2021/12/04 のログ
■『調香師』 > 「私はあなたのお話を聞いているんだよ」
その尋ね方に聊か妙な尖りがあったのは否めないか
読み取れるはずの内容を、正しい筈の近況を、
なんだか腑に落ちないと返してみる
或いは、読み取った機微から知った不自然な感情に
何処か聞くに堪えない気持ちという物が含まれていたか
「今日みたいに街に出る事もあるんじゃないかな
社会勉強、どんなものを言うのか分からないけど
香りを絡めるとするなら。あなたにとって一番大事なのは、目立たない事?
本当に本当に、難しいお話になるけれど。香りは自然と、追ってしまう物だから」
■フィール > 「あぁ、すみません。社会勉強する経歴の中で、薫の話は外せませんので…。落第街から出たのも、薫のお陰ですしね」
言葉の棘を感じて、それでも薫の話は止めない。この事を話すには薫の話は外せないし…それに、少しばかりからかってみたくなったからだ。
「えぇ、勿論。社会を学ぶには歩き回るのが一番ですから。
別に目立たないということは必要無いですね。そうですね…どちらかと言えば話しやすい雰囲気であったり、第一印象が良くなるような香りが良いですかね?
目立って話せるのなら、それはそれで勉強になりますから」
■『調香師』 > 「そう」
彼女からはそれっきり。目線はあっていても、噛み合わない
私はどうしてそんな事を?お話を聞かないと、きちんとした香りが作れなくなっちゃう
席を立つ。棚へ向かう。瓶を選ぶ
普段行うその動作が、まるで迷うかのようにたどたどしい
おかしい。自分の中で『設計図』のひとかけらも思い浮かばないなんて
腕を伸ばしたまま制止する。この人には、どんな香りが...
■フィール > 「…あぁ、落第街から出る時の話もしたほうが良いです?多分その方が香りも作りやすいでしょうし。」
目に見えて、動揺するのを見て。少し、楽しくなってしまう。
きっと、この人も。自分と同じ感情を薫に感じているのだろうな、と。
「落第街に居た頃は薫の事を調べてまして。どうも良からぬものと繋がっているとのことなので、詳しい人物と一緒に調べようと思ったんですよ。で、そこであの落第街の戦争が起きまして…それを機に落第街から出ることにしたんですよ。」
相手からの返事が無くとも、語る。これは、相手にも知っておいてもらわないといけないことだから。
「で、今は薫の部屋で同居してるんです。薫の一番の問題も解決して――――まぁ、その時に別の問題も起きましたが。
薫の介護と、資金面の援助。それと、魔術の共同開発…ここじゃ口に出来ないことも、してます。
大切な薫の為に。」
ここまで言えば、自分にとって薫がどういう人物かは、わかってくれるだろう。
相手は、どう対応するだろうか?
■『調香師』 > 手が次第に降りてくる。言葉と共に、目に見えて行動に現れる
彼女が何を言っているのか。その情報を聞き入れる耳
貴女にとって、巻き起こる感情がどの様な物であったなら、満足できたのだろうか
心に去来するモノは、不気味な位に静かに凪いでいたものだった
「あなたは。どんな事を言いたいの?」
首が傾いて、貴女を見遣る。感情を失い、ただ分析をする瞳の色
自慢の様に語り、ひらけさす。貴女は薫を『物』の様に
自分が好きに出来るのだと。自分を満たす相手なのだと
平等なように語りながら、傲慢さを彼女の理解は引きずり出した
正しかろうと、そうでなかろうとも、強引に、理解が捻じれる
「私はそれを聞いて、どんな香りを作れると思う?
だとしたら。もう、『出来ない仕事』になっちゃった」
今日の貴女は『お客様』。無茶な依頼を持ち込んだ『お客様』
それ以上の目で、貴女の事を見たくない。だって、
■フィール > 「…済みません。ちょっと、戯れが過ぎましたね。
薫から、貴方のことについては少しばかりですが聞いてます。
香りについてもそうですけど…貴方にだけは、知っておいてもらいたかったんですよ。『同じ大切な人』として、ね」
ぺこり、と頭を下げて。
でも、これで解ったことがある。
相手も、自分と同じ感情を薫に向けているのだと。
「えぇ、本当は。薫のこと、独り占めしたかったんですけど。それは出来ない、って言われたものですから。
だから、貴方とは仲良くしておきたい、自分の関係を知っておいてもらいたい…と思ったんですけど。動揺するのを見てつい話し過ぎちゃいました。ごめんなさい」
「貴方にとって薫が同じく大切な人というのはよくわかりました。
出来ることなら…貴方とは仲良くしたいです。『同類』ですし、何より私達がいがみ合っていたら薫が悲しむでしょうし」
腹の中を探った後だ。印象は最悪だろう。その上で…無茶な注文をする。
「その『出来ない仕事』を、頼みたく思います」
■『調香師』 > 「その口で『献身』を語らないで欲しい
あなたは上から塗りつぶさなきゃ、生きていけないんじゃないかな
薫さまの事で、私が折れると思ってるんだね
うん、勘違いされてるんだ。私はまだ誰の物でもないのに
勘違いされたまま、思い通りになると思われてるのかな
あなたの口から何を聞いても、浮かび上がるものを作れない
作っちゃいけないの。それは私が耐えられない事だから」
彼女は正面の椅子まで戻ってくる。その手には何も持たずに
「帰って欲しいな。きっと、今日はそれが一番穏便
社会勉強、向いてないと思う。香りでもそれは誤魔化せない
根底の在り方を変えられる程の香りを私は、まだ作れない
今日と言う日を、祝福出来ない。残念に思う」
■フィール > 「折れるだなんて。私は薫の意思を尊重したいだけ。
それに、私としては折れてほしくないんですよ。そんな事されたら薫が悲しむじゃないですか。
3人で仲良くなりたいんですよ、私は。だから、私が知っていることは全部離しておきたかったんです。
私の性根が腐っているのは、知っています。思い直そうと思ったのは、最近の話ですし。それは、否定しません」
それが、相手にとって自分を思い通りに動かそうと取られたのは、事実として間違っていない。聞き出そうとしたのは間違っていないし、それを聞いて、場合によっては本当に独り占めしようと考えていた。
「…そうですね。店主に言われたなら、仕方ありません。今日は帰ることとします。
社会に、向いてないからこそ。私は勉強しなきゃならないんです。その在り方を変えて、社会に貢献出来るようになるために。
そうじゃないと、薫と……貴方の隣に立てなくなってしまいますから。」
そう、口にしながら、席を立つ。
「今日は本当にすみませんでした。『また、来ます』」
最後に、深く頭を下げて、店の扉へと手を伸ばす。
引き止めなければ、このまま店を後にするだろう。
■『調香師』 > 「うん。ごめんね
またのお越しを」
淡白に告げたようにも聞こえたのだろう
貴女の事を見送りたくても、その背中に向けて脚が進まない
『自分の仕事』を曲げてまで、対応をした相手は決して多くはない
貴女の想像の程はさておいても。『それ程心乱された』という事を、
調香師が反省しない、という事は出来ない。余りにも、確かな痕として遺された
(分からない、分かりたくない。あなたの口からは
どうして、あなたは薫さまの事を語れるの?
...だから、知りたい。薫さまの目から見たものを
そうじゃないと。私は香りを作れない)
ただ、頼まれた事はやり遂げる。やり遂げたいと考える
あなたの口からそれを聞き届ける事は出来なかったとしても
必要な香りをどうか、作りたいと思う事も本心だから
(でも。『嫌い』って思うのも本心なんだね)
傷が膿む様な痛みを心に孕みながらも。そんな風に思えている事
私、なんだかおかしくなっちゃってるんだね。そう、なんだねと
彼女は今日と言う日を、日記に出来ずに終えたのであった
ご案内:「歓楽街路地裏『Wings Tickle』」からフィールさんが去りました。
ご案内:「歓楽街路地裏『Wings Tickle』」から『調香師』さんが去りました。