2020/07/11 のログ
群千鳥 睡蓮 > 「まあ、このなまえがきらいってわけじゃないけど……キレイめな感じでしょ。
 照れくさいっていうか――教えるかっ! なんなのさっきから……!
 だーっ、ああもう……! こういう反応しちゃうから……」

ぐしゃぐしゃと、左右で型の違う髪――もうとっくに雨で崩れてしまっていたが――をかき混ぜる。
相手がペースを乱してきているのはわかる。それに乗ってしまったのもそうだ。
ぞくぞくと首筋の裏側がなにかを察知しているがそれが何かはわからない。
こちら側から詰めるのは得意。間合い管理も得意な筈なのに。

「……、……! なんでガン見してんのっ!?
 酒飲んでろって言った!でしょーがっ!」

ブラを外そうとした段で気づいた。もう湯だったような顔でじっとにらみつつ、
バスローブを先に羽織って、それにかくれてすべて脱いだ。
華奈さんが脱いだら回しておいてよ、と告げながらも、
なんか変だ。『選択』を誤っていないか……?自問しつつ

「はー……トゥルーサイト?とかいう肩書も伊達じゃあないわけだ。
 でも、それって――……。 ん、ん?あたしのこと?
 いざ話せって言われても困る、けどなあ」

浴室へのガラス扉を開けて――その前にカーテンを引っ張った。
会話するために半分扉はあけたままだが、彼女から浴室内への視界は遮っておく。
ノブを回す。最初は水だ。すぐ熱湯になる――体に浴びる。
編み込みをほどきながら、ぬるい雨に冷えた体を温める。

「そうだね、さっき言った通りあたしは『識りたがり』。
 手帳に他者の異能を記す異能――自分で観て、感じて、考えたものに限って。
 それと、考えることがわりと好き……常に考えていたい、ほうかな。
 たとえばなんだけど、いまは華奈さんのことを考えてるよ。
 ――えらくこっちのことをじーって視てきた理由はさておいて、だ。
 何があったかはともかく『傍観者』っぽく燻っていた華奈さんは、
 日ノ岡先輩に言われたまま、『ものがたり』だっけ、それを探しに旅立った。
 それはなぜかな……?恥ずかしい秘密を突かれて痛かったのか」

黒髪を指でつまむ。しっかり洗っておこう。時間はかかるが起こられない筈だ。
泡を伸ばす――……昔はもっと長かった。今はセミロング。

「――それとも、友達と対等になりたかったからなのかな、とか……?」

鞘師華奈 > 「睡蓮って…あぁ、成る程。自分のペースはしっかり保てるけど、一度何かの拍子に乱されるとズルズル行くタイプなのかな?」

彼女がぐしゃぐしゃと髪の毛を掻く様子をじっと見つめる。
死神ではないけど、別の何かがじっとそれを見つめている。
間合い…そういうものを華奈は意識していない。何故なら間合いになど”意味は無い”からだ。

「…いやぁ、睡蓮とお喋りしながら君の姿を見ているほうが楽しいし。うーん、やっぱりスタイルいいね」

と、ブラを外す直前で気付いたのか、赤い顔で睨んでくる睡蓮を涼しい顔で受け流し。
ともあれ、脱いだら回しておく――了解了解、と頷きながらベッドから上半身を起こして一息。

正直、昔取った杵柄、というか技能をこういう事に使うのは我ながらどうかとは思わないでもなく。
ただ、まぁ…やりたいからやる。それも一つの自分の『選択』だろうと思うから。
ベッドから立ち上がれば洗濯機へと向かい――”既に脱ぎ去っていた”残りの衣類を洗濯機に放り込んでスイッチオン。

洗濯機を回し始める音が彼女にも聞こえるかもしれない。
視線を向けた先、カーテンに遮られて浴室は完全に見えないのだが…。

「それはまた、えらく脳のカロリーを使いそうな趣味というか何と言うか。
私はそこまで常に考えている訳ではないけど、普通に凄いと思うなそれ。
――おや、私の事を考えてくれているのは嬉しいのだけど――うん。」

そろそろ彼女も気付く頃合だろうか?”既に浴室に華奈が佇んでいる”事に。
丁度、彼女がそのセミロングの黒髪を洗い始めるかどうかといったタイミング。

「――で、まぁ取り敢えず大人しくしているのも面白くないので、私なりにこうして動いた結果、お邪魔しますという事で。
――ああ、大したことじゃないよ。単に昔、まだ傍観者じゃなかった頃の自分を思い出しただけ。
――”焦熱の残り火”はまだ燻っているけれどね。」

はっきりと彼女の問いには答えない。まだまだ彼女の事を充分に聞いて無いから。
答えても別にいいけれど、それじゃ面白く無いだろう、という思考と『選択』。

――結果、髪の毛を解いて黒のロングヘアー姿になった裸身の女が笑顔で右手をヒラヒラと彼女に振っている事だろう。
睡蓮はペースを乱されると弱い、ならば――”初撃で殺す”私がそれを見逃す筈が無いではないか。

群千鳥 睡蓮 > 「ちょっと待って!!!」
群千鳥 睡蓮 > 反応は早かった。気づかなかったわけもなかった。
彼女がそこに居たことも気づいていて――そう、気づかないふりをしようとした。
このまま何事もなく今度はあなたの番ですよ、と過ぎればよかったのだが。
それ以上のことをしようとは、しない。
本当に、その発言してみた異能しか持ち合わせていない、と振る舞うように。
初撃を見切った上で――受けた『選択』は、明らかなミスチョイス。

「あたしの話ちゃんと聞いてましたかァーア!?
 順番に入りましょうねって……言ってないけど……
 先に頂くって浴室に入る順番の話のこと言ったんじゃないんですけどぉー!」

浴室だからか声が偉く響く。乳房と下腹を両腕が庇う。
壁に後退った。さっき感じた未知の感覚。『身の危険』。

「………、……。 ……学校に来たのは、
 単純に、勉強をするため、色々と学ぶため。
 此処の学位は、外だと結構良い扱いを受けるとこもあるんだよ――
 両親の仕事の手伝いもできるかなって……、言っとくけどあたしは他人のこと考えるほうだぞ?
 あたしの、なにが聴きたいのか……、言ってくれたほうが楽なんだけど……」

頭からシャワーをかぶる形になって、ぬばたまの黒髪に、
引き締まった肢体に、傷ひとつない柔肌に、湯気をともなった雨が注ぐ。
前髪が降りているせいか、その隙間から金瞳で睨みつける。
心臓が痛いほど早い。どうしよう、どうしようか。

「燻ってるだのなんだの……、あたしからしたら随分お元気にしか見えませんけどね。
 その燃え上がってた青春を、どうにかして取り戻したい……?」

鞘師華奈 > 「うん、待つけど――と、いうか既に一緒にお風呂状態だけど」

と、いう訳で。彼女がこちらの初撃による”殺し”をきっちり計算に入れている事を”見越した上で”。
敢えてそれに奇を衒わずにストレートに敢行した結果がこれである。
つまり、やった事は簡単だ。彼女にミスチョイスをさせればいい、それだけ。

「うん、まぁ――”私がそうしたかったから”こうしただけだよ。
睡蓮が憤るのも無理は無いと思うし…まぁ…それはそれとして。
――うん、綺麗な肌は羨ましいねぇ」

と、彼女とは対照的に至ってマイペース。”身の危険”を感じてガード体勢に入っている睡蓮を眺めつつ。
当然、こちらがこれ以上”踏み込もうとしても”彼女はこちらを読んできそうだから容易では無いだろう。
――と、いうかそろそろ駆け引きとか面倒臭くなってきたな、うん。
ちょっとした悪戯心のつもりもああったのだが、まぁそれはそれだ。
切り替え大事、思いつき大事、時として大胆に行動するのも大事。という訳で。

「――そうだね。睡蓮のその言葉が本当かどうかはそもそも分からないし、他人のことを考えられる人間、というのも嘘ではないんだろうと思いたいけど。
――じゃあ、単純な質問。私の目に何が”見える”?」

彼女が胸と下腹部を庇いながら壁際に後ずさる。必然、シャワーのお湯が頭から彼女を濡らしていく。
覆い隠された前髪の隙間、覗く金色の瞳を赤い瞳でしっかりと見返し――

トンッ、と音も立てず、空気も動かさず、ごくごく自然に当たり前の如く残りの距離を詰めた。
左右の手を睡蓮が追い詰められた浴室の壁に置き、逃げ道を塞ぐようにして、それこそ互いの吐息が分かるほどに間近で見詰め合おうと――

群千鳥 睡蓮 > 少なくとも接近は拒まなかった。
押し付けられた。最後の一線には未だ遠い。
より壁に背をつけて――喉をそらして、こくり、と嚥下して。
同じシャワーを分け合う有り様、湿っていく彼我の姿、帯びていく熱。

「……火、が」

震えた声を搾り出した。顔をそむけて流し目で睨――めていない、見つめる。
シェリダンの作品をなぞるような――そういう関係の知識もあるのは知っているが、
それらはすべて文面のなかの世界。ふつうの恋愛すら興味がなく、自ら慰めたこともない。
死より遠いそれらの熱への希求が、元来非常に薄く、
相手がどれほど本気かを今は伺い知ることはできない。

「火が、みえる――あんたの瞳には、……ぎらぎらして、……熱い……」

不安に涙の膜を張る瞳は、しかし彼女のそれを覗こうとする。
すくなくとも嫌悪はなかった。

「――……苦しみ。 もがいている。 ひどくかわいて……
 激しく燃え上がる熱を知っているのに、いまが『そんな』なのは、
 甘んじていたぬるま湯から、日ノ岡あかねの言葉で、
 あんたは荒野に、裸で放置されたんだな――彷徨って、いまもここに……」

距離があまりに近いから、というのもある。
下肢を守っていた腕をあげる。シャワーが腕に滝をつくる。
その頬に手を添えた。少し距離を置かせて向き合う。
相手が踏み込んできたのだ――未だ一線は、こえさせない……つもり。まだ。
少なくともいまは、駆け引きではない、彼女の問いに答える段階だ。

「……慰めて、ほしいの……?」

鞘師華奈 > 「――そっか。なら私の中にはまだ燻るものが確かにあるんだね…うん、少し安心した。
――あの時の私はもう”死んでしまった”けれど…今の私はまだ先に進む事が出来る」

彼女の言葉に、少しだけ寂しそうに…けれど嬉しそうに微笑んだ。
3年前に壊滅したとある違反部活――それは一人の男をリーダーとした武闘派の組織。
好き勝手に、無秩序に、されど鮮烈に。それこそ”燃え盛る炎のように”駆け抜けて…そして鎮火された。
特に珍しい話でもない。落第街では、スラムでは、この島の裏側ではありきたりの末路。

――だが、その残り火は怠惰な奥に確かな熱として宿っている。未だ燃え盛っている。
ああ、そういうのも彼女の”目”は読み取れるのか。凄いなぁ、と思う。
恐れも嫌悪も無い。見たくも無い事だって見えてしまう事もあるだろうし、彼女の本意でなくても見える事もあるかもしれない。

「――ああ、私は――残り火だからね。昔、消し飛ばされた炎の残滓。未だ消えない亡霊みたいなものさ」

嫌悪は伺えない、不安が浮かぶ金色の瞳がこちらを覗いてくる…だから隠さない。
そっと、下腹部を覆い隠していた彼女の腕が持ち上げられる。シャワーがその腕を伝って滝のように流れ落ち、その水滴が己も濡らしていく。
――頬に手を添えられた。嗚呼、私は酷い迫り方をしているなぁ、という自覚は勿論ある。
初対面の、それも中々楽しく会話が出来そうな良い後輩で良い少女だ。
それを踏み躙るかもしれない自分への嫌悪と、同時に相手を己の残り火で焼き尽くしてしまい昏い衝動。

「慰めて欲しい、か。…単に睡蓮を襲いたいだけかもしれないよ?
…嗚呼、でも。君に”見て欲しい”と思った。君なら私自身もいまいち確信が持てなかった”残り火”をはっきり見てくれると思ったから」

そろそろ危ういだろう。これ以上は彼女だって流石に分かっている筈だ。
彼女の態度からしてそういう事に慣れているとは言い難く…己だって似たようなもの。

(本当、睡蓮とは仲良くなれそうなのに私は何を迫っているんだろうね…)

だが、炎というのは燃え尽きるまで止まらないものであり、未だ燻り続けるなら尚更だ。
頬に添えられた手に片手をそっと壁からその手に重ねながら…黄金の瞳を見つめて。

――触れるだけ、少なくとも今は。その唇に口付けをしようとする。

群千鳥 睡蓮 > 「……日ノ岡あかねにもらったことばで、あんたの心が……
 『炎のように』という我執が……萌芽させた『種子』は、
 あんたのものだ……あんただけのものだ」

近い。声も鼓動も、瞳の奥の炎にも。
焼き焦がされそうだ。吐息が触れるだけで、ぞわりと背筋をかけあがる得も言われぬ感覚。
常に奪う側でいた自分が識った知らない不安に、それでも屈さずにいた。
シャワーの雨音にかきけされそうな小さい声がどうにか言葉を紡ぐ。
我執――あらゆる苦しみの根源。あらゆる種子、可能性の源。魂の証明。

「……人間は、みんな、生まれながらにして、自由の刑に処されている」

喉が震えた。ずっと合わせている視線、その奥の瞳に危うい炎がちらついたのを観た。
はねのけてしまえはする。するが、そうする必要があるのか。
力に頼って物事を切り抜ける。安易な帰結。それをしないためにここにきた。
彼女は自分を求めている。軽薄な繰り言とするには、彼女の瞳は熱すぎる。
『取りこぼす』、後悔は――自分もした。
あの路地裏の野良猫の夢を、いまも見る。
……飛び起きる自分はだれかに抱きしめて欲しかったはずだ。
彼女にそんな思いはして欲しくないから。

「あんたは……、荒野のなかで、いまも彷徨ってる。
 ……『残り火だ』だの、『あかねには勝てない』だの、
 そんな、ぐずついた言葉で……卑下して、そんなんじゃ、だめだ。
 選ぶこと、その責を負う不安。 道行きを、だれも決めてくれない。
 じぶんですべてを定めなければいけない、荒野の旅……
 ……でもそれは、あかねに言われたのがきっかけでも、
 旅にでることを選んだのは、あんたなんだろ……?」

あえぐように言葉を搾り出し――、その濡れた髪に指を通す。後頭部に回す。

「……それが、あんたの『物語』なんじゃないの……」

もえあがることを望む焦熱から眼をそらさずに向き合えるなら。
みずからの実存を燃え滓と定義せずに、安易に妥協せずに踏み出し続けられるなら。
向き合い続けることができるなら、茜色より赤く燃えることだって。
シャワーのせいでない熱に浮かされたまま――自分から顔を寄せた。
選択した。胸を重ね、肌を重ね、彼女の体を抱きとめて、

「――――………」

顔をそむけ、唇のすぐよこに彼女のキスを受ける。

「……そゆ、のは……もちょっと…………
 お、お互い……知り合ってからで……おねがいします……」

破裂寸前の心臓、炙られたように上がった体温。
ぎゅっと抱きしめながらも、涙声で懇願した。
彼女は自分のことを何も知らない。自分だって殆ど知らない。
一夜の慰めが欲しい気持ちはわかるが、それを受け入れて彼女の価値は下げさせるまい。
それが八割。残り二割はへたれただけだ。きゅっと寄った膝が笑う。
彼女を抱きしめていなければそのまま尻もちをついてしまいそうだった。

「お、『おともだち』からで……」

このままだと、焼き尽くされそうだ。
何が残り火だと、心のなかで毒づいた。

鞘師華奈 > 「――そうだね、確かにその通りかもしれない…”私”の炎は結局”私だけのもの”だから、ね」

嗚呼、彼女に言われるまでもなく分かっている。それでも、見て欲しいとつい思ってしまった。
燻る熱は行き場を求めて彷徨っている。その矛先は自分で決めなければいけない。
だが、無秩序に垂れ流していいものでもなければ、好き勝手に焼いていい訳でもない。
――だから、まだ燻ったままなのだ。かつての焦熱には未だ遠く、だからこその残り火のまま。

だから、彼女が語る言葉には耳を傾けなければいけない。
衝動と炎に任せてはいけない。その熱が焼き焦がすほど強くても抑えなければいけない。
それはきっと、他者だけでなく自分自身すらも焼いてしまうだろうから。

――ああ、また”取り零す”所だった。自分は…まだ自分を見出せていない。
3年前に一度死んで、今はまだ燻り続けている…それをいい加減止めようと思ったのに。

「私の――旅。…私の…”私の物語”。…そう、それを回す為に私は…私、は…。」

不意に視界が歪んだ。何だろうこれは?…嗚呼、私は泣いているのか。
情け無い、出会ったばかりの少女に興味を抱いて、迫って、挙句の果てに諭されて仕舞いには泣いている。
本当、知人友人にはとても言えない無様な醜態だろう。全く、何が残り火だ。
だけど――…あぁ、だけど。荒野に自分の意志で踏み出したのは己の意思だ。
ならば”かっこ悪い”事は出来ない。情けなくても、遅々とした歩みでも、私は進まなければ、その荒野の先を見る為に。

不意に己の黒髪に彼女の指先が滑り込む。ああ…全く。この少女は凄いな、と思ってしまった。
炎の衝動に任せてしまった自分とは違う。だからこそその言葉が…染み渡るのだ。

距離が縮まる。胸を、体を、身を寄せて――彼女からも詰められた距離。その唇が重なる――事は無く。
直前で顔を背けられて唇ではなくそのすぐ横に。まぁ、それはそれで悪くない。

「そうか。じゃあ――これから睡蓮の事を私なりに知っていくとするよ。
だから、睡蓮にも私の事を知って欲しい…と、いうのは我がままだけどさ」

抱き合ったまま、膝が震えているのを感じ取れば彼女の体を抱き締めながらしっかりと支えながら一度座り込もう。
シャワーの余波で髪の毛が濡れて張り付くが気にしない。

「――うん、私からも改めて。睡蓮…私と友達からまずはお付き合いよろしくね」

と、小さく笑って…それは、含みも怠惰も炎の熱すぎる熱も無い自然体で。
ともあれ、睡蓮の体を支えつつ、柔らかいなぁ、と呟くのはそのスタイルのお蔭だろう。

「…と、じゃあ改めてシャワーを浴びて一休みしてから出ようか。
…まぁ、私がやらかしたからホテル代は私が持つよ。あと――連絡先交換とかどうかな?」

と、切り替えは早いのかそんな提案などもしてみつつ。あと、これだけは言っておきたくて。

「睡蓮――ごめん、そしてありがとう。君の言葉は私には必要なものだった」

鞘師華奈 > 「あと、次は普通にデートでもしたいねぇ」

と、元の調子に戻った焦熱の残り火は…そんな事を暢気に提案するのであった。

群千鳥 睡蓮 > 「……生きるのって、たぶん、辛くて苦しくて恥ずかしいことだよ……」

だからだいじょうぶだよ、と。
でもどうにかしていかなきゃ、と思うから自分は此処に居るし、
だから、彼女のもがいて悩む有り様を、笑えるはずもない。涙を誂うはずもない。
そうして藻掻いているだれかのなにかになれるなら、それは自分の強さの証明になる。
抱きしめているだけで熱いその体は、骸というには生命的すぎた。

「……っふー……、……いいよ。 
 いろいろ、教えてくれるんでしょ? 華奈さんがどういうひとなのか。
 あたしは識りたいよ。 ……あたしのことを識って、きらわれちゃうのはこわいかな」

へたりこんだまま力なく笑った。気が抜けてしまったのはこちらもそうだ。

「なきたくなったら、またふたりで……」

そういうこともあるだろう。ないしょばなしのようにささやいた。
とはいえ、ペースは未だ彼女。あっけらかんとした物言いになってしまえば、
少し呆れたように睨みながらも、不承不承と承諾する。

「はい、はい。 ……おともだち、だもんね。
 謝らなくていいよ……『いや』だなんて言ってないだろ。
 言いたいこと、言っただけだ。なにが視えるか聞かれたから、視たままを。
 あたしに聞けって華奈さんに言ったの、あたしだよ?
 どこかの誰かがすきな言葉だったな……『自己責任』だ」

こまったお姉さんだな、と思いながらも、毒気を抜かれて笑う。
そんなひとにだって弱さはある。またひとつ識る。自分の宇宙に取り込んだ。

「応援は、してるから」

ね、と微笑みを向けてから。

「デートね……? ……いいけど、へんなとこでへんなコトしたら今度は大声出すからね。
 ……で、その、とりあえず……お風呂はひとりではいりたいんだけど……!」

ぐしょ濡れの裸体で座り込んだまま、情けなくおねだりをする。
実際に今後貞操を死守できるかはさておき。
ここで会えたのも何かの縁、きっと必然性はある。
そう弁えて此処にいる。しかし彼女と一緒に洗う必然性はないので、
とりあえず要求してみた。受け入れさせるには、いささか説得力の低い要求であろうが。

ご案内:「歓楽街 ラブホテル」から群千鳥 睡蓮さんが去りました。
ご案内:「歓楽街 ラブホテル」から鞘師華奈さんが去りました。