2021/02/28 のログ
ご案内:「エアースイム常世島大会会場」に杉本久遠さんが現れました。
杉本久遠 >  
 久遠のスカイファイト2試合目の結果は、3位で終わった。
 参加者6人のうち3位である。
 悪くはないが、良いとも言い切れない結果となった。

「だはー!
 結局、一度もヒットが取れなかった!」

 先日の無効試合となった試合の影響か、久遠を狙う選手はいなかった。
 そのため逃げ切りは容易だったと言えるが、それは警戒されていたともとれる。
 実際に、過剰な警戒をされたために、久遠は誰からもヒットを取れずに終わったのだ。
 

杉本久遠 >  
『いやー、完全に警戒されてたね。
 兄ちゃんが動くとみんな逃げてくんだもんなー。
 一つでもヒット出来てたら2位タイだったのに、残念残念』

 妹に肩を叩かれながら、久遠はがっくりと肩を落としていた。
 どの選手も、先日の無効試合で久遠への対応を決めたのだろう。
 幸いなのは、久遠のラフファイトを恐れているわけではなく、単純に『格闘戦ができるスピーダー』として敬遠されていたと言うことだろうか。

『まー、これで兄ちゃんの切り札が一つ表になっちゃったわけだ。
 兄ちゃんが近距離得意なのは、隠してたから強みだったのにねー。
 そりゃあ、皆、わざわざ近づいて来ないよね』

「うむ、オレもあの状況なら放置の一手だろう。
 まあ、これから逃げ切りがしやすくなるとも言えるがな。
 それでも、ヒット0で勝てるほど、スカイファイトは甘くなかったと言うわけだ」
 
 アマチュアとはいえ、今日の試合はそれなりの実力がある選手ばかりだった。
 そんな中では、そう上手く事は運ばない。
 要警戒選手として一目置かれるようになっただけ、評価されてると喜ぶべきなのだろう。
 

杉本久遠 >  
『しかしまー、これじゃ、選考会は遠いねえ。
 1000mの方はチャンスがあるかな、って感じだけど。
 近距離の強さをどう評価されるか次第、って雰囲気だねー』

「オレは別に、格闘戦なら出来なくもないというだけで、ドッグファイトは苦手なままだしな。
 弱点を克服できないまま選考会に進めたとしても、いい成績は残せんだろう」

『そんなことないと思うけど、まー、難しい事には変わんないか。
 でもこれで手札を伏せる必要が無くなったんだし、堂々と作戦に組み込んでいけるって事で。
 んー、兄ちゃんに合う、兄ちゃんらしい作戦と、トレーニングメニュー考えないとなー』

「はは、頼りにしてるぞ」

『うんまあ、前々からイメージはしてたしね。
 あとは兄ちゃんが永遠ちゃんのマネジメントについて来れるか次第ですなー。
 ま、兄ちゃんをサポートするのが、この美少女マネージャー永遠ちゃんの役目だからね!
 だからジェットコースターにでも乗ったつもりで、期待するがよいー!』

 びしっと、両手のピースサインとちらっと舌だしウィンクでポーズを決める妹に、久遠は苦笑を浮かべた。

 そして、ふと、『特等席』の方へと視線を向ける。
 そこには最初からか、それとも試合が終わったからか――誰の姿もなかった。
 彼女は見てくれたのだろうか――一瞬そんな思考がよぎり、誰もいない『特等席』に、わずかに寂しさを覚えるのだった。
 

AS運営委員会 >  
 ――そしてその日の夕方。

「えー、今年も皆さんのご協力のおかげで、つつがなく大会を進行する事が出来ました。
 この場をお借りして、お礼申し上げます」

 壇上から、久世会長の声が穏やかに響く。
 静かになった会場に残っているのは、ほとんどが運営委員会のスタッフたちだ。
 試合が全て終われば、選手も観客も、その多くが帰ってしまう。
 閉会式まで残っていく選手は、スタッフを兼ねていたり、たまたま最終試合に参加していたりなどと、事情がある選手ばかりだった。

「――で、ございます。
 それでは、また来年度もこうして大会を開けることを楽しみにしております。
 次回は夏大会になりますが、どうぞ、よろしくお願いします。
 ではこれにて、エアースイム冬季大会を終了いたします」

 会長の挨拶が終わると同時に、拍手の音が鳴り響く。
 ――こうして、小さな大会は、静かに締めくくられるのであった。
 

ご案内:「エアースイム常世島大会会場」から杉本久遠さんが去りました。