2021/02/23 のログ
シャンティ > 「あ、らぁ……バレ、ちゃ……ったぁ……?」

ぺろり、と鮮やかに赤く濡れる舌を唇から覗かせる。


「あん、まり……熱中、して、た、からぁ……お邪魔、かと……思った、わぁ……?」


遠慮なく迷いなく、女は男の隣に座り込む。


「ご、執心、はぁ……リタ、ちゃん、かし、らぁ……? かわ、いい……子、ねぇ……」


くすくすと笑う


「あ、ら……すご、い……特攻、みた、いな……アタック……ねぇ? あら、あら……で、もぉ……あれ、じゃ、あ……狙わ、れ、ちゃ、う、わ、ぁ……どう、なの、かし、らぁ?」


盤面を読み取り、面白そうに問いかける。貴方は、あれをどう見るか

杉本久遠 >  
「だはは、邪魔になんて思わないさ。
 オレも少し、君に会える事を期待していたしな」

 隣に座る女性に笑いかけ、頷きながら再び視線をフィールドに向けた。

「おお、そんな事までわかるのか。
 ああ今回が初参加だが、所謂、才能というのを持っている有望な選手だよ。
 とは言え、まだまだ動きはぎこちないところだが――」

 話している間にも、少女は隙を見せた選手に『スーサイドダイブ』を仕掛けた。
 『スピーダー』の使う大技の一つで、決まればほぼ確実にヒットを取れる。
 そして少女は確かにヒットを取り、スコアを獲得した、のだが。

「――スコアを見て焦ったな。
 目の前のチャンスに飛びついてしまったか。
 今のはオレもよく使う技なんだが、勢いのまま突進し、そのまま泳ぎ抜けるのが理想の形だ。
 なんだが、まだ体幹の筋力が足りていないな。
 衝突で姿勢が崩れただろう、他の選手からすれば、足の止まった『スピーダー』は格好の的だ」

 瞼を薄く開き、濃い青が軌道の乱れた白いコントレールを追う。
 何とかしのいではいるものの、これは苦しい展開に移っていくだろう。

「ほら、周囲の選手が集まってきただろう。
 彼女は乱戦を避け、逃げ切る作戦を取りたかったはずだが、これで否応なしに乱戦に巻き込まれる。
 そうなると、格闘戦は経験とセンスだ。
 今は何とか落とされずにいるが――さて、どれだけ持つか」

 このままでは、ヒットを取られるのも時間の問題。
 その時間もまた、残り少なくはなったが――それが味方するとは限らない。
 当然他の選手もスパートをかけてくるのだ。

「ここからは気力の勝負になるな
 どこかで折れるか――オレの想像を超えてくれるか」

 こういう展開には、口元がにやけてしまう。
 苦しい展開になればなるほど、彼女が予想を超えてくれるんじゃないかと、期待が膨らんでいってしまうのだ。
 

シャンティ > 「だって、ぇ……気、持、ち……漏れ、てた……も、のぉ……? ふふ。妬け、ちゃ、う……わぁ……なん、て」


くすくすと笑う


「そ、う……有、望……な、の……ねぇ……へ、ぇ……?」


興味深そうに口にして、目を閉じる


「ふふ……功、を……焦、る、と……危な、い……とい、う……こと、ねぇ……? あら、あら……たし、かに……狙わ、れて……あ、らぁ……?」


手を伸ばし、弾かれるように海面へと飛ぶ少女。


「堕ち……ちゃった……わ、ねぇ……? あら……でも、勝ち……? ポイント、の……問題……? これ、は……作戦、勝ち……かし、らぁ……?」

ふむふむ、と一人うなずく


「解説、の……久遠、さん……今の、は……どう、みま、すぅ……?」


マイクを差し出すように、手を口元まで持っていって問いかけた。

杉本久遠 >  
 試合展開は、少女にとって非常に苦しい。
 あと数十秒、それはスカイファイトにとって、とても長い時間だ。
 しかし、少女は諦めなかった。
 例え見苦しくとも、危うくても、最期まで勝つことを諦めなかった。

「――だははは!
 そうか、あの展開で耐えきったか!
 まさか、と言いたいところだが。
 うむ、期待に応えてくれると嬉しくなってしまうなあ!」

 手を差し出す女性の隣で、心底嬉しそうに口をあけて笑う。
 そう、まさに久遠の想像を超えてくれたのだ。
 これが嬉しくなくて、なんだというのだ。

「ああ、そうだな。
 彼女は残り時間を、どんな形であれ逃げ切ればいいと開き直ったんだ。
 だからこそ、接触した勢いを使って落下した。
 重力に従えば当然、加速も早くなる。
 その加速を使って墜落するように距離を引き離して――タイムアップだ。
 スカイファイトでは、『一度も有効打撃を取られない』事でボーナスポイントが与えられる。
 その結果、スコアが逆転してギリギリのところで一位に繰り上がった」

 口元が緩むのは抑えられない。
 少女の技術的な成熟の早さはまさに才能だが――今の思い切りの良さは、才能の一言では片付けられない。

「作戦勝ち、と言うには少し苦しいところだが。
 最後まで勝利を諦めなかった根性と、思い切りの良さが勝負を決めたな。
 だはは、あれで初めての試合だというのだから、恐れ入る!」

 それからひとしきり、声を上げて笑い。
 はあ、と一つ、息を漏らす。

「――いい試合だったな。
 ああ、いい試合だった」

 視線が、遠くへ彷徨う。
 そこに含まれるのは、感嘆と喜び――そして羨望。

「だはは、まったく、背中を押したつもりだったが。
 彼女が本気になったら、オレはすぐに追い抜かれてしまうだろうな。
 まったく、かっこいい事をしてくれるじゃないか」

 年端のいかない少女の見せた試合は、あまりに眩しかった。

「ああいう選手が居てくれると、安心できるよ」

 そうこぼした言葉は、久遠には珍しく、少し力なく読み取れたかもしれない。
 

シャンティ > 「あら、ぁ……なぁ、にぃ……? 久遠、くん……やめ、ちゃう、のぉ……?」

感嘆と喜びに隠れた羨望。そして――力のない言葉
それが全てではない、と想像はつくが、それでも其の言葉を選ぶ


「ふぅ、ん……? 限界、でも……感じ、た? もう、駄目……? あき、らめ……るぅ……?」


囁くように、甘い甘い声をかける


「貴方、が……選ぶ、の、は……どぉ、れ……? ふふ。苦痛、に……まみ、れて……走る、道……諦観、に……まみ、れて……歩く、道……? それ、と、もぉ……?」


染み込ませるように、言葉を投げかけていく


「……別の、道……?」

杉本久遠 >  
「む、そんな風に『見えた』か?」

 辞めるのか、と問われた事に少し驚いた顔を見せる。
 隣の彼女から響く甘い声に、ぼんやりと遠くを見たまま答えた。

「――オレはもう、選手として限界が見えているんだ。
 まあ、あくまで肉体的な成長に、だけどな。
 エアースイムにおいて、純粋な身体能力の比重はそこまで高くない。
 技術や戦術で、伸びる事は十分にできるだろう。
 だが、それでもオレは、トップ選手になる事は出来ない」

 まだ伸ばせる部分は少なくない。
 けれど、そうしたところで――上の世界で戦っていけるだけの素養は、自分にはない。
 試合を重ねる度、素質のある選手を見る度に、そう痛感するのだ。

「そういう意味では――諦めているのかもしれない。
 オレの妹は、能力を見抜くセンスがずば抜けていてな。
 一緒に始めたのに、妹は去年には辞めてしまったよ、自分の限界値を測ってしまってな。
 妹は何も言わないが、きっとオレの限界も見えてるんだろう」

 だから、というわけでもなかったが。
 諦めていると言われても、そうかもしれないと思えてしまう。

「だが、オレがエアースイムを辞める事はないよ。
 オレはこの競技が好きだからな。
 例え選手として通用しなくなったとしても、辞める事だけはない」

 そう、それだけは断言できる。
 どれだけ自分の限界が見えようと、後輩たちに追い抜かれていこうと。

「そうだな、どんな道を選ぶか、オレもまだわからないが。
 苦痛があろうと、諦観にまみれようと、オレはこの世界で生きる事を選ぶだろうさ。
 なあに、まだ出来る事もやり尽くしていないからな。
 オレはまだ早くなれる――今はそれだけで十分だよ」

 隣を見て、笑う。
 まだ本当の限界は見えていない。
 限界の限界までたどり着いてから――後はその時に考えればいい。

「だはは、すまんな、辛気臭い話をしてしまった!
 なんてことはない、オレは結局、エアースイムが好きだって事さ」

 

シャンティ > 「あら、ぁ……まぁ、だ……あが、く、のぉ……? この、間、の……お店、の……店員、さん、なん、て、ぇ……選手――あきら、め、て……店員、して、た、わ、よぉ……?」


くすくすと、甘く笑う


「そ、れ、な、らぁ…… そん、な……言い方、は……だぁ、め……よ、ぉ?」


すいっと、手を伸ばし……鼻先に、人差し指を突きつけた。言葉のリズムに合わせて、小さく指先を上下させる


「さっき、の……は、ぁ……引退、前、の……おじ、い、ちゃ、ん……みた、い――よ、ぉ?」


悪戯っぽい笑みを浮かべる


「言葉、は、ねぇ……力……な、の。よ、わぁ、い、言葉は……人を、弱く……つよ、ぉ、い……言葉、は……人を、強く……みちび、く……の、よ? だ、か、らぁ――」

ぷに、と人差し指が鼻を突く


「さっき、のは……マ、イナス、ポイ、ント……負け、ちゃ、う、わ、よぉ……?」

杉本久遠 >  
「む、う――」

 鼻先が人差し指に抑えられると、困ったように眉が下がった。

「そう、か、言葉は力か。
 そうだな、今のは確かに、弱気だったかもしれん。
 ――君の前だと、どうも余計な事まで溢してしまうなぁ」

 と、どこか恥ずかし気に笑い、頭を掻く。
 けれど、自分の鼻を抑える手をそっと握り、彼女の色を映さない瞳を真っすぐに見る。

「なに、オレは強くはないが、大丈夫さ。
 他の選手に劣るところも、及ばないところも多くあるが、それでも一つ。
 これだけは負けないと言えるものが、オレにもあるからな」

 じっと、薄く開いた青い目で彼女を見つめて。
 それからまた、いつものように朗らかに笑った。

「だはは、それに、君に一つくらいかっこいいところを見せたいしな。
 だからオレの試合、また見に来てくれるか?」
 

シャンティ > 「あら、あらぁ……余剰、の、言葉……? じゃ、あ……弱気、よりぃ……あま、え……かし、ら、ね、ぇ……?」


からかうような笑いを浮かべる。そして
握られた手をそのまま、残りの手に持っていた本を膝に載せる。自由になった手を伸ばし――


「じゃ、ぁあ……いい、こ、いい、こぉ……」


頭をなでようとする


「それは――愛す、る、心?」


自らを見つめ、力を取り戻し語る男。其の男に、ぽつりと、問いかけるように確認した


「あ、ら……あらぁ……それ、は……その、言葉、はぁ……どう、いぅ……意味ぃ……かし、らぁ……?」


くすくすと笑う

杉本久遠 >  
「はは、たしかに甘えかも――ん、ぬ」

 頭を撫でられると、流石にたじろいだ様子を見せて、言葉に詰まる。
 恥ずかしさと、心地よさ、そして海風に混じって香る自分とは違う匂いに、少しだけ鼓動が早まるのを感じた。

「それは、まあ、そうだな。
 似たようなもの、だな」

 愛する心――そう言葉にするには小奇麗すぎて、少し恥ずかしいものだが。
 久遠が持っているそれも、似たようなものではあるだろう。
 ただ、もう少し、泥臭い物ではあったが。

「む、どうもこうも、そのままの意味だが。
 君にはどうも、こう、格好悪いところばかり見られているような気がするから、な」

 今もそうだった。
 こうして頭を撫でられていれば、ほかに何とも言いようがない。
 こんなところを妹に見つけられたら、散々からかわれるに違いない。
 

シャンティ > 「いい、の、よぉ……いい、の……もぉ……っと、自分、を……さら、け……出し、てぇ……ふふ」


くすくすと笑い、頭を撫でる。適度なところで手を止めて、静かな笑いだけを深める。


「情熱、情動……希望、願望……渦、巻く……気持、ちは……様々、にぃ……ふふ。なか、なか……冗談、も……通、じ……ない、わ、ねぇ……まあ、そこ、もぉ……可愛、い……わ、ぁ……?」


一人、納得したように呟く


「ん……い、い……わ、よぉ……貴方、が……諦、め……ない、なら……いい、ぇえ……あき、らめ……た、として、もぉ……見に、きて……あ、げ、るぅ……」

杉本久遠 >  
「か、かわいい、のか?」

 なにかに納得したような様子の彼女に、久遠は困惑した表情を浮かべる。
 身長が伸びて筋肉質な体を作ってから、可愛いなんて言われるとは思ってもいなかった。

「――そうか、それはなんだ、嬉しいな」

 例え自分が折れたとしても、見届けに来てくれる。
 そう言ってもらえるのは、とても嬉しく――安心できた。

「だはは、なんだか君にはかなわないような気がするな。
 不思議な人だ」

 握った手は、普通の少女のように嫋やかで、自分の手と違って柔らかく滑らかだ。
 それなのに、彼女にはどこか強さ――いや、深さを感じる。
 それが不思議で、握った手をじっと見つめてしまっていた。
 

シャンティ > 「……ん、ふふ。女、はぁ……秘密、を……もつ、もの、よぉ……不思議、も……不思議、ねぇ……あ、は」


女は、変わらず笑う。


「あ、ら……手、が……なに、かぁ……? ん……やっぱ、り……おっき、ぃ……わ、ねぇ……? 逆、にぃ……私、の、が……ち、っちゃ、ぁい……の、かし、ら……ねぇ?」


そっと、握られた手にもう片方の手を重ねる。最後は問いかけるように。


「ふふ……それ、に……して、もぉ……やっぱ、り……此処――なの、ねぇ……特等、席……? 反省、房……? 控え、室……? それ、なら……大会、の……度……此処、に……来ない、と……ねぇ?」

くすくすとからかうように笑う。

杉本久遠 >  
「はは、秘密や不思議も、女性の魅力というものなんだろうな。
 そうすると、君はやっぱりとても魅力的な女性という事か」

 久遠もまた、いつものように笑った。

「そう、だなあ。
 小さいかはわからないが、細くて、綺麗な手だと思うぞ。
 それに、とても優しい手だ」

 重ねられた手に、自分の手をその上から包むように重ねる。
 海風に吹かれて少しひんやりとした手は、それでも暖かさを感じるようだった。

「だはは、反省室、は違いないかもな。
 でも今は、VIP級の特等席か?
 こうして、君と一緒に試合が見れるわけだからな」

 優しく、時折可愛らしく、それでいて不思議で、深みがあり――どこか得体のしれない。
 そんな彼女と過ごす時間は、奇妙なほど心地よい。

 そうして、口説き文句とも取られかねない台詞を、天然に口走っているうちに。
 会場では次の試合が始まろうとしている。

「オレは終わるまで、ここで試合を見ていくつもりだが、君はどうする?
 まだ見ていくなら、また観客席まで案内しようか。
 今日はだいぶ暖かいが、海風は冷えるしな」

 

シャンティ > 「やさ、しい……? あ、は……やさ、し、い……ね、ぇ……?」


面白そうに、笑う。この手は、善にも悪にも振るわれる。それは優しい、というものだろうか。ああ――でも。今は、優しい慈母の手のようでもあるのかもしれない。


「あら、あら……別、にぃ……私、はぁ……二人、っきり……ぃ、で、此処……で、も……いい、の、よぉ……? ふふ。」


残りの試合も見ていくと、言外に語る。それすらも、本当はどちらでも良かった、けれど、それも楽しかろう、と思う。
試合もそうだが、この男の情動を眺めるのは、楽しいから。鉄火に生きる男とはまた違った、味わい。


「でも、ぉ……そ、れ、は……貴方、に……お任、せ……する、わぁ……?」


どちらでもいい。近くても遠くても、文字と記号の羅列の世界は、そう変わらない。それなら、委ねてしまってもいいだろう。

杉本久遠 >  
「ん、優しいさ。
 少なくともオレはそう感じてる。
 それが、誤解だったとしてもな」

 彼女が優しいだけでない事は、久遠にだって想像は難くない。
 彼女が感じている世界は、久遠が見ている世界とはきっとかけ離れているのだから。

「だはは、そうか――なら、もう少し付き合ってくれると嬉しいな。
 君といるのは、なんだか心地いいんだ」

 それがなぜかはわからない。
 けれど、まるで全てを見透かされているような感覚、それに奇妙な安心感を覚えるのは確かだった。
 だから、委ねられたのなら委ねられるまま、手を放す事も忘れて、並んでいる事だろう。
 

シャンティ > 子守唄のように、静かに、甘く、
 
      アナタ
「で、は……演者、の……思う、が、まま、にぃ……」

声は流れて、消えていった。

ご案内:「エアースイム常世島大会会場」から杉本久遠さんが去りました。
ご案内:「エアースイム常世島大会会場」からシャンティさんが去りました。