2019/06/02 のログ
佐藤重斗 > 商店街の路地裏。そこにボロッちい店が建っている。
魔道具店『ロマン』俺の行きつけの店だ。

「邪魔するぞー、翔太郎」

『邪魔するなら帰ってねー?』

「あいよー」

………行きつけの店だ。
なんだこの野郎!客を帰すんじゃねぇこの野郎!
出てきたばかりのドアを開けて叫ぶ。

「今日は客だよ!風紀委員の仕事で纏まった金が手に入ったから買い物に来たんだい!」

『あれ?そうなのかい?僕はてっきり、またお茶だけ飲みに来たのかと…』

翔太郎が肩を竦める。
確かにいつも冷やかしに来る俺が悪いのだが、入店直後に帰れとは何事か。
ネタには忠実に反応するのだ。マジでやめて欲しい。
というか確信犯だろ…絶対。

「ぐぬぬぬ・・・と、とりあえず客だ。新作の魔道具見せてくれよ」

佐藤重斗 > 『ふっふっふー。重人君が来ない間に三つも魔道具を作ったのさ』

一つずつ紹介してあげよう、と翔太郎が魔道具を三つほどカウンターに置く。
腕輪に御守り。それと……なんだこれ?魔法少女のスッテキ?

『先ずはこの腕輪から。これはね、ズバリ君みたいな何の異能も持たない人間が戦えるように作ったモノなのさ。
身に着けるだけで身体能力が10倍になる優れものさ!
どうだい!すごいだろう!」

おおー、それはすごい。
身に着けるだけでそれなら喉から手が出る程欲しい。
しかし、世の中そんなに甘くない。
翔太郎の魔道具は優秀だが、同時に致命的な欠陥も持っていいることを俺は知っているのだ。

「で、代償に何が起こるんだ?」

翔太郎がサッと目を反らす。
やっぱりなんか欠陥あんだなテメェ…!
白状しろオラァァン!!

『だ、大丈夫だよ!今回のは大したことない。ちょっと女の子になるだけで』

「ど・こ・が、大丈夫なんだ!!頭湧いてんのか!!」

こんなモン使えるか!次ィ!!

佐藤重斗 > 『次の魔道具はこれ。このお守りはね、持ってるだけで運が良くなるんだ。
・・・嘘じゃないぞう?僕はこのお守りの力でソシャゲのガチャが当たりまくったからね!』

何とも胡散臭い話である。
生粋のオタクである俺からすればそんな物は心底信用できない。

「どうせ幸運のしわ寄せとして、不幸が舞い込んでくるんだろ?
そんなの疫病神と一緒じゃねぇか」

『う・・・。バレバレだったか。
確かに事件に巻き込まれ易くなる欠陥があるよ・・・』

「お前、良くそれでソシャゲのガチャ引こうと思ったな!そんなの店の奥にでも封印しとけよ!!」

しょぼんとした様子の翔太郎がお守りを置く。
しかし、最後の魔道具を持った瞬間にまじめな表情に変わり、覚悟はいいかと目で訴えてくる。

なんだ…、自信作か?危険物か?
来るなら来い…!

佐藤重斗 > 『いいかい?このスッテキはね、決められたプロセスを踏むことで強力な魔法を使えるようになる代物なんだ。
しかもこの魔法、魔力をほぼ使わないんだよ』

ドヤ顔で語る翔太郎の目を見る。
どうやら噓は言ってないようだ。ということは、これがあれば俺も異能バトル系主人公になれる…?

「それで発動の条件って何なんだ…?ヤバい代償とかが有るのか…?」

ゴクリと喉を鳴らして返答を待つ。
翔太郎はニコリと笑うと首を振って口を開く。

『いや、難しい事は何もないんだ。何もないんだよ重人君。
ただフリフリの衣装を着て、技名を叫ぶだけでいいんだ。
そう!ラブラブパワービームと!』

「もろ魔法のスッテキじゃねぇか!!」

手に持っていたスッテキをカウンターに叩きつける。
ホントこいつこんなのばっかり作りやがって!
…ん?女体化に不幸体質にステッキだぁ?

「お前これ俺を魔法少女にする気満々じゃねぇか!
巷で噂の魔法少女は冴えない男の子でしたってか!流行らねぇよ!!」

こいつ今度は魔法少女系のアニメ見やがったな!こん畜生!!

佐藤重斗 > 呆れながら何気なくカウンターの奥に目を向けると、廃棄品と書かれた箱の中に銃弾を見つけた。
銃弾の魔道具?名付けて魔弾ってとこだが、棄てるのだろうか?

「なあ、その廃棄品の銃弾は何なんだ?」

『ああ…これはね、大した物じゃないよ?
君の術式を銃弾だけで再現出来たらいいなぁって思って作ったんだけど、
何の因果か被弾者に猫耳を生やす謎の効果を持ってしまったんだ・・・』

「買う」

『え?』

「買う」

ポカンとした翔太郎がこちらを見る。
物理的威力皆無で当たれば猫耳が生える銃弾…?
え、最高じゃね?男子学生的に買い一択じゃね?

『じゃ、じゃあ全12発占めてニャンニャンになるけど…』

「あいよ、2828円な。ひゃっほい!猫耳美少女が俺を待っている!」

『待ってないし、許可なくやったら捕まるよー』

佐藤重斗 > いやぁ良い買い物ができた。
やっぱりこの店は俺の欲しいモノが的確に置いてあるな!

「じゃあなー翔太郎!今度は冷やかしに来るぜー」

『あ、うん。それはいいんだけど・・・。
くれぐれも無差別に猫耳にしちゃだめだからね?君もう風紀委員なんだからね?』

翔太郎の言葉に腕を振って分かったことをアピールする。
ホント、何でここ客来ないんだろ?割といい店なんだけどな。
さて、そのままドアを潜り、帰りにパフェでも食べに行こうか。

ご案内:「魔道具店『ロマン』」から佐藤重斗さんが去りました。