2020/07/31 のログ
ご案内:「風紀委員会本庁 小会議室」に神代理央さんが現れました。
小太りの風紀委員 > 会議は踊る。されど進まず。

予定時刻通りに始まった査問会議は、予定通り粛々と進められていた。
内容は簡単。非武装の相手に対して異能を行使し、拳銃を発砲。
その一連の動画がアップロードされた結果、風紀委員会への問題提起が内外から相次いだ。

責任を問い、処罰を決めるのは当然――なのだが。

「……呼ぶ面子と数を間違えてたんじゃないかねえ」

居並ぶ査問員は8名。

『右派過激派』が3名
『右派保守派』が1名
『左派穏健派』が3名
『左派革新派』が1名

どうにかこうにか自分の派閥が最も人数が多くなる様に調整はしたが、過半数は取れていない。
というか、保守派の連中は穏健派に与してやがるし、何故か革新派は此方よりだ。

結果、4対4のお見合い状態。
むさ苦しい合コンだ。吐き気がするね。
対象の委員をなあなあの処罰で収めようとする此方側と、厳格な処分を求める彼方側。

大人しく席についている『彼』をほっぽり出して大激論。
帰って良いかな。

小太りの風紀委員 >  
そもそも、処罰するかどうかが微妙なラインなのだ。
非武装の相手。しかし現職の風紀委員に対して、明確な殺意を表す言葉を発した事も事実。
誹謗中傷と取れる発言も、動画内では確認出来ている。
風紀委員本人も、動画内では一時的な錯乱状態に陥っている……様にも見えるのだが。

「流石にお咎めなしの無罪放免という訳にはいきませんがねぇ。
 減給処分くらいが妥当なのでは?」

『いや、身元不明とは言え非武装の人間に異能を振るうなど言語道断。彼には色々と叩けば埃が出て来る身でもあろう。
より厳しい罰則を与えるべきだ』

『厳しく、と言っても減給以上となれば謹慎ですか?確かにその辺りが落としどころかとは思いますが…』

『今回の一件は、異邦人や二級学生の保護に力を入れ始めた風紀委員への陰謀!風紀委員会を陥れる罠!島の住民全てを守ろうとしている風紀委員会への悪辣な風評被害!』

議論は平行線も良い所だ。
あと、革新派の奴は大丈夫か。頭にアルミホイル巻いておいた方が良いんじゃないか。
何か受信してるぞアイツ。

小太りの風紀委員 >  
『神宮寺さんは彼に甘過ぎるのではないかね?何か弱味でも握られているのでは?』

『最近彼と仲良く食事をしているらしいじゃないですか。先輩後輩の交流にしては、相応の値段がする場所ばかり』

『風紀委員会は島の平和を守る!アイラブピース!異邦人と二級学生の人権を守ろう!よって風紀委員は無罪!無罪!』

おっと、痛いとこ突いてくるねえ。
こっそり会ってたつもりだけど、まあバレないなんて事は無いだろうしなあ。
というか、マジでアイツ早く帰らせろ。
何でアイツ此処に呼ばれるくらい偉くなれたの?年功序列?

「いやはや、先輩委員として悩みを聞いてあげていただけですよ。
皆様だって、"大なり小なり"他の委員と食事位行くでしょう?
それこそ、多田那さん。貴方だって、つい先日。生活委員会の大寺さんと歓楽街で交友を深められていたそうで?」

最早、査問会議と名を借りた各派閥の足の引っ張り合い。
此れが常世学園の風紀を守る者達と言うのだから、へそで茶を沸かす様な実態ではないか。
まあ、この会議室に集まった面々が格段酷いのかもしれないが。
だって面倒じゃん。実家が金持ちの後輩委員の査問とかしたくないよ。

神代理央 >  
 
 
「……宜しいでしょうか?」
 
 
 

小太りの風紀委員改め神宮寺蒼太郎 >  
今迄大人しく席についていた『彼』が口を開く。
というか、最初に今回の査問内容と事実確認した後、彼喋ってないよな。
……こっちが話しかけてないだけだった。

「ああ、良いとも。弁論、反論があれば聞こうじゃないか。
 我々だけで話を進めるのは、君にとっても不本意だろうし」

やいのやいのと騒ぎ立てる委員達と頭アンドロメダな委員を制して彼の発言を促す。
まあ、言いたいことは色々あるだろう。
というかこっちだって色々言いたい。
こんな会議無ければ今頃歓楽街で愉しんでいた筈なのに…。

神代理央 >  
「そもそも、皆様にとって、今回の騒動の落としどころは。目指すべき着地点とは何処なのでしょうか?」

「この騒動が自然鎮火する事ですか?風紀委員会の評判を回復させる事ですか?この機会に、風紀委員会内部の自浄…は、なさそうですが」

「それを踏まえた上での処分をお願いしたいものです。スケープゴートは慣れておりますし、そもそも今回の騒動の原因は私です」

「――風紀委員を辞めろ、と仰るなら、従いますが」

小太りの風紀委員改め神宮寺蒼太郎 >  
場が静まり返る。
何も、彼に圧倒された訳では無い。
本当に考えていなかったのだろう。今回の騒動を『どう鎮静化させるか』などという事を。
だから、場当たり的な査問会議を開いて時間を浪費する。
幌川最中が出廷した懲戒審査委員会の方が、本来は相応しい筈なのだ。

彼をそういう場に『送り出せない事』そのものが、此方の行き当たりばったりさを表している。
掘り出されたら色々と不味いのだ。
私だって、彼から幾ら受け取った事か。

「んー、そうだねえ。取り敢えずは『動画の該当者は処罰しました』ってのが無難なところなんだけど、それはそれで騒ぎ立てる人もいるからね」

「今回の件に関する処罰って、そもそも何を根拠にすれば良いのか分からないのよね。被害届出てないし。一応敵意を見せた相手ではあるし」

「何より――」

そこで、他の査問員の端末に資料を送付する。
びっしりと埋まっている彼の警邏任務のシフト。様々な戦闘結果の報告書。討ち滅ぼした違反部活の資料等々。

「人手不足の今、君に抜けられるのは困るんだよねえ。夏休み、皆楽しんでるみたいだし」

神代理央 >  
「人手不足を理由に処罰が軽くされるのは些か不本意ですがね」

薄く笑みを浮かべて、度々食事を共にする様になった神宮寺を見上げる。
とはいえ、無罪放免で許される訳も無い。それは、世間が許さない。
公安も動く可能性がある。となれば――

「"何日か"は大人しくしていましょう。給与も、当面は不要です。
それで宜しいのではないでしょうか」

「軽すぎるかも知れませんがね。これ以上の処罰を望まれるのならば、従いますよ」

"彼等"は結局、大鉈を振るえない。
手駒を失えないから。処罰を"決断"するのが怖いから。風紀を離れた己が、何を言うか分からないから。

だから、適当な落としどころを作ってやるしかない。
彼等に"自分達は仕事をしたのだ"という実績を作ってやらねばならない。
どのみち、此方も色々と動きたいところではある。
暫くは自由にさせて貰いたい事ではあるし。

小太りの風紀委員改め神宮寺蒼太郎 >  
「ま、そんなところかね」

彼からぶら下げられた『餌』にいの一番に食いつく。
こうすれば、他の者達にも免罪符を与えられる。
"あの欲深い男が率先して賛意を示し、場の空気を作ってしまった"という免罪符を。

『……まあ、仕方ありませんな』

『彼に重罰を与えるのなら、公安が別途動くでしょうし』

『実働部隊の戦力を損なうのは本意ではありませんからね』

『全種族の平和的統一は宇宙の意志!コスモ・ピース・オセアニア!』

頭ビックバンな委員は置いておいて。
概ね賛意を得られれば、用事は済んだとばかりに椅子から立ち上がる。

「んじゃま、そういうことで。私次の用事があるから、先に失礼するね。それじゃ皆様、お先に」

議決すら、取らない。
議事録と彼への正式な通告は"後から"作ればいい。
必要に応じて、必要な内容で、必要な場所に。

やれやれと大きく背伸びをしながら、息苦しい会議室を後にしよう。
自分の後にぞろぞろと続く委員達の姿を横目に見れば、もう苦笑いしか出てこないというものだ。

神代理央 >  
後に残され、小さく溜息を吐き出す。
元々そんなに広い訳では無い会議室だが、今は妙に広く感じてしまう。

「……まあ、必要な茶番だったとは思うが。最早茶番の体すら成していないのはどうなんだろうな」

査問員の人選ミスか。或いは、神宮寺の策略か。
殆ど何も決まらぬ儘『査問会議を行った』という結果だけが無事に残った。
何も罰せられない儘、罰せられた。

「ああいう腹芸は苦手なんだよなあ…。経験値不足、というものだろうか」

よいしょ、と立ち上がり制服を軽く整えて。
足早に会議室の出口へと。

「……あの馬鹿。何でアイツが殺し屋に狙われてるんだ」

ぽつりと零した言葉を誰も聞かぬ儘。
少年は立ち去り、会議室の『使用中』のランプは、消えた。

ご案内:「風紀委員会本庁 小会議室」から神代理央さんが去りました。