時の姿はまだ知らないから。
というと、何か最近、心境の変化があったわけだ。君がそれ以前どういった生活をしていたのか知らないけど、楽しみを知ることは悪くないと思うよ。
何があったんだろう、君の生き方は一朝一夕で身についたものには思えない、それが変わるとなるとそれなりに大きな出来事だと思うんだけど。ああ、もちろん話すのが嫌なら構わないよ。謎を秘めた人ってのも魅力的だから。」
カプチーノを飲もうとカップを持ち上げると、傾いて絵が崩れかける。おっと、と呟いてそれをゆっくり戻した。
■日下 葵 > 「そうですねえ。
自分以外のの事情に振り回されて生活が変わるっていうのは、
なかなか度し難いものがありそうです」
突然異世界に飛ばされてたり、
時代が変わるほどの永い眠りから覚めたり、
そういう人のために学園が迅速に手はずを済ませてくれるというのは、
当人たちにとって大事なことだろう。
「私も、こういう静かな場所がいいですねえ。
静かだけど、退屈はしない。そんな雰囲気が好きです」
逆に、退屈なのは嫌いだ。
目まぐるしく、自分が追い付けないほど忙しいのも嫌いだ。
自分のペースで、自分が主導権を握っている環境が好きだ。
「ほんとうだ、おいしい」
シフォンケーキを一口食べて喜ぶ彼女を見ると、
自然とこちらもケーキにフォークを入れて一口。
とても柔らかい食感は、安らぐような感覚を覚えるほどに美味だった。
「ま、それも仕方がないですねえ。
今のところお互いのことでわかっているのは、
戦う時のスタイルくらいなものですから。
変化――変化ですか。
そうですねえ。いろいろとお話できる友人が増えたことでしょうか」
友人。
実際にはペットだったり、仕事の後輩だったり、
落第街の友人だったりその関係性は色々だが。
「それこそ、今まではジーンさんの様に、
がっつり戦闘のことをお話できる人はほとんどいませんでしたからねえ」
そういう話をできるのは、かつて私に技術を教えてくれた師くらいである。
その師も、今となっては故人となってしまったが。
「そういう意味で、ジーンさんと知り合えたのも、
私にとってはある意味ターニングポイントだったのかもしれません。
――ふふ、普通に話しちゃいましたねえ?」
なんて茶化して見せるが、実際には言えないことだらけだ。
「逆に、ジーンさんのお話も少し聞かせてくださいよ。
昔は――いや、昔から狩人だったって言ってましたけど」
柄を崩さないように慎重になる彼女とは対照的に、
こちらはためらうことなくカプチーノを一口。
形を崩して歪になった犬が液面に残った>
■ジーン・L・J > 「全くだよ。そしてこうやって今は落ち着いた場所で君とお茶を出来るんだから、学園様様だね。」
煙草いいかな?と店主と相手に許可を取ってから、ジャケットの内ポケットからいつもの煙草、窮極門の箱を取り出す。一本口にくわえ、指を弾いて電流で火を点けた。
薔薇の香りの煙が周囲に広がる。
「うん、美味しい。いいお店だね。贔屓にさせてもらおうかなぁ。」
煙草を灰皿に置いてもう一口。日替わりなのが少し惜しい、次に来た時もあったら必ず頼もう。
「ああ、友人。人と交わることで影響を受けたって感じかな。最初は話題を合わせるため、ぐらいの気持ちだったけど段々その楽しみに気付いたとか?勝手な想像だけど。
で、その中に私もいるとは光栄だ。手合わせの時もここまでやりあえる相手は居ないって言ってたもんね。話してくれて嬉しいよ、話せるってことは自分の中で咀嚼出来ていて、相手はそれを打ち明けるに足るってことになるかさ。
私も君については随分考えさせられているよ。どうやれば落とせるか、こんなに一人の相手を考え続けるのは初めてだよ。」
口説き落とすには彼女を殺す寸前まで追い詰める必要がある、そうやって命の危機を味わわせて欲しい、彼女はそう言った。
だから考えるのはどうやれば殺せるか、その事ばかり。友達付き合いなら今のままでもいいだろう、だがもっと先へ進みたい。
「君は私が出会った中で、一番の難敵だよ。だから欲しい、こう見えて欲が深いんだ、手に入らないものほど欲しくなる。」
和やかな話題から一点、牙を剥き出した凶暴な笑みを浮かべる。そして、もう一度カップを持ち上げると、昼寝する猫の腹の当たりに口をつける、食い破られたように絵が歪む。
「私のことか、確かに聞いてばかりじゃ不公平だね。そうだね、私は"月の狩人"として生み出された。"満月の獣"は生まれつきの才能があるか、あるいは手間のかかる儀式を経た人間じゃないと見ることは出来ない。
でも月の狩人は消耗率が高くてね、特に初陣で7割が死ぬ。一回生き延びれたら一年は生きられる、って言われてたなぁ。」
昔を懐かしむように視線、包帯の奥に隠されたそれを宙に巡らせるように顔を動かす。
「もちろんそんな調子じゃすぐに狩人は全滅する、そこで生み出されたのが私達禁書。最初から"満月の獣"が見える存在として作り出して、いくらでも使い潰せる狩人として使う。まぁ言ってしまえば消耗品だよ、私なりに狩人としての誇りは持ってるけどね。あからさまじゃなかったけど、扱いは一段下だった。」