2021/11/24 のログ
ご案内:「歓楽街路地裏『Wings Tickle』/地下空間」に『調香師』さんが現れました。
ご案内:「歓楽街路地裏『Wings Tickle』/地下空間」にメアさんが現れました。
■『調香師』 > ドレスの様な黒い衣装を手に梯子を下りて、明かりをつける
目の前に見えるのは棺。棺の形をした保管槽
この中に自分が居る状態で発掘されたと初めの『マスター』は言っていたが
詳しい事は知らない。分かっているのはその使い方だけ
太古の遺産である、私を直す事が出来る現状唯一の手段
その中で、貴女は眠っている
「向き合おっか」
■メア > 「……………」
棺の中で眠るメア。
保管槽の中で、分解され、もう一度組み上げられた、新しいメア。
一糸まとわぬその姿は、まるで眠り姫のようで。
しかして、王子のキスによって目覚めるのではなく…起動コードを入力しなければ、起き上がることはない。
■『調香師』 > 「起動コード」
蓋を精いっぱい押してずらして開く
貴女の表情と向き合いながら思考する
そう、起動コードである
私がどこまで『彼女』を再現できたものか
設計図の形通りには従った。解読の末、そして技術の壁は乗り越えて
しかし、書かれていない事は再現できない
入力方法、コード。どれもが欠けていては意味がない
眠り姫はそのまま、調香師の心の針として残り続ける遺産となろう
忘れる事だけは、したくない。想っては居るのだけれども
■メア > 「………起動コード、確認。ブート開始―――――」
口が動かぬまま、機械音声がメアの中から発せられる。
「構築環境探査……記憶領域に深刻なエラー発生。原因探査―――――」
そのまま、起動状況が報告される。その中で……記憶領域に問題があると告げられる。
「記憶領域に深刻なエラーを確認。不正なデータ消去を確認。このまま起動すると人格に深刻なエラーが発生する可能性があります。
このまま続ける場合はもう一度起動コードを入力してください。1分後にシャットダウンを行います………」
■『調香師』 > 1分。それは奇しくも、自らの異能が通じる制限時間と同じく
「...」
表情に、僅かながら翳り。薄く開かれた口は次の言葉の代わりに香りの吐息が漏れる
深刻なエラーの内容は、以前把握してしまった通り、故に迷いが生じる。それがほんの数秒でも
その間に『彼女』は遠ざかっていく。私の記憶消去と同じように、余りにも短い
「起きても良いんだよ」
それでも、貴女の手を掴む
『望まれない生き方』に苦しむ、それは私も同じだから
あとは貴女が目覚める事を、選んでくれるかどうか
自分で死にたがっていた貴女。この声も届いてくれるのだろうか
「嫌な気持ちにされたこと。許す為の時間が欲しいから」
コードを唱える
■メア > 「起動コードを確認。ブートを続行――――――」
起動コードをもう一度受け取って、構築が再開される。
「エラー。記憶領域の断裂を確認。周辺データの初期化を開始――――」
読み取れなくなった記憶を整理するために、一部のデータが初期化されていく。
矛盾が起きないように、記憶が整理されていく。
「エラーの解消を確認。人格形成後、セットアップを開始します―――――」
記憶領域の整理が終わり、起動の最終段階へと入る。
数分と経たずに、それが終わり………
「……………」
ぱちり、と。目が見開かれる。
■『調香師』 > 手を強く握る
安心するにはまだ早いらしい
貴女のシステムボイスが告げている
自分の読み取れない領域の中で、様々な取捨選択が為されている
その結果、どういう物を貴女が導き出したのか。それをまだ知らない
視線が重なる。ただただ、そこから生じる無言
■メア > 「……………マスター?」
視線が重なって、まず発せられたのが、その言葉だった。
調香師は自分の記憶しか消していない。しかし…メアはマスターの記憶をも失っていた。
大切なものの、記憶が消えてしまっている。自分と深く関わってくれてた、大切な人の。
「……貴方が、私の、マスターですか?」
記憶に残っているのは、隣人として接した多数だけで。
そしてこの世界には自分を起動出来る人間は居るはずがなくて。
そして、導き出された言葉が、これだった。
■『調香師』 > 返答のない空白。機械が機械に、主を乞われるような状況
『調香師』は言葉を失いながらも。また、嫌な位冷静にその言葉を聞いていた
この時代に私が目覚めた時に、目の前の人型を前にして
そう、自然と確かめてしまう。そんな自分の姿と貴女が、重なる
「調子はどう?」
口が自然と動く。肯定も否定も出来ずに
貴女の肌をなぞる様に指をスライドさせる
人と変わらぬ姿を与えられていようとも、その内部を調整する必要がある存在
故に『自分の身体』と同じように、以前までとは異なる細工は施してあるけれども
...今のところは、以前とは変わらない姿で居られているのだろう。貴女の大切にしてきた身体
■メア > 「快調です。設計図と違う部分がありますが…概ね問題はありません」
起き上がって、身体を確かめるように、動かす。
大きな問題もなく、身体は動いてくれる。記憶にあったものよりは調子が良いぐらいだ。
「この、設計図にないものは、どういったものです?」
自分の体を確認しながら、調香師に聞く。
■『調香師』 > 「メンテナンス性を向上させるものだよ
あなたがこれからも生きていくために、体の中に触れられるように
うん。その表皮は光を編んで作られた物なの。だから、任意の時に空気中に解けてくれる」
説明をするものの、貴女の仕草は気になる挙動を続ける
丁寧な言葉で語る部分もそう。その動きもどこか、『以前』とは異なる...ような
「ところで、ね
あなたは眠っちゃう前の事を。どのくらい覚えている?」
■メア > 「へぇ、それはまた便利な技術ですね…」
それまでと同様の見た目と感触を残しながら出来ているのなら相当な技術だ。
感心するように、自分の手を見ている。
「どのくらい…って言われましても、含意が広すぎて。ただ、起動時に記憶領域の30%の損失を確認しています」
少なくとも、目の前にいる人の記憶はない。マスターの記憶もなく、自分の体に詳しい。
「それで、私は何をすればいいでしょうか、マスター。」
そのことから考えて、メアは調香師をマスターだと認めていた。
■『調香師』 > 「30%」
その意味の重さを理解するのに、随分と時間を要した
きっと、曖昧な笑みを浮かべる『調香師』に対して向けられる目線は今までの物より無垢な物であろう所
また、時間だけが沢山過ぎてしまいそうな
話題を求めて目線を逸らした所で、手元に抱えた貴女のドレスの重みを思い出す
そして、あなたの格好を思い出す
「これ、着る?」
差し出す
■メア > 「あ、着ます」
棺から出て、その裸体を晒す。
それでも気にすることなく、調香師からドレスを受け取って。
手慣れた様子で、ドレスに身を包んでいく。
1分と経たずに、まるでお人形のような姿のメアへと変わるだろう。
■『調香師』 > 「......」
上下、見て。外見上は見慣れたメアだ
見た目だけは、普段通りな貴女だ
「やっぱり。以前までのあなたとは、違うのかな?」
とすると、より気になってくるのはその内面
「そして。私って、マスターなのかな?」
彼女にとって。私とはどういう存在なのか
■メア > 「以前まで…といわれましても。人格に関しては起動毎に変わってしまいますし、記録されることもありません。そもそもシャットダウンすること自体が稀ですから」
メアの世界ではドールは個人として認められているのは、その連続性故であり、基本的にシャットダウンは想定されていない。
万が一シャットダウンするような自体になった場合は記憶領域に残った物を経験させ、人格を形成するのだが…今回はその記憶領域に問題があった。
そして、メアはそれを経験した体なので、違いと言われても、わからない。
「…状況を鑑みて、そうだと思ったのですが。違うのですか?」
メアの起動コードはメアの中の設計図か、マスターしか知らないはずだ。
そうすると知っていてもメカニックだが…調香師の風貌はメカニックではない。
と、するならば。メアにとってはマスターという認識になっていた。
■『調香師』 > 「そう。それは...」
答えを得てしまった。つまり、ここにはもう『メア』は居ない
『メア』を殺したのは私だし。私が『メア』を許す事は、もう出来ない
「...そっか」
向き合ってしまった現実。彼女が表す事の出来る表情は笑みに由来する物だけ
故に、この絶望感も。貴女にとっては、困ったように歪められた眉でしか表現されなかった物なのだろう
「マスターじゃないよ。あなたは、私に酷い事しかしないから
私も、あなたに酷い事をしたから」
行先のない言葉を落とす
■メア > 「……酷いこと…?」
ぶるり、と。身体が震える。
「私、酷いことをしてしまったの?」
怯えた顔で、そう問いかける。
記憶の中で、腕を抉られる記憶が蘇る。
頭の中を掻き回される記憶が蘇る。
「じゃあ、私、償いをしなきゃ、いけない」
原因はわからない。記憶が抜け落ちてしまっているから。
どうして貴方がそんな顔をするのかが、わからない。