2021/01/12 のログ
セレネ > 「……それはそうでした。」

見た目のせいか、雰囲気のせいか。
彼が学生という事を失念していた。
偽っている、という事は知らないけれど。
不敵な笑みに対し己は小さく肩を竦めるだけで。

「えぇ、視えますよ?
そうでしょうか。普通の研究室に見えますが…。」

人間にも霊が視えるとかそういう人が居るから、そこは隠すことなく告げて。
飼育場も隣接しているから、空調は絶えずつけているくらいの普通の研究室だ。
いくつかのデスクがあり、椅子があり、応接用のテーブルやリクライニングソファもある。
目に付くのは生き物を扱う以上、必要以上に綺麗にしてある、という事くらいか。
この研究室の主の顔を見てみたいなんて聞けばやや冷や汗を掻くだろう己。

「――っ!
べ、別に、たまたま手に取った資料がこれだっただけですし…っ!」

大きな体が近づき覗き込んできた。
相手にとっては四度目か、己の纏う香りが漂うだろう。
ビクッと肩を震わせては勢いよく資料を閉じて棚に戻そうとしよう。

クロロ >  
「つーか、見た目だけならいいッこ無しだろ?
 それこそ、学生かよッて連中は俺以外にもいンだろーが。」

少なくとも見た目だけの話をすればそう言うものだと思っている。
見た目が幼くても高年齢、その逆も然り。
異邦の者、或いは異能の影響。
見た目だけでは判別付かないし、そもそも学生教師に年齢制限はない。
自分のような"二級"は例外ではあるが、それはそれだ。

「オレ様だッてその気になりゃ見れるし。
 まァな。そう言う物好きに興味あるッつーだけだ。
 こーゆー研究する奴ァ、普通じゃ出来ねーンじゃねェかとオレ様は思ッてるしな。」

そう言う所は張り合いたいお年頃。
やけに整頓されてる研究室を再度見渡し、ニヤリと笑う。
自論ではあるが、特にこういった変わり種の研究。
生半可な好奇心だけでは続くはずも無い。
だからこそ、興味が在った。その探求の道を行くもの。
同じ穴倉に住むまだ見ぬ同志の顔を。彼なりの誉め言葉だ。

「ア?そーか?つか、急にどうしたお前?
 相変わらず、結構イイ匂いするな。お前。」

覗いている最中鼓膜を震わす彼女の声。
訝しげに顔を顰め、怪訝そうに横目で見やった。
しれっとそう言う言葉が出るのは、性分だ。

セレネ > 「それはそうですけど。
……まだ此処に慣れきっていないのか、どうにも違和感は拭い切れないようでして。」

人の八割程は外見で決まるとも聞く。
だからこそ己は身綺麗にするし、立ち振る舞いも気をつけている。
こういった観念は、此処ではあまり当てにならないのだと。
経験もしているのだけれど、どうにも染みついたものはなかなか取れないものだ。

「でも常に視ている訳ではないのでしょう?
…物好きに惹かれるのは物好きと、どこかで聞いた事がありますからねぇ。」

類は友を呼ぶというか。
己自身物好きだろうから、そうなのだろうか。
彼の言葉を伝えるだけ伝えておこうと、心の内に留めつつ。

「……貴方誰に対してもそうなのです…?」

色々と言いたい気持ちをぐっと堪え、それだけ問いかけた。
ほんのりと赤らむ頬を彼から逸らしつつ。

クロロ >  
「どうせどいつもコイツも変わりゃしねェよ。
 全部まとめて同じ、とは言わねェけど、悩むし考えるし、ちょッと生まれが違うぐれェだ。」

「一々そンな所でオレ様は判断しねェよ。
 ま、お前みたく可愛い綺麗な見た目がいいッつーのは間違いねェがな。カカッ。」

十人十色と言うが、その大小はそうだろう。
けど、結局同じように話が出来れば誰だってそう大差は無い。
区別や差別とは無縁な男だ。良くも悪くも、馬鹿正直。
とはいっても、見た目が小綺麗に越した事は無い。
それだけには同意、とからかい交じりに頷いて笑った。

「ずッと見てても良い事ねーしな。
 ……ンだよ、そりゃどういう意味だ?」

アァ?と何処となく不満げな声を漏らす。
類は友を呼ぶ、に当てはまるかは分からないが
まるで珍獣めいた扱いが不満らしい。
横目でじとり、と睨めば軽く舌打ちするも、続く言葉に首を傾げた。

「どう言う事だ、そりゃ。つか、顔また赤ェし。風邪か?」

思い当たる節は無い。
前述通り、差別や区別はしない。
何時でも馬鹿正直なので、彼女の問いかけは実質的なイエスだ。
本人も此の調子だからね!

セレネ > 「まぁ、どの世界もどの種族も、時代が違っても大差ないのはその通りですが…。
――貴方と居ると調子が狂いますねぇ…。」

元の世界では二つの世界を行き来していた己。
それでもやはり、殆ど人に大差ははないと感じる。
相手の揶揄い交じりの言葉には照れるように咳払いをして。

「オンオフ出来るだけ良いじゃないですか。
…どうも何も。似た気質の人が集まるんだなって?」

不満げに舌打ちを洩らし睨む金に臆することなく、ウィンクしてみせ答えた。

「…風邪は自力で治せるので大丈夫ですー。
――それは兎も角、指輪有難う御座いました。」

否定しない、という事はそういう事なのだろう。
それ以上聞くような事はせず、話題を逸らすように片手に嵌めているリングの一つを示してみせる。

クロロ >  
「そう言うモンだろ?……ヘッ、一丁前に照れてンのか?お前。」

フフン、と得意げに笑う一方で調子に乗るとすぐ此れだ。
馬鹿であることは間違いない。
両腕を組んで、それこそ得意げにふんぞり返っている。馬鹿だ。

「お前はそう言うの出来ねェワケか?ソイツは面倒くさそうだが……アァ?
 オレ様みてーなのが、二人も四人もいてたまるかよ。ッたく……。」

そう言われれば仕返しと言わんばかりに言われ返した。
仕方ない、とばかりに後頭部を掻いて気を取り直す。

「自力、ねぇ。……ア?なンの事か覚えがねぇ。
 オレ様はサンタクロースとか信じない方だからなぁ。」

聞かれた途端、ゆっくりと目をそらした。
余りにも嘘がヘタクソ。嘘を吐くのも得意ではない。
若干上ずった声が震え、珍しく視線が右往左往。

「その指輪は、アー、なンだ。気に入ッてンのか?」

セレネ > 「流石の私も照れますよ。
…慣れてる訳ではないのですから。」

得意げな彼に不満そうに上目遣い。
褒められると照れるのは、己が褒められ慣れてないからだ。

「できたら苦労はしませんよ。霊以外にも視えるのですから…。
世界が違えば貴方のような人、一人や二人居たりするものですけどね。」

相手に似たような人、という事は相応に疲れる人という事で。
少しばかり鼻を鳴らしては。

「――あら、そうですか。
夢のない人ですこと。」

あからさまに逸らした目線。
言及する事は無く、ただただ笑みを浮かべるだけ。
…己が贈ったプレゼントは無事に届いたかは分からないけれど。

「んー。まぁそうですね。センスは悪くないと思いますよ。
心配性なサンタさんでしたし、つけないと悪いかなって思って。
…いざとなったら砕かなければならないとなると惜しいですけど。」

自身の命を軽んじているのもあって。
もし、そうなった場合。砕くかどうかは分からない。
砕いてしまえば、無くなってしまうのだから。

彼から蒼を外しリングへと向けて。

クロロ >  
「だッたら、これから慣れるンじゃねェの?お前のいい所だッていッぱいあンだろ?」

人間同士そう言うものだと男は思っている。
悪い所、いい所。両方あるようなものだ。
なら、いい所に目を向けておくのが基本。
褒めるのも、人として当然の事であり、彼女の美点を褒めるのは当たり前のことだ。

「オレ様みてーなのは、一人で十分だ。
 にしても、切り替えれねェとなると不便だな。」

ああ言う類の存在は視ていて気持ちのいいものじゃない。
特に、"不浄"を操る術を持つ男は、それを理解している。
彼女の普段見ている世界、その苦労足るや否や。
何とも言えない表情で首筋を撫でた。

「ウルセェな。夢見るような歳でもねェよ。多分。」

ケッ、と軽く吐き捨てた。

「……そンなモンは何時でも作れる。別に保険だからッて、無茶しろッて言ッてンじゃねェ。
 ただのアクセサリー位なモンだ。もッと自分を大事にしろ。さもねェと、オレ様が許さン。」

元々は当たり障りのないプレゼントにつけたおまけだ。
勿論、彼女を思ってのものではあるが、そう言う意図ではない。
他人を大事に思うが故に、当人自信が軽んじようがそれは許せない。
軽く伸ばした指先で、軽く頭を小突いてやろうとした。

「だから、ソイツは何処にでもあるアクセサリーと同じでいーンだよ。
 ちゃンと体、大事にしろよ?最近寒いしな。」

セレネ > 「…私は言う程、良い所はないですよ?」

あったとしても、そこらの人と変わらないくらいだろう。
上目遣いをやめると今度は緩く首を傾げてみせる。
自分に自信がない証拠とも言えるだろう。

「何度か百貨店や魔道具を売っているお店に寄ってみたんですが、
やはりそういったものを作成するのは難しいとかで…置いてなくって。」

五体満足で綺麗な見た目の霊ならば良い。
だが、個体によってはそうはいかない。
相手の言葉に肩を落としてみせた。

「良いではないですか。
夢を見る事に歳は関係ないですよ。
むしろロマンチストで良いかもしれませんし?」

吐き捨てる彼にクスクスと笑っては。

「また作ってくれるのです?
……自分を大事に、とは言いますが。
大切にする方法が分からないのですよ。
怪我をしても、風邪を引いても、自分で治せますから平気ですし。」

外傷や病気は治せても、心の傷までは癒せない事が問題であるが。
そこは度外視している。大丈夫だと言い聞かせている。
相手から頭を小突かれれば、あぅ、と小さく声を上げ。

「でも、人から貰った物は特別でしょう?
えぇ、身体は大丈夫です。…大丈夫ですから。」

クロロ >  
「あンだろ。カワイイ所とか、気遣い出来る所とか。
 ただまァ、ダチの前で隠し事すンのはよくねー所かもな。」

軽く指を折りながら一つ一つ、彼女のいい所を述べていく。
当たり障りないと言えばそうだが、あることが大事なのだ。

「オレ様が言うンだ、間違いねェ。胸を張れとまでは言わねェけどよ。
 少しは自意識過剰ッつーのか?それ位いえる方が、案外人生楽しいぜ?」

その為のきっかけが他人ともいえる。
自分では気づかないことを、他人なら気づける。
それを認めるのも認めないのも当人次第だが、彼女にも笑って過ごしてほしい。
どれだけ過去が引きずろうと、せめて笑顔で過ごせる人生のが何倍も楽しいに決まっている。
ニィ、と笑みを浮かべるのは彼自身の自信の表れだろうか。

「ロマンがなくて悪かッたな。……オレ様で作れるもので良かッたらな。
 特別に大事にしてくれンのは結構だけどよ、一番大事なのはお前自身だろ。」

「送ッた奴も、そうだろーが。」

相手の事を大事に思うからこその行為だ。
送る相手がいなくなっては本末転倒。
ハァー、と深いため息を吐き出し、ちょいちょいと軽く手招き。

「そろそろオレ様は帰る。お前も途中まで付き合えよ。
 ……今度は"度の合う眼鏡"位作ッてやらねーとな。」

セレネ > 「…か、かわっ…?!
ぇ、ぁ、うぅ…っ。」

一つ一つ良い所を数えていく彼に赤くなる頬は熱を帯びていく。
隠し事については何も言えないのでサックリと胸に刺さるだけだが。

「……少しずつは、自信が持てるようには努力するつもりです。」

相手にせよ誰にせよ、自信がある人は堂々としている。
それが良くも悪くもだが。
彼の気持ちは有難い、のだが…己に自信が持てるようになるには、まだまだ時間が掛かりそうだ。

「手作りって、その人の思いが少なからずとも込められてますし…。
だから猶更、大切にしたいのですよね。
私は壊れても治せるのですもの。」

相手を大切に思う気持ちも分かるし、己も他者を大切にはしたいと思うものの。
そこに”自身”は勘定に入っていないのだ。
物と同じだと、そういう考えを持っているから。
不思議そうにしながら、手招きをする相手へと近付いて行こう。

「確かにもう時間も遅いですからね。
…私に合う眼鏡、大分大変ですよ?
視えるのは霊だけではないのですから。」

なんて、気遣いに苦笑を浮かべてみせたり。

クロロ >  
「ああ、そンなモンでいーンだよ。顔が赤くなるところはまだまだッてとこだな。」

辛い過去があるのも知っている。
だが、それに囚われて今を無為に生きるのは余りにも勿体ない。
人と関わらないようにしている彼女も、漸く前に進み始めている。
それだけわかれば十分だ。力強く頷けば、軽く踵を返す。

「その思いを受け取る相手が壊れちゃ、世話ねェだろ。
 治せるからいいッてワケじゃねェ。それ言ッたら、ものこそ幾らでも直せンだろうが。」

だからどちらが、と言う訳じゃない。
何方も大事にしてこそ、意味がある。
近づいてきた相手を横目で見やれば、行くぞ、と言わんばかりに顎で指して扉を開ける。

「だから、ソイツがあるから無茶するンじゃねェぞ?
 ……眼鏡もよ、お前がかけなきゃ意味ねーンだからな。」

「ヘッ、オレ様を誰だと思ッていやがる。出来ねェモノはねーンだよ。」

苦労はするかもしれないが、彼女の為を思えば屁でもない。
ゆるりと彼女に歩調を合わせて歩き始めた。
どうせ、夜は長いんだ。適当に道草を食っても許されるだろう。
そんな事を思いながら、寒空の下、男の隣は何時でも暖かかっただろう。

ご案内:「幻生研究室」からクロロさんが去りました。
セレネ > 「……。」

こういう時は、風邪かとか何とか聞かないのだななんて。
赤い頬を何とか戻そうとしつつ無言の抗議。

「それはそうですけど…。」

いまいち自身を大事にする、という事がどういう事なのか分からない。
師からも言われた事だ。自分の心を守るのも大事なのだと。
己が傍まで来れば顎をしゃくって扉を開ける相手。

「無茶は…しません。自分の力量は分かっているつもりですので。
本当に作るつもりなのです…?」

それは、非常に有難い事だけれど。
かなりの労力をかけてしまいそうだと思い、眉をハの字にする。

そうして二人で夜の道、冬の寒い中でも暖かな隣を歩いて行こう。

ご案内:「幻生研究室」からセレネさんが去りました。