2022/08/14 のログ
シャルトリーズ・ユニヴェル >  
「機械的に採点できる所のみを、ミニシャル達に任せているのですよ。
 自由記述式の問題なんかは、私が採点しているのです。ご安心あれ」

胸――腹を突き出すポーズ、再び。

「理由は流石の東山先生がお察しの通りで、この子達はそこまでの力が
 無いんですよね~。
 私の出せる分身ってのは分ければ分けるほど、その能力は
 落ちていくので……。
 
 つまり一番大変で、
 解釈に困る記述式の採点は私がやるしかないんですよね~……」

己と同じだけの知能を有した分身を何体も作れれば、
採点するのにそれ程楽なことはないが。

「ほら、こういうのとか、私しか採点できないので……」

そう口にして、机の上に置かれたテストを2枚とってくると、
東山の方へと向ける。

シャルトリーズ・ユニヴェル >  
 
 
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基礎魔術 第3回確認テスト(全1問)
フレイク=ダルネス式魔術四属性について述べた以下の文章の
空欄( X )に当てはまる最も適当な言葉を答えなさい。

フレイク=ダルネスが最初に発見した魔術四属性は、地 雷 火( X )である。
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【1枚目】

《回答A》

『シャルトリーズ先生可愛いですね』


《添削コメント》

先生を褒めても点数にはなりません。
このコメントを確認したら職員室に来るように。

【2枚目】
《回答B》

『おやじ』

《添削コメント》

恐ろしいものを列挙することわざについては聞いていません。
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シャルトリーズ・ユニヴェル >  
「ってな具合で色々な回答があるので。
 こういう添削も大事な教育ですからね~……」

ふふふ、と暗い笑みを浮かべるシャルであった。

「……いつか、きちんとお話したいものですね」

真面目な声色で、そう口にするシャルトリーズ。

彼が喉奥に押し込めた感情。
その細やかなところまでは知る由も無いが、それでも。
その煙草の煙の中に見える拒絶の意思は、しかと理解することができる。

「それじゃ、お願いしましょう。
 ちょっと採点以外にも、まだ雑多なお仕事が残っていて……。
 そちらを手伝っていただけるなら嬉しい限りですよ~。
 ふふふ、ちゃんと仕事貰えたら今度奢りますので。
 東山先生、何がお好きですか――?」

にこにこ笑顔で、人差し指を立てるシャルトリーズ。

東山 正治 >  
「今でも文明レベルは上がったとは思うけど、出来るんなら教師なんていらねェからな」

何時かの誰かが言っていた。
人間の仕事は、何時か機械にとってかわられる。
結果として、その言葉は半分は正しい。
一度崩壊した世界は、局所的とは言え文明レベルは上がった。
しかし、そこに人為的なものが加わらないと言えばNoだ。
それが不必要であるなら、此処も学園である意味はないのだから。

まだ半分以上あるタバコを煙ごと携帯灰皿に押し込み
見やった解答用紙には思わず顔を顰めた。

「……ちゃんとマジメに授業やってんのかね?」

どうにもこう、普通に間違えてはいないというか。
日頃の授業態度を疑いたくなるものだ。
東山は、今は教師だ。ふざけた態度をとるのであれば
生徒の是正をするのもまた教師の仕事であると思っている。

「まァ、おだてられても点数をやらない所は教師として好感持てるよ」

それ以上でもそれ以下でもない(※重要)

「……時間があればな」

くつくつと喉を鳴らして笑う東山。
自分に時間がない事なんて、自分が一番知っている。
人間の皮の奥に仕込まれた悪意。
深淵なぞ、望んで覗くものなどいるのだろうか。

気だるそうに自らの席に座れば、引き出しから取り出した小さなケース。
黒い手のひらサイズのそれを内ポケットにしまい込めば
気だるそうに背もたれして、シャルトリーズを見やった。

「奢りなんていらねェよ。それよりも、とっととやろうよ。
 俺はシャルちゃんと朝まで過ごす趣味はねェからよ」

夜が明ける前には片づけよう。お互いのためだ。

シャルトリーズ・ユニヴェル >  
「そんなぁ、授業はちゃんとやってますよう~!
 こう見えて、昔から憧れてたんですよね、教師。
 みんなに知識を教えることについては、私全力ですから~。
 うへへ……」

東山の少し棘のある言葉も、やんわり笑顔で受け止める。
顔が赤みがかっていなければ、最後の気の抜けた笑いがなければ、
それっぽかったのだが。

「つれないですねぇ~……。
 ま、でも実際のところ本当に感謝ですよ。
 東山先生、結構優しいところがあるんですよね~。
 そういうとこ、実際私は好きですよ~」

腰に手をやり、ふっと笑うシャルトリーズ。

「これは本当に、ですよ」

はっちゃけながら口にしていたそれとは違う、
本当の好意であるらしいそれを、ウィンクと共に送った。

時間があれば、と口にする男。
影がさす男の顔の裏側――その全てを知る訳ではないが、
感じとったその闇の深さをシャルトリーズは一旦胸の内にしまっておいた。
いつか、もう少し深く話すことがあるのかもしれない。
しかし、それはこのタイミングではないだろう。

「時間がなければ、その時は一緒に作りましょう。
 私がお手伝いしますよ。手伝って貰っておいて、お礼無しっていうのは
 ユニヴェル家の教えに反しますから」

それから。
夜の職員室での戦いは続いていったが――
東山の協力もあって、シャルトリーズが抱えていた仕事は
綺麗さっぱり朝になるまでに終わったのであった。

シャルトリーズが彼に何度もお礼を言ったのは、言うまでもない。

ご案内:「夜の職員室-更に働く者達-」から東山 正治さんが去りました。
ご案内:「夜の職員室-更に働く者達-」からシャルトリーズ・ユニヴェルさんが去りました。