2019/03/23 のログ
ご案内:「VRゲーム『サンライズ・ガンマン』」にアリスさんが現れました。
アリス >  
私はキャロル。
西風の吹く荒野の一匹狼……女ガンマン、カラミティ・キャロル。

という設定のゲームをやっている。

この前買ったまま積んでいたゲーム、西部劇の雰囲気を楽しめるこのサンライズ・ガンマン。
VRアクションゲームの話題作。
スペクトラルギアでダイヴしてみると、これがなかなか雰囲気がいい。

キャラメイクもばっちり。
没入の都合上、15歳の少女がガンマンコスチュームをしているようにしか見えないのが難点だけど。
ゲームの中ではきっちり一人前のガンマンとして扱われる。

帽子を指先で持ち上げると、指先に荒い繊維の感触があった。

アリス >  
これよこれこれ!
映画で見た薄汚れた西部のバー!って感じがする!
出された酒を口にする。
未成年なので味のフィードバックはされなかったけど、雰囲気抜群。

その時、下卑た笑い声と女性の悲鳴が聞こえてきた。

『なぁ、いいだろ? 俺らと遊ぼうぜ』
『や、やめてください! いやぁ!』

ならず者が女性店員の腕を掴んでいる。
これは面白い。どこでもこういうイベントをやっているのだろうか。

「それくらいにしておきな」

座ったままそうならず者たちに聞こえるように声を張る。
ひと時の緊張と高揚が心を満たす。

「酔っ払って人に迷惑をかけるのは感心しないな」

来い! 来い!
なんだお前って絡んでこいそこのならず者NPC!!
そしたらこっちも応戦の準備がある!!

『なんだお前……余所者が俺らに歯向かうってのか?』

来たァー!!
今度ネットでレビュー書こう!!
雰囲気が最高のゲームだって!!

アリス >  
立ち上がるとブーツの拍車が椅子に引っかかった。
ちょっと邪魔だなぁこれ。
かっこいいからつけてみたけど。
これで馬を蹴ったらゲームとはいえかわいそう。

「フッ……だったらどうだって言うんだ?」

ちょっといけ好かない奴みたいな台詞になってしまった。
まぁいいか。私はこの西部に生きているのだから。
多少の間違いはゲーム側でカバーしてもらいたいところ。

『表に出ろ、決闘だ……どうなっても恨むなよ、若造』

ヒュー、と口笛を吹く。
相手も拳銃をガンベルトに差している。
となればあれしかない。

決闘しかない。

「私は何も恨みはしない……憎むだけだ」

そう言い放って押したらギィッて開くバーの扉から外に出る。
外にはタンブルウィードが転がっている。
夕日が眩しい。

どうでもいいけど夕方にお酒飲んで酔っ払って女の子に絡んでいたんだ…
このNPCちょっと引く。
お仕置きが必要ね!

ご案内:「VRゲーム『サンライズ・ガンマン』」に神代理央さんが現れました。
神代理央 > VR、というよりも、ゲームそのものに余り関心がある訳では無かった。
しかし『これからの犯罪対策に高度な柔軟性を維持しつつ臨機応変に情報化社会に対応する』という恐ろしい程に出来の悪い官僚答弁が会議で通り、オンライン上での犯罪防止の一環として各々ネットワーク空間における警邏を試験的に行う事になった。

と、言う訳で。持て余していた小遣いの一部をざっくり課金アイテムに注ぎ込み、レベリングはブーストアイテムを購入してさっくり済ませ(数値上は)強PCと化した。プレイして数時間だが。

傍から見れば、少女めいた風貌の少年が仰々しい南北戦争時代の将校服に身を包んでいるという世界観ぶち壊しなPC。でもスペックが強ければ何でも良いのだ。どうせ見回るだけだし。

そんなPCで街を散策し、他のプレイヤーから課金額への嫉妬と羨望の視線を浴びていると、バーの扉が開いて一人のプレイヤーが現れる。
可憐な少女がガンマンの衣装を纏った様なPC。どこかで見た様な顔だったが、それよりも思う事は一つ。

「あれは…ああ、成程。経験値とアイテムが美味しいレアNPCとやらか。ブーストが残っている内に、狩ってしまうか」

絶望的な勘違いと共に、ゲームにありがちな異次元空間からカービン銃を引き抜いた。
威力、連射力、付与効果マシマシの課金武器。無造作に引き抜いたソレを、特に狙いを定める事無く少女に一発。
攻略wikiに書いてあったのだ。
【レアNPCは初撃を必ず躱すので、当てずに怯ませた方が無難】と――

アリス >  
次の台詞は何にしよう。
前に映画で見た『棺桶を用意しろ』かな?
でもちょっと私には似合わないかなー、なんて。

思っていたら。

どこからかいきなり撃たれた。

「!?」

撃たれた瞬間、時間がスローモーションになる。
決闘の瞬間に使ったり、防御側が自動的に発動したりする特殊システム『レッドヴィジョン』だ。

狙いが適当だったから初期ステータスでもギリギリ避けられる!?

ずばっと横っ飛びに回避して。

「ちょっと、何すんのよ!? 初心者狩りなの!?」

今までの低く作っていた声も放り出してそんなことを叫んだ。
ってあれ、あのアバター。
服装は弄れても容姿はいじれないから……

知り合いじゃん。
しかも課金装備マシマシ。

「ちょっとアール・ケイさん、今チュートリアル的なイベント中だから…」

身振り手振りのイニシャルトークで相手に私がアリスであることをアピール。
ネットで本名出したくないしね。

神代理央 > 「………ふむ?」

NPCにしては随分と人間的な反応だな、と感心。
最近のAI技術が娯楽分野にまで進出しているのは良い事だ、とビッグデータを用いてAIを運用する某大企業へ感心。

と、そこでふと気が付く。
初心者狩り、だの、妙な名前で此方を呼ぶ素振りだの、あれもしかしてPCなんじゃないだろうか。

まじまじとガンマンガールを見つめて数秒。
ああ、と納得した様に手を打った。

「何だ、レアモブかと思ったらお前かア……いや、キャロル。返せ。経験値とレアドロップに期待した私の時間を返却し、ついでにリスポンしろ」

チュートリアルを真面目にこなすなんて偉いなあ、と思いながら尊大にフン、と言葉を吐き出した。
因みに、此方のPC名は何の捻りもなく『リオ』
ネットリテラシー?リアルで襲撃してくれた方が楽だから是非そうして欲しいものだ。

アリス >  
「いや返して欲しいのは私が出してたシリアスな空気だからね!?」
「いきなり重課金者に狩られてリスポンしてたまるかー!!」

保安官(MMORPGで言うところのガード、プレイヤーキラーと戦ってくれる)呼ぶわよ!?
それに決闘前にレッドヴィジョンのゲージを消耗したし!!

「リ……リオさん、ちょっと決闘が終わるまで待ってね、ちょっと…ちょっとだけでいいから…」

何度もちょっとと繰り返して。
聞きたいことは山ほどあるけど手持ち無沙汰にこっちを待っているならず者の相手をしてあげなくては。

「コホン……あなたに棺桶が用意して?」

テンパっててにをはが狂った!!
でもギリ音声認識されて相手のNPCが構えを取る。

『棺桶は必要だろうさ……お前のサイズの棺桶が一つな』

ルールは簡単。同時に動き出してNPCを無力化させれば経験値になる。
今回は相手の帽子を撃ち落とす感じでやってみよう。
手を撃ったり、撃ち殺したりして相手の所属組織に目をつけられたら怖いし。

タンブルウィードが転がる。

神代理央 > 少し待ってくれ、と懇願する少女の姿に僅かに首を傾げる。
何だろうかと視線を巡らせれば、イベント進めて宜しいでしょうか?と言いたげに待機しているならず者のNPCの姿。
成程、イベント戦闘か。と頷けば、一応彼女の意思を組んで大人しく見守る事にする。

「見事なソビエト式倒置法だな。だが、そのジョークは時代設定的に数十年早いと思うが」

しかし、少女が噛んだ台詞はちゃんと拾っておく。スルーするのは失礼だと、演劇部の誰かが言っていた。いや、落語部だっただろうか。

さて。唐突に訪れたシリアスな空気に、手持ち無沙汰になったのは此方の方。
転がるタンブルウィードと、睨み合う少女と荒くれ者。
流石に加勢したり、茶化したりする程空気が読めない訳では無い。

少女が撃ち漏らしたら経験値だけハイエナしておこうと、カービン銃を弄びながら様子を見守る。

アリス >  
ツッコミが入ればムキーッと肩を怒らせて。

「うるさいわね! 2分30秒でいいから黙ってて!!」

周りのプレイヤーたちから失笑が漏れる。
どう見ても西部劇コント。
くっ……こんなはずでは…

その時、気配が変わった。
ならず者が腰の拳銃に手を伸ばす。
瞬間、再び世界がスローモーションに変化する。

私が。私だけがこの時間を生きている。
ガンベルトから拳銃を抜いて相手の帽子を撃ち落とした。
単にレッドヴィジョンの最中に銃口を向けるだけで自動でターゲッティングされるんだけど。

見事な早撃ちでならず者の帽子が地面に落ちる。

「さて、どうする? 自分を信じるのもいいが、疑う方がより賢い」

拳銃を握ったまま冷徹に言い放つ。
あ、良い。このゲームのレビュー星5つけちゃう。

慌てて逃げ出していくならず者たちを尻目にガンスピンの後に拳銃をホルスターに戻して。

どうでもいいけどリオの銃を見た後だと六連装の初期装備は悲しい。

「終わったわよ、なんでこのゲームに? そういう趣味あったかしら?」

神代理央 > 「半端な時間だな。そこは三分間とかじゃなくていいのか?」

と、茶々を入れつつも、周囲のプレイヤーから零れる失笑を耳にすればジロリと剣呑な視線を向けるだろう。
永続リスポーンさせてやろうかと言わんばかりの視線を向けていた最中、響く銃声と地面へ落下するならず者の帽子。
どうやら、彼女は見事にイベントを達成した様だ。

「……思ったより世界観に浸るタイプなんだな」

決まった、と言わんばかりの彼女の台詞を耳にして零した感想がこれ。流石に、堂々と言うのはアレなので小声で呟く程度にとどめたが。

「ん?いや、全く。オンライン空間での犯罪対策の一環でな。プレイヤーの多いオンラインゲームを、試験的に警邏してるんだよ」

お役所仕事は複雑怪奇、と言わんばかりに肩を竦める。
役人が大っぴらにゲームするのもどうかと思うが、任務だから仕方ないかと言わんばかりに小さく溜息を吐き出した。

「大体、金さえ払えばそこいらの雑魚相手に無双出来るというのもな。アイテム回収も、そこらのPC雇ってやらせたから直ぐ終わったし」

クエストは資金力に物を言わせた人海戦術。装備は課金祭り。
最早何が楽しいのかと言わんばかりのプレイスタイルだし、正直楽しくない。

アリス >  
最高!
西部劇の世界で一人のガンマンとして生きていくの最高!!
まぁ、最初はちょっと躓いたしレッドヴィジョンのゲージも大分消耗したけど。楽しい。

「犯罪対策?」

確かにオンライン空間でもその手の犯罪は問題になっていて。
だからといって課金装備マシマシチョモランマで乗り込んでくるものだろうか…

「ええええ……ゲームを楽しもうとしてない…」

手を広げて。

「1から積み上げていくからゲームって楽しいものじゃない?」
「あ、騎兵隊の指揮官服は良いと思うわ、似合ってるし」
「でもそのカービン銃はちょっと……」

強い。強いだろうけど。ガンマン形無し。
自動拳銃がガンマンの世界を終わらせた、という本を読んだことがあるけど。
課金で終わらせられるのはどうなのだろう。

煙草型レッドヴィジョンゲージ回復アイテムを吸って。
もちろん、未成年なので味は全くしない。