2021/06/29 のログ
ご案内:「委員会街 心療内科」に黛 薫さんが現れました。
■黛 薫 >
違反学生、黛薫。手続き上では休学扱いの2年生。
一応まだ退学生ではなく、2級学生でもない正式な
学生の身分である。
違反、犯罪の点数だけを見れば彼女の行いは退学に
相当するものであり、本人もそれを自覚している。
面談、文面による質疑から、仮に退学を通告しても
食い下がることはしないだろう、というのがかつて
専属で彼女の担当に当たっていた風紀委員の見解。
彼女が未だ学園に籍を残させて貰えているのには
当然ながら理由がある。『常世学園』は創立から
十数年の間『大変容』後の世界、社会の在り方を
模索するための擬似社会であり、モデルケース。
黛薫は謂わばそのサンプルケースの1人だからだ。
疾患に近い異能、魔術的才能の欠落。
異能や魔術の存在を前提とした社会の雛形を作るに
あたって、彼女のような存在に対するセーフティ、
社会保障の構築は避けて通れない。
学園の運営する擬似社会への復帰を望み、しかし
自力で生きるには重すぎるハンデを背負っている。
清廉に生きられるほど強くはなく、自殺、自死を
思い留まる程度の意志はある。違反への罪悪感を
覚える程度には善良であり、同時に自暴自棄から
反社会的行為に身を落とす悪徳も持っている。
極端な言い方をするなら、黛薫という個人の救済は
目的の外にあり──学園側は彼女のような脱落者を
包括的に保障する現実的な制度を模索しているだけ。
そういう意味では、違反学生という立場ながら
こうして呼び出しに応じる彼女は『都合の良い』
サンプルであると言える。
■黛 薫 >
黛薫は面談調査、及びカウンセリングを目的として
定期的に呼び出しを受ける。呼び出しに応えるかは
任意だが、精神が余程不安定なとき以外はこうして
死にそうな顔をしながらもちゃんと応じている。
この建物自体は生活委員の管轄だが、守秘義務やら
何やら色々なしがらみがあるらしく、対面するのは
医師免許を持った風紀委員。また、彼女の精神的な
負担を軽減するため、異能の弱体化と触覚の鈍化を
行使する異能者2名が同席している。
違反学生の身分でありながら処罰でもない理由で、
寧ろ身に余る福祉のために呼び出されるのは酷く
居心地が悪い。罪悪感の所為で落ち着かないとか
そういう段階を通り越して苦しいくらい。
(帰りたい……)
毎度律儀に呼び出しに応える癖に死にそうな顔を
している彼女だが、今回はいつもにも増して顔色が
悪い。委員の判断によって椅子ではなくベッドに
座らされるほど気分が悪そうだが、横になりもせず
背筋を伸ばして座るあたりが彼女らしい。
■黛 薫 >
通院にあたり、表の街に非合法の品を持ち込みたく
ないため、荷物の殆どは落第街の寝床に置いてきた。
護身用の刃物に拳銃、それから同居人が居場所を
把握するための魔力結晶、兼麻薬。
所持の強制すらされていない結晶を一時的に手放す
だけでも、万が一の場合に手を煩わせはしないかと
気に病むのが黛薫の性格。結晶を置いてきた理由、
何処に何のために出掛けているか、帰宅予定時刻に
連絡先まできっちり書き置きを残してある。
そしてわざわざ置いてきた癖に、非合法の品物を
所有しているというだけで罪悪感に怯え、体調を
崩して今に至る。この性格だから違反とか関係なく
落第した時点で精神科のお世話になっていただろう
などと報告されていることを黛薫は知らない。
社会復帰を望んでいるのに異能の所為で視線に怯え、
落第生、違反学生の立場から負い目を感じて支援を
受けることにすら引け目を覚える。
根は善良なのに自暴自棄から悪事に手を染めており、
開き直ることも足を洗うことも出来ずに罪悪感に
苦しむ。諦観を口にしながら希望に惹かれており、
それなのに差し伸べられた手を自分で振り払う。
心が捻れてしまっている、というのが担当医の評価。
異能疾患の治療だけでも、心のケアだけでも問題は
解決しない。
それ故に彼女のため『ではなく』、同じ苦しみを
抱える大勢に適用できるノウハウ、制度の整備に
必要な知見を得る──黛薫が学園への帰属を許可
されている理由はそれに尽きる。
違反学生という『立場の弱さ』も、噛み合いの悪い
無駄な真面目さも、協力者、もとい被験者としては
『都合が良い』のだ。
もちろん彼女に関わる医師や委員にそのつもりは
なく、1人の患者として向き合ってくれているが。
■黛 薫 >
黛薫は基本的に問われた内容には正直に答える。
落第街での活動への質問に関してはその限りでは
ないが、悪意を持って隠しているわけでもない。
口外しない約束をしていたり、そうでなくても
他者の不利益になり得る話になると口を閉ざす。
なまじ倫理や善悪を理解しているだけに罪悪感や
卑下が目立つが、本人はそれを直視したがらない。
下手に言及すると鬱屈した感情が爆発してしまい、
面談どころか会話すら成立しなくなる。
カウンセリングだけでは解決しないが、手を離せば
落第街から戻れなくなる。それ故に学園側は彼女を
見捨てていない、と伝え続けなければならない。
今回の面談は黛薫に負担をかけないように軽めの
応答が続いた。患者の精神状態が不安定だったのも
理由の一つだが、やや踏み込んだ質問をする必要が
あったからだ。
形式的な質問が終わった後、本題が切り出される。
問われたのは『継続的に行われていたバイトへの
応募が今月半ばから途絶えたこと』について。
当然ながら黛薫はバイトなしで生活費を賄えるほど
裕福ではない。付け加えるなら違反学生であるため
支援も受けられない。
であればバイト以外の収入源が出来たということ。
非合法なものなら、追い詰めない程度に止めるよう
伝えなければならない。幸か不幸か彼女は聞く耳を
持っているのだから。
■黛 薫 >
結論から言うと、彼女は裏の仕事から収入を得て
いるわけではないようだった。話を聞くに利害の
一致から養ってくれる相手を見つけたらしい。
途中言葉を濁していたことから察するに裏のない
相手では無さそうだが……好意的に解釈するなら
そのお陰で現在は非合法の裏仕事に手を染めずに
済んでいるとも言える。
探るような質問はあったものの、後ろ暗い相手の
世話になっている疚しさより勝手に他人の情報を
漏らすことへの抵抗の方が大きかったのだろう。
同居人について話すことはしなかった。
黛薫の行動理念はその大半が後ろめたさによって
縛られている。掘り下げればカウンセリングという
当初の目的に反するため、近況についての確認は
早々に切り上げられた。
診察を終えた後は一旦ロビーで待機。
諸々の手続きが済んだらこのまま病棟で一泊する
手筈になっている。手続き的には短期入院の扱い。
カウンセリングはあくまで長期的な効果を目的と
するものであり、受けたら即気分が軽くなる治療
ではない。精神状態が悪い患者なら尚更である。
一泊して帰るのは精神安定のための安全措置。
ご案内:「委員会街 心療内科」にフィーナさんが現れました。
■黛 薫 >
面談を終えて数分。徐々に異能の弱体化と触覚の
鈍化が切れてくる。遮断されている間は慣れない
感覚に落ち着かなささえ感じるが、戻ってくると
やはり煩わしい。
何かを見るつもりでもない『視線』が気まぐれに
動き回ってはぶつかり、また無意味に去っていく。
「はぁ……」
ため息も欠伸もあまり人前ではやりたくない。
単に気恥ずかしいのもあるが、まともに学園に
通っていた頃、欠伸をした際に対面に座っていた
人の『視線』が喉奥に命中して吐いたことがある。
それ以来、人前で口を開けるのが怖い。
それでも心労が重なればため息のひとつくらいは
勝手に出てしまうものだ。カウンセリングに来て
疲れるなんて担当の委員に失礼ではないだろうか、
なんて余計なことを考えてまた気分が沈む。
■黛 薫 >
違反学生の身でありながら、まだ退学にならずに
のうのうと落第街の外に足を伸ばし、それどころか
こうして診察まで受けさせてもらっている。
なのに落第街の知り合いに迷惑をかけるのが嫌で
聞かれた内容全てには答えられない。話せなかった
内容の中には自分の悪徳を隠しているような物も
あって、他者を言い訳に自分を守っているのでは
ないかと、自分で自分が信じられなくなる。
話す話さないを抜きにしても、自分が校則違反を
繰り返しているのは事実だ。普通の学生のような
幸せを求めたり、社会復帰を願うのは高望みでは
ないだろうか。どうして見捨てられていないのか。
考えれば考えるほどあちらこちらに罪悪感の種が
転がっている。ぶつかってくる『視線』に批判の
意が籠っているような気がして縮こまる。
診察待ちの患者はロビーに殆ど残っていない。
黛薫が怯える『視線』は罪悪感に駆られるあまり
内面から湧き出した被害妄想、幻覚でしかない。
自分の行い、ひいては自分の存在が批判の視線を
向けられるべきだと怯えている所為。
「う、ぅ゛……」
深くフードを被り、震えながら呻く。
微かに漏れた声に反応したのか誰かの『視線』が
注がれて、余計に怯えて震えが止まらなくなる。
いっそ泣いて喚くことが出来れば多少は発散できた
かもしれない。けれど、病院では静かにしなければ
ならないからと泣きそうになりながら声を噛み殺す。
■フィーナ > 「ふーむ…」
結晶から彼女を追って、たどり着いた建物。
確か、委員会が設営している心療内科だとか精神科だとかだった気がする。
恐らくは何かしらの疾患を抱えているから、ここに来ているのだろう。
ロビーに蹲る彼女を見て、声を掛ける。
「大丈夫です?」
■黛 薫 >
「……っっ」
声をかけられて、一瞬身を竦ませる。
しかし顔を上げ、見慣れた相手の姿を見て取ると
深く息を吐いて緊張を解いた。冷や汗が首を伝う。
「何すか、もぅ……わざわざ様子見に来て……。
明日には帰るって……書き置き、してましたけぉ。
つーか、こんなトコ出てきて大丈夫なんすかね?
いぁ、あーしがどうこう言うもんでもねーですが」
相変わらず口調こそ粗暴だが、憔悴している所為か
声音は幾分穏やかに感じられた。或いはこれが素で
普段はわざとキツめな言い方をしているのか。
なお、追いかけてきた結晶の気配はかなり小さい。
落第街の外に麻薬を持ち出したくなかったために
本体は寝床に置いてきたらしい。
もっとも普段から鞄の底に仕舞い込んでいたため、
割れて削れた欠片はいくらか鞄の底に残っている。
それだけでも辿るには十分なはずだ。
■フィーナ > 「あぁ、ちょっと聞きたいことがありましてね。まぁ、明日でも良かったですが…早いほうが良いと思いましてね。」
別に薫を心配して来たわけではない。彼女は自分の身を守る手段は知っているし、この場所であればそう襲われることはない。
自分の事をリークされるという可能性もあったが、それについては心配すらしてなかった。彼女の拠り所は私であり、頼るべき風紀委員は、理由は知らないが彼女は毛嫌いしているようだから。
「ちょっと研究について頭打ちしてしまいましてね。ここで話すことでもないので、場所を移したいのですが…大丈夫ですか?」
■黛 薫 >
「あー、んー、うーん……」
少しの逡巡。同居人が来たのだから一泊を断って
帰ることもできる。彼女の縄張りなら誰かに話を
聞かれたりもしないだろうし相談するならそれが
無難な選択だろう。
しかし、大分ぼかしたとはいえ同居人に養われて
いると風紀委員、兼医師に伝えたばかり。素直に
同居人を紹介したら目をつけられないだろうか。
当然だが病室で話を聞くなんてリスクは冒せない。
自傷癖があるのでばっちり監視カメラがついている。
「場所のアテとか、あります?帰るならそんでも
良ぃんすけぉ……あーしの担当医、風紀所属で。
一緒に帰るってなると、説明面倒そうで……。
そんなら知り合いと会ったから外に出てくるって
言った方が誤魔化し効くかなって」
■フィーナ > 「んー…成程、風紀所属ですか。最悪拉致っても良いんですけど…」
思考が物騒。
「まぁネカフェで個室借りるとかでも良い気はします。聞きたいことはそこまで多くはないですから」
■黛 薫 >
「あーしは良くねーんですよ、まともに話せる
医者探すのってめちゃくちゃ大変なんすからね」
軽くこめかみを押さえつつ受付に話を通しに行く。
幸い、知り合いという紹介で納得してもらえた。
「んじゃ、ネカフェで良ぃっすね。
委員会街にはそーゆーの無ぃんで、学生街で」
■フィーナ > 「おっけー。じゃあ、先に行ってるね」
ひらひらと手を振って、一足先に建物を出る。
出たところで、とりあえず待っているだろう。
ご案内:「委員会街 心療内科」から黛 薫さんが去りました。
ご案内:「委員会街 心療内科」からフィーナさんが去りました。
ご案内:「学生街 ネットカフェ」に黛 薫さんが現れました。
ご案内:「学生街 ネットカフェ」にフィーナさんが現れました。
■フィーナ > 「さて、と」
ネットカフェに個室を取り、リクライニングの椅子に腰掛ける。
「ほら、座って」
同じように座ることを勧める。
■黛 薫 >
黛薫は学生街の店にあまり立ち寄らない。
違反学生という身分による後ろめたさもあるが、
何よりお金がないからである。手持ちがあっても
その他嗜好品のために温存しておきたい。
とはいえ、理由があって人と入るなら話は別。
「部屋代って割り勘で良ぃんすかね?
いぁ、それより先に話聞いとくべきか」
個室に荷物を置いて、同居人に聞いてみる。
手持ちがないから奢って欲しいと言えないあたり
良心が残っていると言うべきか、ただ損しやすい
性格をしているだけと言うべきか。
さておき、勧められるがままに椅子に座る。
リクライニングの背もたれが動かないくらいに
背筋が伸びている。いつもこんな座り方。
■フィーナ > 「私が出しておきますよ。こっちが誘ったんですから」
姿勢に関しては知識がないので何も言えることはない。
そもそもスライムに姿勢とかあるんだろうか。
「まぁ、先も言ったとおり研究が頭打ちしてしまいましてね…資料が足りないのですよ。それで、黄泉の穴と禁書庫辺りを漁りたいと考えてるんですが…まぁ、どちらも厄ネタの尽きない場所なんですよね」
考え込む様子を見せながら。
黄泉の穴周辺は探索したものの、黄泉の穴自体に強固な結界が張っており、侵入するに至っていない。邪魔が入ったというのもあるが。
「何かしらいい方法、あったりしないですかねぇ。その左目についての解明に必要なんですが」