2021/12/17 のログ
ご案内:「とある端末に残された暗号化情報ログ」に『報告書』さんが現れました。
『報告書』 >   
 ―――――………………。
 何処ともつかぬ暗い部屋の中の端末に、光が灯る。
 それは、ついに突き止めた希望の光であっただろうか。
 あるいは、意図せずして見つけた望外の拾い物であったかもしれない。
 
 そこへたどり着く道筋は、深く……慎重に情報を、人や組織の軌跡を追う必要があった。
 最後の壁のように立ちはだかる何の脈絡も無いパスワードはしかし、文字列を強引に代入するアプリを使うと呆気なく開かれた。
 ……まるで、誰かがそれを想定していたかのように。

 それは、誰かの書いた報告書だ。
 ひとりの人物を追いかけた探偵のモノであるらしい。

 ここまで情報の、痕跡の糸をたどり続けた人間なら、違和感に気付くはずだ。
 それは、ひとりの人間のものとしては、“仰々”しすぎる。
 思えば、ここに至る道のりも、どこか“漂白”されたような都合のいい道ではなかったか?
 ……しかし、それを考えるのは此処ではない。
 
 ファイルをクリックする音とともに、情報が開かれる。
 ……どこか、重苦しい残響を伴って。

『報告書』 >  
 調査対象:フジシロマヤと名乗っている。本名かは不明。


 所属

・正式な一般生徒である。三年生。
 学内で知己を探しても詳しく知っている人間はごく少ない。
・祭祀局に所属。
 →一般の祭祀局員の覚えは悪い。写真を見せられればたまに見た、と言う人間が居るくらい。
 →『禁室』(キンシツ)と呼ばれる特殊な部門に所属している。
  →危険な呪物や呪いの類を扱う、いわば汚れ役。その下位職員。
   仕事は特殊な任務や危険な囮役などが多いが、本人が負傷している姿は確認出来なかった。
  →禁室の局員に尋ねると一般の祭祀局員よりかは詳しい。
   いつも働いていると言われる。親密な関係を持つ人間は局員にもほとんど居ない。

・『“知”のゆびさき』と呼ばれる製薬会社に週に一度は必ず立ち寄っている。
・『“知”のゆびさき』について
 →新進気鋭の製薬会社。かなり羽振りが良く、経営も順調。画期的な薬をいくつか開発している。
  やたらと警備が厳重で立ち入るのは困難。不信感を抱くほどではない。
 →人体実験をしているという噂がある。
 →噂は事実である。しかしそれは法で定められた範囲に則っている。異能研究の一端だという。
  黒い噂が多く、風紀や公安の立ち入りが何度か行われている。
  しかし目立ったお咎めはなかったようだ。
 →社員にフジシロマヤについて尋ねると、社員だということだけ述べて一様に口を閉じる。
  しつこいと警備を呼ばれる。

・アルバイトをしていることが多い。
 →荷物を運ぶ力仕事や、花屋、診療所で働いていることが多い。接客業は一切していない。
 →花屋の主人に尋ねると、驚くほど働く、良い子だと言われる。
  しかし、花の臭いが妙に感じる時がある、とも。

『報告書』 >  
 経歴

・幼少期の記録は一切残っていない。
・出生地の記録は小さな村。
・その村はもう地図から消えている。
・通常の入学の手続きを受けていない。
 →が、違法な入学ではない。特殊な途中編入のような扱い。
  →いくつかの隠蔽工作や時間に埋もれた情報の頁を掘り返すと、入学以前にとある組織に匿われていたことがわかる。
   その組織は三年前に潰れている。『黄金の林檎』という名の違反部活。
   詳細は此処では解らない。

・不自然に途絶えた記録がいくつかある。
 詳細は此処では解らない。
 詳細は此処では解らない。
 →詳細は之では解らない。解らない。解らない。
   ■■■■ → 『レテの雫』/『オール・イレース』という異能の名だけが遺っている。


・パスワードを入力してください。

→白き夜に月は見えているか?
『             』
  →パスワードが違います。


・入学以降、目立った動きは無い。
 おとなしく、目立たず、いつもどこか申し訳無さそうにしている。
 いつも勉強しているか働いていて、いつの間にか居なくなっている空気のような女生徒。
 座学の成績は上の下。
 異能技術適性A+
 魔術適性F-

『報告書』 >   
 異能

・記録として提出されているのは『血液操作』
・自らの血を自在に操る。
・殺傷能力のある武器として使うことも、液体のまま漂わせることも、薄く霧ほどにすることも可能。
・本人の戦闘適性は低い。成績評価 C-

・『禁室』、『“知”のゆびさき』の人間のみ知っている情報がある。
 →喋るのは禁室の人間に報酬、情報を与えるなどして好感度を得た場合のみ。
  知のゆびさきの社員から聞くには通常の読心以上の能力が必要。詳細は此処では解らない。
  禁室の局員曰く、
・フジシロマヤのカラダは呪われている。
・フジシロマヤのカラダは亡霊を寄せ付ける。
・フジシロマヤの血は怪異への供物になる。
・フジシロマヤは悪魔に取り憑かれている。
・フジシロマヤは、死なない。
・ゆえに、フジシロマヤは対霊体、対怪異への格好の囮である。
 いくつかの汚れ仕事も、特に嫌がらずに進んで受け入れる、
 ……驚くほど働く、と。

『報告書』 >  
 異能者視点

 精神にも及ぶ高度な感知系の異能であれば、

・存在、人格が二つ重なっているように見える時がある。
・落第街に居る時は必ず二つに見える。
・表に居る時はひとつだったりふたつだったりする。

 正義を為す異能であれば、

・罪の気配を感じる。
・『悪』であるはずなのに、『善』をも感じる。

 読心に類似する異能であれば、

・フジシロマヤは平和を望む心と自罰的な性質を持つ陰気な少女だと解る。
・“フジシロマヤ”は、常にとある感情を封鎖している。
 それが何かは此処では解らない。

『……それこそ。 
 あの娘の頭に聞くべきだろう?』

『残留思念』 >  

  おや。
  ……随分と悪趣味な――失敬。便利な異能があったものだね。
  私はね、探偵というヤツが嫌いでね。
  アレはいつもコトが終わってから探り出すだろう?
  もう失われたモノを穴からほじくり返すようにネチネチとやっては、掘り出したモノを自慢気に掲げる。
  まるで犬のようだとは思わないか?
  ……まあ。
  あの娘は探偵が好きなようだったが、私はモリアーティ教授のほうが好みというだけの話か。
  つまり、コレはもう終わった話なのさ。
  
  ……さて。
  空白であることに、意味は無い。
  失われたモノに、意味を求めるのはやめておけ。それは、意味が無い。
  キミたちは、失われたモノよりも今、失われゆくモノに意味を見出すべきだ。違うかな?
  私にはもう出来ないことだよ、羨ましい。
  下手にせっついて彼女に何かを思い出されても困るしね。
  見ろ。白夜に月が見えるはずも無いだろう?
  見えるのであればそれは――

  ああ、最後にもう一つ。
  あの娘には動物が一切懐かなったが、犬には特に嫌われていてね。
  あの血の臭いを、鼻が利く動物は嫌がるらしい。
  だというのに、アレは犬猫が好きでね……。
  懐かれようと近づいては逃げられて勝手に落ち込んでいた。
  だからね。 
        』

『残留思念』 >  

 
   嗅ぎ回る犬にはすぐに気付くぞ
              
                   』

ご案内:「とある端末に残された暗号化情報ログ」から『報告書』さんが去りました。